「隊長。ガラクタ共に逃げられました」
副官がぼやく。
「こちらの損害は連邦軍の将兵1820名と軽装甲車両が67台、対空火器が8門、旧式戦車が34台、レーザー機銃陣地が12基、その他車両が200台以上やられています」
「空間移動させた最新鋭戦車も12台大破してます」
「将校と隠れていた兵士が僅かに生き残っていますが…」
「これが罠とは言え、事実上戦線に穴が開いたと言っても差し支えないでしょう」
「それに対してあちらの損害はたった2体です」
「してやられた感があります。というより敵が優秀過ぎますね」
「指揮官に報告しますか…?」
「早めにしなければな。だがその前に現場検証を行いたい」
「時間的な余裕は無いと思いますが…」
「このまま帰って手ぶらで報告してみろ。懲戒どころでは済まないぞ」
「せめて何か持ち帰らないと態々戦場のど真ん中まで出張った意味が無い」
「敵の再侵攻まで恐らく後2時間はかかる。ギリギリまで調査してテレポーテーションで戦場から離脱する」
「兵器類も同時に離脱だ。隊員に負荷がかかるが仕方が無い」
「あと敵は反応兵器を使う積もりだ。NBC防護スプレーの準備をしておけ」
「如何に宗教狂いの戦闘機械共とは言え、そこまでやりますか?」
「やる。必ずやる。というより指揮官はその可能性についても話していた」
「その内こっちに居る部隊の指揮を直接取るとも言っていた」
「そういう事は早めに言って欲しかったのですが…」
「悪い。まさか指揮官の最も危惧しているシナリオになるとは思わなくてな…」
「それに事が起こるまで話すなとも言われていた」
「なら仕方がないですね。懲戒は嫌なんで必死こいて調査しますよ」
「貧乏クジだが今回は頼むよ」
「帰ったら一杯奢るからさ」
「2杯でお願いします」
「わかった!飲み放題で良いからちゃちゃっとやっちゃってくれ」
「了解です。サー」
同時刻――
クレアはミサイル爆撃の現場で犠牲者の救出作業に当たっていた。
彼女は機構支部に直接駆けつける為にビルの間を飛んで居たが、渋滞と飛び散った瓦礫の為に重機が現場に入る事が出来ないとの話を都市管理部の人間から聞いた為、支部には行かずに寄り道をしていた。
「助かるぜ!お嬢ちゃん」
「重機が来るまでの辛抱だからな!」
「俺達も精一杯瓦礫をどかすぜ!」
消防士や警官、作業員がクレアに声を掛ける。
クレアはその持てる全ての能力を使って瓦礫を排除していた。
彼女が手を翳すと大小様々な瓦礫は中に浮き、空き地に集められていく。
そして元の建造物の巨大さと犠牲者の多さ故にクレアは疲弊し始めていた。
だが、彼女は手を止めなかった。いや止めようとしなかった。
彼女は作業をしながら考えが過ぎった。これは単なる正義感か?慈悲や憐憫か?それとも単なる自己犠牲か?それとも職務の範疇でしかないのか?
今彼女は自分の感情に対して正しい答えを得る事は出来なかった。
切っ掛け自体は単純な物だったが、それによって生じた複雑で難解な感情が彼女を動かしていた。
ただ一つ言えるとすれば、「誰かに求められ、そして受け入れられている」。
そう彼女は感じていた。
さっき会ったマイクとの会話でもそう感じていた。
彼は私を異邦人としてで無く、この街に住む同胞として受け入れてくれていた。
彼の横には彼の親友も居た。日頃から親しく付き合っているのだろう。
しかし自分にはそういう人間が居たか?
居ない。
誰一人として居なかった。
機構の人間達は私を歯車の一つとして扱いこそすれ、親しく接してくる事は殆ど無かった。
その生まれと育ちが故に。
だからこそマイクを初めとしたこの街の人間が街の一員として自分をなんの抵抗も無く受け入れてくれている事がとても新鮮で、暖かみを感じた。
だからその人達の為に働きたい。改めてそう感じていた。
作業中の思索は野太い消防士の声によって中断させられた。
「嬢ちゃん!重機がもうすぐ到着するってさ!後ちょっとの辛抱だ!」
「はい!わかりました!」
クレアは元気よく返答した。
クレアはそれから10分以上に渡って瓦礫をどかし続けた。
重機が現場に到着した時、クレアはヘトヘトになっていた。
「おう!もう大丈夫だぜ。ほらコレ」
そう言って作業員は飲み物を渡してきた。
「私は規則でこう言った物は受け取れないのですが…」
「良いから貰っておけって。どうしてもダメなら街の一員として救助活動を手伝ってくれた報酬として受け取れば良い」
「そういうものですか…?」
「そういうモノだ。こういう時は素直に受け取っておくモンだぜ」
「これは俺達の総意だ」
周りの作業員や消防士達も頷く。
「わかりました。では有りがたくいただきます…」
クレアは渡されたスポーツドリンクをゴキュゴキュと飲み干した。
「!!」
動いた後のスポーツドリンクには格別の美味さがあるが、これはそれ以上に美味かった。
疲労した身体全体に底から力が湧き上がり、行き渡るような感覚を味わった。
「とても美味しいです…」
「「それは良かった!」」
作業員や消防士達は明るい笑顔で笑っていた。
荒廃を嘆くのは間違っている被害を全く受けていないから