俺達は我が家に帰ってくるとアーダが既にダイニングホールで俺たちの帰りを待っていた。
「ミチオ様お疲れ様でした。」リタとアーダは声をそろえる様に俺に言ってくる。
「アーダどうした?昨日のカレーの件で何かわかったのか?」
昨日カレーが食べたくなってこの異世界での香辛料がわからないのでアーダにカレーについて調べてもらった。
「何かわかったのかと聞かれると困るのですが、実はアチラから声をかけられました」
「うん?どう言う意味?」
「私も今日知ったのですが実はカレー財団というものがありまして、あちこちにカレーという食べ物を探していると商人に触れ回っていたらアチラの方からお声がけいただいたのですが……」
「そうなんだ。それでどうしたの?」
「ここに連れてくるわけにはいかずレティシア様の執務室でお待ちです」
「そのカレー財団の人が?」
「はい。今レティシア様とヴィラント将軍でカレー財団の方とお話中です。できるだけ早く来ていただけないでしょうか?」
「うん?どういう事?」
アーダはちょっと慌てた様子で俺に言う。
「ロクサーヌ、セリー、一緒に来てもらえるか?」
「はい」
と短く返事するとアーダに連れられてレティシアの元に向かった
アーダがレティシアの執務室の扉をノックする。
「アーダです。ミチオ様をお連れしました」
と言うとアーダは扉を開けた。
その光景はちょっと異質だった。
レティシアとヴィラント将軍はもちろんのこと香辛料の匂いがする濃い顔の人達が全身黒尽くめのスーツに似た服を着た男達が20人はいるだろうか?
こんなに多くの人間がこの部屋にいるとは思わなかった。
ソファーにも3人座っていた
対面にレティシアとヴィラントが座っていたがお茶が出ていたがソファーに座っているもの達はそれに手をつけている様子はなかった
「ミチオ様こちらに」とレティシアがソファーの中央に俺を招く
「えっと、私がミチオだ。一応国王をしている」
相手も立ち上がり、全員一礼する。
「私達はカレー財団の者で代表のカランという者です。こちらがサミールとマヤンクです」彼は両隣に座っていた二人も紹介する。
ロクサーヌが「ロクサーヌです」「セリーです」と二人も挨拶を済ませる。
「で、どうしていきなりこんな人数で来たのか知りたいのですが……」
「はい私達は先祖から守ってきている物があります。それをミチオ様に見ていただきたく持ってきました」
頑丈な小さな宝箱を取り出した。
そして、厳重に管理された二つの鍵を両隣の二人が1本づつ持ち出して同時に回す。
その宝箱を開けようとした瞬間
ロクサーヌが横から剣を宝箱に突きつける。
「罠である可能性はありませんか?」と3人に問いかける。
「これは申し訳ありません。私たちも初めてのことなので……」
レティシアがその宝箱を見聞することになった。
宝箱はレティシアに向けて開けられた宝箱には一冊の本が入っていた。
「本が一冊入ってます」
レティシアはそれを取り出して俺に渡す。かなり立派な表表紙だった
俺はそのページを1ページ目をめくる。
出だしから「ヤッホーごめんねーいきなり日本語驚くよねー」と日本語で書かれていた。
なんだこの軽い感じは?表表紙の厳格な感じとは真逆の軽い文章だったが、他のみんなには全くこの本を読めない様だった。
黒装束のみんなは「ミチオ様、これを読む事ができますか?」と恐る恐る聞く。
「ああ、一応読めるよ」
「最初のページにはなんて書いてあるのですか?」
そのまま言わないほうがいい様に感じた。
「この本を読める人に送る」と書いてあるかな。
「やはり伝承は間違っていなかった」3人は顔を見合わせて喜ぶ
「えん?伝承とは?」
「いつか、カレーと言うものを探す者が現れる。だからその者にこの本を見てもらうように言われています。なのでわかる人にはわかる様に我々もカレー財団と名乗っています」
「あっ……そうなんだ」
昔日本から来た人物が書いたんだろうな。
「ちょっと読んでみていいかい?」
隣でセリーが一緒に見ているがセリーにも全く理解できない様だった。
まぁそりゃそうだろ
何ページか読むとある程度わかった。
この本を書いたのはタマエさんと言う方で、自分は勇者にはならずにここの人たちの生活を向上させるために色んな事を教えたがそれが後世までちゃんと伝わっているか心配で本にして残したのだが、シッダールトという人物にこの本を託した。シッダールトは几帳面で大袈裟な人なのでどんな風に私が伝わっているかが心配。
きっと日本人なら絶対カレーが食べたくなるだろうと用意したタマエスペシャルカレーのレシピを使ってほしい。と書いてあった。
そしてその本にはタマエさんが覚えていた料理やこちらの具材を使った創作料理、錬金、薬などがたくさん書かれていた。
「それでこれにはなんと書いてあるのでしょうか?もしよかったら教えていただけないでしょうか?」
うーーーんそのまま伝えていいのだろうか?
