早朝、もう屋根も朽ちて使われていない古城の中で北海の荒波を見ながらランドルはタバコを吸い自分の部下の帰りを待っていた。
襲撃部隊も今日中には戻って来るであろう。
厚い雲と強い風で全く休まる気候ではないがランドルはそれでも外で待っていた。
ランドルは「だれだぁ?」と気怠く言うと、
俺は物陰から出て対峙する。当然会話ができる程度の距離だが戦闘できるほどではない。
「お前がここにいると言う事はみんなお前にやられたのか……あいつらがここの話をするとは思えないが、どんな手を使ったんだ?しかもここは帝国領だぞ?」
「もちろんわかっている。皇帝陛下からちゃんと許可もとっている。お前の目的の半分はもう達成しただろ?」
「くっ……なら一つ聞きたい。シモンはどうした?ハインツと一緒にいたはずだ」
エマが到着して「もう終わったぞ……ああ後はランドルか……」
エマが俺の代わりに答えてくれた「私はみてないけどシモンは爆発してインテリジェンスカードも残んなかったそうだ」
ロクサーヌが現れ「エマに誰が教えたの?ミチオ様との決闘で粉々になったのを私はみたわ。だから報告がないだけ。さぁ決闘でしょ?ここは私が!!」
「いやいやロクサーヌみたいな怪力がやったらこいつも粉々になってしまうだろ?人間ぽいのは私がするって決めてたじゃん」とエマ
「そんなの決めてない!!」
と睨み合っている。
「お前はこないだ魔王とやっただろ?」
「あれはみんなで戦ってトドメを刺しただけ!」
「ほら、蛇女とも戦ったじゃん?」
「あなただって源次郎とか訳のわからない男とイチャイチャしていたでしょ?」
「イチャイチャではないだろうが!!」
「お前ら舐めすぎだろ?まとめてでもいいぜ」とランドルが言うが「「お前は黙ってろ!!」」と2人は揃って言う。
その後ろから
「姉さんがた今回は私に譲って貰えませんか?」
とメーアが頭を下げている。
ロクサーヌが「んん……前から言ってたしね。メーアなら仕方ない譲るわ」
「フン、そうだな……ただし絶対負けんなよ!負けたらぶっ飛ばすからな」とエマも笑顔でいう。
いや負けたら死んじゃうからぶっ飛ばすとかないだろとは思ったがそんな風に言ったら野暮だろう。彼女なりの愛情表現してるのだろう。
ロクサーヌが「こんなのにメーアが負けるはずないでしょう?」とエマをバカにしている。
「ランドル!私が相手する事なりました」
「まったく……舐められているな。容赦はしないぞ」
とランドルは槍を構える。ランドルはメーアがどんな相手かはまだ知らない。
メーアも独特な守りの構えで応戦する。
「行くぞ!!」というとランドルは攻撃を始める
カンカンカン!カンカンカンカンカン!!
ランドルは回り込みながら槍の連続攻撃を何度もするがその大剣に阻まれる。
攻撃スピードは速くメーアは攻撃に転じることができなかった。
だがそれは逆にランドルもまた攻めあぐねいていた。
「メーア!それじゃおわんないぞー!」とエマもチャチャを入れる
エマの言う事は耳に入っていないかのようにランドルの攻撃を受け続ける。ハードな連続攻撃でランドルもずっと同じペースで攻撃ができるわけではない。
少しスピードが落ちてきたところで、メーアは間を詰めて攻撃に転じる。
が、同じ中距離武器が主体の術者メーアの大剣もリーチの長さからとても超接近戦に強いわけではない。
一瞬攻撃が甘くなった所を一気に攻撃しようとすると、
メーアが大きく振りかぶったところをランドルは槍を片手にもう片方の腕でショートソードを使い水平に振るうとメーアの脇腹を捉えた。
「グッ」
メーアの脇腹から血が出て来る。
「メーア!!」俺が叫び前に出ようとするとエマに止められた。
「まだ傷は浅い。あれで手助けされたら一生言われますよ」とエマは冷静に判断している。
また間を取るとランドルは槍での攻撃を再開する
同じ事の繰り返しだ。懐に入るとショートソードで攻撃される。
「奴は槍術の達人だ。『虚実皮膜』を使え!!」
とエマが言うとメーアは防御の構えを解いた
「虚実?なんだそれは?」と俺がエマに聞くと
「あいつはスピードよりもパワーですから……こっちの方が効果的です。見てればわかりますよ」
とエマがニヤリと笑うと
ランドルは「もう防御はやめるのか?」
と言った瞬間ランドルは後ろに飛び退いた。
ランドルは攻撃が来ていないのに何故か後ろに下がった。
何度も体を動かして何かを避けるような仕草をする。
