※この作品はR-18です。

対魔忍ユキカゼ參 〜復活の矢崎 バッドエンドワールド〜   作:三紋昨夏(サンモン・サッカ)

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【1話】矢崎の子供たち「ほたる」と「宗風」

 2081年10月2日、聖修学園掃討作戦が終わってから数週間が過ぎた。対魔忍の活躍によって性能マイクロチップの生産拠点は壊滅した。しかし、報道規制によって真実は隠蔽され、学園の運営母体が変わることだけが小さく報じられた。

 

 公となっていない対魔忍の存在を隠すというよりも、聖修学園に通う一般生徒への配慮であった。

 

 その後の調査で、淫魔王たちは学園の女子生徒を奴隷娼婦に仕立て上げ、ヨミハラに売りつけていたと分かった。卒業後、行方不明となっている女子生徒は百人を超えていた。

 

 公安局ではヨミハラ壊滅に向けた議論が本格的に行われているという。これまで障害となっていた矢崎のような腐敗した議員がいなくなったことで、犯罪都市ヨミハラの取り潰しは現実味を帯び始めていた。無論、淫魔王の出先機関となっていた鷲津マテリアルは強制解散となった。対魔忍の協力を得つつ、今後は鷲津財閥の解体が行われていくことになるだろう。

 

 一方その頃、首都圏外郭放水路の地下にある犯罪都市ヨミハラでは、淫魔王の拠点が対魔忍に強襲されたとの噂が飛び交っていた。ヨミハラには魔界と繋がっている門がある。日本政府の支配を受け付けない無法地帯となっており、魑魅魍魎と人間が結託した多国籍複合企業体ノマドの支配下にあった。

 

 ノマドは長年にわたって対魔忍と敵対関係にある。最強の対魔忍アサギとの因縁も深い。ノマドの頂点に立つのは、吸血鬼の始祖エドウィン・ブラックである。しかし、魔界側の犯罪結社も一枚岩ではない。

 

 ノマドは淫魔王の勢力と潜在的な競争関係にあった。既にヨミハラの利権を巡る利害対立が生じているが、今のところ表立った抗争にはいたっていない。

 

 数ヶ月前、ゆきかぜと凜子が潜入したリーアルの娼館アンダーエデン。政財界の大物がよく訪れることで、ヨミハラでは知らぬ者がいないほど有名な娼館だ。リーアルが直々に調教した奴隷娼婦だけが所属する高級店でり、このアンダーエデンもノマド直営系列の娼館である。ヨミハラで売春業を営むには、ノマドから許可を得なければならない。

 

 無法地帯と揶揄される犯罪都市だが、ノマドによって秩序は維持されている。ノマドにさえ逆らわなければ、どんなことでも許される場所なのだ。しかし、逆に言えばノマドに反逆すれば、待ち受けているのは惨たらしい制裁である。

 

 ヨミハラの主要な産業は売春業だ。ギャンブルや薬物など、表の世界では許されない非合法的な楽しみを提供する犯罪都市は、娼婦や奴隷商人で溢れている。売春と奴隷売買は、ヨミハラの経済活動に欠かせない存在となっている。客と娼婦との間に出来た娘が、売春婦となる社会構造が出来上がっていた。

 

 ヨミハラの路地裏に2人の街娼がいた。露出の多い派手なドレスを着ている。下着姿といってもいいくらいだ。売春街では珍しくもない見慣れた光景だった。ヨミハラは地下にあるため、太陽光が届かない。しかし、地熱のおかげで気温は1年を通して温暖だった。素っ裸で歩いていても、さほど寒くない。

 

「ねえ、アンタ。アンダーエデンで稼げてるわけ?」

 

「うん。人間の客が多いし、お金持ちの議員がよくパーティーやってるから羽振りはいいよぉ。人間相手のほうが楽だしね。オークの相手とかやってたら身が持たないもん」

 

「あら? アンタって地上の出来事を何も聞いてないの?」

 

「地上? そんなの知らない。私、ヨミハラから出たことないから。なんかあったの?」

 

「民進党の政治資金パーティーでアンダーエデンの娼婦が性接待してたのがマスコミにバレちゃったのよ。そのせいで民進党は選挙で大負け。民進党所属の議員は軒並み落選して、政権交代が起こったのよ」

