今回と次回辺りはオリジナル展開が入るので矛盾やわかりづらいところがあると思います、見つけた場合は指摘して下さると幸いです。
前回のあらすじ
ドワルゴンでは危うく数十年間の強制労働をさせられそうになったが、当初の予定通り技術者の確保に成功したリムル達。
帰還するとゴブリン達が増えているなどのアクシデントがあるも、カイジン達の指導のもと住みやすい建物や衣服などの整備が進み新たな集落として順調に発展していた。
そんな最中にリムルはヴェルザードに
ここはジュラの大森林、多くの魔物が生息する危険地帯。
その危険な森の中で、魔物に追われながら全力疾走している一団がいた。
「うおおぉおおおぉぉお」
「カバルの旦那はなんでいつもこうなんでやすか!?魔物の巣に剣をぶっ刺すのはいい加減やめてほしいでやすよ!!」
「そうよ!何回同じ失敗してるのよ!」
「う、うるせぇ!気になっちまったもんは仕方ないだろ!」
森を爆走しているのはカバル、ギド、エレンの冒険者チームと臨時のパーティーメンバーであるシズの4人だった。かつてリムル達と出会った時のようにカバルのミス(魔物の巣に剣をぶっ刺す)で怒らせた魔物の群れに追い回されていた。懲りないリーダーである。
このまま逃げ続けるのは難しいと判断したのか、臨時メンバーのシズが立ち止まって魔物達に向き直る。
「私が足止めしよう」
「シズさん!?よせって!!あの数は無理だ!!!」
カバルの言う通りだと賛同するエレンとギド。追ってきている魔物の数は確実に10体以上はいる。彼らの実力ではまず勝てない、だからこそ3人は必死になって逃げていたのだ。
しかし、シズはエレン達の忠告を受けても引く様子を見せずに剣を抜いて迎撃の準備をする。
「心配いらない。あなたたちを逃すくらいなら今の私でもできる」
「…この"炎の力"を用いれば───」
シズは自身の剣に炎を纏わせ魔物達に切り掛かった。
ーーー
ーー
ー
戦況は完全にシズ側に傾いていた。
シズの炎を纏った剣は魔物を一撃で仕留める程の威力を発揮し、次々と魔物を討伐していった。
「す、すごい!なんなの!あの炎!?」
しかし、戦況に反してシズには決して余裕があったわけではない。
むしろ、既に限界に達しようとしていた。
自身に宿る
僅か数分で魔物の群れは全滅した。
シズは暴走する前に終わらせることができて安堵していた。
───してしまっていた。……それ故に背後で起き上がる魔物に気づけなかった。
「シズさん後ろ!」
エレンが叫ぶが既に限界寸前のシズにはどうすることも出来ず、襲い掛かってくる魔物を見上げることしか出来なかった。
───と、その時……
「伏せろ。」
上空から無数の氷の弾丸が降り注ぎ、シズを狙う魔物を蜂の巣へと変えた、衝撃でシズの仮面が外れ落ちてしまう。
エレン達がシズに近寄り心配していると2人の人影が近づいて来た。
「あら?エレンじゃない、こんなところで何してるの?」
「また魔物の群れに追われてたのか?懲りないな。」
現れたのはリムルとヴェルザードだった、ヴェルザードは友人であるエレンに声を掛け、リムルは初めて会った時のように魔物の群れに追われていたエレン達に呆れていた。
「リムルさん!ユキさん!助かったよ〜」ヘニャ~
「旦那達ですかい、助かりやした」
「助かった〜」
エレン達はリムルとヴェルザードを見て安堵のため息をつきながら座り込んだ。そんな中リムルが1人だけ置いてきぼりになっているシズに彼女の仮面を持って近づいていく。
「ほら仮面、お姉さんのだろ?」
(思ったより早く出会ったな…運命の人…)
「ええ…助かったよ、ありがとう。」
「私はシズ、君は?」
「俺はリムル、よろしくな!」
その後、リムルは運命の人こと
ちなみに、リムルはシズと直ぐに仲良くなった。
理由としては、やはり同郷であったことが大きいだろう。
話しているうちに今までは誰もわからなかった日本のネタに反応したことから同じ日本人であることに気がついたのだ。
細かくはリムルが21世紀の日本からの転生者、シズは戦時中の日本からの召喚者…という違いはあれど同郷である事に変わりはなく楽しげに話していた。
その光景を不安そうに見ている女性がいた。
(なんで?……なんでそんなに楽しそうなのリムル?………やっぱり……私なんかよりもその人の方がいいの?)
