紐パンきつねの夏色ご奉仕 作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)
地獄の露出手コキミーティングが終わった直後。プロデューサーやマネージャーらが離席し、機材の確認に向かった。
三〇分後を目安に準備が完了するらしく、夏色吹雪はもう少しだけ待機することになっていた。
「は……ふぁあああ……っ……!! なんとか、耐えきったぁ……!!」
顔を耳まで真っ赤にして、汗びっしょりになったまつりが大きく息を吐いて、背もたれに身体を預ける。
その股間では、おへそに向かって反り上がり、涎のような我慢汁をだらだらと垂らす陰茎がビクンビクンと跳ね回っていた。
「まつりちゃん……私の手、気持ちよかった……?」
「えっ……? あ、うん……まあ、チ×ポが勃ったままでキープできるぐらいには……あはは……」
返答に困ったまつりが、ぎこちない動きで視線を逸らした。勃起に走る窮屈な疼痛は、まだビクビクと解放を訴え続けている最中だった。
その気遣うような表情に見覚えがあったフブキが、申し訳なさそうに下唇を噛む。それは、汁だらけになって冷えたベッド上で、くったりとしながら見上げる顔と同じものだった。
「……やっぱり、ダメだったんだ……。ああいう場面なら、満足してもらえるかなって期待したんだけど……」
「あー……たしかに、エッチって緊張感あると燃えるけど……。フブキ、それでこんなことしたのか……」
まつりは、『それにしても、こんなところでヤるなんて……』と続けようとして止めた。
アイドルとしての仕事の大切さなど、フブキが一番よくわかっているはずだ。それでも、まつりとの情事をより質の高いものにするために、大切なもの同士を天秤にかけて……まつりの心を満たすことを選んでくれたのだから、文句を言うべきではなかったのだ。
まつりは好きなものが多いからこそ、そういった愛の機微に敏感なのだ。
「結局、無駄だったみたいだけどね……。これまでさぁ……こんなに上手くいかないこと、あんまりなかったんだけどな……」
(……そっか……フブキは、それも気にしてたのか……。たしかに〝らしく〟はないかもだけど……)
天才肌で、いろいろなことを持ち前のセンスの良さだけでこなせてきたフブキに〝不得手〟は多くなかった。
しかし、まつりとのセックスに関しては、己の未熟さを痛感することばかりだった。まつりが要求するエロスは、フブキの想像を絶するほどの高みにあったのだから無理もない。
それは単純に、性的な知識と経験値の多さの違いによるもので、致命的な不釣り合いではない。まつりはそのことがわかっていたからこそ、現時点ではフブキに対して過度な要求をしなかったのだが……。
(逆に、手コキが上手いドスケベフブキとか想像したくないんだけど……ヘタクソなぐらいでカワイイ気もするし……)
「ごめんね、まつりちゃん……へたっぴで……つまらない女で、ホントにごめんね……?」
「ふ、フブキ……なんで、そんなに自分を卑下するのさ……?」
「だって……私、まつりちゃんのために……なにもできてないんだもん……。ぐすっ……ピアスを貰う前から……なんにも……」
こうして決意を固めて挑んだ戦いの場ですら勝負にならなかった。その手痛い敗北によって、フブキの自尊心はべきべきに折られ、その目尻には涙粒すら滲んでいた。
それが〝ただの可愛い女の子〟なら、この背筋にピリピリと走る優越感と支配感だけに震えればよかったのだろう。その凌辱された後のような表情は、まつりのサディスティックな性癖に刺さっていた。
ただ……泣きそうになっているのは将来を誓った相手なのだから、話は別だった。
「お願い……白上を捨てないで……! もっと頑張るから……もっと、エッチになるから……捨てないでよぉ……! まつりちゃんと、もっと一緒にいたいよ……!」
「い、いや、そんな気にすることじゃないし……捨てるワケないじゃんか……。どんだけ軽く見られてるんだ、まつりは……」
「だって……まつりちゃん、可愛いし……すぐ、他の女の子に手出すし……。このピアスくれてからも、あんまり変わんないし……」
「いや、だから……あれはただのスキンシップだって……! おっぱい揉んだり、キスしようとしたりするのなんてフツーだよ……!」
「…………まつりちゃんは、いつも……いつも、いっつも、そう言うけど……白上には、本気に見えるんだよ……! 可愛い女の子が好きなのは知ってるし、スキンシップもいいけど……あそこまでベタベタする必要ないじゃんか……! あんなの……見てるだけでも、つらいよ……」