 

「へえ、そうなんだ。私、その政治資金パーティーに参加してたかも⋯⋯」

 

「それだけじゃないわ。リーアルさんのお兄さんはそれで失脚、米連に逃げようとして対魔忍に殺されちゃったらしいわ」

 

「リーアル様のお兄さんって矢崎先生のこと?」

 

「そう。あの大きな豚ちゃん。日本ってマジで終わってるわ。だって、あれが党の重鎮だったんでしょ? 総理大臣になったら、ヨミハラを首都にするとかって言ってたらしいわ」

 

「あー、そんなことも言ってたかもね。そっか。矢崎先生、死んじゃったんだ。オチンポ大きいし、お金たくさんくれるから好きだったのに⋯⋯。セックスは乱暴だったけど。でも、セックスとドラッグがあれば、私は誰が総理でもいいかな⋯⋯」

 

「ねえ。そんなにドラッグを買うお金がほしいの? だったら、アタシのいる店で働かない? アンダーエデンよりきつい客は多いけど、絶対に稼ぎはいいわよ」

 

「⋯⋯私は奴隷娼婦だから他の店は無理だよ」

 

 薬中娼婦は生まれも育ちもヨミハラだった。両親のことはよく知らない。

 

 ただ、リーアルの娼館では、稀に捕まえられた対魔忍が娼婦にされることがある。おそらく任務に失敗して売春婦に堕ちた対魔忍と客の間に出来た子供だった。

 

「だから、私の働いている娼館の主様に頼んで、アンタを買い取って貰うの。だって、矢崎は対魔忍に殺されちゃったし、アンダーエデンは政治的な後ろ盾を失ったわ。噂だと淫魔族の勢力と協力関係にあったのがバレて、ノマドからも睨まれ出したって話よ」

 

 アンダーエデンは矢崎の実弟、リーアルこと矢崎利二が運営している。だが、兄の矢崎宗一が死んだことで、ビジネスの雲行きが怪しくなっていた。リーアルはノマドと太いパイプを持ち、長年にわたって良好な関係を築いていた。だが、裏では淫魔王とも取引をしている。

 

 5年前、ヨミハラに潜入していた不知火は、失踪した対魔忍の行方を追って、リーアルの娼館を調べていた。不知火に殺されかけたリーアルを助けたのは淫魔王だった。

 

 淫魔王は捕まえた対魔忍や聖修学園の女子生徒を娼館アンダーエデンに売っていた。矢崎が奴隷として不知火を飼っていたのはそういう理由があった。

 

 美女達を仕入れてもらう見返りとしてリーアルは、調教師として洗脳マイクロチップの開発に協力。こうしてノマドにはバレない形で淫魔王と手を結んでいたのだ。だが、ここにきて洗脳マイクロチップが厄種となる。チップを製造している鷲津マテリアルが、ノマドから流出したの魔科医の技術を使っていると勘付かれてしまったのだ。

 

 事実としてノマドが独占していた洗脳チップの製造技術は、リーアルから淫魔王に流れていた。ヨミハラにおいてノマドに歯向かうのは破滅を意味する。この犯罪都市でノマドを裏切るのは、秩序への挑戦に等しい。リーアルは崖っぷちに追い詰められていた。

 

「アンタがその気なら、私がちゃんと話を通しておいてあげるからさ、ねえどう?」

 

 巨乳の娼婦は勧誘を畳み掛ける。かつてなら許されなかった娼婦の引き抜きも、リーアルの力が衰えた今なら可能となっていた。アンダーエデンには有望な娼婦が何人もいる。彼女達は金の卵を産むニワトリだ。ヨミハラの娼館経営者はこぞって娼婦に誘いをかけていた。

 

「ちょっと待って、お薬の時間だから⋯⋯」

 

 奴隷娼婦は魔薬を決める。彼女は1日に1回は薬物を摂取しないと狂い死にしてまう。リーアルによって幼少期からシャブセックス漬けにされた結果だ。

 

 薬中娼婦は蕩ける視界のなかで、異様な光景を目にする。歪んだ空間から、2人の人間が生まれ落ちた。魔薬の幻覚であると薬中娼婦は思った。なので何ら疑問を抱かない。

 

 

