Chapitre 14
10月下旬の土曜日,横浜市大の学園祭でジュンの熱い恋人を演じて,午後には部屋に戻ってきた。ジュンも一緒。夕方までここで過ごし,キー・アンド・ストリングに出かけ,また戻ってくる予定。ジュンはLDKのテーブルで本を読んでいる。わたしは向かい合って座って,いくつかの専門誌の論文を読んでいる。線形計画法,統計学,確率論,ゲームの理論,データサイエンスなどなど。2時間ほども根を詰めて読んでいると疲れたから,ジュンに声をかけてティータイムにした。
「ジュリさんが静かに本を読んでる姿,初めて見ます」
と言われて,怒るよりも笑ってしまった。
「確かに,ジュンと一緒にいるのは土曜の夕方から日曜の朝までだからね。まじめに勉強してる姿は見たことなかったんだね。これでも,勤務時間中も必要があれば論文に目を通すし,土曜日の午前と午後,ジュンが来るまでは勉強時間に充てているんだよ。今日は朝から学園祭に出かけたから午前の勉強時間は省略したけど,これから夕方まではちゃんと勉強するの」
「そうですよね。ジュリさんは数学者なんですよね。忘れてた」
わたしはまた笑う。
「じゃあ,何だと思ってたの?」
「うーん・・・・特に,何も意識していなかった」
確かに,これまでジュンといて,自分の仕事や研究のことはほとんど話題にしたことがない。どちらかというと,ジュンのこと,ジュンが勉強していることや読んだ本の感想などを話題にする。まあ,それでいいんだけど。そんなことを考えながら,ジュンと出会った時から今までのことをとりとめもなく振り返る。
「もう,3年になるね。ジュンと付き合うようになってから。ジュンが高校1年生の9月だったからね。あの雨の日」
「そうですね」
ジュンは,遠くを見るような眼差しをわたしに向ける。
「わたしにしては,長続きしてる方だね」
「そうなんですか?」
「うん。サキとジュン以外は,たいてい1年くらいで終わってた」
「ボクとの付き合いも,いつか終わるんですか?」
その問いには答えようがない。
「いつか,サキのうちを初めて訪れた日にも,そんな話をしたね」
手に持っていたカップをテーブルに置いて,ジュンを見つめる。
「正直言って,来年,再来年にジュンと別れることになるとは想像できない。でも,50歳,60歳になった時にもジュンとの付き合っている姿も想像できない」
「そうですよね。10年も20年も未来のことなんて,分からないですよね」
「ジュン,揚げ足を取るようだけど,わたしはまだ31歳なの。50歳,60歳というのは10年後,20年後じゃなくて20年後,30年後だよ」
「あっ,ごめんなさい」
「まあ,いいけど」
わたしは笑う。
「こういう点,ジュンとわたしは似てるよね。『死ぬまでずっと一緒に』なんてこと言わない」
「だって,そんな先のこと,分からないじゃない」
「そう,わたしもそう思うんだ。でも,永遠の愛を約束したがる,約束させたがる人も多いんだよ」
「ふーん・・・・」
ジュンは斜め上にぼんやりした視線を投げている。それから急にまじめな顔をわたしに向けた。
「ああ,今年もジュリさんの誕生日が知らないうちに過ぎてしまってます」
「まあ,いいんじゃない」
「ボクの誕生日は毎年祝ってくれるのに」
「うん,ジュンの誕生日はわたしが祝いたいからね」
「自分の誕生日はいいの?」
「うん。いいよ,自分の誕生日は」
わたしはジュンに微笑みかける。
「さあ,ティータイムはおしまい。勉強を再開しよう」
夕方,キー・アンド・ストリングに出かけるまで,わたしたちは静かな勉強の時を過ごした。確かに,ジュンと一緒なのは初めてだった。こんなふうに時を過ごすのも,悪くない。
平日の夕方,わたしが定時で帰宅し,澄人さんの帰りが遅い日,サキがわたしを夕食に招くことがある。断る理由はないから,誘いに応じる。同じマンションの3階から7階に移動する。一緒に作ることもある。
