※この作品はR-18です。

十字路世界   作:256進法

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第十七号:絶対聖女防空識別圏(後編)

 

干渉門周辺―――

 

「今から『起動』します。機士の皆、軍の護衛の方々、傭兵さん、私を守ってくれる全ての人達…」

 

「私の周りから暫くの間離れていて下さい」

 

金髪の女修道機士は周りにそう告げた。

 

周囲の手練れ達はササっと身を引く。

 

 

彼女の背中が天使の翼のように開く。

彼女の横にあった巨大なケースがカシュカシュと開いていき、中から様々なパーツが彼女に引き寄せられるかのように装着されていく。

 

まるで天使が神に形作られて行くように……。

 

 

思わずカルロスは瞠目した。

 

(なんだこの義体は……余りにも上等すぎる。もしかして『天使』シリーズか?)

 

(かつて32体あった『天使』シリーズだが現存しているのは5体のみと聞く…)

 

(2000年以上前の40年戦争でその大半が失われ、その残った5体の内、2体は行方不明な筈だ…)

 

(現在は残りの3体が金持ちの間で主に鑑賞用として出回っているとの噂もある)

 

(コルテスの装甲義体『ティソーナ』より明らかに上のグレードだ。『ティソーナ』だって伝説の義体技師マクシムスが製造した一級品の義体だ)

 

(それより上の義体だとすると確実に大機族か大公家クラスが保有している品だ。富豪共から買い戻したのか?さっぱり出所が分からない…)

 

(もし、行方不明の『2体』を大公家が秘密裏に保有していたとすればこの女に深く関わるのはマズい)

 

(『天使』シリーズ……義体の歴史に詳しい者なら誰でも知っている)

 

(何人かの聖人がその『天使』シリーズを使っていたとも言われるが…)

 

 

(使用者は例外なく悲劇的な末路を辿っている。聖ドライベルグは下賜を断ったとの記録もある)

 

 

(ティソーナが伝説級だとすればこっちは正に『神話級』だ)

 

(そんなご大層なモノを彼女に与える事自体に裏を感じる)

 

(深層バックアップに映像を記録しておくか。アリアドナに頼まないといけない仕事が増えたな)

 

(おっと起動の最終フェーズに入ったか。よく記録しておかないと!)

 

 

『彼女』は手を組み、祈りを捧げ始める。

 

その声は聞く者の脳を蕩かせる程美しかった。

 

「天にまします我らの母よ」

「願わくは御名を崇めさせたまえ」

「御国を来たらせたまえ」

 

「御心の天になるごとく、地にもなさせたまえ」

「我らの日用の糧を今日も与えたまえ」

 

「我らに罪を犯すものを我らが赦すがごとく、我らの肉の罪をも赦したまえ」

「我らを試みにあわせず、悪より救いだしたまえ」

 

「国と力と技は、限りなく汝のものなればなり」

 

 

「イニシエート!!!」

 

 

彼女の義体が輝き、光輝を増していく。

機械の翼は大きく拡がり、光は彼女を包み込む。

 

 

遠くには連邦軍の機動ヘリ部隊と戦闘機部隊が見える。

電磁装備。彼女とその仲間達へ向けられた研ぎ澄まされた悪意。

彼女達を殺す為だけに開発され、用意された兵器。

 

彼女は目を数秒間閉じそして開け、黄金色に輝く瞳で遠くの空を見つめた。

 

 

「ユクセル機士団団長、ルニシア・ヴァケイラス」

 

「今、主の敵を撃ち滅ぼします」

 

 

彼女から太い光が凄まじいスピードで天に伸びていく。

 

光は天に突き当たり、まるで傘のように拡散していく。

 

 

「「何だ!あの光は!!」」

飛空艇のパイロットとヘリに乗っている空挺隊員が叫ぶ。

 

「回避だ!!回避ー!!!」

一斉にヘリと戦闘機は回避行動を取る。

 

 

だが、その行動は無意味だった。

 

