※この作品はR-18です。

十字路世界   作:256進法

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第十六号:十字軍(後編)

「門」から市内にまるで大規模自動プラントから吐き出される製品達のように異教の軍勢がゾロゾロと這い出してくる。

 

その軍勢はニューヘブンポリス市を形作る碁盤目状の道路を、溢れる工業製品が飲み込むかのように浸透して行った。

 

たちまち市内はパニックになる。

 

警官隊が応戦するが、紙のように破られていく。

 

アレックス・マッケンジー上級少佐は司令部の要請に基づき、市の外縁部で避難民の誘導に当たっていた。

 

そして監視ドローンからの映像と通信が指揮車両に送られてくる。

 

現在市内を守備している合衆国の部隊は大通りを基点としてバリケードと火力陣地を構築し、なんとかこの流れを押しとどめようとしているのが見て取れた。

 

市街戦の構えだ。

 

一方東の空を見ると連邦軍の援軍が向かっているのが見える。

 

なるほど、空中からの集中砲火と地上からの火力投射でなんとか押し返せるかもしれない。

 

アレックスは僅かに希望を抱いたが、同時に嫌な予感もした。

 

 

(我々は敵を知らなさすぎる。公開されている情報では全くの不足だ)

 

 

アレックスはそう思い、「流れ」の先端をドローンの遠隔カメラで拡大した。

 

彼は一旦思考を停止してしまった。

 

通常の2~3倍はあろうかという戦車でキャタピラは4つに分割されている。

 

そしてハッチから人が出ているので無く、巨大なランスみたいな武器を手に持った巨大な人型が戦車と一つになっていた事が確認出来た。

 

 

(なんだ これは)

(14年前に小競り合いをしてた連中とは明らかに「質」が違う)

 

「流れ」の先端は守備軍が構築した陣地に近づいてゆく。

 

 

次の瞬間、ドローンが何処からかの攻撃を受けて映像が中断されてしまった。

 

 

「クソッ!何なんだ一体!」

 

アレックスは指揮車両を飛び出て部下に大声で指示を飛ばす。

 

 

「市民の避難を急がせろ!場合によっては武器で脅しつけても構わない!」

 

「正気ですか!?そんな事をすれば後でマスコミに何言われるか分かりませんよ、上層部だって…」

 

「この戦争が終わった後も生きてればな!!」

 

「ここで急がせなければ市民共々皆殺しにされる。手段を選んでいる場合じゃない」

「上官命令だ!避難を急がせろ!一秒の遅れが100人の死に繋がる」

 

「サ、サーイエッサー!!」

 

 

 

市内大通り――

 

空を飛び回り食べ物を狙う鳶のようなドローンが撃墜されていく。

 

「ふむ、どうやら団長が到着なさったようだな」

 

「そうか、なら最早遠慮は無用だな」

 

壮年の装甲機士は溜息を付く。

 

そして滾る黒い雄牛に通信で呼びかけた。

 

 

『ガスコーニュ卿!突撃開始だ!』

 

 

『無論!この時を待ち侘びていたぞ!!一番槍の栄誉は俺が頂かせて貰う!!!』

 

 

「流れ」の先端が急加速し出す。

 

 

守備部隊に一気に緊張が走る。

ギリギリまで敵を引き付けないと効果は薄い。

 

守備部隊の指揮官は息を殺してそのタイミングを窺う。

 

30、29、28、27、…

 

5・4・3・2・1…

 

「今だ!!」

「来たぞ!敵だ打て撃て討てー!!」

 

 

猛烈な砲火が幾つかある「流れ」の最先端に集中した。

 

 

「む!待ち伏せか!」

 

「だが無意味!!!」

 

 

跳ねた。その巨大な機動戦車と装甲義体は敵のバリケードと射線を跳び越す程に高く跳びあがった。

 

 

人車一体。そう表現するに相応しい姿だった。

 

 

「「「ドッガァアアァアァン!!!」」」

 

巨大な黒い何かが戦車と激突した。

 

戦車は巨大なランスに串刺しにされている。

 

その巨大な黒い何かは戦車から巨大なランスを引き抜くと兵士達に「ソレ」を向けた。

 

 

「い、一斉射撃!」

 

またしてもその巨大な黒い何かに砲火が集まる。

 

 

「ハーハッハァ―!!!」

 

「ソレ」は砲火を物ともせずに素早く動き回りながら兵士や装甲車両を薙ぎ払っていく。

 

 

その光景を見て、先陣を掛けていた他の装甲機兵や機士達の意気が上がる。

 

「おお、流石は名高きガスコーニュ卿!機士の誉れ!!」

「急げ!我らも続くぞ!」

「オオッ!!!」

 

黒い急流が火力陣地を押し流していく。

 

ビルに配備されていたスナイパー達や対空部隊・対装甲部隊はまるで激流が川に溢れる中、中州に取り残された観光客みたいになり、動揺してしまった。

 

壮年の装甲機士は庭を駆け回る子供のような機士や兵士達を見て呟く。

 

「放っておいても問題はないが…」

 

「我がユクセル機士団の勝利には一点の曇りも許されない」

 

「ユクセル機士団副団長ラインバウト、出陣する」

 

