※この作品はR-18です。

つつみこむように   作:サトちゃん

2 / 2
第2話・揺蕩う

 北京ダック、回鍋肉、チンジャオロース、酢豚、春巻き、炒飯、餃子、焼売、麻婆豆腐。テーブルの上に所狭しと並んでいるのは、中華料理のフルコースだった。今日は秋葉が元に戻って初めての晩餐。体力を取り戻す意味も込めて、琥珀に頼んでお抱えの中華料理屋に注文して貰ったのだ。流石に多すぎるだろうと思わないでも無かったが・・・・

 

 ただ、秋葉の前に並べられた料理が、見る見る内に減っていった。どうやら余程お腹が空いていたらしい。この華奢な体の何処に入るのだろう。志貴は不思議で仕方なかった。

 

 何時もなら別に食事を済ませる琥珀と翡翠が、この日に限っては一緒に食卓を囲んでいた。二人とも、特に翡翠は恐縮しているようだが、志貴には何の異存も無かった。琥珀と翡翠は単なるメイドではない。れっきとした家族なのだ。

 

 四人一緒の食卓で主に喋るのは琥珀だった。琥珀は屋敷に来る猫に子供が生まれた事や、裏の樹にヒヨドリが巣を作ったことなど、当たり障りのない話題を振りながら、笑顔を振りまいていた。その女性らしい気配りの細やかさや、独特の明るさに、志貴はどうしても惹かれてしまう。

 

 琥珀の『感応』の能力がその真価を発揮する為には、志貴と肉体関係を結ぶ必要が有るらしい。その事を感応者の用語で『契約』と言うそうだ。『契約』文字通り『契(ちぎ)る』『約束』の事だ。

 

 志貴と秋葉の状態は今でこそ安定しているが、いつ事態が急変しないとも限らない。琥珀に言わせると一刻も早く『契約』する必要が有るらしい。

 

 志貴が愛しているのは秋葉だが、その一方で琥珀に魅かれているのも事実だった。その琥珀と体を合わせて、何食わぬ顔して元の関係を保てるとは思えない。ただそれは考えても仕方のない心配だった。

 

「今夜10時。私の部屋に来て下さい。」

 食事を終えた後、琥珀はコッソリ志貴に耳打ちした。志貴は覚悟を決めることにした。

 

      ・

      ・

      ・

 

 風呂で体を洗ってから寝間着代わりの浴衣に着替え、志貴はぼんやりと窓の外を眺めていた。約束の時間まではまだ少しある。頭を過るのはこれから抱く琥珀の事だった。

 

 幼い頃に遠野家に引き取られた志貴は、この屋敷で束の間だが幸せな幼少期を過ごすことが出来た。疲れも知らない子供時代。志貴の遊び場は遠野家の裏庭だった。そして志貴が遊んでいると、必ずと言って良いほど屋敷の中から志貴を見つめる少女が居た。

 

 不思議な少女だった。いつも綺麗な服を着て、何も言わずに志貴を見つめていた。丁寧に梳かれた髪に、人形の様に整った表情。ただその目に浮かぶ感情は憧憬では無く一種の諦観だった。あの少女を志貴は翡翠だと思っていた。違う・・・あれが琥珀だったのだ。

 

 志貴は彼女に幼い恋心を抱いていた。彼女と一緒に遊びたかった。屋敷から出て来てくれたら良いのにと何度も思った。ただ彼女は屋敷から出なかったんじゃない。出してもらえなかったのだ。秋葉の父である槙久は、己の血の暴走を食い止める為に、幼い琥珀の身体を凌辱し尽くしたのだ。

 

 琥珀の真実を知った時。志貴はどうしようもない義憤に駆られていた。ただ自分は槙久と同じだった。自らの身を保つために、琥珀を贄にしようとしている。志貴に出来ることは、なるべく優しく抱いてやる事ぐらいだった。例えそれが偽善だとしても・・・

 

 考え事をしている内に約束の時間が来てしまった。志貴は重い腰を上げて琥珀の部屋に向かったのだった。

 

