カマルは
「お前は何を言っている」とロクサーヌに言った。
「私は本当のことを言っただけ。私はあのゼロに両親を殺されたけど、それもコレもヒシャームの軽率な行動がそれを招いたの。だから彼は責任を感じてせめて私を王女にして罪を償うつもりでいたらしいけど、私は、私はそんなものいらなかった……でもカマルあなたは結婚していないから他の男性を探せる様にしたのでしょう。彼は、急に冷たくなりませんでしたか?」
カマルには思い当たる節がたくさんあった。
「ぐぬぬぬっ…お前がヒシャーム様を語るな!!もうお前のご主人様なんてどうでもいい!!
ロクサーヌあなたに決闘を申し込む!!」
と言うとロクサーヌは
「ええ。受けて立つわ」
そんな時にエマが到着した。「ロクサーヌ遅れてすまん。大丈夫か?」
「今から決闘することになった」
「はぁ?もう外の対局は決したぞ?その上で決闘?」
「ええ。コレは私怨でもあるの」
「こいつがラスボスか?」
「いえ、ラスボスならあの玉座のところで倒れているわ」
「ロクサーヌお前が?」
「ええ。それよりあなた司祭のジョブ持っていたわよね。決闘の介添人になってくれる?」
「ああ……それは構わないが……」
すぐに決闘は始める様だ
「私は司祭のエマだ。ロクサーヌと……」
「カマルだ」
「カマルの決闘を始める。ルールは
相手が死ぬまで
他のものに手を出さない。
死んだ後はその者が持っていたものは勝者のものとする
コレで構わないか?」
2人とも頷く。
「よし、では始め」
カマルが先制してきた。先ほど見せた槍を地面についてその長い体を鞭の様にしならせて遠距離攻撃だ。
ロクサーヌは上体をのけぞらせてその攻撃が来るのがわかっていた様に避けた。
その状態のまま尻尾で何度となく連続攻撃をするも全てかわされる。ロクサーヌが反撃しない所を見ると剣を巻き取られるのかもしれない。
どんどんと近づいてくる。
「貴様は急に現れたと思ったらヒシャーム様は何かに取り憑かれた様にあなたと結婚すると急に言い出した」
と連続攻撃中にカマルは話し始める。
「私はヒシャーム様の妻になるため全身全霊を捧げていた……それが急に現れたあなたと……ふざけるな!!」
もうすでに槍が届く所までロクサーヌは間合いを詰めている。
カマルも槍での攻撃に切り替えるが、ロクサーヌはパリィでそれを避ける。
ロクサーヌは、それについて何も言い返さない
「お前はヒシャーム様に何をしたんだ!!なぜお前なんだ」
渾身の一撃を込めて槍の攻撃を入れるが
ロクサーヌはそれを避けるとその槍を掴んだ。
その槍を引こうにも全く動かない。
「それは、あなたの事がヒシャームは好きだったから」
「ふざけるなぁぁぁぁ」とカマルは手から槍を離すと
ロクサーヌはそのパンチも避け、エストックでカマルを切った。いや切られにいったのか……
カマルは泣いていた。もっといろんな方法があるだろうけど、魔王の眷属になってしまった今、元の姿に戻ることは出来ない。
自分の浅はかさと最後までヒシャームのことを信じきれなかった自分を悔やんだ。ただただ自分は捨てられただけなんだと思っていたから。
カマルは倒れると、「今のは嘘だ。嘘と言え」
「いえ、本当です。最後にもらった手紙にも書いてありました。カマルを巻き込んですまないと、どうでもいいと思っている事を最後の手紙に書いたりはしない」
「嘘だ!そんなの嘘だ。うううっ
……それ、本当なのか?