「学生時代を思い出すね」
「うん」
テーブルに向かい合わせに座って夕食を摂り,食後のお茶を飲みながらとりとめもないおしゃべりをする。そして別れる時,キスをする。舌と舌を絡め合うディープキス。そして抱きしめる。優しいハグではなく,激しい抱擁。でも,そこまで。服を脱いでベッドに入ることはない。それをするには,心に抑制がかかっている。
「サキ,わたしとはこうやって二人っきりで会う機会があるけど,ジュンとは機会がないね。二人っきりで会いたいとは思わない?」
サキはちょっと考えて,
「特に,そんなこと思わないけど」
と答える。
「土曜日にジュリと一緒に会って,一緒に抱きあうだけで十分満足よ」
「ふーん・・・・サキは淡泊なんだね。わたしが肉食系なのかな?」
サキがフッと笑った。
別の日,食後のお茶を飲みながら,何気なく
「美容外科の仕事って,けっこうたいへんなのね。こんなに帰りが遅いなんて」
と話したら,
「仕事で遅いのか,恋人と会ってて遅いのか,どちらなのかは分からないけどね」
と,何気ない口調で答えられて,わたしの方がびっくりした。
「サキは,それで平気なの?」
「もちろん。それが結婚に当たっての約束だもの。お互いの恋には口出ししないって。澄人さんは日曜日の朝,ごく平気な顔でジュリやジュンと一緒にブランチしてるじゃない。わたしたちの関係は分かっているのよ」
「まあ,そうだけど」
「澄人さんの言葉を借りれば『性愛だけが愛じゃない』のよ。わたしたちはお互い相手に性欲を感じない。だからといって,憎みあってるわけでも嫌いあってるわけでもない。お互い,信頼しあってるわ。わたしに関して言えば,澄人さんを尊敬もしている。人として立派だと思ってる。だからといって,恋人どうしにならなきゃいけないわけはないでしょう」
そう言われると反論のしようがない。うなずくしかない。
「お見合いの席で言われたの『現代人は結婚に多くを求めすぎます。共同生活の相方,物質的・経済的に支え合うパートナー,悩みの相談相手,恋愛の相手,そしてセックスの相手。盛りすぎでしょう』って」
「お見合いの席で,ほんとうにそんなこと言われたの?」
「ウソはつかないわ」
「まあ,そうだろうけど」
澄人さんも,ジュンとは別の意味で,普通じゃないな。もちろん,そのおかげで,サキはわたしとの恋を,そしてジュンとの恋を復活させることができたのだから,感謝すべきなのだけど。ただ,一つだけ気にかかることがある。
「澄人さんが恋人と一緒に暮らしたいと思うことはないのかしら?」
「思ってはいるかもしれない。でもそれが不可能だということも分かっている」
「じゃあ,もしそれが可能になったら?」
「恋人と一緒に暮らしたいと言うでしょうね」
「サキはそれを認めるの?」
サキはわたしを見てフッと笑う。
「その質問,正直なところ現実感がないの。澄人さんが同性の恋人と堂々と同棲できるようになるって,現実のこととして想像できないから。でも,もしそうなったら,わたしは認めると思う。そして,祝福してあげたい。澄人さんにとって,その方が幸せなはずだから」
わたしは返事を思いつかないままサキを見つめる。サキは話し続ける。
「好き合って結婚したのなら,自分のほかに好きな相手が現れるのは脅威でしょう。性欲や恋愛感情が理由で結婚したのなら,自分のほかに恋人ができるのは我慢できないでしょう。でも,わたしたちは初めかそうじゃないの。わたしたちの関係は色恋沙汰で壊れてしまうようなものではないと信じてる。わたしは澄人さんが選んだ同棲の相手と穏やかな気持ちで会えるようでありたいと思うの。今,澄人さんがジュリやジュンと穏やかな気持ちで会っているように」
