METROID-SIGNAL- 作:VitaminC500g
────失うものを持たないようにしてきた……失う痛みに、気づきたくなかったから……しかし、失うものがあるということは、いい人生の証拠だ……それを彼が私に教えてくれた。
ある日、気ままなハンター稼業へと戻った私に緊急指令が届く。
『ただちに宇宙科学アカデミーへ急行せよ』という通達だった。
嫌な予感がする……私はすぐさまアカデミーに急行した。
「これは……」
そこで見たものは……何者かに襲われ、壊滅した研究施設……そして、無残に殺害された研究員達だった……その上、ベビーの姿も無い……
廃墟の奥に気配を感じ、さらに奥へと進む……その直後、私は信じ難い光景を目撃する。
「Gurrr……GRAAA!」
「リっリドリー!?」
ゼーベスで倒した筈の
更に、混乱を加速させる光景が立て続けに飛び込む……奴の、あの鋭利な尻尾に巻き付かれた、あの人影は……
「うっぐっ……ガフっ!」
「っ!? ロバート!!」
全身を締め上げられたロバートだった。
────血が凍りつき、目の前が闇に閉ざされていくような、あの感覚……それは正しく悪夢といえる……幼き日、両親を失った時と全く同じ……私の
リドリーの手中にはカプセルが握られている……ベビーだ。奴はベビーを奪いにきたのだ。そして、私よりも先に到着したロバートと交戦して……そして、彼は……
「あぁ……いやだ……嘘だ……」
動けない……動かなければならないのに……体が、言うことを聞かない……息が、出来ない……苦しい……苦しい……
「ぐっ……サムス!」
「っ!?」
ロバートの叱咤で我に返る……投げつけられたロバートをなんとか受け止めることができた。
「GrrrA!」
「っ!? フッ!」
そのまま襲いかかってきたリドリーを間一髪で回避すると、奴はそのまま逃げ去っていった……カプセルに入った、ベビーメトロイドを持ち去って……
「すっすまない……守れなかった……」
「喋るな。体に障る……立てるか?」
謝る彼を黙らせ、私達はアカデミーを後にする。
その後、彼は連邦の治療により幸いにも一命をとりとめた……私の到着が後少し遅ければトドメを刺されていただろう……そんなこと、考えたくもない……
事件の首謀者は、かつて壊滅させたはずの
メトロイドを奪ったパイレーツたちは、再建した要塞惑星ゼーベスに逃げ込んでいた。
私は過去の不始末を清算すべく、再びゼーベスの地に降り立つ決意をした。
「俺も行くぞ。止めようたって無駄だからな」
「駄目だ。その体では危険すぎる」
傷が癒えていないロバートに、任務の動向を許すことはできない……しかし、私がいくら説得しても彼は譲らなかった。
「俺にも、奴らと決着をつけなきゃならない理由がある……だが、それを叶える力が無いことも解ってる……」
キツく握りしめられたロバートの拳……自分自身を呪うような言葉……真っ直ぐに見つめる真紅の瞳は、まるで私を吸い込むように……心を揺さぶった。
────思い返せばこの時……私は初めてロブの素顔を見た……彫りの深い精悍な顔つき。炎のように燃える真っ赤な瞳……強面ではあるが男前といえる部類だろう…………付け加えると決して主観は混ざっていない。あくまで客観的感想としてだ。
「だから、せめて……せめて見届けさせてほしい……! 頼む、サムス……足手まといになるようなら、途中切り捨てても構わない!」
「……」
結局、私は折れた。議論の結果、前線には出ずサポートのみという条件で彼の同行を許可した。
私達はそれぞれのスターシップで、同時に惑星ゼーベスへの突入をする作戦を決行した……
……しかし、惑星ゼーベスの防空網は前回よりも苛烈さを増し、私たちの侵入を拒んだ。
「くっ……! 被弾した。制御不能……脱出する!」
《こっちもだ! 通信はそのまま……後で落ち合おう!》
私達が乗ってきたシップは破壊され、早々に退路が絶たれてしまう。しかし、侵入には成功した……パワードスーツもあるし、必要最低限の武装もある…… 前回の『ZERO MISSION』と同じ過ちは繰り返さない……私は任務続行の意思をロバートに伝えた。