ヴェルザードはとても不安だった。
ドワルゴンで見たリムルの"運命の人"はリムルと同郷であったためか直ぐに仲良くなってしまった、自分と話しているよりも楽しそうに話しているのだ。
───もしかすると私よりも
リムルと同郷、リムルと同じ世界で生きていた、
ーーーー
ーーー
ーー
ー
──リムル達の町──
街に到着後、腹ペコだと言うエレン達のために焼肉が振舞われた。
「あー!ギドひどーい!よくも私のお肉を!!」キー
「食卓とは戦場なんでやすよエレンの
「いいわよぅじゃあカバルのもらうから」ヒョイ パクッ
「ギャーー!!丹生こめて育てた俺の肉がーーー!!」
───食卓で始まっているのは肉の取り合いという子供の喧嘩染みた何かだった。尚、正座して行儀良く食事をしているシズはちゃっかり自分の分を確保していた。
「……相変わらず賑やかな連中だな」
(ていうかシズさんは仮面つけたままでどうやって食べてるんだ?)
エレン達が暴れている中リムルはシズと話を弾ませ、ヴェルザードは気分が悪いと言ってテントで休んでいる。
リムルはシズとの話で彼女が東京大空襲の真っ最中に召喚されたことを知る。しかも、召喚されたのはただの偶然であり、召喚した男は別の人を召喚しようとして失敗しその結果召喚されたのがシズだったのだ。
「………大変だったんだな」
「………そうだね……気紛れで
「だからかな…人と親しくなるのは少し怖かったんだけど」
「やっぱり仲間っていいね、最後の旅で楽しい人達と出会えたもの」
「いい冒険者だよ、彼らは……ちょっとあぶなっかしいけどね」
戦争を体験して、人違いでこっちへ飛ばされて呪いまでかけられて、おっちょこちょいの仲間をフォローして───苦労人なんだろう、シズという人間は、でも、これだけの体験をしていながら擦れた感じのしないシズをリムルはかなり気に入っていた。
「腹ごなしに散歩でもどうだ?」
(俺はもっとシズさんの話を聞きたい)
リムルはシズと町を一望出来る丘の上に来た。
今のリムルはスライム形態でシズに抱き抱えられている。
リムルは筋肉質で弾力に優れたシズの胸の感触に頬が緩みそうだが、ヴェルザードに怒られそうなので気合いで我慢している。
シズは程よい弾力と心地いい温度といったスライム形態のリムルの抱き心地がとても良く、嬉しそうにしている。
「俺たちの町は気に入ってもらえた?」
「とっても」ニコッ
(ちょっとテレくさいな)
「そうだ面白いもの見せてやるよ」
リムルはそう言って『大賢者』にお願いしてシズに『思念伝達』を用いて自身の記憶を見せた。
シズの脳裏に映っている光景は、焼け野原と化した町の復興に励む人々の姿だった。
「これは…?」
「俺も自分で見たわけじゃないけど」
「終戦後、復興に励む人々だ」
さらに映像は変わり、徐々に復興されていく町、新幹線の開通、東京タワーの完成などの戦後日本が発展していく様子が映された。
「これが、あの炎に包まれた町…?」
「みんなが頑張ったんだよ」
「そっか…こんなにキレイになったんだね」
「こっちでも同じさ、皆で楽しく暮らせる町を作る、それに向かって俺たちは頑張っているんだ」
「良かったらまた遊びに来てくれ、町はもっと発展させるつもりだが」
「同郷のシズさんに第二の故郷と思ってもらえたら俺も嬉しい」
「……ありがとうリムルさん、きっとお邪魔するよ」
仲睦まじく話すリムルとシズエ、そんな二人を少し離れた位置にある木の影から見ている者がいた。
「……リムル…」
────ヴェルザードだ。
(……やっぱり…私といる時よりも楽しそう……)
彼女はシズエへの嫉妬心で狂いそうになった精神を鎮めるためにテントで休んでいたのだが、談笑しながら2人っきりで歩いているのを見てしまい、居ても立っても居られなくなってしまい、後をつけたのだ。
(……ねぇリムル………私も日本人だったら……そんな顔を見せてくれた?……私も日本で生まれていたら………私も……)
(私に魅力が無いから?……5年で飽きちゃった?…私はもう……要らないの?)
