(前編からの続き)
装甲兵はバスから連れ出した避難民を銃で脅しつけ、どつきながら2列に並ばせた。
並ばされた子供が泣き出しそうになると親が宥めようと必死の形相で駆け寄る。
『列を乱すなって言ってんだろーが!!!』
装甲兵はそう叫ぶと腰に差している巨大なナイフを抜き取って、親の頭を掴むと首に対して水平にナイフで切りつけた。
声を上げる間も無く、首の根元から血が吹き出す。
装甲兵はそのまま首を無理矢理千切ると瓦礫の方に首を投げつけた。
それを見た子供がワッと泣き出し、走り出す。
『アイツは使い物にならないな』
そう言うと、近くにあったコンクリートブロックの塊を子供の頭目掛けて投げつけた。
投げつけられたコンクリートブロックは子供の頭が弾けると同時に砕け散った。
『うっし!当りぃ!!』
『いやーお前の投擲の腕は相変わらずだな』
『だろ?トーナメント出ちゃおうかな』
『やめとけやめとけ、機族や機士にバラバラにされるのがオチだ』
『お?『今の』が効いたみたいだぜ、キレーな2列になってる』
『え?マジ?やっぱ効果あるんだなさっきの方法』
『俺才能あるんだな、下士官の試験受けようかなぁ~』
『ハハハッ!お前試験の問題文とか理解出来んの?』
『舐めんじゃねぇよぉ!これでも9歳までは教育受けてたんだぜ?』
『方程式とかそういうレベルだけど大丈夫か?』
『アプリ使えば行けまぁーす!!』
『あのなぁ、試験中はアプリケーションの使用は禁止だぜ?』
『あ~~!?マジ?』
『マジ、大マジ』
『あーもーガックリ来たよ俺…折角自信出て来たのに』
『ま、地道に金と功績を稼ごいで行こうぜ』
『ワハハハハ』
『アハハハッ』
装甲兵達は歩きながら笑いこけていた。
そこに別のガデス大公国軍の装甲兵達の小隊が通り掛かる。
『お!お前等やったなぁ!』
小隊の指揮官らしき一際ゴテゴテした装甲と武器を身に纏った装甲兵が彼等に声を掛ける。
『はい!見て下さいよ!全員健康そうでしょ?』
『どうせ間引いたんだろ?しかしそれを考えても実入りが良さげだな…』
『車両が東の方角へ向かって行ってた時を抑えました。多分その先にも沢山居るんじゃないですか?』
『本当か?嘘を言ったら溶鉱炉にブチ込んでやるぞ』
『本当ですよホラ、車両の跡が東に向かって沢山続いてるでしょ?』
『…本当だ…で、お前等これから戦列に戻るのか?』
『まず奴隷達をコンテナか何かに押し込めて封をしておいてから、次は銀行とか貴金属店を荒そうかと』
『そうか、タップリ稼げよ…俺達の給料は安いからな!』
『ソレ、言っちゃいます?』
『俺は怖いカミさんが家で待ってるんだ、ここで稼がなアカンのよ』
『稼がないとどういう事になるんです??』
『おう。前手ぶらで家に帰った時は屋上から放り出されたな』
『お、鬼嫁っスね…』
『ああ、飛びきりのな』
『ま!兎に角情報ありがとうよ、後で奢ってやる』
『アザ(感謝)ッス!!』
感謝の言葉を受け取ると小隊の指揮官と小隊は東の方へ消え去って行った。
『さ、そらそら歩いた!歩いた!』
装甲兵達は虚ろな目をして連行されている避難民達を怒鳴りながら何処かへ消えていった。
軍勢の先頭――
先陣を切った機士ガスコーニュは思う存分暴れ回っていた。
だが同時に物足りなさも感じていた。
求めるのは強者との戦いと未知の世界。鋼鉄の我が身体を巡る人工神経を震え立たせてくれるような、そんな敵を求めて態々ジアースくんだりまでやってきたのだ。
機士団に入れば強者との戦いと冒険が待っている、そうルニシア団長は言った。
それがどうだ。
後ろに付いてきた軍の末端の兵卒や下士官、下級将校達は金目の物や奴隷を求めて散り散りになりかけている。
士気を維持する為とは言え、この有様では機士の戦とは言い無い。
俺の目の届かない場所で略奪をやる分には構わない。略奪、それは命を賭けて戦っている兵士達の権利でもあり、ガデスの軍法でも認められている事だ。
だが、俺の視界の中でやるのは決して許さぬ。
敵より先に殺してやる。
何よりも神聖な行為である殺し合いに不純物は不要だ。
『それ』は何よりも美しく気高く、そして尊い行為。
互いが命を賭けて全力で相手の価値を奪いに行く。
過去に経験した幾多のトーナメントや決闘でもそうだった。
今、あの猛者達は何処に居るのだろうか。
だが、今彼等に思いを馳せる暇は無い。
直ぐ後ろに完璧なまでの機士が俺の働きを見張っているからだ。
あの完璧な機士は約束した。
この戦争で抜きん出た功績を挙げれば、機士の果たし合いに相応しい場を整えて、決闘場で独り剣を携えて待っていると。
『あの』ラインバウトからそう言われたのだ。
嬉しくてたまらなかった。決闘の申し出を受け入れてくれた事、そして『機士としての約束』をしてくれた事が。
少年の頃に聞いた、電脳詩人が歌い上げる彼の活躍が今も自らの心を揺さぶる。
物語の中の人物に初めて会った時は柄にも無く緊張してしまって、暫く喋る事も出来なくなってしまった程だ。
その『彼』から直接戦いの指導を受けながら、同時に約束の履行を見守られている。
機士冥利に尽きると言う物だ。
ああ、間違いなく今俺は機士の中で一番幸せな男だ。