  ・

  ・

  ・

 

「琥珀さん。志貴です。」

 震える手で琥珀の部屋の戸を叩く。

 

「はい空いてますよ。」

 琥珀に促されて恐る恐る部屋に入る。少し明かりを落した部屋の真ん中。いつものちゃぶ台の前に彼女は居た。琥珀は座布団に腰かけてお茶を飲んでいる様だった。普段と同じ割烹着姿と普段と同じ青いリボン。

 

 琥珀に促されるまま、志貴は対面の座布団に腰を下ろした。志貴の服装は風呂上がりの浴衣姿で、下着もつけていなかった。

 

「ごめん琥珀さん。妙な事を頼んでしまって。」

 志貴は琥珀の前で深々と頭を下げた。これから行う行為を想うと、期待よりも申し訳ないという気持ちが先立ってしまう。

 

「謝らないで下さいな。それに私から言い出した事ですから。」

 琥珀は笑顔を浮かべながら、急須でお茶を入れてくれた。

 

「ありがとう。」

 お茶はどうやらほうじ茶の様だった。独特の香ばしい香りが志貴の鼻腔を刺激する。

 

「あんまり固くならないで気楽に考えて下さいね。」

 無理な話だった。何も考えずに抱くには、志貴にとって琥珀の存在は少し大きくなり過ぎていた。

 

「・・・」

 志貴は琥珀に薦められた湯呑を黙って眺めていた。湯気の向こうに幼き日の思い出が揺蕩(たゆた)う。諦観を浮かべながら志貴を見つめていた美しい少女。あの瞳には一体どんな思いが込められていたのだろう。尋ねるのは容易いが、今聞いても何故かはぐらかされる気がした。

 

「やっぱり難しい顔してますね志貴さん。」

 いつの間にかすぐそばに琥珀の顔が有った。知らずににじり寄られた事に気付かなかったのだ。何かを諦めた様な笑顔と、美しいが何処か虚ろな瞳。今確信した。やはり琥珀はあの時の少女だった。

 

「難しい事は考えなくていいです。志貴様は秋葉様が一番大事で、秋葉様が元の姿を取り戻してくれたことが嬉しいですよね。」

 

「その通りだよ琥珀さん。」

 

「そして秋葉様が今の状態で居る為は私を抱く必要が有る。」

 

「それもその通りだよ。」

 

「だったら何を迷ってるんですか。私がお嫌いなのですか。」

 

「嫌いだったら。こんなに迷わないよ。」

 

「嬉しい。私にはその言葉だけで十分です。」

 蕩ける様な笑顔と供に、琥珀はその身体を摺り寄せてきた。割烹着越しに感じる柔らかい少女の肉体に、志貴の胸が高鳴る。

 

「志貴さんは何も考えなくていいです。一刻だけ私に身を委ねて下さい。そうすれば全て上手くいきますわ。」

 琥珀は志貴の耳元でそう囁いた。鼻にかかる甘えた声と、甘酸っぱい少女の香り。獲物を仕留める蜘蛛のように、琥珀は志貴という男の最も柔らかくて弱い場所に咬みついた。そこから流し込まれる柔らかな毒が、志貴の理性を痺れさせ、その矜持をドロドロに蕩かす。

 

「琥珀さんっ!!」

 志貴は反射的に琥珀を抱きしめていた。

 

「待って・・お布団を敷いてますから。」

 部屋の隅に敷かれた布団に、琥珀は視線でもって志貴を誘導した。

 

「・・・・」

 志貴は黙って琥珀の体を抱き上げると、そっと布団の上に下ろした。艶やかな髪がシーツに広がり、着物の裾からなまめかしい白い太ももが覗く。いつの間にか琥珀の着物の帯は緩めらられていた。

 

「琥珀さんは。こういう事するのは初めてじゃ無いんだよな。」

 

「気になりますか。」

 

「いや。別に。」

 嘘だった。本当は無茶苦茶に気になる。ただそれを認めるのが嫌なだけだ。

 