そしてメーアはそれほど早いスピードではないのに奴に攻撃が入り、ランドルも困惑している。
「彼は達人ですが目からの情報に偏っています。だからメーアの筋肉の動きや目の動かし方で次の攻撃を予測できるのでしょう。だからそれをワザとずらすと攻撃がくると勝手に体が動いてしまい、逆にそれを無くすと攻撃の予測が不可能になって攻撃が当たるようになりましたが、どれも浅くフィニッシュブローが得意なメーアには決め手にはなりませんがフェイントに使えば戦いやすくなったはずです」
「このアマ!俺のこと知っているようなそぶりだったな」
「ああ、知っている!!私の家族を殺した男として」
「フン……そんなの一杯いすぎてわからんわ」
「その槍が泣いているぞ。こんなことをしていて何になる?いつか自分がやられる番が回ってくるだけだぞ」
と冷静にメーアがランドルに言う。
「ああ、あのジジイの娘か……」
「そうだ。今日お前にその番が回って来る」
「チッ復讐か?笑わせるな。俺はお前に負けない」
ランドルは緩急を付けながら攻撃して来る。メーアも虚実を使うが打撃戦になってランドルの方がリーチが長い分有利だった。
少しづつお互いの攻撃が入るようになる。
ただこのままではメーアはジリ貧である。
俺はエマに「遠距離攻撃の方法はないのか?」
「メーアはため技と超接近戦のパワータイプが得意なので弓しか遠距離攻撃方法がありません」
だがそんな装備を持ち変えるなんて事はできないし……
俺はアクセサリー6『絆の指輪』をBPで出すと
メーアのスキル素養を確認した。
「エマ?メーアに紫電一閃を教えたことあるのか?」
「はい。しつこく言うので教えましたが会得はしていないと思います」
余って使われていないポイントを紫電一閃に入れた。
俺は大声で「メーア紫電一閃をつかえ!!」
エマは「何言ってるんですか?さっきできないと……」
「いいから使え!!」
メーアへ少し頷いた。
「なんだ必殺技があるのか?」
それだけでもどんな必殺技かわからないランドルは警戒を始める。エマはこれが狙いか?と思っていた。
激しい攻防戦は少しランドルが引くことで、緩やかになった。
俺はさらにクイックもスキル素養にあったのでそれにポイントを入れた。
「クイックを使ってもっと接近しろ!!」
と俺が言うと使ったことのないスキルを言われるのでメーアは困惑するが
「紫電一閃」とメーアはエマに習った通りにやるが今までうまくいった事はなかったが、なんと真空刃がランドルに飛んでいく。
「なに?!」慌ててランドルは体を傾けそれを避けたが、「クイック」を使ってメーアの動きとは思えないスピードで近づき
「アサシンピアーズ!!」とメーアが言うと
奴の腕にヒットした。
ランドルは転がりその腕を見ると血が出て身代わりのミサンガもキレていた。
「え゛え゛っ!!」エマはいきなり本番でできて驚いている。
俺はエマに「あいつは一体いくつのスキル素養を持ってるんだよ」
と漏らすと「なんですかそれは?」
とエマは俺が勝手にやっているのを知らなかったらしいので慌てて口籠る。
「だがこれで距離的優位が無くなったな」と俺は話題を逸らした。
「また陰でコソコソと…」とエマもニヤリと笑いながら答えた
あまり離れすぎるとメーアの方が有利なるのでランドルは中距離よりもさらに短めにポジションを置く。
ランドルは力技で押し切ろうとしてもメーアにパワーで勝てるはずもなく弾き飛ばされる。
「クイック」メーアは一気に距離を詰めるとランドルはショートソードで手数の速さで勝負するが虚実皮膜を使ってメーアにうまく攻撃ができない。
あまり近づくとメーアは体当たりで激突してきた。
「クッ!」ランドルは少しづつ追い詰められていく。ランドルは全身から汗が出て先ほどの攻撃で槍を持つ手にも力は入らない。
後ろはすでに崖の所まで追い詰めていた。いつも圧倒的な数的有利があったから一騎打ちでも勝てていた……
コイツの親父の時もそうだった。周りに味方がいたから勝てたのかもしれない。
急にランドルは両膝をつき
「俺には妻も子もいるんだ。助けてくれ」と小声で言う
「私が助けたところで帝国兵に捕まって極刑だぞ」
「あんたさえ黙っていてくれればやられたふりをして逃げる」
大剣の刃をランドルに突きつけ
「見苦しいぞ」
「頼む」
「こんなくだらない奴のために私は血が滲むような戦いの中に身を置いていたのかと思うと情けなくなる」