ヴェルザードが見たことのないほどに楽しげに談笑しているリムルの姿は彼女の心を大きく揺さぶった。
ヴェルザードには分からない、分かるわけのない、異世界の知識による差によって、彼女は完膚なきまでに打ちのめされていた。
(シズ…私はあなたが羨ましい……リムルと同じ世界で生きていたことが……出会って数時間で5年の月日をかけた私よりもリムルと仲良くなれるその社交性が………どうしようもなく嫉ましい)
(私の方が長く一緒にいるのに……)
(私の方がリムルを愛してるのに……どうして…どうしてよ!!)
<確認しました。>
<個体名:ヴェルザード・グレイスはユニークスキル『
(……あら?ユニークスキル?……新しいスキルを得るのなんていつぶりかしら……これでリムルの役に立てるかな?…………必要としてくれるかしら……)
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ーーー
ーー
ー
───二日後───
シズとエレン達はリムル達の町で充分な休憩を取り、今日出発する。
エレン達はブルムンド王国に帰ってギルマスにリムル達の町のことを報告しに。
シズは召喚主である魔王:【レオン・クロムウェル】を探すために。
リムルはヴェルザード、リグルド、リグル達を連れて見送りに来ていた。
仲良くなれたシズとの別れをリムルは惜しんでいた、この世界で同郷の者に出会うのは難しいだろうからだ。しかし、リムルはシズの覚悟を知っているためグッと堪えて送り出すことにしたのだった。
一方でヴェルザードは嫉妬と喜びの感情に揺れていた。
最初はリムルを盗られてしまう可能性のあるシズが町から出て行ってくれることに喜んだが、リムルがシズとの別れを惜しんでいるのを見て僅か数日でこれだけ仲良くなったシズに嫉妬していた。
冒険者達の準備が整っていざ出発!───しようとした時。
ドクン
「……クッ…ぐあっ……そんな…もう…………」
「あああああああ!!!!」
突然、シズが苦しみ出したのだ。
少しの間苦しんでいたがやがて大きな叫び声をあげ、シズの仮面に大きなヒビが入り、そこから溢れ出るように吹き出してきた炎が巨大な火柱となった。現れた火柱が雲を作り出し辺りが暗くなる。
皆が突然の事態に戸惑っていると、シズの身体がゆっくりと浮かび上がり炎が勢いを増す。
「シズさん!シズさーん!!」
エレンが必死に声をかけるがシズからの返事は無い。
だが、目の前に映る巨大な炎を出す彼女を見て、カバルが呟くように言う。
「シズ…シズエ?……シズエ・イザワ!?」
「シズエ・イザワって…『爆炎の支配者』か!」
ここにきて、エレン達はシズの正体に気づいたのだ。
シズ──本名:シズエ・イザワ。
50年ほど前に活躍していたギルドの冒険者であり、
やがて、宙に浮かぶシズの身体を炎が包み込み、中から現れたのは上半身裸で髪が炎を纏い、頭に角を生やした褐色で筋肉質な身体を持つ男の姿だった。───
「炎の精霊:イフリート…やっぱり間違いじゃねぇ」
「シズさんは『爆炎の支配者』でやす」
「シズさんが…伝説の英雄……あんなのどうやっても勝てないんですけど!?」
「無理でやす…あっしらは…ここで死ぬんでやす………短い人生でだったでやんすね」
諦めモードに突入している、エレン達をよそにリムルは冷静に仲間達に指示を出して行く。
「リグルド、リグル、皆を非難させろ」
「しかし!」「リムル様とユキ様は」
「俺たちはシズさんを助ける、だからお前たちは住民を守れ!」
「……ハッ!承りました!」
指示を受けたリグルドとリグルは非難誘導のために走り去っていく。
「ユキ……エレン達を守ってやってくれ、俺はシズさんを助ける!」
「……そう、わかったわ任せて」
リムルが仲間達に指示をしている間にイフリートが動く。
翼で空を飛び、炎を撒き散らすトカゲ、
リムルには2体、エレン達には3体のサラマンダーが向かってくる。
人数が多い方に戦力を振り分けたというよりヴェルザードを警戒して3体送り込んだようだ。