「ふひぃぁぁぁ⋯⋯。綺麗⋯⋯! アハッ! アッハハハハハハ⋯⋯!」

 

 初めて見るパターンだったので、薬中娼婦はおかしくなってケラケラと笑っている。しかし、正気である巨乳の娼婦は、自分の目を疑っていた。何もない空間から実際に人間が現れたのだ。

 

「———うぅ、酷い空気。気持ち悪くなってきた。平衡感覚も狂ってるし、なんか酔ったかも⋯⋯、こっちが新しい世界⋯⋯?」

 

 赤茶髪の少女は周囲を見渡す。その衣装は対魔忍を脳裏に浮かばせるが、彼女が纏っているのは対魔粒子ではなく魔力だった。大きく盛り上がった淫猥なバストは確実にKカップ超えている。顔をよりも大きな乳房を2つぶら下げていた。

 

「たぶんね。僕らは世界を移動したんだ。一時はどうなるかと思ったけど、次元の跳躍に成功した。ちょうどよく人がいるし、確かめてみたら?」

 

 もう1人は浅黒い肌の少年だった。下半身はデニムのショートパンツ、上半身はノースリーブのパーカーを着ている。服の袖口から、白い肌と日焼けの境界線が見え隠れしていた。生まれつきではなく、肌を太陽で小麦色に焼いているのだと分かる。

 

「ねえ、そこの貴方。娼婦? まあ、この世界の人間なら誰でもいいわ。質問するから答えて。私のこと知ってる? 私が誰か分かるかしら?」

 

 爆乳の少女は、巨乳娼婦に質問する。自身の顔を指差して、誰なのか当ててみろと言っている。だが、巨乳娼婦は首を振る。一度でも会っていれば絶対に忘れないほどの美少女だ。初対面であることは間違いない。

 

「知るわけないでしょ。何なのよ。アンタ?」

 

「矢崎ほたる、これでも分からない?」

 

「⋯⋯⋯⋯?」

 

 巨乳娼婦は“矢崎”という名字に聞き覚えがあった。対魔忍に喧嘩をふっかけて無惨に敗死した政治家・矢崎宗一。そして、アンダーエデンを経営しているリーアルの本名は矢崎利二だ。だが、あの2人に娘がいたという話は、一度もも聞いたことがなかった。

 

「その間抜け面は理解してない顔かしら? ここって売春街のヨミハラでしょ? 日本の首都に住んでる娼婦なら、日本国大総統の長女くらい知っているはずだと思うけど?」

 

「は? 大総統⋯⋯? 総理大臣でしょ」

 

 ヨミハラは東京の地下にある。広い意味ならヨミハラも日本の首都に含まれている。だが、大総統という聞いたことのない単語が出てきた。総理大臣の間違いだと巨乳娼婦は指摘する

 

「総理大臣⋯⋯ね。ってことはパパはまだ日本を支配してないんだ。もう一つ質問するわ。今って2097年であってる?」

 

 矢崎ほたるを名乗る少女は、今から16年後の暦を言った。

 

 間違うにしても16年は大きすぎる誤差だ。頭をドラッグでやられているか、頭が元からおかしいかの二択しかない。巨乳の娼婦は怪訝な顔付きを浮かべながらも、今の暦を告げる。

 

「今は2081年よ」

 

「ふーん。私がいた世界から16年くらい遡ってることになっているね。ってことは、まだ私は生まれてすらいないってことか⋯⋯。そういうことなのね。だったら、私の名前を知らないのも仕方がないわ。特別に許してあげる」

 

 2081年と聞き、ほたるは満足そうに頷いている。

 

「アンタ、言ってることはメチャクチャだけど、とっても良い体してるじゃない。どこの店で働いているの? 豊胸じゃなくて、天然モノよね? 見れば分かるわ。頭がちょっとおかしい子でもすごく良い体をしてるから絶対に上客がつくわ」

 

 巨乳娼婦は、ほたるの艶めかしい肉体に魅せられた。娼婦としての勘が告げていた。この少女は天生の淫婦であると。

 

「えーと⋯⋯。宗風(ときかぜ)、どうしたらいいと思う?」

 

「とりあえずパパとママを探そうよ。ここが2081年の日本なら僕らが生まれる1年前だ。僕らが存在しないはずの別世界なんだ。でも、パパとママはいる。だから、パパとママに会って事情を説明するんだ。驚くだろうけど血が繋がってる親子なら、話せば分かってくれると思う」

