「フゥ…こんなものか」
結局立香が服従してから、新たに4回精を搾り取って、モルガンは彼の部屋を後にした。部屋を出る前、まだ意識がある立香に、妖精國における彼の特異体質を伝え、今後もモルガンと妖精國に奉仕するように伝えた。半ば意識混濁としていたが、立香は全てを承知して眠りについた。目が覚めても逃げ出す心配はないだろうが、念のために彼の部屋の扉に出入り不可の魔術をかけておいた。
自室に戻ったモルガンは、実に数千年振りに満たされた気持ちになっていた。
「フ―フフフ―アハ―アハハハハハハハ!」
自室に戻るまで堪えていた笑いが爆発する。声に出して笑い声を上げるなど、数千年振りのことだった。生殖機能のないモルガン達妖精種には、性欲などない。だが、先ほどの立香との性行為で得られた幸福成分はモルガンを満足させ、笑い声を上げさせるほどに濃厚なものだったのだ。ひとしきり笑った後、モルガンは早速、先ほどまでの”実験”の結果を振り返り、分析する。その結果、以下のことが判明した。
1.立香から抽出される幸福成分は、以下の順番で濃度が高くなる
性器同士の供給(セックス)>性器から口への供給(フェラ)
>口から性器への供給(クン二)>口同士の供給(キス)
*口から性器への供給の効果は、立香の口内から取り出したパンティを履いた際に確認
2.立香から抽出される幸福成分は、彼の性欲が高まっていれば、高まっているほど、濃度が濃くなる。
3.同じ方法で連続して供給し続けると、効果が薄れる
なお、格妖精騎士達に適した供給方法は、妖精騎士の格を考慮すると以下のようになる。
妖精騎士ランスロット:性器同士の供給(セックス)
妖精騎士ガウェイン:性器から口への供給(フェラ)
妖精騎士トリスタン:口同士の供給(キス)
むろん、ガウェインにキスで供給させたり、ランスロットにフェラで供給させても問題はないが、各々に最高効率で幸福成分を供給させるためには、上記の方法が有効になる。ガウェインやトリスタンが性器同士の供給では、幸福成分の濃度に耐えられない中、モルガン同様に性器同士で供給しても問題ないランスロットは、流石という他ない。
モルガンは、立香が目覚めるのを待ってから、彼に最初の奉仕活動をさせることにした。相手はむろん、モルガンが最も大切に思っている”彼女”だ。
「ごめんなさい…お母様…ごめんなさい…お願いだから…捨てないで…」
自室で目を覚ました妖精騎士トリスタンは、ベッドの上で膝を抱えて座り込み、何回目か分からないモルガンへの懺悔を繰り返した。お気に入りの赤い服はしわくちゃで、モルガンに捨てられないかと怯えるその様子は、普段の高圧的な彼女の態度からは、想像もつかない。モルガンに黙って”失意の庭”を持ち出した挙句、自滅して人質になり、モルガンの足を引っ張ることになったのだ。人質にされた後の記憶はないが、モルガンに大きな迷惑をかけたのだ。彼女に幻滅され、見捨てられてもおかしくない。現に今も人の出入りができないよう、扉に魔術が施されている。一生このまま部屋に閉じ込められるのだろうか?そう考えていると、不意にその扉が開いた。部屋に入ってきたのは――
「お母さま! ごめんなさい! 私…私…!」
トリスタンが最も会いたがっていた、彼女の最愛の女性だった。トリスタンはモルガンに抱き着き、泣きじゃくりながら謝罪の言葉を繰り返した。この百年間、これほどモルガンに感情をぶつけたことはなかった。泣きじゃくるトリスタンの頭に優しく手が置かれる。驚いて見上げると、モルガンがいつもの無表情ではなく、トリスタンを安心させるような優しい微笑みを浮かべて、手を置いていた。その目には涙すら光っていた。
「私こそ、すまなかった。もっとお前と話さなければならなかった。もっとお前に教えなければならなかった。全て――全て私の責任だ」
その言葉を聞いたトリスタンは、強くモルガンに抱き着き、その胸に顔を埋めて泣き、モルガンもトリスタンを強く抱きしめた。しばらく親子の抱擁を続けたのち、モルガンが切り出した。
