「人族?盗賊って事か?」
「さすがにジョブまでは分かりませんが、男性2名です」
とロクサーヌは冷静に答える
「男が2人か……進行ルートにいるのか?」
「いえ、少し外れています」
迷宮で他のパーティと鉢合わせでいい経験がないので、正直迷うな
盗賊や追い剥ぎ、殺人なんていうのは迷宮内では誰も見ていないので罪に問えないし、迷宮内で死んでも魔物に倒されたのか殺されたのか?
無法地帯といえば無法地帯だ。
だからこその帝国解放会という秘密結社があるのだろう。
エマが「どうしますか?……スルーするのもアリですよ」
「んーでもこの階層で2人というのが気になるな」
「確かにそうですね。2人でここまで来たのなら相当な実力者だろうし」
「じゃあミリアが見てこようか?」
なるほどミリアにマジックアイを載せれば偵察できるな。
「んーじゃあ頼むよ。でも見るだけだからな」
「うん」
俺たちは近くまで移動すると、ミリアに魔法をかけて俺はその場で座る。
ミリアが見ている物を俺に送信している。
よく見えているが、ただ、自分が動いているわけではないのに視点はかなり揺れて、壁などを走ったりしているせいで、正直気持ち悪い。
(ミリアその角を曲がったところだ)
認識阻害をスキルでつけているので、見つかることはそうそうないが!覗き込む様に壁から見る
どうやらジャイアントアントと戦っている様だ。
比較的まともな格好をして鎧を着ている。これで鑑定ができればいいのだがそう言うことはできないが見た目は
高価そうな鎧を着用して30代と50代の男性2人だ
ジャイアントアントは何とか捌けている様だが、あれではなかなか時間がかかるのではないだろうか?
特に必殺技があるわけでも強力な一撃というわけでもない
一言で言うなら『地味に強い』のだろう
一通り戦闘が終わると、壁に布がかけられておりその中に移動するが、魔法的な何かではなく、普通にボロ布がかけてあり中の様子が見えないようになっている
当然その布をめくったらばれてしまうので
『壁抜け』とミリアが小さい声で言うと
壁をすり抜けて中に入る。
中は部屋の様になっていたが、部屋というよりも行き止まりなのだろうそれを布を被せて部屋として使っている。
布までは距離があるので、魔物からの不意打ちを防いでいるのだろう。
ミリアは物陰に隠れて様子を見ていると
地べたに座り
魔法で食料のパンと水を出している。
二人は渋々それを食べている。
「もうここに1週間だぞ?!」と若い男が初老の男を叱責してぶつぶつと何かを喋っている。
食べ終わると2人は特に何かすることもなく横になる。
一体何をこの人達はしているのだろう?もしかしてここに住んでいるのか?本当に盗賊なのだろうか?
(ミリアはそのまま待機してもらえるか?何か変化があったら連絡してくれ)
(はい)
俺はみんなに見たことを話しどうやら盗賊の類には見えなかった旨を伝えた。しかしながらロクサーヌは「そのまま放っておいていいのではないか?」エマも「余計なことに首を突っ込まなくていい」
とスルーした方がいいと言う話になったが
「帝国解放会の会員だったら?」と俺が言うと
エマは「でも秘密結社なんだろ?どうやって見分けるんだ?会員の方ですかと聞くのか?」
「いや、解放会では秘密のハンドサインがあるんだ」
何気ないハンドサインなんでバレることはない。
「……わかった。ただし条件がある」とエマが言ってきた。
「私がリーダーぽくして下さい。それと会話はESPで指示して下さい。その間にハンドサインを」
「わかった」
俺たちはミリアのいる方向と道順をロクサーヌに確認して進んでいく
近くまでくると、ミリアから連絡が入る
(ここの人達も近づいてきたのがわかったみたい)
布をかけてある所の手前まで俺たちが近づくと中の2人は剣を抜いた
エマが一人で近づくと
布を捲らずに、壁にノックした。
「我々は10人ほど居るが盗賊ではない。ここで何をしているのかを確認したい。まさか居住しているのか?」
と大きな声で壁越しに言う。
