ユクセル機士団第一航空機兵隊隊長であるゲオルク・フォン・エアハルト。
この人物を一言で言い表すなら獰猛で残忍な修道機士だ。
そしてガデス大公国軍の戦略爆撃旅団に機族出身の将校として所属してた過去があり、戦闘の経験は豊富だった。
彼はルニシアが直接スカウトしてきた機士の1人だ。
軍と機士団との関係はお世辞にも良いとは言えない。
互いに独立した武装組織の為、どうしても噛み合わない部分がある。
だから通常、軍からのリクルートは難しい。機士団に入る事は一定の社会的ステータスを保障するものであるにも関わらず、だ。
だが彼は二つ返事で応じた。
しかし、同時に条件も出した。
一つは航空機兵部隊の司令職。
もう一つは航空戦用パーツは自由に変更・改造出来る事。
ルニシアは少しの間考え込んだが、その2つの条件を飲んで彼を迎え入れた。
結論から言えば彼は門の向こうの東部戦線でルニシアの期待以上の働きをした。
敵の戦闘艇や戦闘機を空戦で破壊するだけでなく、敵の地上部隊にも多大な損害を与え続けた。
彼が出撃しない日は無く、ほぼ毎日執拗なまでに戦闘に従事した。
エアハルトの活躍はガデス中に知れ渡った。
そのお陰で機士団に対する寄進が更に増大し、同時に彼の機士団における立場は確固たる物となった。
だが、ルニシアは彼が自分と同種だと見抜いていた。
彼は非戦闘員も無差別に殺害しており、それを呵責に感じないどころかそれを快感や喜びに変える、そういう類いの人物だと。
無情の航空快楽殺人機士が避難民の後ろに迫っていた――
「隊長!肉袋共は無視して良いんですかい?」
32機の大型航空機兵が編隊を組みながら、獲物を探していた。
「大丈夫だ。どうせ暫く立ち直れないし、巡礼城とルニシア様が居る限り制空権はこっちの物だ」
「それよりも…」
「原住民共の軍隊や避難民をどうにかする方が先だ」
「向こう(東部)で下等生物共ににやったみたいにな」
「こっちの住民達は向こうみたいに血を吸ったり人肉を食ったりという事は無さそうッスね…」
「態々追いかける程の物でも無いとは思っていますが…」
「バカかお前は」
「えっ?」
「こいつらの打ち捨てられた戦闘車両の数を見ろ」
部下の機士が慌ててモニタで照合する。
「先の戦闘で相当数損害を受けたのにも関わらずまだ残存部隊が抵抗している」
「こいつらは俺等が考えて居るより多数の兵器を所有しているって事だ」
「これだけの兵器と兵力で目指す場所が俺等の国以外の何処にあると言うんだ」
「放っておけば俺達の故郷に謀略を仕掛けて内乱に陥らせる事だって考えられる」
「某連邦のようにな」
「だから、ここで殺す。残らず殺し尽くす」
「了解(わか)ったな?」
「「「了解!ヘルコマンダ!!」」」
部下は整然と返答する。
「お、噂をすればとやらだ…対地上戦闘開始!!」
エアハルトの指示の元、32機の航空機士が合衆国軍と避難民に襲いかかった。
ヒュルルルルル…
兵士達の頭上から何かが落ちてくる音がした。
「?何だ…!爆だっ」
兵士が警鐘を鳴らしきる前に「それ」は弾けて広がり、一帯を猛烈な爆風が包み込んだ。
高熱と爆風で避難民や兵士手足は千切れ飛び、内臓は吹き飛び焼かれ、車両は紙風船のように破れていく。
「まだまだだッ!ここで肥料になっていけ原住民共!」
編隊は胴体のハッチから次々と指向性サーモクラスター爆弾をばら撒いていく。
避難の列を沿うように猛烈な爆撃を掛けていく。
「全機旋回!生き残った敵を誘導磁力ミサイルで仕留めろ!」
エアハルトは編隊を引き連れながら旋回し、再度攻撃を仕掛けていく。
「ヒャハハハハハハッ!!久々に気持ちが良いぞッ!」
突如、硝煙の中から対空機関砲による攻撃が編隊に向かって飛んできた。
弾がエアハルトに向かって飛んでくる。
「バカが…」
エアハルトは巨大な人型に変形すると、肩に収納していた機関砲で全ての弾を撃ち落とした。
「貴様等…俺に無駄弾を使わせた罪は重いぞ…」
彼は怒りで声を震わせながら腕を巨大なライフルに変形させていく。
「その無様な行列を地平線まで焼き尽くしてやる」
「「「やるんですか!?アレを!!」」」
「そうだッ!!お誂え向きって奴だ!!ハーハッハァー!!」
エアハルトは巨大なライフルを構える。
「ジェネレーター起動!反重力空中姿勢制御機構問題無し!」
「反射率25%!反動吸収システム異常無し!」
「限界距離24000!角度修正良し!目標追尾機能良し!」
「充填率70……80……90…95…」
「100!」
「喰らえーーーッッ!!!ポジトロンシャフトレーザー!!!」
太いレーザーが巨大なライフルと化した彼の腕から放たれる。
レーザーは行列だけでなくその周囲の人間や兵器、さらには建造物まで巻き込んで焼き尽くして行く。
「フハハハハハッ!天の光に焼かれて逝け蛮族共!!」
エアハルトはバカ笑いをしながらレーザーを放出していく。
そして避難民と軍の行列は数十キロメートルに渡って焼き尽くされてしまった。
「見ろ!地平線までスカッとしたぜ!」
「さあ野郎共!まだまだ仕事は残っている!次の獲物行くぞ!」
「「「「了解!ヘルコマンダ・エアハルト!!」」」
エアハルトは大型の戦闘機に戻り、部下を引き連れて何処かへ飛び去って行った。