歓楽街、と一言で表するとしても、その性質は種々多彩である。その土地柄や風土の延長線上に発生した在り方、とでも言うべきであろうか。
例えば、長年エレボニアとカルバートという2つの大国に翻弄され続けてきたクロスベル自治州に存在する歓楽街。人によっては存在そのものに否定的、懐疑的な者も多少なりとも存在するものだが、クロスベルにおいては彼等が最も誇るべきものの一つ、炎の舞姫イリア・プラティエを擁する劇団アルカンシェルが歓楽街に劇場を構え、観光に訪れたのであれば必ず足を運ぶべき最大の観光名所と言うべき絶大な支持と存在感を示している。
例えば、エレボニア帝国の西部の渓谷に位置するラクウェル。帝国において賭博を心ゆくまで愉しもうと思う人物にとって、この地はまさに聖地と称するに値するだけの規模と熱量を有する拝金の夜城である。たった一晩で天国に至るか地獄へ転げ落ちるか、そのスリルと熱狂を求める者たちは常に後をたたない。
それは人の欲望を忠実に反映し、決して切り離せない業を生業として成り立たせる、ある種の日陰であり、同時に熾火の如き熱量を孕む場所。清らかなる太陽の光に照らされたその足元には、必ず影が落ちるとの同じく、必要悪、とでも称すべきものである。
とはいえ、ただただ無秩序に肥大化するに任せるのではなく、大抵の場合はルールを自ら定め、それを決して逸脱しないように他ならぬ其処で生業を構える者たちが、互いに互いを律する。歓楽街が欲望の受け皿であり写し鏡であるとしても、そこには決して踏み越えてはならない一線というものが確かに存在するからだ。
言うなれば日陰に生きる者達ですら、その存在を許容しかねる業――人の抱える欲望が、より醜悪に、より汚怪に凝り固まったそれらは、即ち薬物、人身売買を筆頭とする、人が社会を営むにあたって決して踏み越えてはならないと定めたルールを、容易く超越した代物だ。
当然ながら、これらは忌むべきものであり、駆逐されるべきものとして定義される。歓楽街という形で許容される欲望が、秩序の内に構築された混沌であるとするならば、其処にすら存在を赦されない諸々とは、触れるものを穢し澱ませる腐海の坩堝に他ならない。
だが、それでもそれらが人の欲望より産まれ落ちるものであるという現実には変わりなく、そうである以上、決して駆逐する事の叶わぬ闇でもある。つまりは――それらを許容する、許容される忌むべき暗部としての歓楽街、というものが、何処かに形成されてしまうのだ。
そしてこの何処にあるとも定かならぬ街もその一つであり、表向きはどうという事もない、大都市圏の流通経路上に存在する中継地点としての都市であり、特に観光資源もない場所である。しかしながら、その裏の顔は――ゼムリア大陸のそこかしこから爪弾きにされ、存在を否定された罪業が凝り固まった、汚濁の街。
盗品、非合法の薬物、人の尊厳――凡そ、手に入らぬものはない、とまで囁かれるその場所で。
「はい、コレが依頼の品――グノーシス…って言っても分かんないわよね。まぁ、ヤバーい薬の生成の過程で生まれた副産物の媚薬『アスタロト』よ。錠剤の半分も飲ませれば、処女でも頭パーになるくらい乱れまくるって代物で、もちろん効果の程はバッチリ!なんたってあたしが自分で試したんだから……すっごかったわよ♥ そこらのチンピラ相手なのに、チンポ欲しさに生ハメおねだりしちゃうくらいのブッ飛び具合だったんだから♥」
からからと微笑む。
何時もなら太陽のように明るいその表情は、淫靡な妖艶さに蝕まれ染まった女の、牝の艷麗さを宿し。
活動的にコーディネイトされた服装は、健康的に引き締まった臍周りの腹部ばかりか、その上の豊満そのものの乳肉の下部まで艶かしくくっきりと外部に晒し。細く括れた腰回りから続く豊かな肉付きを隠そうともしない曲線を描く尻肉と太腿を、申し訳程度に覆い隠しただけのスカートで遮っただけ。
己という牝の肢体を、惜しげもなく周囲に晒しながら、非合法の薬物が入った小袋をひらひらと揺らす、ブラウンの髪をツインテールに結わえた、彼女は。
「それじゃあこれで依頼完了ね。報酬は100万ミラ、だけど――どう、その薬、あたしで試してみない?それなら、半額の50万ミラで良いんだけど……もちろん、避妊なんて無粋なのはナシ♥おじさんのチンポとキンタマの中でグツグツ煮えたぎった、牝を孕ませたいよー、って叫んでる濃厚孕ませザーメン…あたしの子宮にたぁ~っぷり、注ぎ込んでぇ……孕ませてみない?」
「A級遊撃士のエステル・ブライトの孕みたがり生おマンコ♥今なら大特価50万ミラよ、どう、お得でしょ♥」
自身をギラついた雄の欲望を漲らせた視線で舐め回す中年の男を前に。
リベールの誇る《剣聖》カシウス・ブライトの愛娘にして、A級遊撃士のエステル・ブライトは、雄という虫を誘う誘蛾燈の如く、淫猥に微笑んだ――。