ヴンダー内部、アスカの自室。彼女はベッドの上に横たわっていた。
「んん…っ…ふ…ん…」
寝息かもしれないが、今の彼女はある事情で寝る必要がない。では疲労からくる溜息かと思われたが、これも同様の理由で適切ではない。まず、彼女の両手は自分の股にあった。
「あ…っ…!は…ん…んん…」
両手の指は彼女の股の奥にある物を擦るように動いている。彼女は、自慰に耽っていた。
「ふ…うう…っ…あ…ん…!いい…」
アスカは、枕元に置いた写真を見つめる。写真には、弁当を持った笑顔の少年が写っておりそれを見ながら彼女は片手を胸に移動させ、布に覆われた胸を露出させた。
「やだ…なんで盛り上がってんのよ…く…あんっ…!」
今の彼女が触れている恥部の一部だけでなく、胸の乳房が硬くなっている感触に戸惑いながらも触れると心地良い感触がするため、指の動きが激しくなる。それは、今の彼女にとって非常に貴重な物となっていた。
「う…ああん…っ…!や…んっ…!シンジ…シンジいっ…!イ、く…い…っ…!!」
ビクン!!
「はああっ…!イっちゃった…」
指を動かした末、アスカの身体には大きな電流が流れ、大きく仰け反った。だがそれは拷問の類とは真逆の、快感に等しい電流であり今の自分には無縁だと思っていたものだった。彼女は、両手の指を見つめながら呟いた。
「…最低…何してんのよ…あたし…」
「おおう、お盛んだにゃ~姫♡」
「!!??」
ベッドの隣から聞こえた声にアスカは高速で振り向く。そこには、彼女の仲間の真希波・マリ・イラストリアスが立っていた。
「な、あ、あんたいつからそこに!?」
「いや~、部屋の前から声が聞こえたから気になってねえ~、まさか姫のオナニーが見れるとは、眼福だったにゃあ♡」
部屋の鍵は閉めてたはずなのに、どうやって入ったのか気になったがそれよりも今のアスカは羞恥心が極限に達し、勢いよく立ち上がると同時にマリの頬にビンタを喰らわせた。
「~~~ッ~~~~////」
「にゃはは、これ見物料?パンチラと同額って随分お得だねえ♪」
「…じゃあ追加料金で前歯全部逝く?」
そう言うアスカからは明らかに赤いオーラに加え左目の眼帯の奥からは蒼い光が発せられており、そこからストレートを繰り出す構えを取っている。確実な殺意を抱いているのは明白であり、前歯だけでは済まないだろう。
「ごめん、ストップストップ!それワンコ君の台詞…じゃなくて前歯どころか首が吹っ飛ぶ!!」
「チョーカーの必要なかったわね…ブッ殺してやる!!!」
その後、どうにかアスカを落ち着かせたマリは互いに座りながら話し合っていた。なおマリの手には写真が握られている。
「ふーん、これオカズにしてたの?ワンコ君…いい笑顔だけど、別にエッチな写真ってわけじゃないよね?」
「…あたしだって分かんないわよ…でも…その写真を見つけた時から…」
「にゃ?」
「荷物の整理してたらその写真が出てきて…眺めてたら急に胸がドキドキして…身体も熱くなってきて…『こう』なってからこんなことなかったのに…それで気が付いたら…」
「ほう…気持ちよかった?」
「!?…っ…そうよ…悪い!?」
「ぜーんぜん。むしろ確信したよ。」
「今の姫はワンコ君でしか勃起しないってこと!」
俯きながら話すアスカに対し、半ば嬉々として言い放ったマリに対してアスカは速攻で掴みかかった。
「あんた!!何言ってんのよ!!」
「勃起するのは男だけじゃないよ?女だって勃つ所は勃つにゃあ。例えば…」
「言わんでいい!!」
マリの発言に対し、先ほどまで覚えがあったアスカは一際大きな声で遮った。
「まあそれはともかく…ずっと心配してたからさ、安心したよ。」
「何をよ。」
「例えて言えば…思春期なのに部屋にエロ本やビデオがなくて心配するお母さんやお姉さん的な?」
「はあ?何よそれ…」
「…今の姫さあ、セックスとかも必要ない体だよね?エヴァの呪いとかに加えてさ。だけど恥ずかしいって気持ちや性欲とかはまだ残ってる。姫は人間…リリンって事だよ。」
「…気休めのつもり?そんな感情もう殆ど…」
「だけどワンコ君の事考えたらシちゃったんでしょ?今の自分の事も忘れてさ。充分凄いことだよ。」
「だから何がよ。」
「限度はあるけどさ、誰かの事を思ったり性欲を抱いたりするのは人として当然なんだよ。使徒が憑りついてもそういう気持ちを思い出させてくれる…ワンコ君は凄いね。ある意味男冥利に尽きるにゃあ。」
