ある時、街中で一人の男に呼び掛けられた。
「俺の家に来て欲しい」
そう要求する男の姿には何の見覚えもない。私が人の機微に弱い、という認識を考慮しても男と私を繋げる接点は見当たらなかった。
そして、要求の内容も理解に苦しむ物だ。お金や国の情報ならともかく、どうして私が男の住処に行かなければいけないのだろう。
この男にまともに付き合う必要は無い。私は要求を拒否し、立ち去ろうとした。……少なくとも、その時はそう考えていた。
しかし、私の口から発された言葉は、自分の意思とは全く違う物だった。
「分かったわ」
……どういう訳か、私は男の要求をあっさりと受けてしまったのだ。
男の住処へ到着した私は、まず寝室のベッドに腰掛けさせられる。
男の指示に従う気は無かった。だが身体は私の意に反し、指示通りに動いてしまう。精神操作系の魔法か。それとも兵器か。可能性を模索する私に対し、男は質問を投げ掛ける。
今の私は男の言いなりだ。答える必要は無いというのに、私は素直に答えていった。
名前。ケイブ。年齢。……歳。
身長と体重。159cm、47kg。
スリーサイズ。上から89-57-85。カップ数。F。
彼氏の有無。今まで無し。性経験。ゼロ。自慰の回数。ゼロ。生理の周期…………。
答えていく中で、私の心は羞恥に駆られた。今まで誰にも伝えた事の無い、秘密の数々。口に出すだけでも恥ずかしい、非常にデリケートな部分を、出会って数分の男に喋ってしまっている。
質問が終わると、男は笑顔を浮かべていた。何がこの男を喜ばせるのか……私には分からない。
「ブルマを脱いでオマンコを見せろ」
男の次の指示は、私に驚きと強い羞恥を与えた。
オマンコ。女性にとって非常に大切な生殖器。それを男に見せる事に強い拒否反応が起きる。
男に見せてしまったらどうなるのか。性に疎い私だが、これから起こる行為には容易に予想がついた。
この男が私の初めてになってしまう。確定されたであろう未来に、私の心が拒絶してしまう。
だが、男の言葉は絶対だ。私の拒絶心など何の意味も持たされず、両手をブルマに伸ばす。
両端を摘まんでゆっくりブルマをずり下げ、両脚を通して完全に取り去る。脱いだブルマは隣のシーツに。そして羞恥を押し殺し、私は自ら両脚を大きく広げた。
瞬間、男の視線が股間に固定される。男は息を荒げさせ、私の局部を見始めた。
見せてしまった……自分の局部を、この男に。こうなってしまったら、もう後戻りは出来ない。私は今、何を考えるべきなのか。男との性行為? 妊娠した後の未来? 悲観する私を気にも留めず、男は「綺麗なマンスジだ」と呟いた。
綺麗なマンスジ。その言葉が、私の羞恥心を強く刺激した。見られているという事実が、実感として心に襲い掛かってくるのだ。
何時まで、この辱めが続くのか。終わって欲しいと願う私に対し、男は更なる指示を出す。
「オマンコを広げて処女膜を見せろ」
辱めは終わらない。私の両手が局部に伸び、くぱぁ、と左右に広げさせる。
処女膜。それは性行為の時に失うという。膜があるという事は、まだ性行為をした事が無い証だ。
セックスする前の見納めという事か。心なしか、男の顔と局部の距離が縮まっている。
「ケイブちゃんの膜、とっても可愛いよ」
「見かけは大人っぽいけど、ここは子どもだね」
やめて。そんな事言わないで。言えそうで言えず、私の目尻に涙が浮かぶ。
セックスがしたければすれば良い。それで貴方が満足するなら私は構わない。この男が初めての相手になるのは嫌だが、一刻も早く、この状況から抜け出したかった。
しかし。男は決してセックスを行おうとせず、局部を見つめられたまま時間は過ぎていく。
そして――
「あひぃん!」
突如として局部にぬるついた感触が伝わり、私は声を上げてしまう。
初めての感覚だった。脳にパチッ、と電流が流れた様な……そんな衝撃を受けたのだ。
局部に何が起きたのか。見下ろすと、顔を近づけた男が舌で局部を舐めていた。
じゅる、じゅる……と舌を回し、それはそれは嬉しそうな表情をしていた。
「おほっ……どうして、そんな所……いひぃぃ!」
途端に私の心は困惑に満ち、されるがままに局部を舐められていく。
何度も何度も舌の感触が伝わり、その度に身体全体に電流が走り続ける。私の身体に何が起こっているのか。原因を考えようにも電流が邪魔をする。
何も考えられない。私の知らない何かが身体を支配しようとしている。分からない、分からない。自分の身体なのにどうして分からないの。
そうして悶え続ける内に、電流とは別の熱い物が込み上げてきた。身体が熱を持ち始め、局部が疼き出す。次第に意識が局部へ向き、これから起こるだろう現象を無意識的に待ち望んでいた。
「来るっ……オマンコ、舐められて……あぁん! わたっ、私の知らない何か……来ちゃうぅ……! あっ、は……はひいいいいぃぃぃぃ!」
それが来た瞬間、私の頭は真っ白になった。