《了解した。俺はシップの残骸から使えそうなものを集めとく……君の幸運を祈る》
「貴方も気をつけて」
お互いの健闘を祈り、行動を開始する……惑星ゼーベスの地下要塞は以前よりも複雑になっていた。立ちはだかる敵は皆強敵ばかり……しかし
《サムス。マッピングが完了した。そちらにデータを送る》
「ありがとう。流石の早さだな」
《それと、マップにピンが刺してある場所には支援物資を置いておいた。有効に活用してくれ》
ロバートのサポートは頼もしい限り……正直、私一人ではここまで順調にはいかなかっただろう。
《合流地点はその先のっ……!? クソっ!!》
「っ!? どうした! 応答しろ! ロバート!」
突然、通信が途切れる。呼びかけにも答えない……最後に聞こえたのは悪態をついた声……敵の襲撃を受けた……? 辺りにはまだ敵が潜んでいるかもしれないというのに、私は大声で呼びかけた。
「応答しろ! ロバート! 応答するんだ!」
《お……つ……サムス……大丈夫だ。心配ない》
何度目かの呼びかけで、ようやくノイズ混じりの応答が返ってくる。少し息が切れているようだが無事のようだった。
「何があった? 敵に襲われたのか」
《まぁそんなところだ。悪いが合流はまた後に《GrrRAAA!!》
「っ!? 今の声は……!」
決して忘れることのない不協和音……間違いない。奴だ。リドリーに襲われているのだ。
「すぐにそちらへ向かう」
万全の状態でもロバートがリドリーを打倒できるかは怪しい……私は直様、ロバートのシグナル反応の元へと走った。
《来るな! 先に進め! 言っただろ。足手まといになるなら切り捨てろと……!》
「足手まといかどうかは私が判断する。とにかく貴方はそこで待っていろ」
《っ! また
《GRAAAaaa……!!》
リドリーの邪悪な叫びを最後に通信は完全に途絶える……想像もしたくない嫌な光景が脳裏をよぎる……急がなくては、手遅れになる前に。
「何処だ……何処にいる……!」
反応地点まで到着はしたものの、ロバートの姿は見当たらない……無論リドリーも……マップで確認しても私とロバートのシグナル反応は重なっている……なのに見当たらない……どういうことだ……
「…………っ!?」
「…………gggrrraaA!!」
静寂を震わせて、徐々に大きくなっていくリドリーの悲鳴……近づいている……声の方向は……上だ。
「GRAaa!!………ggga……a」
私の眼前に、上空から落ちてきたリドリー。既にその身は無惨に焼け爛れ、一対の翼は片方がもがれている……落下の衝撃も重なり、リドリーは完全に事切れた……これは、まさか……
《ハァっ……! ハァっ……! 俺を舐めすぎだぞ……サムス……!》
息も絶え絶えな通信が、私の心に安堵をもたらした……確かに、私は彼を低く見過ぎていたようだ。彼もまた、戦士として認めなくてはならないだろう。
「すまない……だが、よくやった」
────そうして数々の苦難を乗り越えて、マザーブレインに目前と迫った……その時、私は最大の危機を迎える。
「PGGY……」
「これは……」
異様に肥大化したメトロイドとの遭遇……攻撃全てが無効化される……私は打つ手なしの状況に陥った。
「くそっ!」
《マズい……サムス! 逃げろ! 逃げるんだ!》
「っ!?」
ロバートの忠告も間に合わず、私は一瞬にしてメトロイドに捕らわれてしまった。
「がっ……はっ……!?」
メトロイドの特性通り、為すすべなく吸収され続ける事態に陥ってしまう。
《応答しろ……! サムス……! 応答するんだ……! 今そっちに……》
「うっくっ……!!」
彼の声が徐々に遠くなっていく……いくらもがき足掻けど、拘束を振り解くことが出来ない。
意識を失いかけた頃……突然、メトロイドが私を開放した。
「pigggy! pigggy! pigggy!」
戸惑った様子で私から離れ、悲鳴にも似た泣き声を上げて奥へと逃げて行ったのだ。
「……ベビー?」
朦朧とする意識の中で、私は確かにあの子を感じた。