だとしたら、わたしはなんて……なんて事をしてしまったのだ……
なんて事をしてしまったんだ……」
カマルは持っていた短剣で自らを刺した。
カマルは泣きながら自分の今までしてきた事を悔やんだ
「私は……私はお前の母親……」と言ったところで
ロクサーヌはそれ以上話さなくて良いと
「もうそれ以上はいいわ。あの世でヒシャームと楽しく過ごして」
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
すると、ギルタブルルの1匹が近づいてきてカマルの体をハサミで突き刺した。
エマはその魔物に驚き最後のギルタブルルを切った。
ギルタブルルも切って絶命すると、狼人族に戻った。
「いいの。彼女達は私の侍女だったの無理やりここに連れてきて同じ様に眷属にしてもらった。彼女達は本心でここにきたわけではないわ。無理やり……全て私が……」
ゴフゴフッと血を吐きながら答える。
「魔王のことは何か知っているか?」と俺が聞くと
「魔王のことは私もよくわからないの。いつかロクサーヌに復讐できるなら眷属になっただけだから。
でも……目玉の悪魔みたいのが魔王を誘導していた様に見えた。その目玉が魔法とか使っていたわ。その目玉は自分の事を食えって魔王に言っていたわ。意味はよくわからない……」
途切れ途切れだがちゃんと答えてくれた。
「私がわかるのはそれくらい。ロクサーヌ、悪かったわ。じゃあね」と軽く言うとカマルは息を引き取った。
死ぬと彼女は元の狼人族の体に戻った。
ロクサーヌには
一瞬ヒシャームがカマルの手を取った様に見えた。
「そもそもあなたが勝手にやるから悪いのよ」とヒシャームの事を小声で言った。
カマルを地面に置いた。
外も決着がつきそうだった。あとは掃討戦へと移行する。
俺達も少し休もう……
と謁見の間でそのまま座った。
ロクサーヌは、狼人族の姿に戻った母の姿を見て自分で切ったクビを抱えて泣いていた。
「お母さんごめんね。なるべく痛くない様にしたけど……もっと一緒にいたかったよ」と泣きながらロクサーヌは亡骸に訴えていた。
「お母さんも辛かったよね……」
と首を抱えていた。ロクサーヌの身体は血だらけになるもロクサーヌは気にしなかった。
俺はロクサーヌの肩に手を添えて
「ロクサーヌ、ちゃんと埋葬してあげよう」
「はい」
俺たちは一旦家に帰ってロクサーヌの母とカマルを埋葬した。
鬼人族達には
掃討戦終了後には死体をこのままにすると病気が発生しそうなので、1箇所に集めて死体を焼く様に指示した。
源次郎の死体は鬼人族のリーダーが見て
「源次郎ではないか?」と聞いて来たので、
エマが「ああそうだ」と答えると
「こいつも鬼人族です。我々は地下に潜っておりましたが、彼は1人外に出ると言って村から出て行った者です」
「はぁ?」
「では同じ部族?」
「はい。こんな所で……」
エマはリーダーと長老に
「そうか……彼から巻き物を渡された」
と言うとエマはそれを取り出した
鬼人族のリーダーと長老が見ても全く読めないと言われた。
「そもそも私たちが書いた者ではありません」
「誰が?なんで源次郎は最後にコレを私に渡した?」
「それは私たちにはわかりません……なのでそれはエマ様がお持ちください」
「そうか……いつか読める様になる日が来るのか?」
…………
少し前。
移動中の魔王ユウヤは目を開ける。
「ゼロが死んだ」
とナジュドとバシルに告げた
「えっ?どう言う事でしょうか?」
「そのまんまの意味だ」
「ではノボルチェスクで何かあったと……」
「その様だ。眷属にした冒険者達も皆死んでいる。なので暗殺などではなく、壊滅させられたと見るべきだな……
転進せよリセリカを再度侵攻する。」
「はっ」
「ノボルチェスクが落ちたと言うことは戻るメリットがない。
まだ数的有利もある。疲弊したリセリカを落とす方が楽だ」
と言っても魔王軍はほぼ全部を移動させているので、転進といってもそんなに簡単には出来ず鈍足であることには変わりない。
「追いかけている奴らに6時間ほどでぶつかります。その頃には既に暗くなりますがどうしますか?」
「俺たちは夜目が効く。奴らは夜の戦闘は慣れていないはずだ。」
…………
本国に一旦戻っていた俺たちはノボルチェスクに戻ってくると
フィーネからESPで連絡を受ける
(ミチオ様、魔王軍はどう言うわけか、急に転進をして連合軍の方へと向かっております。このままいけば4時間後には接敵すると思います)
(ノボルチェスクが落ちたのを知ったと言うことか?)
