※この作品はR-18です。

対魔忍ユキカゼ參 〜復活の矢崎 バッドエンドワールド〜   作:三紋昨夏(サンモン・サッカ)

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【プロローグ】正史の世界 政界のフィクサー矢崎、成田空港で死す!

 魔都・東京と世界を繋ぐ玄関口、深夜の第3羽田国際空港。

 

 米連政府のチャーター機で亡命者が搭乗するのを待っていた機長と副機長は、派手な爆発を目撃した。まるで爆弾が破裂しかたのような破裂音。黒煙を上げ、炎上する光景はテロを想像させる。

 

「管制塔(コントロールタワー)、何が起こっている? 空港で火災が起こっているぞ」

 

 白人の副機長は無線で管制塔に詳細を問い合わせた。火災現場からは距離が離れている。飛行機に引火する可能性はない。だが、彼らは一刻も早く日本を発たなければならない理由があった。しかし、管制塔から返答はない。

 

「くそっ! 何が起こっているんだ⋯⋯。ヤザキは何時になったら来るんだ」

 

 亡命希望者の名は矢崎宗一(やざき むねいち)。日本の大物政治家だ。

 

 民新党の元幹事長、上院議員を9期務める党の重鎮であり、政権与党時代は中華連合親善議員連盟会長を務め、政界に跋扈していた。東京の地下深くに存在する闇の無法都市ヨミハラの実力者と深い関係にあり、人魔間の取引を牛耳る人側のフィクサーだ。

 

 権力を欲しいままとしていた矢崎だが、つい2カ月前に風向きが変わる。選挙の直前、あるスキャンダルが報じられたのだ。民進党のパーティーで売春婦が性接待をしていたという醜聞が暴露されたのである。

 

 その結果、政権与党だった民進党は総選挙で大敗し、政権交代が起こった。選挙で敗北した責任を問われた矢崎は幹事長を辞任。これまで権力で犯罪行為を揉み消してきた矢崎は、失脚したことで窮地に立たされた。逮捕は時間の問題だった。

 

 公安局の捜査が迫る中、矢崎は魔界の技術に関する機密情報を手土産に米連への亡命を希望した。亡命先から中華連合を外した理由は口封じを恐れたからだ。

 

「あの爆発、ジャップの猟犬に嗅ぎつけられたな⋯⋯。ヤザキを警護していた曹長と伍長はおそらく死んだ。つまり、俺たちの仕事は終わりだ。ヤザキも今ごろは消されているだろうさ」

 

 機長は静かに呟いた。副機長は管制塔からの返答を待っているが、無線機から返事は聞こえない。通じていないはずがない。無視されているのだ。

 

「曹長と伍長はサイボーグ兵士ですよ。そう簡単に殺されるはずが⋯⋯」

 

 コックピットにいる機長と副機長は米連のパイロットだ。軍服は着ていないが所属は軍であり、正真正銘の軍人であった。矢崎を警護しているエージェントも拳銃程度では傷つかないサイボーグ兵士であった。

 

 矢崎が持ってくるはずだった機密は、米連が喉から手が出るほど欲しい情報だった。たとえ日本政府との関係が悪化したとしても、魔界の技術に関する特A級の機密が得られるのなら安い代償だった。

 

「機長! あれは⋯⋯!」

 

 副機長は滑走路を駆ける二つの人影を指差した。火災で周囲が照らされていなければ、闇に紛れて何も見えなかっただろう。

 

「曹長と伍長を殺したのはあの2人だ。見つかった時点でこっちの負けなんだよ。本国に報告をするとしよう。矢崎は抹殺され、入手できるはずだった機密事項は消されたとな」

 

「あの2人が空港を爆破したと? 一瞬しか見えませんでしたが、あれは女でしたよ?」

 

 副機長は信じられなかった。だが、日本で活動していたことのある機長は事情をよく知っていた。

 

「違うぞ。奴らは女じゃない。————対魔忍だ」

 

 闇の存在、魑魅魍魎が跋扈する近未来、日本。

 