「俺たちも10人ほど居るが居住しているわけではない。迷宮からの帰り道だ」
と嘘をついているが、人数が少なかったら襲われるかもしれないというのを避けるためだろう。
「そうか。じゃあ気をつけて、我々は先に進む」とエマが言うと
「いや、いやちょっと、ちょっと待ってくれ」と初老の男が立ち上がり布をまくり外に出てきた。
俺はハンドサインをしたが、それを気付いてはいない様だった。
(エマ、そいつは帝国解放会の奴らではない)とESPで答えるとエマは
(私はこいつ知ってます……)
出てきたら本当に大勢いたので少し驚いた様子だった。
「人の気配がしたから盗賊なら成敗する必要があるが、その必要はないようだな」
「いやすまない。食料を……食料をできたら分けてもらえないだろうか?」
「我々は毎日拠点に帰っているためそれほど多くの食料は持っていない」
「えっ?……どう言う事だ?」
「君達は何日も連泊で迷宮攻略をしているのか?」
「ああ、それが普通だろ?」
「我々旅団は冒険者だが、帝国の銘を受けて、盗賊を迷宮から排除している。盗賊でないなら結構。我々は救いもしないし、援護もしない」と言って以前もらった小さい盾を見せるとそこには帝国の紋章が大きく刻まれている。
「とはいえ、帝国軍ではなく冒険者だろ?」
「ああそうだが?」とエマが答える。
「この剣を差し上げるその代わりに我々を地上に魔法で連れて行ってくれないか?」
と言うと初老の男は剣とさやを抜いて地面に置いた。
すると中からもう一人の男が話を聞いて出てきた。
「待て、モーリスそれは其方の家宝であろう。申し訳ないが金でなんとかならないだろうか?」と跪き懇願する。
エマは冷静に
「我々は金には困っていないし、剣も新調したばかりだからな」と冷たくつっぱねた
それでも、しがみついてくる
「そこをなんとかならないだろうか?」と頭を下げて懇願してきた
俺はそんなやりとりをしながら彼等を鑑定する。
アイビーモーリス 聖騎士68 男56歳
フィリップ 騎士70 男35歳
と出ているがモーリスはかなり上位
エマは俺に(どうするんですか?)と聞いてくるが
(えっいいじゃないか?地上に戻すくらい)
(えっいいんですか?)
(でも、これまでの経緯は聞きたいな)
(わかりました)
「其方らは2人しかおらん様じゃが?」
「申し訳ない。私たちも貴方達が盗賊かもしれないと思ったので2人しかいないのに何人もいる様に言ってしまった。諍いが起こらない様にした手段だった」
「そうか……では他のもの達はどうした?まさか2人で来たわけではあるまい?」
「本当は18人でここに来ましたが2人いた冒険者が倒れると、進むことも、戻る事も魔法なしで行くしかなくなってしまった。元々18人をダンジョンウォークを2人で運ぶとなると片道分で魔力がなくなってしまうので、魔力回復を待っていると、そう何度も出入りはできないと言うことになり、迷宮で連泊する様になってきてしまった……
食料がつき、また一人また一人と迷宮の養分にされてしまったが我々二人だけはなんとか生き延びてしまった」
と初老の男が言うと、もう一人が
「もっと早く決断を俺がしていれば……」
と項垂れる……
「わかった。じゃあその剣は私が預かっておこう」とエマが言うと
「まだ名前を聞いていなかったな」
「俺はアイビーモーリス、そして彼はフィリップだ」
ではこちらに。と言ってセリーが紙を渡す
契約書みたいだ
サインを求めている
契約書の内容は剣の預かりと互いの身の安全の保証と
言う内容だったらしい
二人はその紙にサインするとセリーに返した
「我々は冒険者ギルドA級冒険者だが、君たちは?」
「我々は冒険者ギルドには所属していない」
「そうであったか」とちょっと驚いている様だった。
エマが俺に「じゃあお前、彼女と一緒に行って彼等を地上に送ってきてくれ」とロクサーヌにも言う。
また随分偉そうに言う。
俺も「かしこまりました」と頭を下げて2人にパーティ申請を出すとすぐに返事は来た。