(わかりません。向こうも自分たちの動きを知られているのを不思議に思っているかもしれませんが、相手もなんらかの方法で我々の動きを察知していると思われます)
(夜戦になると言うことか?)
(どうでしょうか……コボルトやワーウルフは夜でも戦闘ができますが我々は暗闇では戦闘できません)
確かにこの世界の夜は闇になる。
真っ暗闇では戦闘にならない……
(夜戦の場合バードゴーレムは機能するのか?)
(すみません夜は……見えません。今後改装しないとですね)
(わかった。フィーネありがとう。ロージーはどうした?)
(ロージーならゴーレムの操作をしてました)
(えっ?あの5体の中に?)
(はい。ご存知かと……申し訳ありません)
(いや良いんだよ。じゃあまた交代で頼むよ)
(はい気をつけてください)
ロクサーヌとエマにその事を伝えた。
ロクサーヌは「彼らが眷属だからでしょうか?死んだことはもしかしたら察知できるのかもしれません」と言ってきた。
なるほどそれならゼロとカマルが死んだ事がわかったのならノボルチェスクはやられたと思うかもしれない……
「いずれにせよ連合軍に早く合流したほうがいいな」とエマ
城ではコモン地図を出して相談する。
「連合軍はムエバズガを過ぎたところにいるだろう。
そして魔王軍はセガラの手前にいるとのことだったそこを反転して連合軍と戦う様だ。」
「今から連絡してその場で陣地を作ってもらう方がいいだろう。連絡だけならできるのだろ?」とエマが答える
「ああ。だが俺たちが行くとなったら今日朝別れたあの場所しかないからあそこから馬で移動になるな」
「3時間程かかるだろうな」
ロクサーヌが「ギリギリですね」と答えた。
「確かに。まさか転進するとは思っていなかったからな」
フィールドウォークは現在ここでは使えない。ワープを使えるのは今は俺1人だけだ……だから俺が行った事があるところにしかいけない
「しかも、また転進しないとも言えないしな……」とエマはボソッと言う。
確かにそれでは挟撃の意味がなくなり、ただの戦力の分散でしかない。ただコレから合流しても、またノボルチェスクの城が取られるだけになってしまうかもしれない。それでは今日の戦闘は無駄になってしまう。
戦力は依然魔王軍の方が大きい。ただその分鈍足で補給も必要なはずだ。だからここで一気に決めたいが焦っても何もいい事が無い。
「んーーん」
時間はないのに……
と気持ちが焦る……
みんな同じ事を考えていた。
エマが「いっそノボルチェスクの城が無ければいいんじゃないか?」
俺はエマのジョーダンみたいに言ったのを聞いて思い出した。
「それだ!!」
「は?」
「ノボルチェスクの城を持っていけばいいんだ」
「ああなるほどなぁ……ってどうやって持っていくんだよ」
「えっ?ほら前に一回やった事あるだろ?」
ってその時はミリアしか見ていなかった……
俺達は外に出て
ノボルチェスクの城を「アイテム」の魔法で小さくすると
そこからネズミやらゴキブリが大量に出てきたのには驚いたがなんとか小さくする事ができた。
当然みんなから悲鳴が聞こえたが……
「よし、じゃあ行こう。ロクサーヌ……どうする来れるか?」
「もちろんです」
と小さく答えた。
ロクサーヌは母の事そして連戦疲労はもちろんあるだろうが、彼女はミチオに着いて行くと言う信念は曲げなかった。
鬼人族のみんなには森の要塞に戻ってもらいここで待機してもらうことにした。
そして俺たち旅団はみんなでムエバズガまでワープして戻り「マウント」の魔法で各々馬を出して走り出す。
既にエステルは行軍を中止して敵を迎える用意をしているはずだ
冬のこの時期は日が落ちるのが早い。既に西の空は少し赤くなっている……
俺たち旅団はその平原を駆けていく。
そんな時だ、1人馬に乗ってこちらに近づいているものがいる。
その姿を見て驚かなかったものはいなかった。
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