レティシアは門の用意を指示すると、レティシア、フィーネと幾人の内務官を同行してステーラに行くことにした。
「エマは?」
「エマさんはご主人様がお話ししていた罠をかけに行ってますけど、まさか先にご主人様が戻って来るとは思いませんでした」
ステーラにワープで戻って来ると、町中ごった返していた。それもそうだろう。明日ここの人が皆引越するわけだから、お金の払いやら家財道具などを一晩でまとめないといけないわけだから、そりゃ大変な事になるが兵隊が喧嘩や騒動にならないように管理しているために小さな小競り合いはあっても殴り合いとまではならなかった。
レティシアにすでに用意した簡易的な木造の門を見せて
「ここから移動する事になる。30万人がここを通過するのにどれくらい時間がかかると思う?」
「一方通行でも子供もいますから混乱なく行くには20時間くらいかかると思います。」
「そんなにかかるか……ステーラが陥落したのは、カッシームにすでに伝わっているだろうから明日には軍が到着する可能性があるな……」
地図をレティシアに見せると、「海岸線の道を封鎖してしまえは突破するのに時間がかかるのではないでしょうか?」
「なるほど確かにここは谷の下にできたような街だからな。」確かにここに来る時も海岸線の道を通ってきた
今日の夜中になんとかしないとな……
レティシアはこの街の帳簿を見たいと言って内務官を連れてステーラの屋敷に……フィーネはここの研究施設を見に行きたいと言うのでレティシアに同行した
フィーネには「魔物を作り出すなんて事は考えないようにな」と厳命しておいた
彼女だって試してみたいと思うかもしれないから初めに言っておく必要がある。
彼女が何に興味を持つのかは俺にもわからないからな
俺はルティナをESPで呼び出すと、先ほどの海岸線まで移動して、看板を建てた。「ここより先移動を禁じる」
として、幾つもの「クリエイトピット」を作り少しでも行軍を遅らせる処理をした
そして1番道幅の狭い海岸線にを「デリートサンド」で闇夜にルティナと二人で穴を掘る
「ご主人様〜こんな夜中にするべき事なんですか?」
「ああこれをしなかったら明日にはカッシーム軍がここまできてしまうだろ?」
「え〜〜!!」
「ウォールオブダマスカス」を唱えるとその溝に次々にダマスカス鋼でできた巨大な壁を出現させて、大きな壁を作った。これで容易には突破できないだろう。
「まぁこんなところだろう」
「ふぅーやっと終わりましたね。帰ってお風呂に入りたいです」
「メイジズ・マグニフィシャント・マンション」で宿屋に部屋を借りているのに、みんなそちらに移動した。まぁ明日には閉店するのに商売も何もないだろう。晩飯も当然宿屋にはない。
そりゃそうか。
でもマンションなら風呂もついているし、食事もできるからな。
ステーラでやるべき事はやった。明日は大移動だ。
朝起きると俺のベッドには沢山の人が横になっていた。
そこにはやはりロクサーヌはいないが、他のみんなが俺を助けてくれている。それにはなんとかこたえたいが焦る気持ちばかりが先行してしまう。だが俺の事を思ってみんなが手助けをしてくれているのは間違いない。
「ふー」一息つくといろんな思いを馳せる
みんなの支えがなければ俺はここまで来れなかったな……
この世界に来た時はそんな気持ち全然なかったけど
もうちょっと頑張ろう。そして必ずロクサーヌを取り戻す
みんなが起きるとそりゃもう大騒ぎになっている
魔法で「トランスポーター」を掛けるとフィーネ、レティシアと何やらたくさんのものを持っている、内務官を連れてマロルに行って反対側の門を見るととても立派な門ができている。そして大きな広場につながっていた。この門に「トランスポーター」の魔法をかけた。
そこに「パーマネンシィ」永続化の魔法をかける。
この門は明日には無くすので、その時は「ディスペルマジック」をかければ消滅する
俺はその門を潜ってステーラに移動すると
みんなが門の前で待っており、拍手で迎えられた。
まずはドワーフ族の人たちが通された。
向こうに行ったらすぐさま自分たちの家をフィーネの指揮のもと建ててもらうためだ。ロージーが建築用のゴーレムを完成させているのでそれらも実験的に使ってより完成度を高めるのに使うようだ
「トランスポーター」をラーゲルにも繋げたいとレティシアが言ってきた。
騎士団とここの竜騎士が諍いが起こらないように列に張り付いているため
俺はこの門の前に張り付いている必要なく、ルシール、ルティナ、レティシアを連れてマロルに帰って来ながら話をした。
「ベイルは?」と聞くと、悩んでいる
「どうして悩むんだ?」