うーん,サキも普通じゃないのかな,なんてことを考えていると,思いがけなくも現実的なことを口にした。
「唯一の心配は,お金のこと。わたしの生活費のことね。でも,澄人さんはわたしを路頭に迷わせて平気でいられる人ではないと信じている。何らかの対応はしてくれると信じているわ」
「その時は,わたしと一緒に暮らそうよ。サキ一人分の生活費くらいは面倒見れるよ」
わたしは思わず返事した。
「ありがとう。現実味がないけど,もしそうなったら,お願いしようかな・・・・あっ,でも・・・・」
「でも?・・・・」
「いつかこの国で,同性愛者が堂々とカップルとして名乗れるようになれる,その時まで,ジュリはわたしの恋人でいてくれるのかしら?」
「ええっと,それは・・・・」
わたしは苦笑いする。
「つい先日,ジュンともそんな話題になったんだ」
「ジュンと?」
「うん。来年,再来年に別れるとは想像できないけど,50歳,60歳になっても一緒にいる姿も想像できないって」
「恋は終わることがある。終わらないこともあるけど。未来のことは分からない。だから分からないことをあれこれ考えなくてもいいと思うの。今,わたしは十分に幸せ。澄人さんという立派な配偶者がいて,ジュリとジュンというすてきな恋人がいて。今,この幸せに浸っていればいいと思うの。余計なことを思い悩まないで」
「うん。サキが幸せなら,いいんだ」
「幸せよ。実家で暮らしていた頃より,ずっと幸せ。もちろん,世間にはあの頃のわたしよりずっと不幸な人たちもいるとは思うけど,それでも,一家の出来損ないみたいな目で見られていて,幸せではなかったわ」
「サキ・・・・」
わたしはサキを見つめる。
「あの頃のわたしを支えてくれたのはジュリ,あなたよ」
「サキ・・・・」
わたしは手を伸ばしてサキの頬を撫でる。それから席を立ち,サキの後ろに回り込み,抱きしめ,頬をすりあわせた。
「遠い未来のことは分からない。でも,今は心からサキを愛しているよ」
「ありがとう。それで十分よ」
年が明けて,ジュンの誕生日。サキの発案で,サキの部屋でささやかなホームパーティーをすることになった。
「ジュンはぜんぜんグルメじゃないから,腕によりをかけて料理を作っても,張り合いがないよ」
「よりをかけるほどの腕はないから,大丈夫よ。・・・・今でも,アップルパイが好きなのかしら?」
「たぶん,そうだよ」
「じゃあ,買っておこう」
その日,わたしがサキの部屋に着いたら,もうジュンがテーブルに着いてカフェオレを飲んでいた。
「ああ,ジュン,早かったね。橘クンも呼べば良かったのに」
「橘クンは美咲さんとデートだそうです」
「あら,振られたんだ」
「別に振られたわけではないけど。残念がってました。デートの約束とボクの誕生日がバッティングしたので」
「それは,言訳」
「そうかな?・・・・」
こんな会話を聞いて,キッチンのサキが笑い出した。
「サキ,何作ってるの?」
「サンドイッチ。中身はハム,卵,チーズ,コールスローサラダなど。お話ししながら食べるのにちょうどいいでしょう」
「手伝おうか?」
「いいわよ。もう,ほとんどできあがるから」
ほんとうに,5分くらいでサキは3人分のサンドイッチを盛った大皿をテーブルに持ってきて,ジュンに語りかける。
「サンドイッチは正式のディナーじゃなくて軽食だから,おしゃべりしながら食べてもマナー違反じゃないのよ」
「ふーん,そうなんですね」
「まあ,わたしが思いついたことだけど」
というサキの返事にみんな笑った。
とりとめもないおしゃべりをしながら,サンドイッチを食べ,そしてアップルパイを食べながらお茶を飲み,お皿やカップも片付け終えた。
「じゃあ,わたしの部屋でピアノを弾くわ。キー・アンド・ストリングと違ってアップライトピアノだけど」
サキがピアノを弾く。珍しくクラシック。