と剣を引いてメーアは鞘に収めると振り返って
「勝手に死ねばいい」
と捨て台詞を言うと振り返って俺の方に帰って来るようだった。
ランドルは後ろからショートソードで頭を狙って振りかぶった。
メーアは
「哀れだな」とクイックとアクセルブーストを使って奴の胴体と下半身を真っ二つにした。
ランドルの視界は急に思わぬ方向に倒れる。
切られたのが気がつかないままだった。
「お前はそう言うことを平気でやる奴だよ。嘘をついてここで逃してもまた同じ事を繰り返し不幸を連鎖させるだけだ。あの世で悔め」
とメーアは非情に答えた。
マキシム達が兵隊を遅れて来ると
マキシムからここのことをメーアに知らされた。
「元々ここは小国でこの島を統治していたのがランドルの父だったらしいが、島を守るためとはいえ海賊まがいのことをして、帝国の船を拿捕したりして金品の強奪を繰り返してきたところで、今のビルント領主がこの一帯を統治してビルント領を拝領された経緯がある。
息子のマクガイヤーを騙してこの島の統治を入れ替わって他国に戦争を仕掛ければビルント領は取り潰しになり奪爵。
それを狙っていたんだろう。」
「だから海賊行為を?」
「まぁ元々の資質もあるのだろうが、昔からやってる事は変わらないが父親はあくまでこの島を守るためにしてきたがランドルはあくまで自分の為にやってきたことだから同情はできない」とマキシムは俺に教えてくれた。
俺たちはすでに完全にここを掌握していたが置き去りにされた者もいた。
宝物庫もそのままになっていた。城の地下には巨大な洞窟と繋がっており、そこには入江が作られていた。
宝物庫にはお金はあまり残っておらず金貨が500枚程度あって後は物が多かった。ただ、族長の金の首飾りをメーアが見つけた。
「これは……」
「ああ、持ち主がわかっている物だったらそれは君のものだ」と俺が言うと泣きながらそれを抱きしめた。
俺はそれをメーアにつけてあげた。
鑑定としたがマジックアイテムのようだ。
族長の首飾り
腕力 小上昇 精神力 小上昇 魅力 小上昇
能力的にはそれほど高くなくとも、メーアにはそれ以上のものがある。
メーアによく似合っている。
地下の洞窟が海賊のアジトだったようだ。カラック船が2隻停まっていた。居住区もありそこには奴隷として連れてこられた者、略奪で連れてこられたものも一緒に生活させられていたようだ。
多くの海賊はここに住みここでの生活に満足していたのか、ここで世帯を持つものもいたようだ。
マキシムはこれらの人達に出身地を聞いて帰れる者は返すように計らった。
帰れない者、または帰る場所がないものについては、帝都に連れて行くことになった。
その中に1人2歳くらいの子供もいた。
連れていた女が言うにはランドルの子供だそうだ。
母親の所在を聞いたところ自殺してこの子は身寄りがないから仕方なく私が面倒を見ていたと言うことだった。
帝都に連れて行かれるなら私は面倒を見れないと言われ、
メーアはまさか本当に奴に子供がいるとは思わなかった。
「私が育てる」とメーアが言ってきた。
「メーアが?」と俺が言うと
ロクサーヌは「ではパーティを抜けると言うことですか?」とすかさず聞いて来る。
「うーん」と考えたが
「いずれにしてもコイツを食わせるためにはミチオ様のところで世話になりたい」
俺は「この子に自分が父親を倒したことを言うのか?そしてまた復讐の連鎖を続けるのか?」
「それはわからないが負ける気もないし、話してそれでさようならならそれでも仕方ないと思う。コイツが決めればいい事。でもあの島は男子禁制。この子が10歳になったら私はこの子と旅に出たい、そんなわがままを許してくれるか?」
ロクサーヌは「確かに勝手ですね」と言うが
「でも、メーアが決めた事なら、それならそれで私は構わないです」
「じゃあ決まりだな」とエマがその子を拾い上げるとメーアに渡した。
「名前は?」
「メーアが決めていいんじゃないか?」
「私が?」
「だって、他の奴に聞いても構わないが、もうメーアが育てるならメーアが名前つけていいんじゃないか?」
「そうか?じゃあ……チータ。チータがいい」
「チータ?この子は人族だぞ?」
「別に構わない」
「まぁいいんじゃないか?メーアとチータ悪くないと思う」
「よし!じゃあ今日からお前はチータだ」
鑑定すれば本当の名前がわかるのかもしれないが、メーアがそう決めたのならそれでいい。