俺はリナとキーカ、そして初めて行くのでクロエにもついてきてもらった。
山の麓にある大きな一軒家で周りに家はなく、門をくぐり中に入ってもひと気を感じるほどではなかった。
日は少し傾き夕方の様相だった。冬は日が短いのでそんなに遅い時間ではないだろう。
リナはキーカとどんどんと中に入っていく。
クロエは「ここまでで大丈夫ですか?」
「帰るの?」
「私はちょっと苦手なんで……」
マジか……
「そうか……後は俺がふたりを連れて帰るよ。ここまでありがとう」とクロエにお礼を言うと
「申し訳ありません。よろしくお願いします。」
俺も遅れて中に入ると
2人の行方を追う様に中に入るが勝手に入っていいのだろうか?
「うわっ」
ネコが2足歩行で俺の前を歩いている。
「これはこれはお客様ですか?」と丁寧に挨拶と一礼をすると、奥に案内された。
案内された部屋にはリナとキーカは板の間に座っていた。
俺はリナとキーカの後ろに座る。
すると仮面をつけているそれほど大きくないお婆さんがやってきた。
「リナ、キーカ、ミチオさんを連れてきてくれたのかい?」
「はい」
「はじめまして、ミチオです。ご挨拶遅くなりました」
「すまないねぇ無理を言って」
「リナがお世話になっております。以前目が見えなかったのにとても良くしていただきありがとうございます」
「そんなことは全然問題ないよ」
婆さんは目が見えないのか木製の仮面をしていた。
顔が見えなくても声の枯れ方から
かなり歳をとっているのがわかる。カッサンドラと変わらないのではないかと思った。
俺は早速
「リナの結婚式に出ていただけませんか?」
「わたしゃこの館から外には出られないから申し訳ないが出れないね……リナ、ごめんね」
とリナの頭を撫でながら謝った。
決して行きたくないからという感じはしなかったので、これは受け入れるしかなかった。
「そうでしたか。残念です」と俺が言うと
「わざわざ呼んでくれたのに申し訳ない……」
ときちんと謝ってくれた。
「あと、もう一つお聞きしたいことがあります。ジャッジ又はガルバンがリナと同じ技を使っていました。お心当たりはありますか?」
「あああの坊やだろう。確かに私が教えた。彼は魔王を倒したいと言って私のところに来た。彼の気持ちはまっすぐで迷いはなかった。1人で全てを背負っているのをみて、死なせたくないと思って教えた。かれの魔王を倒すと言う気持ちは今も純粋ではなかったか?」
そう言われると確かに『魔王を倒す』と言うことに関してはとてもまっすぐだったとしか言えない。
「私は彼に狙われていました」
「そうか、そうか、今でも狙われておるのか?」
「いいえ……彼は魔王と戦い亡くなりました……」
「ふふふっ……坊やが?あの子はそう簡単には死なないよ」
といいながら俺の答えを笑った。
婆さんは立ち上がると
「どれ、私の本業はマッサージだからね。よかったらマッサージして行くかい?」
「えっ?!うーん……じゃあお願いします」
俺は板の間に寝そべる様に言われると
婆さんが手を俺の腰に当てて、背中全体をさするように触る。
婆さんの力ではこのくらいか……と侮っていたら
「ああ、魔力循環が悪いと言われたことはないか?」
「はい。ありますが……」
「まあ毎日毎日女と寝てるね。お盛んだな」
なんて返事してよかったのかわからなかったが
「ええまぁはい」と答えると
大男が巨大なハンマーで思いっきり俺の背中を叩いたのかと思うほどの衝撃が走る。
「えっええええっ!!!」
俺は驚いて振り返るが確かに婆さんしかいないしかもリナもキーカも驚いている表情は見えなかった。
「色男、急激に力を付けているから身体がまだ意識と繋がっていないねぇ『自分の力はこの位』と思い込んでいるから中々それ以上は出ないんだよ。」
「そう言うものなのですか?」
「それと魔力だまりが多いねーちょっと大人しくしてな」
と言うとまた巨大ハンマーでたたかれたような衝撃が走る。
ドンッ ドンッ
気を失いそうなくらいの衝撃だが、ダメージはない。
「ほら立ってみな」
と立ち上がると身体がメチャクチャ軽くなっている。
「じゃあいっちょ稽古組んでみますか?」と婆さんが言うと
「えっ?」
と思っている間に壁まで投げ飛ばされた。
今何された?