「サムス! 無事か!」
その直後、ロバートが駆けつける……彼は倒れ伏した私を抱え起こした。
「そうか……あの時のメトロイドが……」
私がベビーの存在を伝えると……彼は優しげに、私に語りかけた……
「自分の行いは、自分に返ってくるもんさ……良くも悪くもな……無事で良かった……」
「すまない……油断した」
ロバートに介抱されながら、私はベビーを想う……ベビー……無事で良かった……
やがて全快した私は、本来の目的へと動き出す……マザーブレインの完全殲滅……しかし、その前に
「ロバートは先に脱出してくれ」
「ここまで来て、今更何を言うんだ」
ここから先はあまりにも危険すぎる……救援のために駆けつけてくれたが、彼を同行させるわけにはいかない。
「リスクは小さい方がいい……頼む、ロバート……私を信じてくれ」
不安はある……一度倒した相手だが、生死をかけた戦いに絶対はない……現に先程、私は死にかけた。
「……わかった。君を信じる」
────思い返せば、いつもそうだった……ロブの信頼が、私に自信と勇気を取り戻させてくれる……
私達は再会を約束して、その場で別れた。
そうして、マザーブレインとの二度目の戦いが幕を開ける。
「qwe7@#mmm!!」
「フっ!」
前回に勝るとも劣らぬ死闘の末、シールドを貫いて本体への攻撃に成功……爆炎を上げて燃え上がるマザー……
「zxc6-/pjzzz!? ────────!!」
これで、全てが終わる……
……だが、今回のマザーは甘くはなかった。
「asd5&+&……ZGeAAAAAA!!」
「なっ!?」
進化を遂げたマザーは一つ目の巨人となって、直接襲い掛かってきたのだ。
「ZgRAAAAAA!!」
「ぐっ!!……ガっはっ!?」
私の攻撃を意に介さぬ猛攻……マザーから放たれるビームは強力無比……優勢は一転……私を死の淵へと追いやった。
「zrggg……」
「ハァっ……ハァっ……ぁぐっ……!」
────死を覚悟したことは何度もある……それでも、諦めることだけはしなかった……しかし、あのときの私は……死を受け入れてしまっていた。
私は、ついに目を閉じた……
「…………」
……だが、いつまで待っても、その時が来ない……なぜ、私はまだ生きているのだ……?
ゆっくりと目を開けると……そこには、私に覆いかぶさるベビーがいた。
「PGGY」
ベビーが、私を……守ってくれていた……消えていく疲れと痛み……今まさに消えようとしていた私の命の灯火は、あろうことかその勢いを再び取り戻し始めたのだ。
「ZGAAAAAA!!」
「piggy……」
その身を呈して守ったベビーが、私を解放する……感覚が、研ぎ澄まされていく……まるで、時の流れが遅くなったかのような……
「zZzaAa……zrAAA!!」
「っ!!」
瞬間、マザーのビームが、ベビーを貫いた……ベビーが、粉々に……砕け散って……消えていく……
「……マザー 、今すぐ消えろ!!」
「Z────!?」
ベビーが与えてくれた力……ハイパービームによって、マザーブレインは……この宇宙から完全に消滅した……
「うっ……」
ベビーの奇跡も、精も根も尽き果てた……私はその場に倒れ込む……辺りには、自爆装置の作動を知らせるアラートが鳴り響いている。
今すぐにでも脱出しなければ間に合わない……だがもはや、そんな体力は残されてはいない……とにかく疲れた……このまま、泥のように眠ってしまいたい……
────第2の故郷と呼べる星で死ねるなら、せめてもの慰めになる……あのときの私は、不思議と落ち着いていたのを覚えている。
「サムス起きろ! サムス! 起きるんだ!」
「……ロバート?」
聞き知った声が、私の意識を呼び覚ます……ゆっくりと目を開けると、彼の真紅のバイザーが私を覗き込んでいた……
「今回は、待てとは……言わなかったぞ……」
あのときもそうだった……彼は待つ必要もないのに、私を待った。
「前回と同じだ。自分の意思で待ったんだ」
「前回とは……違う。私はもう……動けない……」