 人魔の間で太古より守られてきた“互いに不干渉”という暗黙ルールは、人が外道に堕ちてからは綻びを見せはじめ、人魔が結託した犯罪組織や企業が暗躍、時代は混沌へと凋落していった。

 

 しかし、正道を歩まんとする人々も無力ではない。時の政府は人の身で〈魔〉に対抗できる“忍びのもの”たちからなる集団を組織し、人魔外道の悪に対抗した。

 

 ————人々は彼らを“対魔忍”と呼んだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 物語は上院議員・矢崎宗一(やざき むねいち)が殺される直前まで遡る。

 

 炎上する第3羽田国際空港のフロア。ボディガードだった米連のエージェント2人は死体となって転がっている。残るは矢崎だけ。もはや逃げ場はどこにもない。矢崎にできることは、ただ一つ。見苦しく叫き散らすことだった。

 

「ヨ、ヨミハラの件は済まなかった!」

 

 青ざめた顔となった矢崎は必死に命乞いをする。自分より年下の少女に臆面もなく、頭を下げて懇願していた。けれど、期待しているような反応は返ってこない。蔑視の目を向けられ、矢崎は延命を図るための切り札を使う。

 

「聞いてくれ! ゆきかぜ! お、お前の母親の居場所を俺は知っているぞ! 本当だ! 嘘じゃない! 不知火とは一緒にいたんだ! しかし、今は別の場所にいる!」

 

 対魔忍ゆきかぜの実母・水城不知火(しらぬい)は5年前、地下都市ヨミハラでの任務中に消息を絶った。行方不明となった母親を探すため、ゆきかぜは4月に秋山凜子とともにヨミハラに潜入した。しかし、それは矢崎が仕掛けた狡猾な罠だった。

 

 駆け付けたアサギ達によって救出されなければ、身体を徹底的に弄ばれ、奴隷娼婦として矢崎の相手をさせられていただろう。

 

 幸いにして、早期に救助されたゆきかぜと凜子は、3週間の屈辱的な肉体改造を受けたものの、処女を失わずにヨミハラから脱出することができた。

 

「信じてくれ! 俺を見逃してくれたら、母親の居場所を絶対に教えてやる!」

 

 矢崎はゆきかぜと凜子の表情が変化していることに気付いた。米連のボディガードは役に立たなかった。生き残る道は、この生意気な小娘達を口車に乗せるしかない。

 

「いいか! 俺を殺せばお前の母親は酷い目に遭うぞ! だが、俺を見逃せば救出できるように取り計らってやってもいい! どうだ!」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 ゆきかぜは電銃の銃口を矢崎に向けた。それは脅しではなく、正真正銘の死刑宣告だった。

 

「しょ、正気か!? 母親が死んでもいいのか!? 俺が死ねば居場所は一生分からないぞ!」

 

 矢崎の言葉には嘘が含まれている。たとえこの場で矢崎が死んでも不知火が報復されることはない。また、失脚した矢崎では不知火を自由にすることもできなかった。

 

 そもそも約束なんて守りつもりはないのだ。しかし、一部は真実も含まれている。不知火が何所にいるのかを確かに知っていた。

 

(くそっ! このバカ娘が! どうして分からない!? ここで俺を殺せば母親に辿り着く手がかりはなくなるんだぞ!)

 

 今から4年前、矢崎は政権の中枢で権力の全盛を謳歌していたある日。ヨミハラで娼館を運営している実弟のリーアルから、元対魔忍の娼婦が欲しくないかと言われた。写真を見せられて、矢崎は一目で気に入った。

 

 身長170センチ、バスト112、ウエスト60、ヒップ88。年齢こそ30代半ばだったが、容姿の衰えは微塵もなく、むしろ妖艶に熟していた。Jカップの爆乳からは母乳を味わうこともできる。

 

 矢崎は一瞬も迷わず、二つ返事で買うと答えた。

 

 その娼婦こそ水城不知火。5年前に行方不明となっていた、ゆきかぜの母親だった。

 

 矢崎に引き渡されたとき、不知火は抵抗したり、逃げ出せないように肉体改造されていた。だが、心は堕ちておらず、まだ反抗心が残っていた。

 