「志貴様は初めてですか。」

 

「一回だけ・・・秋葉と。」

 志貴は正直に言う事にした。黙っていても、いつかバレるだろうからだ。

 

「やはりそうなんですね。」

 琥珀はニコニコ笑っていた。その心の読めない笑顔を見て、志貴は不安に駆られた。

 

「驚かないのかい。」

 

「志貴さんは隠してるつもりかも知れませんが、私も翡翠ちゃんも何となく勘づいてましたよ。」

 

「・・・」

 どうやらこの双子は男女間の事に関しては独特の勘が働くらしい。

 

「お願いです。今日は、今日だけは。私と恋人と思って抱いてください。」

 

「元よりそのつもりだよ。」

 志貴は琥珀に顔を近づけるとそのまま唇を奪っていた。艶やかな唇とそこから覗く淫猥な舌が、志貴の雄の本能を刺激する。琥珀は自ら着物の帯を紐解くと、その襟元に志貴の両手を誘導した。

 

 襟元から両手を入れてそのまま割開くと、慎ましい大きさながら、整った琥珀の乳房が露わになった。その胸に顔を埋めて、甘酸っぱい少女の香りを堪能する。幼い頃ずっと憧れていた女の子。再会してからも、琥珀は優しい姉の様な眼差しで、志貴を見守ってくれていた。

 

 ただ彼女の心根は志貴には測りかねた。深謀遠慮が有る様にも見えるし、何も考えていない様にも見える。志貴の脳裏を今日の秋葉の言葉が反芻する。

 

『お兄様。これだけは覚えていてください。例えどんな理由が有ろうと、女は絶対に好きでもない男に自ら薦んで抱かれようとは思いませんわ。』

 

 琥珀は自ら着物を脱ぐと、志貴の着物の袂を開いた。裸の胸と胸を合わせ、お互いに顔を見つめあうと、再び口づけを交わす。

 

 志貴は考えるのを止め、本能に身を任すことにした。琥珀の下半身に手を滑らせ、内腿の間に手をこじ入れる。琥珀はどうやらパンティを履いていなかったらしく、サラサラした薄い恥毛が指先に触れるのが判る。

 

 恐る恐るその指を滑らせると、ヌチョッと湿った感触が指に伝わってきた。感じているのかそれとも敏感な箇所を守るための肉体の防御反応なのか、女性経験の薄い志貴には測り兼ねた。

 

「あっあっあっあっ。」

 湿った部分を撫で上げる様に指を這わすと、琥珀の口から控えめな喘ぎ声が漏れ始めた。股間からクチャクチャと淫らな水音が上がる。

 

 お返しとばかりに琥珀は両手を伸ばして志貴の体をまざくってきた。琥珀に己が裸体を触られるのは恥ずかしかったが、志貴は身を任せる事にした。

 

「少し瘦せましたか?」

 琥珀は志貴の裸の胸元を撫でながら言った。

 

「そうかも。」

 琥珀の言うとおりだった。ここ数週間、志貴は秋葉に血を与え続けたせいで少しやつれていた。

 

「でもここは元気そう。」

 琥珀の手が志貴の下半身に伸び、その男性器を捉えていた。琥珀の言う通り、志貴のペニスは琥珀の雌の体に反応し、完全に勃起していた。

 

「琥珀さんの方だって・・・」

 志貴は少しだけ揶揄するような口調で、琥珀の膣口をクチャクチャと弄り続けた。琥珀の美しい顔が快楽で蕩けるのが判る。

 

 性器を弄りあいながら、しばしお互いの性感を高めあう。これは遊戯(あそび)だった。ずっと好きだった少女。ずっと一緒に遊びたいと思っていた少女。志貴の想いは十年越しようやく叶える事が出来たのだ。もっとも思った形とはだいぶ異なっていたが・・・

 

 志貴と琥珀は夢中になって口づけを交わした。お互いの目の中に有る官能の火を確認し合うと、もう言葉は要らなかった。

 