もはや、パワードスーツの維持すらままならない……私の体は徐々にゼロスーツの姿へと変容していく。
「背負ってでも、君を連れて帰る」
完全なゼロスーツ状態となった私を、彼は両腕で抱えて持ち上げる……普段の私なら、絶対に許しはしない醜態だが……そんなことを気にする余裕はなかった。
「無理だ……それでは、間に合わない……」
人一人抱えては、跳ぶことも走ることもままならない……脱出は、不可能だ。
「私を置いて、逃げろ……逃げてくれ……ロブ……」
自分の死以上に、彼の死が怖かった……私のために、死んでほしくはなかった。
────私は、ここにきてようやく、自分の本心に気づいた……私はロブが……彼のことが……
「断る」
バイザー越しに、彼の瞳が私の瞳を真っ直ぐ見つめる……それは一瞬のことだったのかもしれない……
「…………」
しかし、とても長い間、見つめ合っているような気がした……
……気がつくと、周囲は静寂に包まれていた……あれほど煩かったアラートも聞こえない……自爆は起きなかったのだ。
「自爆装置はあらかじめ切っておいた。二度、同じヘマはしないさ……相棒」
「やるな……
私は初めて、ロブの呼びかけに応えた。
その後、私たちは前回の事件で訪れた遺跡の深部に身を寄せた。彼はそこに一通りの設備を移送していたのだ……全く、抜け目のない男だ……
傷を癒し、救援を待つ間。長い時間が過ぎ去っていく……振り返ってみると、任務以外で二人きりになったのは、これが初めてになる……
────そうなると、
「ロバート……その体は……」
「ンっ?」
ある時、彼の素肌を偶然見てしまう。ツギハギだらけの皮膚……その皮膚を突き破る形で露出した金属……生物と機械が融合しているかのような姿……
「まあ、とくに隠すほどのことでもない」
その言葉通り、とても軽い口調で……彼はゆっくりと語り始めた。
「俺は
「俺にとって、部隊こそが故郷であり、家族だった……だから、奴らだけは何としてでも仕留めたかった……君には随分と迷惑をかけたな……すまなかった」
「気にするな。私も貴方の気持ちはわかる……ある意味、同じだからな……」
「同じ……?」
「…………」
出生、故郷、使命……初めてだった……自分の口で、自分の過去を、他人に明かすのは……だが、不思議と嫌な気はしない……
「『銀河の守り手』か……ありがとう、サムス。教えてくれて」
なぜこんなことをしたのか……自分でもわからない……しかし、今まで感じたことがないほど、心が軽くなったような気がした……
「お礼として、俺も自分の秘密を教えてやる……じゃなきゃあフェアじゃないからな……」
そう言うと、彼は私の方に近づいて……
「サムス……俺は君が好きだ……君を愛してる」
ロブの
「ロブ……」
真剣に、全霊で……彼の想いに応えたい。私の想いを伝えたい。私を……理解して欲しい……
────バイオ素材のパワードスーツは装着時、私の身体と一体化する。例え私が意識を失ったとしても、第三者の手によってスーツを脱がせる事はできない。
それはある意味、殻と言えるだろう。私という本心を隠し、閉じ込めておくための殻……
だが、いつまでも殻に閉じこもることはできない……蛹からの羽化……卵からの誕生……殻を打ち破るのは、いつだって自分自身なのだから……
「…………」
私は、自分の意思で、パワードスーツを脱ぎ捨てた……無防備極まりないゼロスーツの姿を彼の目に晒した。
「サムス……」
「……ロブ」
胸の奥から、止めどなくあふれるロブへの想いが、殻を打ち破ったのだ。
「私も……貴方を愛している。ロブ、貴方が好きだ」
更に近づいていく二人の空間距離……まるで引力で引き合うように、お互いが求め引き合う重力点は、完全に一致していた……
「…………んっ」
そうして、唇が触れ合う……初めはついばむように……やがて舌が絡み合う……最後はお互いを味わうように……どれだけの時間、そうしていたのか分からない。唇を触れ合せたままの時間が、永遠に感じる……
「ンっふ……チュぅ……ンくっチュうっ……」
私が唇を食めば、彼は舌を絡ませる……クチュクチュと流し込まれる唾液の分だけ、彼に私の唾液を注ぎ込んでゆく。
