※この作品はR-18です。

妖精妃の所有物   作:temma165

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1話

 妖精歴2017年――女王モルガンに挙兵した円卓軍とノクナレアの連合軍は、女王の圧倒的な個の強さの前に敗れ去った。玉座にいながらキャメロット全域の状態を把握し、反乱軍の主力部隊のいる場所に自らの分身を飛ばし蹂躙する――神域の天才と称されるモルガンならではの戦術の前に、反乱軍の主力の将は瞬く間に打ちのめされ、反乱軍は総崩れとなった。

 カルデアから参戦していた藤丸立香、マシュ、ダ・ヴィンチも、アルトリアと共に連携し、モルガンの分身を1人は撃破したが、人数を増やしたモルガンの分身達の前では、連携も意味をなさなくなった。円卓の盾も、賢人の英知も、女王の暴力的な強さの前では意味をなさず、1人、また1人と力尽きて倒れてしまう。意識を失う直前、立香が最後に見た光景は、冷たく自分

たちを見下ろす女王モルガンの姿だった。

 大地に倒れ伏す立香やアルトリアらを見て、モルガンの分身は首をすくめる。なぜこの程度の戦力で女王に対抗できると思ったのか、その愚かさが理解できなかった。せめてもの情けで、苦しませずに楽にしてやろうと歩み寄る。魔術を発動する直前に、ふと立香の手の令呪を見た分身は、立香を消すのを思いとどまった。汎人類史のマスターの彼には、まだ使い道があるかもしれない。そう考え彼女は、玉座にいるモルガンに意図を伝えると、立香と共に、キャメロット城内に転移した。

「ふん…いいだろう」

 分身の一人から情報を受け取った、玉座のモルガンは、彼女の行動を承諾した。汎人類史のマスターなど取るになりない存在だが、使い道があるかもしれないので、生かしておいて後程解析することにした。

「さて、次は…」

 モルガンはキャメロット中に意識を飛ばして、次の分身体を送る場所を探す。次の標的を村正に定めた時、謁見の間にに異変が起きた。

「フゥゥゥ…フゥゥ…モルガン…陛下…援軍は…援軍は送ってくださったのですか?」

 動けるのが不思議なほどの重傷を負いながら、牙の氏族の長、ウッドワスが入ってきたのだ。その姿に内心戸惑いながらも、モルガンは彼からの問いかけに素直に答えた。援軍は送った――と。次の瞬間、激高したウッドワスがモルガンに襲いかかった。本来、その非礼を咎めるはずの衛兵達もウッドワスには歯が立たず、彼を止められない。その場にいる者でウッドワスを止められるのはただ一人、モルガンのみだった。しかしモルガンは、甘んじてウッドワスの爪を受ける。まるで幼子のわがままを聞き入れる母親のように、ウッドワスの気のすむようにやらせてやる。やがて我を取り戻したウッドワスが手を止めると、そっと彼のたてがみを撫でた。

「まったく…どこまでも愚かなやつだ…」

「陛下…! オレは…私は…私は…」

 言葉とは裏腹に優しいモルガンの口調に、ウッドワスは己の過ちに気づいた。波のように押し寄せる罪悪感と後悔の念に、彼は生きる意思を失い、モルガンに見送られながら消滅してしまう。

(ウッドワス…誰がお前をたぶらかしたのだ?)

 去ってしまう忠臣との別れを惜しみながら、モルガンは心に疑念を抱く。ウッドワスほどの勇者をたぶらかし、モルガンを襲わせ、彼を消滅にまで追い込んだ犯人――モルガンが犯人に思い至ると同時に、再び事態が動き出す。

「陛下――あなたの在位は長すぎた。いい加減退位なさる時だ」

 土の氏族の長スプリガンが、粛正騎士を引き連れて、謁見の間に現れた。あろうことか、モルガンの後継者、彼女の全てであるバーヴァンシーを人質に取り、モルガンの動きを封じたつもりでいる。粛正騎士を引き連れたスプリガンを見た瞬間、モルガンは全てを察した。スプリガンとオーロラは、長い間モルガンの政権を転覆させようと画策し、反乱軍が挙兵したこの時をチャンスと見たのだろう。オーロラがウッドワスを篭絡してモルガンを襲うように仕向け、スプリガンがバーヴァンシーを人質に、モルガンの動きを封じて粛正騎士で暗殺する。彼らの行動するタイミングは完璧だった。反乱軍が挙兵した今が、モルガンを打ち倒す絶好の機会であったことは間違いない。ただ1つ彼らには誤算があった。それは、本気のモルガンを見たことがなかったこと――彼らが策を弄して隙をついたところで、モルガンにはとても敵わないことだ。

「どこまでも愚かな連中だ」

 先ほどウッドワスに吐いた言葉と同じ言葉をモルガンは吐く。同じ言葉でも、先ほどとは異なり氷のように冷たく、灰のように空虚だ。次の瞬間、モルガンの姿が消えた。

「え?」

 モルガンの姿を見失ったスプリガンと粛正騎士達が反応する隙も与えず、モルガンは彼らの首を撥ねた。スプリガンは己の身に何が起きたのか知る間もなく絶命した。粛正騎士達が崩れ落ち、人質のバーヴァンシーも崩れ落ちそうになるのを、モルガンは優しく抱き止める。彼女の腕の中でバーヴァンシーは静かに眠る。

(バーヴァンシー…お前を守ると誓いながら、苦しい思いをさせてすまない)

心の中でバーヴァンシーに謝罪しながら、モルガンは玉座に戻り、蓄積された魔力の一部を使用してウッドワスに負わされた傷を癒した。続けて転移の術式を発動する。行先はソールズベリー、風の氏族長オーロラだ。

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