俺が変に曲解てし伝えて後で拗れると困るので、
嘘をつかない程度に
「タマエさんという方がシッダールトという人物にカレーと言う食べ物のレシピを伝えたく、この本を預けた」みたいな事が書いてある。
うん間違っていない……
「タマエ……シッダールト……」「うおおぉーーー!!」ここにいた黒装束の男達はみんなで大声をあげる
「シッダールトはカレー財団の創始者でタマエは使徒と言われています」
「あっそうなんだ……みんなわかるんだね」
「もしや、ミチオ様にはこのレシピが読めるのですか?」
「ああ、読めるよ……」と読んであげると
「それならすぐに用意できます。」と黒装束の男達は俺に伝える。
「じゃあ俺がこの本通りに作ろうか?」
と言うと「本当ですか?」と目が見開きながら俺に聞く。
リタを呼んでもらい大型の鍋を用意してもらった。
流石に俺の家に呼ぶわけにはいかないのでリタをこちらに呼んでこちらの官邸で作ることになった。
ほとんどの作業はリタが手伝ってくれる。リタも嬉しそうにそのレシピのメモを取りながら進めてくれた。
「この本を貸してくれるか?」と聞いたところ、
紛失されると困ると言うことで
「お貸しすることはできませんが、今読む分には問題ありません」
作っている途中の煮込んでいる間に
食事前に全て読むことにして、レシピの多くを書き出した。
俺のよく知らないタイ料理や中華料理が中心の様な気がした。デザートも多く書いてあった。
そして最後には自分の出生や生まれた場所、住んでいた場所
最後、自分は死んだら故郷に帰れるかどうかなどの心配ごとも書いてあった。
彼女は「同人誌」をずっと書いている女性だったらしいが気がついたらこの世界に来ていた。いきなり盗賊が街を襲ってきたが私が戦えるわけもなくただひたすら逃げるだけだったがこの世界の人に助けられてこの世界になんとか馴染むべく奮闘した旨が書いてあった石鹸や滋養丸、ハーブティーなど生活上で特に衛生面の事が多く書かれており、入浴の必要性を解いた本も出しているらしい。
黒装束の男達にタマエという人物を教えてほしいと頼むが、彼らも実際には会った事がないが伝承では疫病を防いでくれたり沢山の食料を分け与えて飢えと病気から守ってくれた。多くの貧しい人達を救ってくれた神の使徒だと言うのを教えてくれた。
確かにそれだけ聴いたら使徒や女神と言われても間違いなさそうだけど……
日本語の感じを見ると『いや』そうじゃないかもと思い描いてしまう。
大きな鍋に材料が入れられて十分茹でられたのでタマエスペシャルカレーのスパイスをきちんと測り、量を調整して鍋の中に入れる。
鍋とは別に当然ご飯も炊きあがりが見えてきた。
そして大鍋をゆっくりかき回していると懐かしくそして暴力的な食欲をそそる匂いが充満する。
「なんだこの匂いは……」それは官邸の外にまで匂いが漂っていた。
当然中にいた人達はこの匂いに驚く。もちろんそれはロクサーヌも同じだった。
「すごくいい匂いです」
そろそろ出来上がりが見えてきたので我が家に居るメンバーも全て呼び寄せた。
官邸につくなりこの匂いにみんなは敏感に反応した。
当然今まで嗅いだことのない匂いにミチオが何かを作ったのは一目瞭然であった。
リタは嬉しそうにその大鍋をかき混ぜ水溶き小麦粉を少しずつ入れるととろみが付いてきた。
俺が思い描いていたカレーに近づいてきた。
俺は少し味見をしたが中辛カレーだったので、もしかしたら苦手な人もいるかもしれないと思って急遽コーンスープも作るようにリタに言うと「コーンスープですか?」と不思議そうに聞いてきた
みんなに並んでもらって盛り付けは俺が一つ手本を見せた。
タマエスペシャルカレーはスパイスカレーと言うよりも
むしろ家庭のザ・ニッポンカレーだった。
黒装束の男達は「これは……」
似た料理は見た事があるがカレーライスはもちろん初めて見る。
スプーンを料理につけようとした瞬間
ララが「食事はみんなでいただきますをしてからだよ」とその手を止めた。
男達は何かの儀式があるのかもしれないと思いその手を止めて目の前にあるカレーの匂いを堪能した。