「んっ……んっ……はぁっ……」
口の中で混ざり合う液体。喉を鳴らして飲み込むと、乾きを癒やす以上の潤いをもたらしてくれた。
「ンはっ……ンちゅぴっ……チュゅゅゅぅぅう!」
もはや、最初の頃の初々しさは消え去っていた……お互いに頭を揺らし、お互いに顔を掴み、お互いの口を深く絡ませる。獣のように貪り合っていた……
これが……キス……思っていた以上に心地よく、そして、温かい……クセになってしまいそうだ。
「ンくちゅゅゅゅゅうっ……っぷはぁっ! はぁっはぁっはぁっ」
軽い目眩に襲われるほど長いディープキス……クラクラとした思考が整っていくと同時に、私はあることに気づく。
「はぁっはぁっ……はぁっ……はぁ……」
立って抱き合っていた私達は、いつの間にか横になり、折り重なっている……私が下で、ロブが上……気づかなかった……確かに、立ち眩むほど翻弄されていた私では立ち続けているのは無理だった……無意識だろうか……? 彼が支えて寝かせてくれたのだろうか……? ……おそらく後者だろう。今の私に、無意識の行動など出来はしない。
「はぁっはぁっ……サムス……」
「んっ……ロブ……」
熱っぽく名前を呼ぶロブに当てられ、私の想いも高まっていくのがわかる……だが、このような経験のない私では、その想いの伝え方が分からない……彼に任せきりというこの状況が……少し、心苦しかった。
「ふぁっ……くっふぅう……んっうっ!」
そんな心苦しさも、ロブが与える快楽によって徐々に溶けていく……彼の両手がゆっくりと……私の胸を、下から持ち上げるように揉みしだく……沈み込ませた指を蠢かせている……まるでその感触を味わっているかのようだ。
「くあっ……!?」
ゼロスーツ越しだというのに、彼は胸の頂を的確に摘みとった……ただ、それだけの事で……私の身体は大きく跳ね、くぐもった喘ぎが漏れてしまう……
「んぅっ……!!」
「こうして触ると……本当にデカいな……」
「ウんっ!? いっいうなぁっ……! ひっ!?」
いつからか、煩わしさすら覚えるほどに大きくなってしまった私の胸……身体の成長は仕方ない面もあるが、はっきりいって好ましくは思っていなかった。
「俺は好きだぞ。サムスの胸」
「くっひっ!? ぁああああぁっ……!」
そう言って、ロブは遠慮もなく私の乳房を揉みしだく……彼のその一言で、嫌悪していた自らの肉体を受け入れられたような気がした。
「あぁっ……うっぁああああぁっ……!」
やがて、ロブの愛撫は全身へと至る……腰のクビレを這うように撫でたかと思えば、顔を胸に埋めて鼻をこすりつける……そのまま腹筋を辿り、どんどんと下へ下へと降下していく。
「フぅぅぅうっ! んぅっ!? くっ……あっ……!」
途中、臍の穴を見つけられ執拗な攻撃を受ける。それと同時に襲い来る下半身からの刺激……危なかったが、なんとか持ちこたえた……どうやら、クビレを撫でていたロブの両手は、いつの間にか私の太腿を揉んでいたようだ。
「フぅっフぅっ……フっんっくっ!」
こいつ…………明らかに、ロブは私の反応を楽しでいる……じっくりと弄られていくと、もはや羞恥の声を抑えきれない……
「ンうっ!? そっそこは!」
突然、甘味な衝撃が下腹部を突き抜ける……気がつけば、ロブの片手は、私の女を愛でていた。
「あううぅっ! くっううぅ……!」
ゼロスーツという青い壁を一枚挟んでも、伝播する快感は相当のもの……肉体に密着する形状を取るゼロスーツでは、それは当然のことだった……
「あああ……んっふぅう!」
そして、胸からの下降を続けていた彼の顔は……ついに私の股間にその顔を埋めだした……私の女はとうに泣き出し、とめどなく濡らし始めている……羞恥で気が狂いそうだ……だけど、もう、我慢できない……
「はぁ……はぁ……ロブ、頼む……あなたが欲しい」
ネックにある着脱装置を起動させ、ついに青いゼロスーツすらも脱ぎ去っていく……一体、私はどんな顔で彼に懇願しているのだろうか? 彼を、滾らせるような仕草ができているだろうか?