「来てください・・・志貴さん。」

 琥珀は両手を差し出して志貴を招いていた。両足を割り開いて自らの体をこじ入れると、琥珀は少しだけ腰を上げて、志貴を受け入れてくれた。

 

「そこじゃないです・・・もうちょっと下。」

 琥珀に言われるまま腰の位置を調整すると、志貴のペニスの先端がヌチョッと湿った個所に触れた。秋葉の事が少しだけ頭を過る。きっと琥珀も同様なのだろう、志貴と琥珀は見つめ合うとお互いに共犯者の笑みを交わし合った。

 

 本能に命じられるまま、志貴は腰を突き入れていた。

「ああっ!!」

 琥珀の口から高らかな嬌声が上がり、白いうなじが反り返る。数分の狂いもなく、志貴は琥珀に飲み込まれていた。

 

「動くね・・・琥珀さん。」

 志貴は琥珀を組み伏せながら、ゆったりとした動きで琥珀を責めはじめた。琥珀は感極まった様な表情で志貴の背中に両手を廻してきた。琥珀の瞳はうっすらと閉じられ、その眦には涙が滲んでいた。

 

「ずっとこうなることを夢見てました。」

 志貴を受け入れながら、琥珀は耳元で囁いた。志貴に抱かれながら、琥珀は密かな愉悦を噛み締めていた。ようやく自らの念願が叶った。正直琥珀にとっては、秋葉の為とか志貴の為とかいう建て前はどうでも良かった。琥珀はただ志貴に抱かれたかったのだ。

 

「ありがとう琥珀さん。」

 志貴よりも少し高い体温。柔らかくて慎ましやかな大きさの乳房。官能を掻き立てる甘酸っぱい少女の香り。優し気で儚げなその眼差し。志貴は夢中になって琥珀の体を求めていた。秘めやかな媚肉が騒めいて、志貴のペニスをやんわりと包み込んでくる。心も体も琥珀は志貴を受け入れてくれたのだ。

 

「あっあっあっあっあっ」

 琥珀は全身を弛緩させ、志貴にされるがままになっていた。唇からは自然な嬌声が零れる。体は蕩けた様に甘く痺れて、抵抗が出来ない。脳内は霞が掛かった様に惚けて、細やかな思考が出来なくなる。これが好きな男に愛されるという行為なのだ。不意に視界がチカチカと瞬いて、意識がフッと遠くなった。普段ほとんど意識する事の無い子宮に全神経が集中している。硬く尖った乳首と、蕩け切った膣肉。絶頂《アクメ》が近いのが本能的に判る。

 

「好きだよ琥珀さん。」

「あ、あ、あ、あああああああっ!!!」

 志貴の口から出たその言葉が引き金となり、琥珀の体は今まで想像した事も無い官能の嵐に晒されていた。そう、それは琥珀にとって初めての性交渉による性的絶頂(オルガスムス)だったのだ。

 

「こっ、琥珀さん!?」

 背中に廻された琥珀の両腕に力が込められたかと思うと、ぐっと胸元に引き寄せられた。その瞬間琥珀の全身から物凄い力の奔流の様なモノが伝わって来た。琥珀の『感応』の能力は相手を受け入れれば受け入れるほど強力に作用する。身も心も琥珀に受け入れられた志貴の体は、琥珀の全身全霊の『感応』の標的となっていた。

 

「ああああっ!!!」

 志貴の体は凄まじい力の奔流に巻き込まていた。口から、全身の皮膚から、そして性器から、琥珀の力が注ぎ込まれていく。注がれた力はマグマの様に志貴の体内で脈打っては、噴出先を求めて暴れまわった。男性にとって力の噴出先・・・それはペニスに他ならない。ただ・・・・

 

(射精できない・・・何で??)