みんなに配り終えて、水をいつもよりも多く配った。
なぜ水がいつもより多く配られたのかは皆わからなかったが、
俺が説明した。
「この食事は今まで嗅いだこともなければ見たこともないと思う。この料理は少し辛いので辛かったら無理せず水を飲み、それでも食べれそうになかったらコーンスープと一緒に食べると少し辛味も和らぐと思うが、慣れてくるとこの辛さがとても美味しく感じるようになる。ぜひみんな一旦食べてみてくれ」
ミチオが食べる前にそのような説明をしたのは初めてだったので
みんな少し緊張気味にカレーを見つめる。ララも「匂いは最高だ」
と絶賛。
俺が「いただきます」と言うとみんなで「いただきます」と唱和
みんな俺の食べ方を見ている。
ライスとカレーを混ぜるのではなくスプーンの上に半分半分のせて
口に運ぶ
俺はいろんな思い出が走馬灯のように思い出される。
みんなもそれを見て食べ方を学んだ。
やはりみんなはその辛さに驚いた。
すぐ水を飲む者もいれば「スパイシーで美味しい」と言う者もいた。
当然黒装束の男達はスパイスに慣れているのか辛いと言うものはいなかったがなぜか涙を流しながら食べている。
「どうした?」と声をかけるも
「いえ、これが伝承のカレーライスというものですか……素晴らしいです」
と泣きながら答えている。
セリーは隣で見ていて、「私はもっと辛くても良さそうです」と冷静に意見を言っていたのが対称的で面白かった。
俺も久しぶりのカレーに手が震える。「いやこれ最高だわ」
久しぶりに食べたカレーは本当に美味しかった。
リタに「またこれ作れる?」と聞いたら「問題ありません」とたくましい返事をもらった。
食べ終わるとカレー財団の皆さんは感動していた。
「今日はありがとうございます。私たちはそもそもあの本を読める方にお手伝いをするように言われています。私達の商家はカッシームにありますが国に属しているというよりもこのカレー財団のこの本を信じています。
何かお困りの事がありましたらご連絡ください」
「わかった。俺たちも本当に会えてよかったよ。こんなにスムーズにカレーが作れたのは奇跡でしかない」
黒装束の男は一人の女性を目の前に立たせた
「こちらはインディラ。彼女もまた料理の勉強をしている。10年ミチオ様のところでメイドとして働かせていただけないか?」と言ってきた。
それを聞いていたルティナが
「うちの家に?そんな事したらインディラが食べられちゃうよ」
とふざけ半分で答える。
男は「タダとは言わない。もちろんその準備も覚悟もできている」
リタはむしろルティナを見ている。ルティナへそれを見て驚いている。
レティシアはそれを聞いて「そのためには奴隷契約が必要です。ここで見聞きしたことを外に漏らされては困りますから」
と言うと「もちろんです」と答えた。
俺は「リタは?」と聞くと
「はい。不安な所はありますが、私の知らない香辛料もあるとは思います。そして料理の事をお互い見聞できればと私は思っています」
「ロクサーヌは?」
「メイドで怪しいのはいっぱいいますから今更一人増えても問題ありません」まぁロクサーヌはイリジウム公の娘リュドラの事を言っているのだろう。
「わかった。じゃ彼女はこちらで預からせてもらうよ。何かお願いしたい事があったら彼女を介して連絡するでいいかな?」と聞くと
「はい。そのようにしていただければと思います」
財団の人達はインディラに「よろしく頼むぞ」と念を押すと
「はい。がんばります」と返事をしていた。
彼女はリタに任せて明日から食事の給仕をしてもらうことにした。
思わぬ所でサクッとカレーをゲットする事ができた。
そして何よりタマエさんと言う初めての日本人女性の名前が出てきたがすでに亡くなっている可能性、そして彼女の人生はどうなったのかは不明である。
他にもいろんなレシピを得る事ができた。
その中でもアイスクリームは楽しみが増えた。
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