 

「パパを探すのはいいわ。でも、ママはどっちの? 宗風にとっては、私のママってお婆ちゃんじゃない」

 

「不知火ママには冗談でも言っちゃダメだよ。それ。気にしてないようで気にしてるから」

 

「でも、事実じゃない」

 

「じゃあ、僕もお姉ちゃんのことをオバさんって言っていいの?」

 

「それはダメ。そもそも1カ月しか違わないのにオバさんっておかしいわ」

 

「はいはい。じゃあ、今まで通りお姉ちゃん呼びにするよ。とにかく見つけられるなら、どっちでもいいかな。僕らの生まれた世界とそこまで変わっていないなら、僕のママはアンダーエデンの奴隷娼婦をしてるはずだよ。今年のクリスマスまでに孕まないと、僕が生まれないことになっちゃうから」

 

「自分の誕生日は分かるけど、受精日まで把握してるの⋯⋯?」

 

「うん。映像記録が残ってるから分かってるよ。パパとママは達郎に向けたポルノビデオで、受精から出産まで記録してたんだ。だから正確に分かるよ」

 

 宗風はトリップ中の薬中娼婦に近付く。許しも得ずに胸部に触り、娼婦に甘えるような仕草で質問をする。

 

「ねえ、お薬でハイになっているところ悪いんだけど、君はアンダーエデンってお店を知ってる? 僕のママになる人がそこで働いてるはずなんだ」

 

「アンダーエデンぅ? 知ってる、知ってる〜。だって私はぁ、そこの奴隷娼婦だもん」

 

「そうなんだ。それは都合がいい。ゆきかぜって名前を聞いたことない? 元対魔忍の奴隷娼婦。髪の色は僕やお姉ちゃんと同じ赤茶色。体格は僕みたい感じで貧乳。僕みたいに日焼けしてる褐色肌の女の子を知らない?」

 

「知らない。だって、そんな子、アンダーエデンにいないよぉ」

 

「⋯⋯いない? おかしいな。そんなはずはない⋯⋯。本当にアンダーエデンで働いてるの?」

 

「宗風ったら⋯⋯。脳細胞が死滅してる薬中に聞いたらダメでしょ。素面なほうに聞くべきよ。ゆきかぜって知らない? そうじゃなかったら不知火でもいいわ」

 

「知らないわ。ねえ、それよりアンタ、バストサイズはいくつ? カップ数はKはあるわね。ねえ、どこで働いているのか教えてくれない? もしフリーの娼婦なら、私の働いている娼館にきてみない?」

 

「あーもう。私は売春なんかに興味ないわ。それよりこっちの質問に答えて。矢崎宗一って知ってる? どうせ知らないと思うけど念のために聞いておくわ」

 

「矢崎宗一? それなら知ってるわ。娼婦を買い漁ってた常連の豚ちゃんだからヨミハラじゃ有名よ。対魔忍に殺されたんでしょ。空港で黒焦げになったって噂になってたわ」

 

「死んだ? パパが⋯⋯? ————はぁ?」

 

「えっ、ちょ、やめ⋯⋯やめっんぎぃ⋯⋯っ!」

 

「パパが死んでる? ありえないから⋯⋯。そんなこと絶対にありえないの。パパは死なないの。もしこっちでもパパが死んでるなら、私達は何のためにここに来たの? 貴方、嘘吐きでしょ。私のパパが嫌いだから、死んでほしいと思ってんでしょ? だから、嘘をついて私を騙そうとしてるんでしょ?」

 

「ち、ちが⋯⋯! はなっ⋯⋯し⋯⋯ぃ、ぎゃ⋯⋯!」

 

「あ⋯⋯!」

 

 ふと気がつくと、ほたるは爆乳娼婦の首をへし折っていた。感情が暴走とすると、すぐ人を殺してしまう。それがほたるの短所だった。

 

「あーあー。お姉ちゃん。また殺しちゃったよ⋯⋯」

 

 もっと話を聞くつもりだったが、死人に口なしだ。もうこの巨乳娼婦から情報を引き出すことはできない。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 矢崎ほたるは矢崎宗一と水城不知火の間に産まれた娘だった。ほたるはこの世界の人間ではない。別世界から次元を越えてやってきた。つまり、分岐したパラレルワールドからの来訪者なのだ。