 不知火を捕らえた淫魔王は、調教をするコストが見合わないと売りつけてきたのだ。だが、矢崎にとっては好都合だった。

 

 自分を睨み付け、寝首を掻こうとしてくる対魔忍の女を犯すのは最高だった。暗躍している矢崎にとって、対魔忍は厄介な存在で、さっさとぶっ潰したい仇敵だった。

 

 何度も煮え湯を飲まされてきた鬱憤をぶつけた。聞けば不知火には対魔忍の夫がいて幼い娘がいる。そんな人妻を矢崎は思う存分、徹底的に陵辱した。

 

 いつか仲間が助けにきてくれると抵抗を続けた不知火だったが、矢崎に飼われた3年の奴隷生活でついに堕ちてしまった。対魔忍の誇りを捨て、家族への愛を忘れ、矢崎のメス豚となったことを認めさせた。

 

 淫魔王との取り決めで、あくまでも矢崎は不知火を無期限で借りているに過ぎなかった。もし、この場に不知火がいれば、ゆきかぜや凜子ごときに追い詰められることはなかった。

 

(くそっ! あのスカした淫魔王め! 米連のポンコツではやはりダメだった。護衛が必要なときに俺の不知火を呼び戻しやがって⋯⋯! ん? なんだ? どうして俺はここ数年のことを思い起こしているんだ⋯⋯?)

 

 矢崎の脳裏に浮かぶのは、不知火を従えるようになってからの記憶だ。政権与党の権力を振りかざし、多くの悪事に手を染め、不知火を抱き続けた。

 

 ヨミハラの娼館で遊ぶこともあった。だが、秘書兼愛人として側に置いていた不知火は、他の議員などからは内縁の妻と思われることが多かった。矢崎が開く政治資金パーティーでは、ドレス姿の不知火を目当てに出席する男達が大勢いて、荒稼ぎすることもできた。

 

 このまま米連に亡命し、対魔忍から逃げおおせたら、不知火を呼び出して、調教の仕上げに子供でも産ませてやろうかと邪な欲望を抱いていた。

 

(————まさかこれは走馬灯? 俺は死ぬのか?)

 

 電銃に宿る雷光が増していく。ゆきかぜは迷いを捨てた表情をしていた。もう矢崎ごときの言葉で、惑わすことはできない。地獄の底から聞こえてくるかのような暗い声で、ゆきかぜは告げた。

 

「————自分で探すわ、クズ」

 

 ゆきかぜの電銃から雷撃が放たれた。高圧の雷弾は矢崎の肉体を引き裂き、血中の水分を一瞬で沸騰させ、焦熱によって死体はすぐさま炭化した。

 

「ターゲット抹殺完了⋯⋯」

 

 消し炭となった矢崎に向ける眼差しは、微かながら後悔の色があった。矢崎のような悪徳な政治家に哀れみなどは感じない。しかし、この卑しい男は数カ月前まで政権の中枢にいた。対魔忍が掴んでいない情報を持っていた可能性は高かった。

 

 けれど、ゆきかぜは選択を間違ったとは思わない。雷銃をホルスターに戻す。失踪した母親を探す手がかりは、達郎が探してくれている。

 

 達郎は任務の相棒となっている凜子の弟で、ゆきかぜが恋心を寄せている幼馴染みだ。対魔忍を育成する五車学園に通う1年生同士なので、一緒に任務を行うことも多かった。だが、今回に限り達郎はここにはいない。

 

 ゆきかぜと凜子は荒事専門、達郎は諜報に秀でた対魔忍だ。数ヶ月前、策謀によってヨミハラで肉体改造を受けた、ゆきかぜと凜子の脳内にマイクロチップが埋め込まれていることが判明した。

 

 五車学園に与する魔界医の桐生佐馬斗によって脳幹から摘出された洗脳マイクロチップは、〈イブ〉という魔界の技術によって製造されたものだった。

 

 このチップの製造元が鷲津マテリアルであることを突き止めた達郎は、諜報の名手である高坂静流ととともに鷲津グループが運営する聖修学園へと潜入していた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 達郎と静流は、潜入してから1カ月と経たないうちに聖修学園が“黒”である証拠を掴んだ。