「あっ,クープラン。サキさん,覚えていてくれたんですね」
「もちろん,覚えているわ。忘れるはずないじゃないの」
「クープランって?」
「ジュンが好きな作曲家。バロック時代のフランスの作曲家。ジュンが初めてうちに,というのは,ここじゃなくて実家という意味だけど,うちに来た日,クラシックを聴くのが好きと言って,好きな作曲家としてモーツァルトとこのクープランの名前を出したの。モーツァルトはともかく,クープランなんて,普通に中学生が知ってる作曲家じゃないからね。印象に残ってるよ」
それからサキはジュンの方を向いて
「ほんとうはクラヴサンのための作品だけど,今日はわたしのピアノで我慢して」
「我慢なんて,そんな・・・・」
というジュンの返事にサキは微笑む。それから,誰に向かってということもなく語る。
「最近,クラシックを弾くのも楽しくなった。昔はただ義務感だけで弾いていたけどね」
ああ,それはいいことだ。
「ボクは好きですよ。キー・アンド・ストリングも好きだけど,こうやって静かにクラシックを聴くのも好きです」
そうだった。もともとクラシックも好きだと話していた。わたしがもっぱらジャズしか聴かないから,わたしと一緒の時はジャズばかり聴いてたけど
「これからは,三人で会う時,キー・アンド・ストリングに行くだけじゃなくて,ここで,サキの部屋で過ごしてもいいね」
ジュンがうなずく。サキも顔をちょっとこちらに向け,軽くうなずいた。
サキは1時間くらいピアノを弾いていた。クープラン,モーツァルト,そしてジャズをいくつか。最後に,
「せっかくだから,ジュンとジュリ,デュエットしなさいよ。誕生日だから明るい歌がいいな」
「そうね・・・・」
ということで,“Swanee”を歌った。
サキに見送られて部屋を出る。エレベーターに乗って,ジュンに話しかけた。
「今夜は,泊まっておいで」
「えっ?」
「まだ,時間はあるわ。明日の朝,わたしと一緒に出れば,ぜったい授業に間に合うから」
「それは,そうだけど・・・・」
3階でエレベーターが止まり,ドアが開き,わたしはジュンの手を引く。ジュンは素直についてきた。
「素顔のジュンを抱くの,久しぶりね」
ベッドの中でジュンを愛撫し,ペニスをていねいに刺激する。去勢していても,丹念に刺激すれば勃起する。今夜は挿入してみよう。ペニスより指の方が動きが自由だから,わたしは感じやすいけど,ヴァギナに刺激されてアクメに達するジュンの表情はわたしの視覚を刺激する。
「素顔でも色っぽくて淫らよ,ジュン」
耳元でささやく。きつく抱いたら折れそうな細い体をギュッと抱きしめる。
日々は平穏に過ぎていく。ジュンは2年生になり,夏休みが明けて後期になると授業はほとんど付属病院のある浦舟キャンパスで行なわれるようになった。
「ボクの部屋から歩いて歩けない距離ではないけど,雨が降ってなければ自転車で通ってます」
「ジュン,自転車に乗れるんだ」
と言ったら,ジュンはちょっとむくれた。
「ボクだって,自転車くらい乗れます」
そのむくれた顔もかわいい。思わず頬を指でつついてしまった。
クリスマスイブはいつものようにキー・アンド・ストリングで三人で過ごすつもりで出かけたら,思いがけず橘クンと美咲さんのカップルに出会った。普通と違うクリスマスデートの場所としてここを思いついたらしい。美咲さんは化粧してドレスを着たジュンをびっくりして見ている。そりゃあ,見とれるよね。
年が明けてジュンの誕生日。二十歳[はたち]の誕生日だからふだんより賑やかにと思ったけど,ジュンは
「いつもどおりでいいですよ。特別なことしなくても」
なんてことを言う。こういうところ,張り合いがないんだなあ,この子は。