 

 2081年の4月、ゆきかぜと凜子は不知火の消息を掴むため、奴隷商人ゾクトの協力を得てヨミハラに潜入した。しかし、それは矢崎とリーアルが仕組んだ巧妙な罠だった。間一髪のところでアサギが救出に動き、ゆきかぜと凜子は矢崎の魔手から逃れた。

 

 3週間の間、リーアルによって洗脳手術を施されるという屈辱的な経験をしたが処女を失わず、無事に生還することができた。魔科医・桐生佐馬斗の治療を受けたが、わずかな淫乱体質になった程度の後遺症が残った。これまで任務に一度も失敗したことのなかった、ゆきかぜと凜子にとって、この出来事は忌まわしい汚点となった。悪徳政治家の矢崎を失脚させようと奮闘したのも、こうした出来事が過去にあったからだ。

 

 ————だが、もしもアサギ達がゆきかぜと凜子を救助にこなかったらどうなっていたか?

 

 矢崎の目論み通り、経験の浅い対魔忍びであるゆきかぜと凜子は奴隷娼婦に堕とされていた。そして、幼馴染みと姉を心配してヨミハラを訪れた達郎は、売春婦として働く二人の淫乱な姿を見せつけられ、絶望のあまり引き籠もりとなるのだ。

 

 一方で、矢崎は失脚することなく、政権を担う民進党の幹事長として君臨し続ける。そして、跡継ぎとなる子供を不知火とゆきかぜの母娘に産ませた。ゆきかぜの想い人だった達郎をさらなる絶望を与えるため、ユキカゼが矢崎の子胤で受精する瞬間から懐胎を経て、出産するまでの映像をポルノサイトで公開した。妊婦状態のゆきかぜを連れて、五車学園を視察したこともあった。

 

 ————水城不知火が産んだ矢崎宗一の長女、矢崎ほたる。

 

 ————水城ゆきかぜが産んだ矢崎宗一の長男、矢崎宗風(ときかぜ)。

 

 矢崎宗一は、我が子を産んだ不知火に矢崎の性を使う許しを与え、妻として正式に迎え入れた。母親が再婚したことで、ゆきかぜの本名も矢崎ゆきかぜと改まった。書類上は義父と義娘だったが実態は二人目の妻であった。

 

 別世界の矢崎は権力だけでなく、元対魔忍の美しい母娘を我が物とした。

 

 矢崎ほたるは、父親の死を拒絶しなければならない。矢崎宗一の死は、自分自身の存在を否定することになる。なぜなら自分は矢崎宗一と不知火の血を引く娘なのだ。もし2081年の10月時点で父親が死んでいるのなら、ほたるや宗風は生まれてこない。因果関係が破綻し、パラドックスが起こってしまう。

 

「お姉ちゃん、何やってるの? 追い剥ぎ?」

 

 時宗は死んだ巨乳娼婦の死体から、服を脱がせている姉を不思議そうに見ていた。

 

「死体ならもう服はいらないでしょ。胸の部分がパツパツになっちゃうけど、可愛いから着てみたいと思ったの」

 

 宗風とほたるの関係は複雑だ。腹違いの姉であり、同時に伯母でもある。父親は同じ矢崎宗一で、お互いの母親が実の親子であった。

 

「そういう時宗こそ、何やってるのよ」

 

「なにって、セックスだよ? 見て分かるでしょ。いろいろ教えてくれたからお礼をしてあげてるんだ。お薬をキメるよりも気持ち良くしてあげるの」

 

 薬中娼婦は立ちバックで犯されていた。時宗の腰の位置まで尻を下げ、がに股になってオマンコにオチンポを受け入れている。

 

 ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!と慣れた腰使いで、宗風は下半身を押し出す。父親譲りの巨根でオマンコを掻き混ぜ、子宮を刺激する。

 

「いぐぅっ! あんっ! んぁ! す、しゅごいぃ! あんっ! あんっ! あんぅっ! んぎぃ! あんっ! あんっ! んぅううぅ! ンあっ! んんぃぃいぃっ! 井チンポがしゅごすぎていぐぅ、いぐぅぅううっ!」

