マイクはリビングの床を開き、父親の遺産らしき物を取り出すとすぐ様に
ガレージへ駆け出した。
モニカもマイクを追いかける。
ガレージに辿り着くと、マイクは鍵を使ってシャッターを開け、中から必要そうな物を物色してリュックサックに詰めていく。
「モニカ、多分このリュックだけだと納まりきらないから幾つか持っててくれるか?」
マイクの目は涙を流し過ぎて腫れている。
「はい!学校用のバックを持っているのでその中に…」
「ありがとう。助かるよ」
「いえ…マイクさんこそ無理をしないで下さい…」
「…申し訳ないね。気を使わせてしまった」
「……」
モニカは俯く。
「…用が済んだらこの家と母さんに別れを告げる」
マイクは自分に言い聞かせるようにつぶやく。
「あのっ!」
モニカは叫ぶと同時に正面からマイクに抱き着く。
「大丈夫ですから…大丈夫ですから!」
「なんて言えば良いのかわからないけど…」
「きっと何とかなります!ならない筈は無いんです!!」
モニカは泣きながら叫ぶ。
「そうか…そうだったな…」
マイクはモニカの頭を撫でる。
「行こう」
「…はい」
マイクは燃え盛る家に対して一瞥すると荷物を車に入れ、座席に乗り込んだ。
モニカも同様に乗り込む。
(何を何処で間違ってしまったんだ)
晴彦は車のアクセルを踏む。
車は反動を伴いながら発進した。
「さようなら、母さん」
外で鳴り響き続ける爆音とは対照的に車内は静寂に包まれていた。
「……」
「………」
(どうしたらいい)
「…取り敢えず北東へ行こう」
「……」
モニカは無言のままうずくまっている。
暫く車を走らせると軍の装甲車と戦車に囲まれた検問所が見えて来た。
マイクは兵士の前で車のウィンカーを下げる。
「避難民か?それなら道なり10分程進んでから右に曲がって、そこからはまた真っ直ぐだ」
「ありがとうございます」
「街の様子はどうだった?」
兵士はマイクに尋ねる。
兵士達にとっても色々と気に掛かる事があるのかもしれない。
「建物が次々と吹き飛ばされていきました」
「…やはりか…」
「他の部隊を見かけたか?」
「いえ…しかし炎上した装甲車両や軍人の遺体は見かけました」
「…畜生…!」
「隣の子は妹か?」
モニカが驚いてたどたどしい反応をする。
「いっ…いえ…あの…」
モニカは気が動転していて、上手く喋れなかった。
「友人の妹です。保護を頼まれました」
マイクがすかさず返答をする。
兵士の顔が一瞬ほっとしたような顔になる。
「そうか…気をつけてな…」
「家族はもう街を脱出したのか?」
「いえ…母は自分の目の前で、炎上する実家と共に死んでいきました」
「…すまない事を聞いた」
兵士はマイク達の事を正視出来ず、つい目を逸らした。
「いえ…自分の中でも整理がついてない事ですから」
「まるで現実感が無いんです」
「…そうか…もう行っていいぞ」
マイクは車のアクセルを踏んだ。
そして30メートル程走り出した瞬間、後方で大きな音が聞こえた。
振り返ると、装甲車や戦車が次々と炎上していく。
兵士達が宙に吹き飛ばされて行く。
「なっなんだ!何かに掴まれ!飛ばすぞ!」
マイクはアクセルを全開にして車を飛ばす。
が、車の側面近くで爆発が起き、車が横転する。
「…っ!!」
モニカは状況が理解出来ず、頭を抱えながら回転する車内でうずくまった。
横転し、車は一回転して持ち直した。
マイクはキーを差し込んで必死にエンジンをかけようとする。
しかし、かからない。
「荷物を持って徒歩で逃げるぞ!大丈夫か!?モニカ!!」
「はっはい!」
モニカは車からでると後部座席においてあった自分の荷物を持ってまっすぐ駆け出した。
マイクもトランクを蹴り上げて、中から荷物を取り出して、モニカを追い掛けた。
後ろでは兵士達が応戦する音が聞こえてくる。
(一体何が来たんだ!)
応戦の音が止んでいく。
(やられたのか?)
後ろを振り返ると硝煙に隠れて、影が複数見える。
「モニカ!近くの建物へ逃げ込め!」
「あの灰色の低層ビルだ!」
「はい!」
『人の声がしたな、狩るか?』
『ああ、小遣い稼ぎだ。うるせぇ将校も機士もいねぇしな』
『探すぞ。聞いた感じまだ遠くへは行っていない』
『男だ。男の声がした』
マイクとモニカは雑居ビルの3階へ身を隠した。
モニカは小声でマイクに話し掛ける。
「なに…なんなの…?あいつ等…?人間ですよね…?」
「体に装甲…?何…?」
「自分も良く分からない…だが、今回の惨劇を引き起こした連中なのは確かだ」
装甲を身に纏った敵の兵士達は車のドアを引き剥がしたり、周囲の建物に標識などを放り込みながら、何かを探している。
「アレって私達の事を探してるんじゃ…」
モニカが呟く。
「そうかもしれない。息を殺してやり過ごすしかない。」
『…出てこねーか…」
『しゃあねぇな!一軒ずつシラミ潰しに家の中に入ってぶっ壊していくしかねぇか!』
『ああ』
『…だな』
『それしかないか。手間かけさせやがって…』
『奴隷共…副収入のチャンスなんだ。逃がさねぇぞ、絶対にだ』