「この門はご主人様しか作れないですが、この門を閉じるのもご主人様しかできないんですよ。だから武力蜂起している今ではなく、平時にまたお願いするほうがいいかなと思いまして」
「確かにその門を使っていきなり攻めて来ることもできるからな」
「はい。なので今は壁だけでよろしいかと……」
早速ラーゲルに向かいレティシアは門の準備をアネットに指示した。
アネットにレティシアのその奇怪な申し出に頭を傾げたが
理由を聞くと「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか?!!」と昨日のレティシアのような反応をした
アネットは街の職人に大至急作るように指示していた。
そして、アーダもまたここにいる
「アーダ久しぶりだな」
「はい。それほどは時間経ってないですけど……湖畔の館は残念なことになりました。カシア様もとても残念な結果になってしまって悲しんでおられました」
「湖畔の館は残念だったなテアもとても気に入ってくれていたのに……」
「はい」
「でもさ、あそこにテアの墓も建ててやりたいからあそこまた貸してもらいたい。今度はなかなか入って来れないようにするし、多分あそこを知っている騎士はみんな捕まえたし……それに……まだルシアが見つかってないから……もし何処からか逃げて来てあそこに辿り着いても誰もいなかったら可哀想じゃん?」
「そうですね。ルシアさんまだ見つかってないんですよね」
「うん。そうなんだ。」
「オーモルの館の件はカシア様にお伝えしておきます。私もいつかまたあそこにいきたいです」
「ああ、その時が来るように頑張ろう」
「はい」
レティシアが一通りアネットに指示を出すと
「次に行きましょう」
俺たちはベイルに到着した。
レティシアはマルティナを呼ぶと
副官と共に血相を変えてやって来た
「マルティナ参上しました」俺たちはベイルの城壁の所に来ている。ここから見る風景は変わらずのどかな感じだ。あと数キロ行くと新帝国兵士がいるかもしれないのに……
マルティナが状況を説明した
「1000名の騎士と共にベイルの治安と外敵の攻撃を防ぐために毎日訓練しています」
「もし、攻撃を受けた際には直ちに我々に伝えよ。フィールドウォークは使えない事もあるから準備も怠らないように」
「なぜ俺たちをここに?」
「はい。実はベイルの城壁はかなり老朽化が進んでおり、現在も修復中ですが、ご主人様のお力でさらに強固な城壁にして欲しいと思いましてこちらに来てもらいました。」
「現在ここが最前線だからな」
昨日の深夜にやっていた事をまたするだけだし、補強だけならすぐ終わるだろう
ドワーフたちが呼ばれて作業に取り掛かる
ルティナとルシールには城壁の外側に10センチ幅のミゾを地中深くまで魔法で掘ってもらいそのミゾに
「ウォールオブダマスカス」を唱えてダマスカス鋼の壁を作り出した。
そして堀を作って川の水を流した
俺たちの作業は日が暮れる前には終わった
作業をしながらレティシアと話した
「レティシアはこのクーデターをどうみる?」
「何者かがジゼル様に甘言を囁きカッシームの計略だと思われます」
「ああ俺もそう思う」
「じゃあさ。直接ジゼルを捕まえてしまえば終了なのか?」
「そうとも言えないです。将軍も協力しているので」
「でも帝都を陥落させればみんなの気も変わる?」
「うーんそれはなんとも言えませんね。どこかの城で籠城する可能性はありますが、今の所、城らしい城は帝都だけですから。あとは砦だけになりますね。ジゼル様を捕まえると言っても皇族ですよ。簡単には捕まえられないのではないでしょうか?」
「エマがいるじゃん?エマならジゼルと知った顔だし」
「はい。でもジゼル様は奴隷制度反対の為に蜂起されていますが……」
「俺は思うんだけど、そんなに急には変えられないんじゃないかなって。ステーラを見て思ったんだよ。奴隷と言ってもあそこでは読み書きやブラヒム語、剣術などの付加価値をつけて奴隷の販売をしていた。その一点だけはいいことだと思うんだよね。そしたらみんなから必要とされるだろ?」
「確かに識字率、計算能力はまだ低いですからね」
「そのための学校だし、優秀な内務官足りていないからな」
「確かに」
「だからさゆっくり始めないといけないと思うんだよね。それ以外は革命しかないって問題だと思うよ。あと禁固刑を作り、牢屋も作る必要あると思うよ」
「そうですね……でも話が見えて来ないのですが……」
「つまりさ?今日の夜にはエマ帰って来るんだろ?」
「はい……」
「今日の夜帝都を奪還しちゃおうと思ってさ。」
「ん?しちゃおうと思って?そんなに簡単じゃないし、それはつまり参戦すると言うことになりますよ」