 

 喜悦の声をあげる薬中娼婦は、一緒にいたしていた巨乳娼婦が殺されたことさえ気にしていない。ヨミハラの娼婦にとって、セックスに勝る快楽は存在しないのだ。

 

「娼婦のお姉さんは薬で避妊してるんだ。偉いね。でも、そういうことしてる女の子には意地悪したくなっちゃうんだ」

 

「あっひぃんっ! んぁ、んぁあっ、んぃぃぃあいいぁっ! あんぁなんぁっ⋯⋯! オっ、オマンコの中にビリビリっって⋯⋯んひぃっっぃいいい! やばぃいいぃ! お薬よりもしゅごいぃぃ! 子宮が電気でアクメしぢゃうよぉっ!」

 

「すごいでしょ? 僕は“雷遁の術”が使えるんだ。電撃を電気信号に変えて神経を操ってるの。こうやって子宮を活性化させることもできるんだ。薬で避妊していようと強制排卵させちゃえば無意味だよね」

 

「まっ、まってえぇ⋯⋯! だめぇっ! あんっ、んっんひぃっ! あふぃひぃ! だぁめなのぉ⋯⋯! ほんとぉに排卵しちゃってるぅうう⋯⋯! 子宮がびくびくっしちゃってるのぉ! 膣内に出されたら本当に孕むぅっ! 孕んじゃうぅうーっ! だ、だめっ、だめぇえ!」

 

「孕んじゃえ♪」

 

 宗風は射精と同時に電気を発生させた。水城家は代々“雷遁の術”使いを排出する名門。ゆきかぜの息子である宗風は、母親と同じ“雷遁の術”使い形質を受け継いでいた。

 

 感電して気絶している薬中娼婦に、宗風は濃厚な子胤を送り込む。確実に孕ませるため、中枢神経に電流を流し込み、左右の卵巣から可能な限るの卵子を吐き出させた。

 

「そうやって娼婦で遊ぶのもほどほどにしたら?」

 

「遊びじゃないよ。これは本気のお礼セックス。それにちょっとした実験も兼ねてるんだ」

 

「実験?」

 

「この世界に僕らは存在しない。でも、イレギュラーな方法によって僕らは出現してしまった。お姉ちゃんがそこの娼婦を殺せたってことは、ある程度の干渉はできるってことだ。存在しないはずの僕らであっても、こちら側の人間を殺すことはできるんだ」

 

 宗風は薬中娼婦のオマンコからオチンポを引き抜き、ずり下げていたデニムのホットパンツを腰まで引き上げる。

 

 種付けした薬中娼婦と服を剥ぎ取られた巨乳娼婦の死体を路地裏の地面に並べた。

 

「でも、整理して考えると人を殺すのは誰にでもできる。お姉ちゃんが殺さなくても、こっちの娼婦は別の誰かに殺される可能性があった。つまりお姉ちゃんがいなくても、代わりに誰かが殺す可能性がある。つまり代替性があるんだ」

 

 次に宗風は薬中娼婦を指差す。膣口から精液を垂れ流し、口からは泡を吹いている。

 

「でも、僕の子を孕んだ娼婦はどうかな。僕の子供は、僕の子胤でしか作れない。代替性がないから、誰も代行しようがないんだ。もし僕の子供をこの娼婦が産んだとしたら、とんでもない矛盾だ」

 

「ん? えーと、どういうことよ?」

 

「僕の存在が確定しなければ、この娼婦が僕の子供を産むことはできない。そんな気がするんだ。おそらく僕らはまだ不確定な存在なんだよ。感覚的な話になるけど、確実に孕ませるつもりで種付けしたのに、手応えが半端だった。たぶんこの娼婦は受精しても僕の子供を産むことはできない」

 

「難しい話はよく分からないけど、とにかく私達はここにいるじゃない!」

 

「うん。今はね。過去にタイムスリップした状態なんだ。でも、もしこの世界で僕らが生まれる可能性がゼロになったら、どうなるかな? 僕らはこの世界から完全否定され、抹消されてしまうような気がするんだよね」

 

 ほたるは青ざめた。弟の指摘する可能性が事実なら、新たな世界に移動したのに何も出来ずに消えてしまうことになる。

 