エマに向かってモーリスは「もしかしたら別れてしまった者に上階で会うかもしれない。がその時は私たちが先に地上に戻った事を伝えて下さい。もしかしたら地上に戻してくれる冒険者を探しているかもしれない……」
「ああそうだな伝えておこう。モーリスとフィリップだな」
「ああ、頼むよ」
俺はワープを展開しているのだが、ダンジョンウォークを唱えるフリをして地上に戻った
あまりにもあっさりと地上に戻ってくると二人は喜んだ
「もう陽の光を見ることはないと思っていたが……」
とモーリスは漏らす
「ああ、もう一生魔法で作ったパンと水しか食えないのかと思っていたよ。本当にありがとう」と言うと
フィリップは目の前にある宿屋に嬉しそうに入って行った。
モーリスは俺に握手を求めてきた。
俺はその手を取ると、「ミチオ殿ありがとうございます」
と跪いて俺に言う。
俺とロクサーヌは身構えた
「俺は名乗っていない」とミチオが言うと
「いや、身分を隠されてあるだけだと思っておりました。あのエマが軍を辞めて嫁いだと聞いたからどんな御仁かとずっと思っておりました……」
「私はブルガ王国辺境伯アイビーモーリスと申します。そして先程の連れがブルガ王国第二皇太子のフィリップでございます」
「ブルガ王国?!」
「はい。エマがアンドレス将軍を倒したと聞いてそこまで成長したかと驚きました。モンベルト領の領主は狂っていたので、我々としても頭を悩ませていました。ご迷惑をおかけしました。」
「皇太子はいずれにしても王位継承権はありませんので、迷宮の攻略で武勲を立ててみてはいかがでしょうか?と進言してここクーラタルまで来て、最高峰。目指していたのですがあの様なことになってしまって……」
「あの剣は返そうか?まだまだ必要だろ?」
「いや、もう私はお目付役は解任となりますし奪爵されることでしょう。私には必要なくなってしまうので、ぜひ使って下さい。
最後にフィリップ皇太子と一緒に冒険できて、大変だったし、多くの命が失われましたが、皇太子にとって良い経験だと思います。命の重み、迷宮の恐ろしさはきっと皇太子の胸に刻まれたでしょう」
「こんなこと頼むのはおこがましいのですが……何かの時には皇太子には温情を……よろしくお願いします」と言うとモーリスは感極まって泣き出し、俺の両手を強く握りしめた
モーリスも落ち着き
「それではまた……」とモーリスが言うとフィリップの元に急いだ
「全部お見通しだったんだね」と俺が言うと、ロクサーヌは
「主人に恵まれないと大変なのですね。その点私のご主人様は優秀ですから。大変なこと何もありません。もし私がモーリスの立場でも同じ様に最後の最後までミチオ様の盾になるつもりです」
いやいやもっと自分大切にして。
俺たち二人は迷宮の門番に銀貨を払うとまた中に入って行った。
そして75階の俺たちがいた場所に戻った。
エマとセリーが「どうでしたか?」と聞くと
「全部お見通しだったよ」
「いやモーリス将軍がここで出てくるとは思わなかったよ。でもそれっぽい事言わないと……って思ってな」
アンドレス将軍を知っていたんだから、モーリスの事も知っていておかしくないか……
お互い役を演じていたんだな
「でも頼りないあのフィリップ皇太子が随分と立派になっていたな。まーモーリスのおかげだろうな」
まぁそうだろうな。
ロクサーヌは「さぁ午前中に終わらなくなってしまいます。早くこの階を終わらせましょう」
とあくまでロクサーヌは迷宮攻略なのね。まぁ彼等が生きようとここで死のうと関係ないと言う事だったらしい。
遅くなりました、、、、
読んでいただきありがとうございます
毎週月曜日、金曜日の22時頃に更新してます。
誤字報告していただけると大変助かります
https://twitter.com/kujira_ts
Twitterにて、こんな人をモデルとしていますと言うのと、相関図を出しています。カギがついているので、捨てメールなどでアドレスを作ってアカウント作ってもらい申請してください。
ーーお願いーー
高評価と読み終えたらしおりもお願いします。励みになります