「このままずるずるしてても時間の無駄だからさ。とりあえずジゼル捕まえて、ガイウスと話して見ようと思うんだけど、どう思う?」
「いや、そんな簡単に行きますかね?」
「一気に宮殿に行ってしまえばいいんじゃない?」
「だから、フィールドウォークでは行けないと……ん!!そうかご主人様は他の移動方法があるんでしたね」
「そうなんだ。だからまずは国内の不穏分子を叩けば一気にいろんな問題解決しないか?」
「でも、今日の夜ですか?」
「今日の夜ステーラのトランスポーターを破壊したら、その後はもう俺は何もすることないし……レティシアはやることいっぱいあるから大変だろうけど……」
「私はいいんですよ、私は……でもそんなに無理をしないでください。それが1番心配です」
「俺は大丈夫だよ」
「……もう何も言えませんね。……でも将軍は強敵です。マキシム様の父上です」
「マキシムの?帝国には実害はどれくらい出ているの?」
「くわしくはわかりませんが、何人かの貴族、商人は蜂起してすぐに惨殺されました。同じ帝国兵ですから、騎士階級ではあまり本気ではないようです。まして、末端の兵は、ついこないだまで味方でしたからね。主に亡くなっているのは傭兵ですね」
「そうか……」
「まだ蜂起して7日ですからね。通常準備段階です。むしろ2日前にカッシームから宣戦布告されて、新帝国の兵隊や騎士も、内輪で戦っている場合ではないと思っている人も少なくないと思います。いずれの兵隊もこの帝国のために動いているわけですから」
「尚更今日するべきじゃない?」
その話を聞いていたルティナは
「ご主人様も変わりましたね」
「うん?何が?」
「私を捕まえるきっかけになった私の父セルマー伯電撃作戦からでしょうか?石橋を叩いて渡るような慎重な方とロクサーヌさんから聞いていましたが……」
「俺は慎重なつもりだが、スピーディーに行動を起こした方が被害も少ないから……いや、すまん許してくれ」
「私の事?私は今充実してますから謝らないでご主人様は私に可能性を与えてくれたから」
「それは私もかな。あのままなら私はずっと死ぬまでコボルトの苗床だったし地獄から救ってくれた神かな」とルシール
「それを言ったら私も。ずっと近親の性奴隷だったかもしれないし、親兄弟みんな亡くなったけど感謝しています。」とレティシアも声を上げる。
いや、そんな言われると心苦しいです
「いや、だからさ。準備は大切だけど、ここぞと言うときに動かなかったら得られるものも得られないんだよね」
この世界に来てすぐにロクサーヌを手に入れる為に盗賊狩りをして賞金を稼いだとは言えてない。決して慎重なわけではないが、ロクサーヌを失うのが嫌で慎重になっていたのだろう。
だが今は手元にロクサーヌはいない。だからポンポンと側から見たら危険な提案をしているように見えるのかもしれない
かと言って、みんなの事も失いたくないが確かにルティナの言う通りセルマー伯爵の電撃作戦から少し変わったのかもしれない。実際にはハルツが考案したのだから俺の決断ではないが、俺が先鋒でセルマー伯爵の城に行ったのは間違いない。
あの時の事や今までの迷宮攻略の事を考えると、冒険者としての高揚感が俺をここまで推し進めて来たのかもしれない。
再びラーゲルに戻り、マロルと「トランスポーター」でつなげると、セリーたちが俺を待っていた。
セリーが言うにはやはりカッシームの軍が侵攻して来ているらしいが壁と落とし穴でステーラに来れてはいないが、まだ住人も移動を終えていない
すでに急いでもらっているがあと30分はかかるようだ
すでに門を開いて12時間経っている。当初20時間かかると思われた移動も竜騎士のおかげで混乱なく進んでいたが
ギリギリというところか
壁の内側も落とし穴を作っておこうか
ステーラに残ると言う人も3万人近くいる。
カッシームがあなた達を今までと同じように扱ってくれるかは保証できないし、虐殺されてしまうかもしれないからと、竜騎士達が説得しても残ると言う人は残るのだろう。当初また同じように使われるならこの場所は使えないようにしてしまうかと思ったが残る人がいるならそれはできない。
ここに残る人に「お元気で」と短く挨拶をする事しかできなかった。
後に無理矢理にでも連れて来た方が良かったのだろうか?それとも俺の領土に来てもっと過酷な環境になる事を恐れたのか、それは自己判断ということで、それ以上俺が知る術はなかった。今でも無事でいる事を祈るしかない……
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