「だったら、パパは生きてるってことになるわ。もしパパが死んじゃってるなら、私達はもう消えているはずだわ」

 

「世界のルールがどうなってるかは分からない。でも、僕らがいた世界とは掛け離れてるみたいだよ。きっとこの世界はパパが負けた世界なんじゃないかな? だって、世界の再創生をしたのは淫(・)魔(・)王(・)だ。自分にとって都合のいい世界を作ったはずさ」

 

 ————世界の再創生。

 

 それはノマドの支配者エドウィン・ブラックの悲願。ほたると宗風が生まれた世界では、政府を掌握した矢崎宗一が総理大臣となり、民主制を廃止して大総統となった。その後ろ盾となったのがブラックだった。

 

 日本政府を乗っ取った矢崎とノマドを率いるブラックは日本の支配者となり、反抗勢力を壊滅させた。全ての権益を独占し、不知火は大総統第一夫人、ゆきかぜは第二夫人となって矢崎の独裁を支えた。

 

 ————だが、対魔忍の残党と淫魔王が手を組み、クーデターを起こした。

 

 そのとき、淫魔王はアサギとブラックを同士討ちさせ、世界の再創世を誘発させた。始祖の吸血鬼であるエドウィン・ブラック、そして魔の力を覚醒させた井河アサギの力が合わせると、世界の創世が可能となる。それを知った淫魔王は、自分にとって都合のいい世界を作りだし、旧世界を破壊することを目論んだ。

 

「僕らがいた世界は旧世界。新しい世界に上書きされて消え散ってしまった。こちら側に入り込めた僕らは、データ上のバグみたいなものなんだよ。おそらくパパが死んでるのは本当だろうね」

 

「⋯⋯そんなはずないわ。だったら、どうして私達はこっちの世界でも存在できているの?」

 

「復活する余地があるからだよ。実は心当たりがある。僕がブラック様の研究を手伝ってたのは知ってるよね」

 

「そういえばパパに頼み込んでノマドで働いていたわね」

 

「うん。ブラック様のお役に立ちたくてね。その時にこれを貰ったんだ」

 

 時宗は後ろポケットから小瓶を取り出す。

 

「実験体ムラサキの生体細胞から作った超回復薬。試作品だけど死体を蘇らせるくらいのことはできる。いろいろと後遺症はあるけど、都合よく僕がこの薬を持ってるってことは、そういうことだと思うんだ」

 

 矢崎に支配された世界において、不死身の対魔忍として知られる八津紫はノマドに捕らえられた後、実験動物として飼育されていた。不死性を生かした人体実験、さまざまな動物との交配実験、そして薬物の被検体として活躍していた。宗風がブラックから褒美としてもらった超回復薬。その原材料は宗風と紫に孕ませた胎児だ。万能薬を作るため、宗風は紫をわざわざ孕ませ、赤子を堕胎させた。ブラックに心酔する宗風はどんなことでもやってきた。我が子どころか、自分さえもブラックのために捧げてもいいと思っていた。

 

「この超回復薬でパパを復活させるんだ。そして、不知火ママやゆきかぜママと子作りしてもらう。おそらく僕らの受精日がリミットなんだ。僕は2081年の12月25日までにゆきかぜママが孕んでいないとデッドエンド。お姉ちゃん僕と一ヶ月違いだから、11月中旬くらいかな」

 

 現在は10月2日、ほたるに残された猶予は1カ月半程度だった。それまでに不知火が矢崎の子胤で孕まさなければ、“矢崎ほたる”は世界から消滅する。

 

「分かったわ。まずはパパを探しましょ。パパが殺されちゃってるなら、私達が復活させてあげるんだから⋯⋯!」

 

 ほたるは意気込みを強め、母親譲りの爆乳を上下に大きく揺らした。殺した娼婦から奪ったサイズが小さめの服を着こなし、閉ざされたヨミハラの天を見上げる。

 

「うん。そうだね。パパを助けてからママ達を探そう。こっちの世界のママが僕らに協力的だといいけど、そうじゃなかったら頑張らないとね。ブラック様と接触することができれば、ノマドの支援も得られるけど⋯⋯、今は難しいかな」

 

 巨乳娼婦の死体と種付けした薬中娼婦を路地裏に残して、矢崎の子供達はヨミハラの闇に消えた。

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