光は急角度で曲折し、逃げるヘリと飛空艇を追いかけ精確に次々に急所を貫いていく。

 

乗員や空挺隊員は慌てて次々と脱出用の重力ベルトを起動させ、飛び降りていく。

 

これなら着地しても足を挫く程度で済む。ビルの屋上に辿り着ければ幸運だ。

 

 

「1体とて逃しはしません」

 

 

落下中の兵士達に無数の細い光が襲い掛かり、次々と心臓と重力ベルトを貫いていく。

 

意識と重力ベルトを失った連邦軍の兵士達は急落下し、次々と地面に血溜まりが作られていく。

 

 

「空が、綺麗に、なりましたね」

 

 

 

―――機構支部付近。

 

クレアは災害救助を一旦終えて事態の確認の為に機構支部へ向かう為にビルの間を駆け巡っていた。

 

連邦軍の空挺部隊と飛空艇部隊が干渉門の奪回に向けて急いで飛んでいるのが高層ビルとビルの隙間から見て取れた。

 

(貴方達にとっては市民に死傷者が出ているという事は些細な事なんですね)

 

(でも門を確保しておかないと何が起きるか分からない。その判断自体はこの都市を守る者として尊重します)

 

 

「!!!?」

 

無数の触手染みた光が次々と部隊を貫いて行く。

 

クレアの強化された視力はバラバラと落下していく兵士達の顔をクッキリと捉えた。

 

そして、ゆっくりと落下していく兵士達の急所を細い光が貫く。

 

(な…にこれは…)

 

クレアはビルの上に着地し、防御態勢を取ると呆然とその光景を眺めた。

 

(ホーミングレーザー?ヴェルトでは使われている技術の筈。でもあれだけの数をこの精度で操作できる『兵器』なんて本部の資料でも見た事ない)

 

(根っこが有る筈。それを見つけ出して止めないと!本部の皆ごめんなさい!!)

 

クレアは近くにあった超高層ビルの屋上に『能力』を使って飛び移った。

 

飛び移るや否や、クレアは無数の光の根元を探す。

 

「光の…柱…?」

 

干渉門の辺りに巨大な光の柱があり、そこから無数の光の触手が伸びていた。

 

光の先にはエンジンを貫かれて爆散する機体が見える。

 

 

「視力強化!!」

 

 

クレアは元々強化されている視力を更に強化して干渉門の周囲を探った。

 

巨大な光の根元には眩しくて良く見えないが、大きい機械の翼が生えた女性と彼女の周囲を固める物々しい装甲を纏った武装兵が見える。

 

 

「――あそこか!!!」

 

「身体強化!!!!」

 

クレアは超高層ビルの上を疾走し、ビルの縁を思い切り踏み蹴って空中に猛スピードで飛び出した。

 

「糸!!!」

 

彼女は飛びながら目に見えない思念で編まれた糸を干渉門近くのビルに向けて発射する。

 

彼女の身体は伸びる先へ凄まじい勢いで引き寄せられていく。

 

 

 

――干渉門付近。

 

(これが『天使』シリーズの威力か…凄まじいな…)

 

(まるで空を覆う天蓋だ)

 

 

「!」

 

「総員戦闘準備!!」

 

「何か来るぞ!!!」

 

カルロスは両脇に差していたククリナイフに似た高周波ブレードを抜き取り、構えた。

 

「ヴァケイラス機士団長殿。聞こえていますかい?」

 

「はい。『主の敵』が向かってくるのですね?」

 

「こちらで処理しても構わないですか?早速になりますが仕事です」

 

「今は重要な局面だ。貴女のお手を煩わせる訳には行きませんので」

 

 

「まあ♡有難うございます。カルロス様。貴方に主と聖人のご加護を」

 

 

「聞いたか!野郎共!!殺し合いの再開だ!」

 

「「「了解!!隊長!!」」」

 

カルロスの特殊な高性能義眼は空中を高速で向かってくる褐色銀髪の女を即捕捉した。

 