 

 遭遇した敵がヨミハラでも使われていた洗脳マイクロチップ〈イブ〉を使ってきたのだ。達郎と静流の報告を受けて、対魔忍を率いる五車学園校長のアサギは強襲部隊を組織し、聖修学園の壊滅を命じた。

 

 強襲部隊の主戦力に抜擢された、ゆきかぜ、凜子、達郎、静流の4人は聖修学園の地下施設に攻め入った。

 

 鷲津グループの総帥にして聖修学園の校長を務める鷲津茂。ゆきかぜが殺した矢崎宗一は、鷲津茂の実妹の長男に当たる。つまり、矢崎と鷲津は甥と叔父の親戚関係にあった。

 

 鷲津茂は82歳には見えない若々しい姿から、政財界で妖怪と畏れられていた。その正体は、人間に擬態した淫魔族だった。聖修学園の地下施設の最奥まで辿り着くと、鷲津茂とその従者・犬井秀雄が淫魔族の本性を現し、ゆきかぜ達に襲いかかる。だが、淫魔族の首魁は、表向きの聖修学園を支配していた彼らではなかった。

 

 鷲頭家の血縁者で、学園の特待生科の3年生だった黒井竜司。彼こそが淫魔族を統べる淫魔の大王であり、全ての黒幕だった。

 

 淫魔王の隣には正気とは思えない格好で戦う変態女がいた。素顔をラバーマスクで隠し、頭から足先まで全身を黒いラバースーツで覆い、口にボールギャグを咥えた鉤爪の女。ラバー女は見かけに反し、とてつもない戦闘力の持ち主だった。

 

 それでもゆきかぜ達は鷲津と犬井を倒し、淫魔王を追い詰める。淫魔王はゆきかぜ達の実力を認め、いさぎよく撤退していく。その去り際、ユキカゼ達にラバー女は素顔を見せる。

 

 ラバー女は5年前に行方不明となったゆきかぜの実母、ずっと探し続けてきた水城不知火だった。矢崎の死後、不知火は淫魔王の下で働いていたのだ。

 

 淫魔王に跪き、付き従う母親の姿を見て、ゆきかぜは困惑する。

 

「お母さんっ!!」

 

 悲痛な表情を浮かべ、ゆきかぜは呼びかける。だが、不知火は艶めかしい笑みを浮かべる。

 

「強くなったわね。ゆきかぜ、凜子ちゃん」

 

 人外のような雰囲気を漂わせていた。不知火と淫魔王の身体が瘴気に包まれていく。5年ぶりに再会し、涙を流す娘を無視して、淫魔王とともに姿を消した。

 

 こうして聖修学園掃討作戦は終わった。不知火の生存が判明すると同時に、抜け忍となったことが明らかになった。しかも、魔界と組みする極悪な抜け忍だ。

 

 アサギの配慮で事実は伏せられた。しかし、母親が裏切り者になっていた事実は変わらない。ゆきかぜは普段は底抜けに明るい性格だった。けれど、この件を機に暗い表情を浮かべることが多くなった。




次話からオリジナル展開です。
プロローグは正史の復習。復活した矢崎がメインとなる「対魔忍ユキカゼ參 〜復活の矢崎 バッドエンドワールド〜」の始まりです。

▼世界観の設定について
 エロゲメーカーLilithの「ユキカゼ1」「ユキカゼ2」、対魔忍シリーズの世界観を踏まえつつ、「ユキカゼ3」を妄想で書いてみました。宗教上の理由でソシャゲはできないため、RPGの設定は含めていません。ただし、wikiを見て参考にはしています。

 基本、モブを除いてオリキャラは出さない方針です。主要キャラのオリキャラは、ゆきかぜの妊娠エンドで存在は明示されているもの、名前どころか性別すら不明だった「宗風」くらいです。息子に設定して、両親の名前を一文字ずつ使いました。「宗風(ときかぜ)」と読みます。

 いつの日か、本当の「ユキカゼ3」が発売されることを信じ、検索妨害とならないようにタイトルの「3」を「參」としています。
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