「っ…だからアイツにはそんな事…」
「ふーん?じゃあさ、ワンコ君が姫の事オカズにしてなかったらイラつく?」
唐突に話題を変えられ、戸惑いながらもアスカは答える。
「それは…それでなんかイラつく。と言うか何よその質問!?」
「ワンコ君だって男の子だからさ。姫で抜いててもおかしくないじゃない?無論、他の女の子でもしてるだろうけど。」
その言葉を聞いた瞬間、アスカの心が一瞬ざわついた感触がした後、目の前が暗くなった気がした。そして無意識の内に呟いていた。
「…何それ…あたし以外の女で…?」
「おーい、姫、姫?」
「はっ…あ、あれ?」
「一瞬意識飛んでなかった?何か言ってたように見えたけど。」
目の前を見ると右手を振りながら声を掛けるマリの姿がある。確かに、一瞬意識が違う所に行っていたかもしれない。
「気のせいよ。」
「そう。じゃあ用事あったから出るね。続きはしてていいよ~ん。」
「ばっ…!というかあたしの見たんだからあんたのも見せなさいよ!!」
「え!?姫が私のを見たいって!?いや~嬉しいにゃあ~♡けど、タダでは見せれないかにゃあ~♡」
マリは大仰に身体をくねらせ、笑いながら出ていった。アスカは「あのコネメガネ…!!」と睨みつけた後、再びベッド上に横になり、視界を腕で覆った。
あたしがベッドの上で寝ている。計器に繋がれたまま、死んだも同然の顔で。身も心も壊れ果てているのが一目瞭然だ。そこにアイツが縋ってくる。理由はよくわからないが、あたしと同じくらいに追い込まれているのが目に見えていた。そのまま少し時間が経った後、アイツはあたしの胸をはだけさせ、自慰に耽り始めた。そして、「最低だ…」と呟いて。
「…何よ今の…夢?」
寝れなくなってから、夢など見なくなった。だけど今見たのは何だ。変な話をしたから、妙な幻覚でも見たのだろうか。だが既視感がありすぎる。今のあたしの身体は、使徒が憑りついているから動けている。エナジードリンクやダメな薬で誤魔化しているような感じだろうか。それがなければこんな風に廃人になっているだろう。最も、ベッドの上で寝れるというだけでも羨ましく見えてしまったが。
そしてシンジだ。あたしをオカズにしていた。だが、非難する気が起きない。さっきあたしがシたのも、同じような心境だったからだろう。認めたくないが、何かに縋りたい。それに、こうも思った。
「…いっその事犯しなさいよ…」
あたしが目の前にいて抜くなら、いっそ襲えばいいのに。本気でそう思っていた。今のあたしがセックスも出来ない身体だから猶更そう思ったのかもしれない。こうなる前に、しておけばと。そうすれば他の女に行くこともなかったかもしれないのに。
「…このバカシンジ…」
例の写真を見つめながら、あたしは今いるかどうかもわからない奴に対し呟いていた。
部屋の扉の前に立っていたマリは、タブレット端末を持ちながら天井を見上げていた。
「やれやれ…名前や出自が変わっても、本質は同じ、か…アスカはアスカって事ね。それも、彼の事を強く思っているから、か…じゃなきゃとっくに使徒になってるだろうし…」
今のアスカは、使徒に寄生されある程度の処置はなされているものの、睡眠をはじめ人としての欲求がなくなりかけており、彼女自身それに苦しんでいる。だが彼への強い思いはまだ彼女の自我や欲求を保たせている。これが無かったら、すでに人の形をしただけの使徒に成り果てていただろう。そうなれば、自分が始末しなければいけない。
「…勃起するのはそれだけ強く思って、自分を維持するという事…だから姫、シンジ君への思いは切らせちゃダメだよ。どんなに荒んでても…いつでも勃てるようにしとかなきゃさ…」
我ながら何言ってるんだと一瞬思った瞬間、扉の奥から甘い声が聞こえてきた。
「ありゃ、発電再開か。若い子は本当に速いにゃあ。じゃあ私は…こっちで堪能させてもらうか!」
マリはタブレット端末を操作し、映像の再生リストを表示し、再生する。そこに映っていたのは、先ほど自慰に耽っていたアスカの姿だった。
「ふふーん♡いつもの姫より可愛いにゃあ~」
映像を見ながらマリは、思春期の如く興奮していた。
アスカは何だかんだでシンジ君の事を思ってなければとっくに使徒化していたと思うのです。