「単独で向かってくるとは…舐められたモノだな…」

 

カルロスは静かにそして獰猛な殺気を放つ。

 

カルロスとその部下は一瞬にしてビルの外壁を駆けあがって行く。

 

こちらに向かって飛んでくる褐色銀髪の女が見える。

 

「良い戦士の表情だ…」

「だがここは異教徒と異端の立ち入り禁止だ!!」

 

カルロスとその部下は凄まじいスピードでクレアに飛び掛かる。

 

次々とクレアに斬撃が降りかかる。

クレアは空中で方向転換しながら持っていた衝撃吸収仕様のブレードでカルロス達の攻撃を受け流す。

 

一撃一撃が重い。

 

「手が…痺れる…!」

 

クレアは敵の装甲サイボーグを蹴り飛ばすと空中で一回転して低層ビルの屋上に着地した。

 

蹴られた装甲サイボーグも受け身を取りながら回転する。

 

(マズい。一兵士に至るまで全員が手練れだ。でもMUTE能力を使えば数の不利は覆せる―――)

 

「なあ、お嬢さん。何をしにここに来たんだ?」

カルロスはクレアに語り掛ける。

 

「特にMUTE能力者は立ち入り禁止なんだが……」

 

 

「門を取り返してこの街を取り戻す為です!!」

 

「貴方達は国際法に従い、逮捕され、然るべき処分を法廷で受けるべきです!!」

 

カルロスはポカンと呆れた顔をしている。

 

「あのな、お嬢さん。これはごっこ遊びじゃないんだ」

 

 

「ルール無用の戦争なんだ」

 

 

「そこら辺分かっててこっちに向かって来たんじゃないのか?」

 

「状況を見れば分かります!!貴方達は過剰な武力を持って市民の生活を脅かしています!!」

 

「そして法と秩序と市民の安全を脅かしている!」

 

カルロスは痒みが無い筈の頭をボリボリと掻く。

 

「あのな。銀髪褐色巨乳のお嬢ちゃん、よく聞けよ」

 

「その『法』と『秩序』とやらの外側がら来たんだ俺等は」

 

「そしてここの都市群は大公の支配を受け、機士か機族の物になり、ここの市民は『改宗』して俺達の同胞になるんだ」

 

 

「お前等の同意なんか最初から求めちゃいない」

 

「そして価値観や習慣にも従う気はない」

 

 

「それが理解出来たら回れ右して帰ってくれ。俺達は楽に高額の依頼料が手に入る」

 

「アンタは連邦の兵士じゃない。『機構』の職員かなんかだろ?こんな場所捨てて本部に帰ってコーヒーでも啜ってれば良い」

 

「そっちの方がお互いに得だ」

 

「俺達は傭兵だ。宗教機士と違って利益にならない事はなるべくしたくないんだよ」

 

「こんな事早く終わらせて報酬受け取って昼寝でもしたいんだ」

 

周りの兵士達も次々に頷く。

 

 

「嫌です」

 

 

「え??」

「何言ってんだ嬢ちゃん。何か理解出来ない事でもあったか???」

 

 

「嫌だ、と言っているんです。貴方達の支配なんて皆望んでいない」

「この街とここに住んでいる人達は私にとってとてもとても大切なモノ」

 

「そして私の大切なモノを傷つけて壊そうとしている貴方達を見逃す事は出来ない」

 

 

「そうか…不器用な女だな。なら…ここで死んで貰うしかないな」

 

カルロスと周りの兵士達は武器を構えなおす。

 

「殺す前に名前を聞いて良いか…?そのまま殺すには惜しい美女だ」

 

 

「クレア。私の名はクレア・マーヴェリック。調停機構危機対応局所属2級調停官です!!!」

 

 

「良い名前だ」

 

「俺の名はカルロス。授かりし義体名は『ファルカタ』」

 

「主と聖人と親友の名に懸けてお前を此処で排除する!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今年こそはエロ描写沢山入れたいなぁ
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