ラインバウトは機動戦車のハッチを開けるや否や飛び出し、高層ビルを凄まじいスピードで駆け上げって行く。

 

それに気づいた装甲部隊は半ばパニックになりながらも大量の対戦車ミサイルをラインバウト目掛けて発射する。

 

 

一閃――。

 

 

発射されたミサイルは全て信管を切られて細切れにされ、金属ゴミと化した。

 

そしてその事を認識する間もなく周りのビルに居る装甲部隊の隊員達が真っ二つにされて行く。

 

 

「次は対空部隊か」

 

ラインバウトは剣を何回か振った。

 

真空波が襲い掛かり、対空火器とその周りに居た人員は一人残らずバラバラになった。

 

 

「そして狙撃兵達」

 

ビルに飛び込んで行くと窓ガラスを突き破り、狙撃手達対物ライフルごと真っ二つにされて行った。

 

ラインバウトはビルの高層階から飛び出すと空中を蹴りながら回転して自分の機動戦車に着地した。

 

周りの機士や兵士達から喝采が起きる。

 

 

「卿の絶技、しかとこの眼に収めさせて貰いました!!」

「なんという腕の冴えとキレ…」

「正に老練と言うべきか…」

 

 

ガスコーニュは敵を薙ぎ払いながら頭の中で呟いた。

(現役バリバリじゃねーか!!あのオッサン機士!俺よりずっと強いんじゃねぇか!?)

 

『ガスコーニュ卿、眼前の敵に集中しろ。リズムが僅かに乱れているぞ』

 

『了解しましたァ!!』

(なんてオッサンだ、1秒足りとも油断できねぇ)

 

『それよりもうそろそろじゃないですか!?』

 

『ああ、しかし油断だけはするな』

 

 

 

『干渉門』付近――。

 

 

「カルロス様。この度のご尽力、本当に有難うございました」

巨大なケースを脇においた黒衣の修道女姿の女性は膝をついて首を垂れた。

 

「い、いえこれくらいは…てか立って頭を上げて下さい」

 

「貴女程の人に頭を下げさせたと知れれば男子の恥です」

そう言いながらカルロスは女性の手を取り、引き上げた。

 

「お優しいですのね、カルロス様は」

 

「いえ、私が優しいのは淑女だけですよ」

 

後ろの傭兵達はこの光景を黙って見ながらチャットでネタにし合っていた。

 

(美人と見ればホント見境ねぇなぁウチの副社長は)

 

(しかも相手が女機士団長とはな。社長にはとてもじゃないが見せられないな)

 

(しかしすげぇ美人だぜ、神々しさすら感じる)

 

(ああ、天使だ、天使だぜ、この世に舞い降りた天使だ。永久保存版だ)

 

(天国の母さん……今私は本物の天使を目にしています…)

 

 

そんな傭兵達に向けてその美女はニコッと明るく笑いかけた。

 

(え?!今俺達に向けて笑いかけたよな???)

 

(ヤベッ!破壊力ヤベェ!!)

 

(俺この仕事してて良かった~!)

 

(昇天)

 

(ああ~脳が溶けるぅ~…)

 

 

「全くあいつ等…」

カルロスは呆れと怒りが混ざったように呟く。

 

「純朴で可愛い人達ですね♡」

 

「いや~もう後でキツく注意しておくんで…マジにご容赦を…」

 

「いえ、貴方達は命懸けでここまでの途を切り開いてくれました」

「ならばそれに全力で報いるのが修道機士、いえ一人の機士としての責」

 

「私はこれから主と聖人の敵を打倒する為、暫くの間無防備にならなければなりません」

「私の機士と軍から派遣された護衛だけでは不測が生じるかもしれません」

 

 

「私の周囲を警護して頂けませんか?勿論報酬も機士団から出します」

「ネット上の契約でパパッです」

 

「し、しかし…要人との契約は社長を挟まないと後で何言われるか…」

 

「ダメですか…?」

 

彼女は不安がるような表情でカルロスの顔を覗き込む。

キラキラした瞳がカルロスの表情を見つめている。

 

「フゥ……。分かりました」

「その依頼、喜んでお受け致しましょう。お嬢さん(セニョリータ)」

 

「社長には事後承諾して貰うしかなさそうです」

 

 

「わぁっ!有難うございますっ!カルロス様!」

 

彼女はカルロスに抱き着いて頬に口づけをした。

 

 

後ろの傭兵達が俄かに殺気立つ。

 

(ざけんなー!!)

 

(いいなぁ…)

 

(俺がキスして貰う予定だったのに…)

 

(お、俺の天使がなんて事を)

 

(いつか殺す)

 

 

傭兵達は爆発しそうになっていたが、彼女が傭兵達の方に向かって歩いてくる。

 

そして傭兵達に対して一人ずつ装甲義体の上から手の甲を頬に当てていく。

 

傭兵達は次々とぎこちなく手を差し出していく。

 

 

「これから私を守って頂けますか?勇者さん達」

 

 

「「「「「はい!!!!!」」」」」

 

 

傭兵達は今年一番の元気で返事をした。

 

 

 

 

 




ガンタンク大好き。

戦車 + 巨大ロボット = 最強
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