「トリスタン、今日はお前に贈り物があるのだ」
「贈り物?」
予想外のモルガンの言葉に、トリスタンはキョトンとした。これまでモルガンから贈り物を受け取ったことなど、1度もなかった。彼女の娘として育ててくれただけで十分だというのに、これ以上何をくれるというのか? まるで夢のような出来事の連続に、思わず頬をつねる。痛みが走り、これが現実であることが実感できた。
「いいぞ、入れ」
モルガンの言葉に何者かがトリスタンの部屋に入ってくる。
「お―お前は!?」
その姿を見たトリスタンは驚愕した。部屋に入ってきたのは、つい先日、予言の子と一緒に”失意の庭”に閉じ込めてやった異邦の魔術師だったからだ。彼の姿を見たトリスタンは、急いで戦闘の準備をした。なぜ彼がここにいるのかは分からないが、キャメロット城内に敵の侵入を許すことはできない。身構えるトリスタンの手に、モルガンが自分の手をそっと置き、首を横に振った。
「トリスタン、武器を下ろしてよい。彼は、藤丸立香は、既に我らの軍門に下っている」
どうやら、異邦の魔術師は、敵ではないらしい。彼の服装をよく見ると、女王の捕虜の証の、囚人服を着ている。トリスタンが見つめると、彼は気まずそうに目線を逸らした。
「お母さま、贈り物ってコイツ?」
「すぐに分かる。立香!」
「はい、モルガン様」
「咥えろ」
いぶかしげに質問するトリスタンに、モルガンは行動で示す。立香を呼びつけると、彼に指を突き付けた。立香も心得ているのか、モルガンの指を口に咥えて、舐め始めた。ピチャピチャという水音が響き、トリスタンは不思議とドギマギした。やがて十分に舐めたのか、立香が口からモルガンの指を放した。モルガンは彼の唾液で濡れた指をトリスタンの前に持ってきた。
「トリスタン、私の指を舐めてみろ」
「は―はい、お母さま」
モルガンからの勧めに戸惑いながらも、トリスタンは彼女の指を舐めてみた。次の瞬間、トリスタンの世界が変わった。身体が内部から温まり、頭が冴えてくる。モルガンから頭を撫でてもらった感触が再び蘇り、心が軽くなっていく。自信の変化に戸惑うトリスタンに、モルガンが優しく語り掛ける。
「トリスタン、それが幸福感だ。私が長い間お前に与えたくて、叶わなかったものだ」
「お母さま――ありがとう! こんな私に幸せをくれて――本当にありがとう!」
「礼を言うのはまだ早いぞ、トリスタン。今から私がお前に行うことを、立香に行え。そうすればお前はいつでも幸福感を味わうことができる」
無邪気に喜ぶトリスタンにモルガンは告げると、彼女の頬を優しく包む。ゆっくりとモルガンの顔がトリスタンに近づく。かつてない距離感に、トリスタンは顔を赤らめて少し慌てた。モルガンの唇がトリスタンに重なり、舌が優しく歯茎をノックする。トリスタンが迎え入れると、モルガンの舌はトリスタンの舌を優しく撫でた。たっぷりと長い時間口付けてからモルガンは唇を離した。少し余韻が残っているのか
トリスタンの頬が少し紅く染まっている。
「トリスタン、立香にしてみろ」
モルガンに促され、トリスタンは立香の前に立った。先ほどモルガンがやったように立香の頬を手で包み、ゆっくりと顔を近づける。至近距離で目が合い、一瞬止まりそうになるが、構わずに唇を重ねた。恐る恐る舌を立香の口内に入れ、彼の舌を舐める。先ほどの感覚が、数倍になって戻ってきた。トリスタンは立香から顔を離すと、目を閉じ、幸福感を楽しんだ。今日は本当に――本当に最高の1日だ。
「トリスタン、立香は普段私の手元に置いている。ランスロットやガウェインにも分けてやらねばならないからな。彼が必要な時は、いつでも声をかけるように」
「はい! お母さま!」
これまでにない溌剌とした返事と笑顔でトリスタンは答え、部屋から出るモルガンと立香を見送った。
女王歴21XX年
冬の女王モルガンによる治世は続いている。彼女の元には円卓の名を冠した騎士達の他に、1人の少年の姿が常にあった。女王の支配は依然厳しいものだが、昔よりも少しだけ優しくなった。
Fin