身体は痙攣を起こし、同時に力が抜けていく。初めて味わう衝撃の数々に、私は打ち震えるしか出来なかった。
「はぁ……はぁぁぁ……これが……オーガズム、なのね」
この時になって、やっと私は認識した。男に局部を舐められ、快感を得ていた事を。そして、その快感によって自分が達した事を。初めてのオーガズムを、この場所で。
「ケイブちゃんのオマンコ、美味しかったよ」
男の声と共に、舌なめずりを行う音が聞こえた。
力が抜けた私が身体を動かせる様になったのは、オーガズムからしばらく時間が経った後だった。
前を見ると、さっきと変わらない様子の男が立っているのが見えた。
いや、変わらないという言葉は正しくない。男の下半身は何も着ておらず、その局部にぶら下がった生殖器が丸見えになっていた。
初めて見る男の生殖器。おちんちんと呼ぶらしい。その風貌は目を背けたくなるほどグロテスクであり、一度見たら忘れられないほど強烈だった。
あのおちんちんが、私の中に入るのね……。
男性器を見た私は、今更ながら男とセックスする事に恐怖感を抱いていた。
しかし男は、男性器を自分で握り、私に言う。
「オカズになって」
オカズ……? 何なのかしら、それは……。
聞き慣れない単語に、私は戸惑うばかりだった。
「ケイブちゃんのオマンコを見ながらシコりたい。オマンコを見せて」
オマンコを……見る? 入れるのでは無いのかしら……。
困惑しながらも男の指示に従う。
両脚を開き、指で局部を広げる。先程と同じ行動だが、不思議と恥ずかしさは感じなかった。
慣れてしまったのか。それとも気分の高揚で私も見られたがっているのか。どちらにせよ、すんなりと見せる事が出来た私の局部を見た男は、男性器を握る手を動かし始める。
コスコスと、男の手と男性器が擦れる音が聞こえる。男が始めたのは自慰行為だ。自分で自分の生殖器を刺激し、オーガズムを得る。その行為を私の前で行っているのだ。
自分の生殖器を必死に刺激する男の姿。男の視線は、私の局部に注がれていた。
「貴方のおちんちん、さっきより大きくなってる……私のオマンコを見て、興奮しているのかしら?」
男性器の先端は、局部に向けられている。透明な液体が先端から垂れ、ポタリ、ポタリとシーツを汚す。
出るのかしら、精子……あの中から沢山。
目を背けたくなるはずの男性器が逞しく感じ、心と身体の両方が男性器から出てくる精子を待ち望む様に。
「良いわ、何時でも出して……貴方の逞しいおちんちんから、精子をいっぱい……」
そう言うと、男の手を動かすスピードが速くなった。ポタポタと透明液を溢し、ハァハァと荒い息を吐き、男は一生懸命に精子を出そうとしている。
「全部受け止めてあげるわ、貴方の精子……私のオマンコに、溜まりに溜まった欲求を全部ぶつけてぇ……!」
手の動きが止まり、男の身体が痙攣を起こす。
直後、先端から放出された白い精子が、私の局部周りにかかる。
白い精子から立ち込める生臭い匂い。その匂いが、今の私には心地よく感じられた。
これが精液。これが男の射精なのね……。
局部に掛けられた精液をうっとりと眺め、私の心は喜びに満ち溢れた。
しばらくして、男の手が再び動き出す。男性器に残った精子を一滴も残さぬよう、全て出し切ろうとする男の姿に私は見とれる。
そして二発目。一発目と比べ、断続的に精子が放出し、最後の一滴に至るまでに時間がかかった。
あれだけ逞しく見えた男性器が、今は萎れて縮こまっている。射精後はこうなる様だ。
一仕事を終え、疲れ果てた男性器を見た私は、今度はとても可愛らしい物に思えた。
男を満足させた事で解放された私は、晴れやかな気分で仕事に戻った。
思えば不思議な体験だった。最初はあれだけ嫌がっていたはずなのに、今は心が満たされた様に幸せだ。
最後まで男が何を使ったのか不明のままだが、追求する必要は無いだろう。
男にあったのは欲求だけ。定期的に私が満たしてあげれば悪い事はしないだろう。その為の連絡先も渡してある。欲求が溜まったら何時でも呼べるように私が用意した物だ。
そう。私とあの男の関係は、今も続いている。
私にとって、彼は初めての相手だからだ。初めてオマンコを見せた相手。初めてのオーガズムを体感した相手。初めて男性器を見た相手。初めてオカズになった相手。初めて男の射精を見た相手……何から何まで初めて尽くしの相手だ。
だからこそ私は、彼の欲求を全て受け止めたいと思ったのだ。
他人の機敏は分からないけれど……彼が私の事が大好きなのは分かった気がするから。
こうして今日、私は彼との新しい関係が構築された。誰にも言えない、二人だけの秘密の関係に。
ちなみに結局、最後まで彼とセックスを行う事は無かった。
初めてのセックスをする覚悟はしていたが、彼にその気は無いようだ。
不思議に思って聞いてみた所、こんな答えが返ってきた。
「処女のケイブちゃんをもっと楽しみたい」
……どうやら私は、彼の機敏を理解するのは難しいみたいだわ。