 志貴は混乱していた。性的絶頂には達している。ただ射精が出来ない。全くできない。ややあって志貴は気付いてしまった。琥珀の体から伝わる力が圧倒的過ぎて、それを押し返す事が出来ないのだ。

 

「琥珀さんお願いだ・・力を力を止めてくれ!!」

 フッという喪失感と共に、琥珀からの力の流入が止まった。

 

「あああああああああああっ!!!!」

 その瞬間、目も眩まんばかりの解放感と共に、志貴は琥珀の膣内に射精していた。ペニスから命そのものが漏れ堕ちる様な異様な快感。己の身体がドロドロに溶けて、琥珀に吸収される様な凄まじい快感に、志貴は全く動けなかった。

 

(もっ、もうダメ。もうダメ。)

 一方琥珀も志貴同様に全く動けなかった。なにしろ絶頂(アクメ)の最中に、膣奥に強かに精液を浴びせられたのだ。最初の絶頂(アクメ)に被さる様にやって来た次の絶頂(アクメ)の波に、琥珀の精神と肉体は完全にトバされていた。

 

     ・

     ・

     ・

     ・

 

「・・・さん!」

 

「・・くさん!」

 

「・琥珀さん!」

 

 琥珀はしばらく意識を失っていたが、志貴に話しかけられてようやく気が付いたらしく、視点の合わない目線を志貴の方に向けて来た。

 

「ど、どうしました?」

 

「ごっ、ゴメン・・・俺琥珀さんの膣(なか)に・・・」

 嵐の様な欲望が過ぎ去った後、志貴は自分の行った行為の深刻さ思い知っていた。

 

「い、いえ、これで良いんです。私が注いだ力を志貴さんから体液として回収する事で、初めて『契約』が成立しますから。」

 

「でも琥珀さんが・・・」

 例え『契約』とはいえ、膣内で精子を受け止めるという行為は妊娠のリスクが発生するはずだ。

 

「私の身体の事は気にしないで下さい。『感応』の力を使っている限り、受胎する事はありませんから。」

 

「そっそうなの。」

 

「ええ胎児に注ぐべき力を、共感者に注ぐ。それが『感応』です。」

 

「じゃあこれで『契約』は成立したんだな。」

 マグマの様な力の流入は止まったが、琥珀の身体から力が流れ込んでくる感触がある。この状態なら秋葉に頼らずとも自立は可能だろう。

 

「まだです。一応力の流路は確保出来ましたが、まだ安定してません。」

 

「どっ、どうしたらいいんですか!?」

 

「ええ、もっともっと志貴さんを下さい。私に志貴さんを判らせて下さい!!」

 琥珀は両手両足を志貴の背中に廻して完全にロックした。『だいしゅきホールド』女の子が雄の精を欲しがる時の本気姿勢だった。安定していないというのは嘘だった。琥珀はまだまだ志貴と愛し合いたかったのだ。

 

「あああああああああっっっ!!!」

 琥珀の身体から再びマグマの様な凄まじい力の流入が始まった。射精したばかりのペニスに精液が逆流する様な異様な快感に、圭介は思わず叫び声を上げていた。

 

(ふふっ、感じてる感じてる。)

 琥珀は『感応』の能力を使って志貴に力を注いだ後、その力を緩めて志貴の体を射精に導いた。そして志貴に力を注ぎ、志貴の体液を受け取りながら、何度も何度も絶頂(アクメ)に達していた。

 

(こっ、こんなに気持ちいいなんて!!)

 何度も何度も押し寄せる絶頂(アクメ)の大波に身を委ねながら、琥珀は今まで体験したことの無い幸福を味わっていた。体がふわふわしてまるで天国にいる様な浮遊感。幸せだった。幸せだった。幸せだった。両親に捨てられて遠野の家に来た事も、秋葉の父である槙久に凌辱された事も、館の外から恨めし気に志貴を見つめていた事も、全部全部この幸せな時間を迎える為の試練に思えて来た。そうこれが真の『契約』。好きな人と一緒になるという行為なのだ。

 

(しっ、死ぬ!!琥珀さん!!死んじゃうよ!!)