「あぁ……」
了承とともに、ロブもスーツを脱ぎ去っていく。顕になった彼の男は、角かと見紛うほどに逞しく剛直している……これが男の……そしてこれが私の中に……覚悟は、出来ている。
「きて……ロブ」
指を絡ませ固く握り合う……結ばれた両手は頭上に置かれ、完全に抑え込まれた。
「サムス……愛してる」
戦士となった第二の故郷……戦士の証を授かった空間……そこで私は、生まれて初めて女になった。
「ンっ!? アああああああン!!」
忘れられぬ初体験……幻想的な太古の遺跡で私は、彼に……純潔を捧げた……
「ウっつ……あぁっ!!」
痛みには慣れている。だがそれは、未知の感覚……甘く、痺れ、溶かされる……下腹部から全身へ……正しく、快感が突き抜けていく……
────これは後から知ったことだが、私の体は性的快感を受け入れやすくなっているらしい……おそらく鳥人族達が自らの衰退という失敗を繰り返させぬように仕組んだのだろうが……全く、余計なお世話だ…………だが、感謝はしている。
「はぁっはぁっはぁっ! ンっあああっあっあああっ!!」
皮膚と皮膚がぶつかり合う、乾いた破裂音……一定のリズムで奏でられるその音は、空気を振動させ、古代の壁画で反射し、私の耳底を叩く……まるで、私という素材に、今この行為を、想いを刻みつける……鍛冶のような作業に錯覚させた。
「ハぁっ! ハぁっ! あっ!? ンぁっ!? あああっ!」
彼の男が体を貫くたびに、遠い過去に捨て去ったはずの、私の女が想起していく……生まれて初めて経験する性的快感の暴風が、戦士の使命を忘却の彼方へと連れ去ってゆく。
「はむっ! んちゅっ! フあっんくっちゅううう!」
その暴風に飛ばされまいと、そこに留める新たな楔を求め、彼の口と繫がる。手足を彼の胴体に巻き付けて……傍から見れば完全なホールド状態である。本来ならば、抑えつける側が逆に抑えつけられてしまっているが……仕方がない……そうやって私は彼に、必死になってしがみついた。
「サムス! 好きだ! サムス! 大好きだ!」
「ウぅぅっ! ロブ! ロブ! ロブぅ!」
私達は、お互いを確かめ合うように名前を呼び合う……今、自分は抱かれている……男に、ロブに、愛する者に……自らの全てを委ねている……そう意識するたびに、下腹の奥に熱が籠もり、甘い疼きを覚えた。
────このような行為にかつて抵抗感があったのは事実だ……しかし、快楽を求めるのは生物の本質……そして性愛とは本来、清らかなもの……愛し合う者たちが、新たな命を育み、次の世代へと伝える……父と母が愛し合って、私が生まれたように……
「くっ……いくぞサムス! 受け止めてくれ!」
「きてっロブ! 私のっ中に!」
ロブの声を受け止めると、まるでマグマのような熱が、私を内側から焦がした……
「あっ!?」
そしてそのマグマが、地底から湧き上がるかの如く、私を高みへと押し上げていく……
────私にも1人で慰めた経験ぐらいはある……だが、初めて愛し愛される者によって誘われたオルガニズムは……格が違った。
「はっ!? いっく!? ンおああああああ!!」
獣のような叫び声を出しているのが自分だとすら思えない……全身の筋肉が緊張して体がのけぞる。ここまで自分の体が、自らの意思を離れたことはなかった……軽い恐怖すら覚えてしまう……
「ンうっ! ハっぐううううう!!」
快感が止まらない……肉体が、思考が……溶けて……ロブと……彼と……一つに……
