第二懲罰室に入ったクロエは部屋の照明をつけた。部屋の中央には定番の、オークを万歳の姿勢で拘束する為の天井と床に設置された拘束具。周りは鞭を振るうのに充分なスペースが確保されている。
その他にもオークを固定する拘束台や拷問器具の入った棚があちこちに配置されているが、この部屋で異様な存在感を醸し出してる、かなり大掛かりな装置が左側に設置されていた。それは水車。部屋の左側には小規模なプールがあって、そこに車輪を三分の一程沈めた水車が設置されている。水車には車輪で言うところの踏面にあたるところに手足を固定する為の拘束具が付いていて、オークはそこに海老反りの姿勢で締め上げられ、水車にピッタリ固定される。そしてオークは僅かな抵抗も許されぬまま、水車を回されることになる。この水車はタブレット型の操作板にエルフが魔力を流す事で制御される。回転速度はもちろん、オークが水中にいる間だけ回転を遅くすることもできる。これによってオークはまともに呼吸することすら出来なくなる。オークは呼吸すらエルフにコントロールされ、エルフはオークが必死に空気を求める姿を操作板片手に優雅に鑑賞するのである。
(さて、そろそろオークを出してあげますか)
クロエは収納魔法を使って格納していたオークを部屋の天井付近に出現させた。オークは重力に従い落下し、床に叩きつけられた。
「ごふっ!?ぐっ、うぅぅ……こ、ここは…?」
「クスクス、ようこそ収容所へ、歓迎するわ」
「……」
未だに四肢を背中で拘束されているオークは、恨みと憎しみのこもった表情でクロエを見つめている。
(痛めつけが足りなかったでしょうか?一時的には屈服したようにみえても、やはり心の底では私に対する反抗心が燻っているらしいですね。まぁ、それもどこまで続くか見ものですが)
「私はクロエといいます。これからこの収容所のルールを説明します。いいですね?」
「……」
「無視ですか、まぁいいでしょう。そんな態度をとればどうなるか、その身体にたっぷり教え込ませてあげます。」
クロエは自分の手元に一瞬にして鞭を出現させた。それを見たオークは身体をガタガタと震わせ、顔は恐怖と怯えで染まっている。
(クス、さっきまでの威勢はどこにいったのでしょうか?)
「あ、ああ、すみません、でした…」
オークは小さい声で謝罪の言葉を口にしたが、クロエはそれを無視して鞭をオークの左足に叩き込んだ。
ヒュオン!!シュビイイイイイイインンン!!!!!
「がっっ、、ぎゃああああああああああああああ!!!!!!」
「まずここのルール一つ目。私達エルフに聞かれたことにすぐ返事をすること。違反した場合は鞭打ち5回ね」
「ぐぅっ…え、まさか…」
「それと二つ目のルール。懲罰が終わるまで謝罪は一切受け付けないから」
クロエは再び鞭を振りかぶり、今度は右足に勢いよく打ち込んだ。
ビュオン!!!!ビィッッッッシイイイイイイインンン!!!!!!
「があああああああああああああああ!!!!!!ごめ、ごめんなさいいいいいいい!!!!ごめんな…」
ビィッッッシイイイイイイインンン!!!!!!
「うぎゃああああああああああああああああ!!!!」
ヒュオン…ビシャアアアアアアアアアンンンン!!!!
「ああああああああああああああああ!!!!ゆるじで、ゆるじでええええええええええ!!!」
ビュオン!!!!ビッッッシイイイイイイイイイインンン!!!!!!
クロエは最後にオークの尻に一際強く打ち込んだ。
「あ、あ、あぁ…ごめんなさい…ごめんなさい…」
クロエは涙ながらに謝罪の言葉を繰り返すオークの頭を躊躇なく踏みつけた。
「ぐっ!?」
「ルールその三。謝罪する場合は額を床につけ最大限の誠意を示すこと」
クロエはオークの頭から足をどけると魔法でソファを出現させ、そこに足を組んで座り込んだ。その美しい顔にはサディスティックな笑みが咲いていた。
「うぅぅ、ごめんなさい…もう二度…無視しません…」
オークは背中で四肢を繋がれている体勢からなんとか床に額をつけ、謝罪した。
「クス、アハハ!ええいいわ、赦してあげる」
「ありがとうございます…」
「それじゃあルールの説明を続けましょうか。ルールその四。エルフの身体に許可なく触れないこと。故意はもちろん、事故や不可抗力でも関係ないわ。違反した場合は鞭打ち50回」
「な、50回!?」
たった5回の鞭打ちでも死ぬほど辛かったのに、50回も打たれたら本当に死んでしまうかもしれない。オークはエルフの容赦のなさと残酷さに恐怖した。
「当然でしょう?あなた達オークは汚らわしく醜い種族なんだから。エルフは綺麗好きなの。誰もオークに触れたいとは思っていない」
そう、オークを隷属しているエルフだが、基本的にエルフがオークに直接触ることはまずない。魔道具とエルフの念動力でオークに触れることなく管理出来ている。
「私達エルフは美しく、可愛らしく、尊い種族。知ってる?人間はエルフのことを天使のようだ、エルフと結婚したい、結婚できるなら死んでもいい。そう言ってることを。そんな私達に触れることがどれほどの重罪か分かるでしょう?」
何が天使だ、お前らは悪魔そのものだ。オークはそう思ったが、決して口には出さなかった。口答えすればどんな酷い目にあうか想像がつかないからだ。
「話が逸れましたね。ルールその五。エルフから物を恵んでもらったり、治療などの処置を受けた時にも土下座して最大限の感謝をすること。土下座が物理的に出来ない場合は言葉だけでもいいけど、可能な限り額を床につけること。違反した場合は鞭打ち5回ね」
「わかりました…」
「それと、これはルールに明記されている訳じゃないんだけど、私達エルフのことは基本的に様つけで呼ぶこと。わかりましたね?」
「はい、わかりました、クロエ様…」
「ルールその六。私達エルフに反抗的な言動を取らないこと。違反したらその度合いにもよるけど、最低でも鞭打ち50回は覚悟しておきなさい。酷ければ100回でも200回でも鞭を叩き込むわ」
オークはその言葉に震え上がった。200回の鞭打ち。それはもう死刑となんら変わりはない。たとえ生き残っても、身体に重度の障害が残り、精神は崩壊し、廃人同然となるのは避けられない。
「クスクス、そんなに怯えちゃって…フフ、どうしましょう、もっと虐めたくなっちゃいました」
「!!?あ、あ、御慈悲を、鞭打ちだけはどうか、お願いします!!絶対に逆らいません!!どうか御慈悲を…」
「フフ、冗談よ。さて、大体のルールの説明は終わったし、労働に関する決まりはまたその時に話しましょう。それじゃあ、その泥と血で汚れた身体を綺麗に洗ってあげましょうか」
クロエは興奮に満ちた凄惨な笑みを浮かべながらそう言った。
すみません、いつも通り鞭打ちさせてたら水車までいけませんでした。次回こそは水車回です。