リナが「師匠そんないきなりやりすぎです!」
「やりすぎなもんかい。色男は丈夫にできているから大丈夫」
まいったな……
まるで何かの攻撃を受けた感じはない。体がふわっと浮いたと思ったら投げ飛ばされていた。
俺は立ち上がると、ますますおばあちゃんは小さく見えた
「色男、全力でこいよ」
クロックアップ、心で念じるとゆっくりと婆さんが動いているのがわかる
そして婆さんをまさにつかもうとしたその時、後ろから足を蹴られて転ばされる
「なに?!」
俺はバランスを崩すとそのまま当て身でやはり壁まで吹き飛ばされる。
「んー目で追いすぎだ。せっかくのスピードがもったいないぞ」
クロックアップを使っているのに全く追いつけない
「もっと自分スキルではなく感覚を研ぎ澄ませ!!」
婆さんをつかもうとすると掴めない。
まるで幽霊と戦っている様だ。
「武器を使わんとこんなバァさんにも勝てないか?」と煽ってくる。
俺は確かに目で追っていた。
「人はいろんな物の見方ができる。ほら色男あんたは魔力で人を見れる様になっているはず、どうだ?」
確かにロクサーヌのあの動きは尋常じゃない。
彼女は匂いで見ているのだろう。戦闘中はほぼ息をしないと言っていた。それは自分の匂いと混じるからだ。
なら俺は目で見る以外の何かの方法を知っているわけではない。
だがこの世界に来て魔法というものを知った。
目をつぶってみよう。
俺は目を瞑ると、ある視界の揺らぎに気がついた。
『ゆらっ』
目を開けるとそれはまるで水蒸気の様に揺らめいていた。
そこだ!!
俺が蹴りを入れると、婆さんは両手でそれを防ぎ受け身を取る
「ほぅいいじゃないか」
「でもなんでおまえさんは魔法を使わない?魔法使いなんだろ?」
「ああ。そうだが」
「最終的には人は無手になる。武器に頼らず己の体を武器にして戦う。だが、武器を使う挙動と詠唱なしの魔法使いが使う魔法は織り交ぜてこそ真価を発揮する。なぜ使わん?」
「ディメンジョンドアなどは使ったことはありますが……」
「相手のデバフを狙った攻撃や動きを封じる魔法だってあろう」
「うーん、グリースとかエンタングルとかかな」
「じゃあやってみよ」と言って始まった模擬戦
その後4時間もぶっ続けで模擬戦を続けた。
「師匠そろそろ帰らないと」
「今、いいところなんだが……」
「そうでしたか。では私とキーカで今日の晩ご飯を作ります」
と言って2人は食事を作りに行ってしまったが、
婆さんは全く疲れる様子なく
俺との模擬戦を続ける。
なるほどジャッジが強いわけがわかった。
俺は戦闘にはいろんな方法があるのに唖然とする。
「それってズルじゃん?」という方法も結構あったが
「戦っているのにズルなんて言葉はない。それに対応していない準備不足という事」
「まぁそうだけど……」
飯を食った後も続けた。
何時間もの時間があっという間に過ぎてしまった。
2人は勝手に寝ていた。
気がつくと陽は登っていないが少し明るくなってきている……
「あっ……」
夢中になりすぎて時間を忘れてしまった……
キーカとリナを起こすと
「さぁ帰ろう。今日は大事な日だった。」
「まて、まだリンクを完成させてない」
「それはまた今度教えてくれ」
「ほら2人とも早く帰るぞ」
と俺が散々待たせていたのに2人を慌てさせる。
「ご主人様勝手ー」とキーカに言われてしまう。
「そうだ婆さん名前は?」
「本当にせっかちな男だな。まぁそういう男は嫌いじゃないが……私の名前はリリトアルケケンギ言いにくいからリリィでいいぞ」
「うん?リリィな。ずいぶん可愛い名前だな」
「実際可愛かったから仕方ないだろう」
慌てて3人でワープを使って家に帰る
誰もいなくなった稽古場でリリィは1人立つ
「……ミチオ。 あれで大丈夫だろうか……」
ゲホッゲホッ。
咳き込んでまう。
俺たちが帰ってくると、みんなが押しかける。
ロクサーヌが「どこに行っていたんですか?」
「いや、本当にごめん。リナの師匠に会ってきたんだ。最初は結婚式に来てくれないかとお願いに行っただけだったんだが
ジャッジの事を聞いて、少し稽古をつけてやるみたいな話になって気がついたらこの時間になっていた……」
ロクサーヌは目に涙を浮かべて「もう……心配しました。夢中になりすぎです」と言うと俺に抱きついた。
セリーは「結婚式前の日に主人が蒸発したのかと思ってみんな心配してました。私はそんな事だろうと思っていましたけどね」と白い目で俺を見ている。
目線が怖い。
ごもっともですが……
でなぜか後でキーカが怒られていた。
どうして?と思ったがキーカがワープを使って私たちに知らせてくれれば何も問題なかったのにと言う事だった。
あっそうか……
全然それすら気が付かなかった。
リナもセリーに怒られていた。
「あなたがついていながらどうしてその程度のことを提案できなかったのか?」
「はいすみません。ご主人様も夢中になってましたし、リンクの用意をずっとしていたので……離れることができませんでした」
彼女の言うリンクとは
リンクが繋がると各々が使えるスキルを共有できるすごいスキルだ。そのスキルの中の一つにテアの力持ちをリナが持っている。ただリンクするのは大変難しい様だったが、テアは数日で身につけたらしい。
俺はみんなに謝り許してもらった。
なぜかわからないが眠くもないし、疲れもなかった。
読んでいただきありがとうございます
ちょっと短くなってしまいましたが、模擬戦の内容はだらだら書くよりも追々出てくる方が面白いかな
これで少しミチオが強くなったかな?
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