「はぁ……はぁ……はぁ……」
脱力して痙攣する肉体……目の前のロブに満たされた思考……淫靡な夢遊に彷徨っていると、彼は優しく抱きしめてくれていた……
「すまないサムス……まだだ。まだ収まらない。抑えきれない」
その言葉通り、私の腹部には熱を取り戻してゆく彼の男の感触がはっきりとわかった……もちろん、答えは決まっている。
「構わない……もっと、してくれロブ……壊れてしまうくらい……強く、激しく、何度でも……私を抱いてくれ……」
その後、彼の迸りを何度も何度も受け止めた……全身を駆け巡る快感に翻弄されたが……彼に求められているということに、幸福を感じた。
そうして繰り返される数多の行為が、交わされる睦言が……ロブと、真に結ばれているのだと……私に実感させてくれる……
────こうして私達は、信じ合う相棒という関係を超え、愛し合う恋仲になった……
・
・
・
「はぁ……ンんっ…………」
傷心な私を慰めているうちに……結局そのままロブと肌を重ねている……任務終了後の昂りを彼に受け止めてもらうのは、もはや日常になりつつある……もともと、娯楽の少ない生活だ。愛する者との営みに溺れるのは仕方のないことだろう……
「本当に……無事で良かった……」
「全く、大げさだな。貴方は……」
私が上で、ロブが下……あの時とは逆の体勢だ……絶頂の余韻に浸る体を彼に預けていると、彼は物憂いげな顔で見つめてきた。
「大げさじゃない。君の死にそうになった姿を2度も見てるんだぞ……あの時のことは今でも夢に見る……」
「わかった……心配をかけてすまない……んっ」
彼の心配は当然のものだろう……
「んっ……なあ、サムス 一つ提案なんだが、何処かに腰を据えると言うのはどうだ?」
「それは……つまり、私に
この稼業は身の軽さが重要だ……ロブの提案は、それを真っ向から否定するものになる。
「今すぐにというわけじゃない……ただ考えてほしいだけだ」
「……」
なにかに怯えるような彼の顔を見ると、心が揺らぐ……彼の願いは痛いほど理解できる……愛するものを失う痛みは、何者にも耐え難い……私もロブも、それを経験で知っている……故に、一層痛みを恐れるのだ……だが
「……すまない。私にはまだ、果たさなければならない使命がある」
信念とは、人生の旅路を決定づけるものだ……例えその旅路が、辛く険しい道のりでも、信念があるから進んでいける……『銀河の守り手』という、鳥人族から授かった使命……いや……私自身が課した使命のためにも、戦いから退く選択肢は考えられない。
「……『行くべき者が行き、残るべき者が残る』……か」
「その言葉は……」
聞き覚えのあるその言葉……かつて、私がまだ銀河連邦軍にいた頃の……あの人の言葉と同じ……
「昔の上官の受け売りさ……ただ自分の無力さを突きつけられてるようで、あまり好きじゃなかったんだがな……」
そう言いながら、ロブはどこか懐かしむような顔で私の頬を撫でる……
「今ならちゃんと理解できそうだ……君のそばで、気長に待たせてもらうよ」
「ああ……それなら構わない」
彼の腕の中で微睡むこの瞬間が、私に幼い時の安らぎを思い出させてくれる……
運命が許す限り、今はただこの幸福に浸っていよう……愛する人に包まれて、私は深い眠りについた……
最後まで読んでいただきありがとうございました。
フュージョンやプライムはネタが纏まらずボツとなりました。(鬱展開になりそうだったので)
またいつか次作でお会いできたら幸いです。