ともかく,そういうわけで今年もサキの部屋でささやかに祝うことにした。でも,せめてシャンパンは抜こう。ジュンも堂々とお酒を飲める年になるんだし。と思っていると,この日に限って仕事が長引いた。急いで品川のオフィスを出て,途中の酒屋でシャンパンを買って,電車に飛び乗り,上大岡で降りてサキの部屋に駆けつけると,思いがけなく澄人さんがいた。
「わたしもつい先ほど帰ってきたところです。今日はジュンさんの二十歳の誕生日ということで,お邪魔でなければご一緒させてください」
「もちろん,邪魔なんて・・・・」
そう言ってシャンパンのボトルを置いたテーブルにはもうサンドイッチとカナッペが置いてある。サキも席に着いている。
「ジュリが来るのを待ってたの」
「ごめんね。待たせて」
「そうでもないわ。澄人さんもついさっき帰ってきたばかり。わたしもたった今,作り終わったところ」
と言いながらサキは席を立ってキャビネットからグラスを出す。
「グラスが不揃いでごめんね。シャンパングラスどころかワイングラスも4つもないから」
「いいよ。気にしなくて」
というわけで,不揃いなグラスにシャンパンを注ぐ。ジュンは一番小さなグラス。
「では,ジュンのはたちを祝って」
4つのグラスが触れあって,カチンという心地よい音がする。わたしは一気に飲み干したけど,ジュンは一口飲んで顔をしかめている。
「ジュン,せっかくのきれいな顔が,台無しよ」
「だって・・・・」
恨めしそうなジュンの顔を見て,サキと澄人さんが微笑む。
「どうしても無理なら,わたしが飲んであげるよ」
「じゃあ」
と言って,ジュンは自分のグラスを差し出す。わたしはその小さなグラスに残っていたシャンパンを一気に飲み干した。
「ジュリさん,お酒が強いね」
わたしは思わず吹き出しそうになる。
「これくらいで強いとは言わないよ」
こんな感じで,1年前と同じような他愛もない会話が弾む。違うのは澄人さんがいること。でも,わたしたち三人のおしゃべりを静かに見守ってくれるから,気詰まりは感じない。この世の男たちがみなこんなふうに静かで穏やかで押しつけがましくない生き物ならいいのにと思う。
食事が済んだら,これもまた去年と同じように,サキの部屋でピアノを聴く。モーツァルトとクープラン,そしてメンデルスゾーンの『無言歌』をサキが弾き始めた時,澄人さんが
「ありがとう。覚えていてくれたんですね」
と言い,サキがこちらを向いて優しく微笑んだ。澄人さんがわたしたちに説明する。
「いつだったか,わたしは音楽には詳しくないけど,メンデルスゾーンの『無言歌』は好きなんですと話したことがあるんです。ちゃんと覚えていてくれたみたいです」
ほんとうに,仲のいい夫婦だな。この二人を見ていると,確かに性愛だけが愛じゃないと思う。わたしは,肌を触れあい体の熱を伝え合う愛もほしいけど。
3月頃,アパートが取り壊されることになったとジュンが話した。
「一緒に住まない?」
2年前の質問を繰り返す。
「もう,授業はみんな浦舟キャンパスだから,日ノ出町か黄金町あたりの方が通いやすいんです。それに,上大岡だと市立図書館が遠くなるでしょう」
「大学の図書館が使えるじゃない」
「大学の図書館と市立図書館は所蔵している本の範囲が違っているんです。どちらか一方にあって他方にない本もけっこうあるんです」
図書館がからむとジュンは頑固。結局,2年前と同じ問答を繰り返した。仕方ないな。
しばらくして,「橘家に住むことになった」と知らせてきた。
「橘クンと一緒に住むんだ」
「いや,橘クンの部屋にボクが住んで,橘クンは家を出て一人暮らしするの。ボクを見ながら,一人暮らしに憧れてたみたい」
「ああ,うまく利用されたね。確かに,一人で住めば,美咲さんと自分の部屋で会えるよね」
「そういうこと?」
「それも大きな理由だと思うよ」
「ふーん・・・・」
まあ,あの二人の恋はわたしも応援しているから,文句はないけど。