「お、おぉ……マジか……。それは、また……日頃の行いが悪すぎるかも……」
(乳揉みぐらい適当に許してくれるようになったと思ってたけど……違ったんだ……。いや、これ、ちょっとやらかしてる感あるなぁ……)
まつりにとって、カワイイものを好いて愛することは生きがいであり、アイデンティティーでもある。そう簡単にはやめられないことは、フブキにもちゃんと説明していたつもりだった。
まつりはミオに説教されたときのことを思い出し、価値観と感覚のズレを再認識する。普段の軽率な行動から、フブキに我慢をさせていることに気付いてしまった。
それよりも……まつりが思っていた以上に、やきもち焼きなフブキのメンタルは不安定になっていた。
「……まつりちゃん……ホントに、私のこと……好きなんだよね……? 信じて、いいんだよね……?」
「あ、当たり前じゃん……! じゃなきゃ、エッチなんてしないよ……! フブキとシてから、他の誰ともヤってないし……!!」
その歪んだ愛情は、まつりが冗談をかますことに躊躇いが生まれるほどに熱く、ドロドロに融けている。まつりとしても、本音で向き合わざるを得なかった。
そこまで思いつめられるほど、真面目に、全身全霊で恋い焦がれてくれた相手はいなかった。相思相愛が帯びる熱量の差異も、まつりにとっては予想外のことだった。
「……私のこと、面倒くさいって思ってない……? 私とのエッチ、つまらなすぎて飽きてない……?」
「お、思ってないし、飽きてないって……!! まつり、自分が嫌なことはイヤって言うタイプだから……ね……?」
「くすん……ほんとに……?」
「ホントだよ! こんなところで嘘つけるほど、まつりは薄情じゃないんだけど……フブキには、まつりがそういう女に見えるの? だとしたら、けっこーショックなんだけど……」
「……っ……!? ううん、そんなことない……! まつりちゃんが悪いんじゃないんだ……まつりちゃんを信じられない、ダメダメな私が悪いんだから……」
ぶっちゃけると、ヘラったフブキからは〝面倒くさい女〟の濃厚なニオイがすることもあったが……それは、ちょうど今のような、一時的な精神のブレの中だけだった。
しかし、それも含めて責任を取ろうとした決意は本物だった。普段はアイドル意識の高いフブキが自分だけに見せてくれる、そういった人間らしくて生臭い表情を含めて好いているし、心の底から愛している。
ただ……まつりが抱えている最大限の愛情は、愛されたがりのフブキにとっては、やや物足りない部分もあったようだ。
意外と粘ついている性格のフブキとの向き合い方について、今後のことをもう少し考えないといけないと考えたまつりだった。
「……っていうかさ……そもそも……まだ、終わってなくね……? まつり、いつまで我慢してたらいいん……?」
まつりはひとまず、言葉で想いを伝えることを取り止めた。わずか三〇分では解決できそうにない問題よりも、今すべきことに目を向ける。
自分の股間で荒ぶる陰茎を指差し、フブキに臨戦態勢がとけていないことを伝えた。発情促進剤のせいで、いつまで経っても勃起と我慢汁の水滴が収まらなかった。
「……あっ…………そ、そうだね……! まつりちゃんのために……私、頑張るから……!」
「……まつりのために……?」
「うん……! なんでもするよ……まつりちゃんがシたいこと、なんでもするから……!」
「…………なんでも、か……そうだなぁ……」
健気で、純粋で、可愛くて。どれだけ激しいエッチでつゆだくに穢しても、どれだけスケベな下着を着させても、その清廉で可憐なイメージは崩れない。
その純白の好意をまっすぐに、全部をぶつけられて、まつりの身体と脳髄がぶるりと揺れた気がした。
他人に尽くされる快感は、官能が受領する性感よりもダイレクトに興奮を覚えさせるのだ。
「……それなら……タイツもチ×ポ穴のために破られちゃったし……」
その権利を使って、フブキの思う〝最大限の愛情〟はどれぐらいのものなのか、を確かめるだけでよかったはずなのに。
不安に瞳を揺らがせて、まつりの言葉をじっと待つフブキの姿は……どうしても、まつりの嗜虐心を誘ってくる。
汚してやりたい。自分だけの色に染め上げたい。自分好みに開発したい。
そう思わせる魅力は、まつりとセックスを重ねるたびに強まっていくのだ。
「お仕置きとして……フブキに、まつりの言うこと……聞いてもらおっかなー……?」
気高くて可愛らしいフブキが、どこまで、自分のために堕ちてくれるのか。
ちょっとだけ、よくない興味が湧いてしまったまつりであった。