 志貴はその身を襲う絶え間ない絶頂で、息も絶え絶えにさせられていた。琥珀の『感応』の能力によって強制的に力を詰め込まれた後、スグに射精により精液として回収させられる。その射精は堪えるとか耐えるとかいう観念が存在せず、まるでカテーテルを突っ込まれた後の放尿の様だった。

 

 体を繋げて判ったが、琥珀の生命力は圧倒的だった。琥珀は優しい母の表情で何度も何度も志貴に命を注ぎ込み、その後で射精に導いた。琥珀によると、この『感応』の力は胎児を育てる力を模しているという。そう志貴は琥珀の嬰児だった。たっぷりと母乳を飲まされた後、オムツの中に放尿する様に射精を促される。そして射精(だ)せば射精(だ)す程、琥珀との結びつきは強固になっていった。

 

(好きっ!好きっ!好きっ!好きっ!好きっ!)

 琥珀は志貴を抱き締めながら何度も何度も口づけを交わしていた。そしてその表情とトロトロに蕩かせながら、志貴に力を詰め込んでは何度も何度も志貴に射精を強請(ねだ)り、絶頂(アクメ)を繰り返していた。

 

 そうこれは琥珀による強姦(レイプ)だった。そしてレイプという行為は主側が辞めない限り、決して終わらないのだ。志貴は延々と琥珀に犯され、絶頂させられ続けていた。琥珀の膣内に収まりきらなくなった志貴の精子は、琥珀の女陰からプシュプシュ噴き出して、寝具に白い染みを作っていた。

 

「あひいいいいいいっっ!!!」

 琥珀は高々と嬌声を上げながら、志貴の体をひたすら貪り続けた。いつしか琥珀は志貴の上で馬乗りになっていた。琥珀は騎乗位で志貴を犯しながら、琥珀は絶頂により何度も何度も意識をトバし、そして新たな絶頂によって意識を戻していた。

 

(ああーーーーーー!!!)

 絶え間なく続く絶頂により、志貴の精神は幼児退行を起こしていた。生まれたての嬰児の様にプルプルと体を震わせながら、まるでおもらしするの様に琥珀の膣内に射精をくりかえす。フランス語でオルガスムスを小さな死(プチ・モルト)と呼ぶらしい。志貴は絶え間ないオルガスムスによって何度も何度も琥珀に殺され、その度『感応』の能力で受胎した琥珀に誕生させられた。覚醒した琥珀によって、志貴は無限回の生を死を強要されていた。

 

(死ぬ・・・もう絶対死ぬ・・・・)

 幾度目かも判らない絶頂を味わう度、志貴は何度も死を覚悟した。ただ琥珀が志貴を解放したのは、ようやく夜が白み出してからの事だった。志貴は仰向けに寝転がると、荒い呼吸を繰り返しながら、琥珀の部屋の天井を眺めていた。絶え間ない射精の快感で、脳がねっとりとしたラードに漬けられた様になり、まるで思考が出来なかった。

 

 志貴の吐き出した精液で寝具はドロドロに汚れていてた。信じられない射精量。これだけ大量の精液を吐き出したのは産まれて初めてだった。ただ体調は悪くない。それどころか体の奥底から底知れない力が湧き上がってくるのが判る。これが『感応』の能力。志貴は琥珀の力により生かされているのだ。

 

 琥珀は呆けた様な視線を宙に彷徨わせて、身体をヒクつかせていた。どうやら絶頂に次ぐ絶頂で、体が満足に動かせないらしい。たまに体が震えるのは絶頂の余韻が抜けきっていないからだろう。ただ、ぼんやりと琥珀の横顔を眺めていると、いつしか琥珀は手を伸ばして志貴の頬を撫で始めた。そう、まるで命を分け与えた我が子の輪郭を確かめるように・・・・

 

「これからもよろしくお願いしますね。志貴さん。」

 ユルユルと続く情事の余韻に身を委ねながら、琥珀はニンマリと微笑んでいた。志貴にとって天使の様にも悪魔の様にも見える笑みだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。