しかし、それは舐めすぎである。
片や、世界最強の竜種の一体。
片や、その竜種に太鼓判を押されるほどの力を持つスライム。
「
「
リムルが放った氷の弾丸が2体のサラマンダーを蜂の巣にし。
ヴェルザードは氷の盾でサラマンダー達のブレスを完全に遮断した。
「ユキ!そいつらは任せるぞ!」ダッ
「わかったわ!気をつけてね!」
「おう!」
リムルは残ったサラマンダーの相手をヴェルザードに任せ、イフリートに向けて走り出す。そんなリムルの姿を見てエレンが心配そうな声を挙げる。
「えー!?一人は無茶ですよリムルさん!!相手は伝説の英雄なんですよ!!」
しかし、リムルは止まらない。
真っ直ぐにイフリートに向かって突き進んでいく。
「大丈夫よ、リムルはあんな程度の相手に負けないわ」
「イヤイヤイヤ!何言ってるんですかユキさん!?確かにリムルさんは強いですけど流石にギルドの英雄相手は無理に決まってますよ!」
「それでも大丈夫よ、リムルなら勝つわ」
ヴェルザードはリムルの勝利を疑っていなかった。
当然である、リムルを鍛えたのは彼女だ、彼の実力を最も理解しているのは間違いなく彼女なのだから。
だからこそ、ヴェルザードは自分の仕事に集中する。
リムルがまだ必要としてくれているのだから、ちゃんと結果を出さなければと意気込んで。
「さてトカゲが3匹、話にもならない雑魚だし、さっさと終わらせましょう」
(本当は『
「
ヴェルザードは左腰の剣を抜き、刀身に冷気を纏わせて一気に薙ぎ払う!───すると纏っていた冷気が巨大な斬撃と化してサラマンダー達に襲いかかった。
「───ギャァ!」「──グガァー!」
2体のサラマンダーはまともに食らい、瞬く間に全身が凍りつき…落下…衝撃で粉々に砕け散った。
残る1体は2体のサラマンダーの後ろにいたため一撃必殺!とはいかなかったが、それでも半身が凍結しており、飛行すらままならずフラフラと地上に墜落した。
死にかけのサラマンダーが何とか顔を上げたときに見たのは──
「あらあら、加減したとはいえよく生き延びたわね〜」
「それなら、直々にトドメをさしてあげるわね〜」
──見るだけで悪寒のする恐ろしい笑顔を浮かべた美女が剣を振り上げている瞬間だった。
イフリートの使い魔に過ぎないサラマンダーが恐怖で動けずにそのままヴェルザードのよって切り捨てられた。
「さすがユキ早いな、俺もさっさと終わらせよう」
一方的にサラマンダーたちを殲滅したヴェルザードを見たリムルはイフリートの目の前まで近づいて一度止まり、声をかける。
「念の為聞くが…降伏する気はあるか?」
リムルが刀を抜いてイフリートに向けながら警告する。
イフリートの返礼は───攻撃だった。
イフリートは頭上に多数の炎の玉を作り出してリムルに向けて一斉に発射したのだ。
放たれた炎弾を最小限の動きで躱しながらリムルは次の手を考える。
(会話は無理か…過度な攻撃は母体になっているシズさんが危ない。)
(……ならば接近して『
リムルが全ての炎弾を躱した時、イフリートが仕掛ける。
突如としてリムルを取り囲むように多数のイフリートが出現したのだ、
(大賢者、これは『分身』だな?)
≪解。スキル『分身体』で間違いありません。≫
≪告。対象の解析・鑑定完了。
「了解だ…くらえ!
リムルが放った無数の氷の弾丸が周囲を取り囲むイフリートの分身を全滅させた。
しかし、そのタイミングでイフリートはリムル対して
リムルの足元に出現した魔法陣から巨大な火柱が立ち上り、リムルの身体を包み込む。
「リムルさん!」
エレンの悲鳴が響き、カバルとギドも心配そうな表情を浮かべるが、ヴェルザードは落ち着いていた。
当然だろう、リムルには『熱変動耐性』がある。
あの程度の炎ではリムルの耐性をやぶることは出来ないのだから。
次の瞬間、炎の中から糸が飛び出してイフリートを拘束した。
リムルのスキル『粘鋼糸』だった。
「悪いけど、俺に炎は効かない。」
「諦めろイフリート、お前じゃ俺に勝てない。」
それでもイフリートは、口から炎を吹き出して抵抗するも意味は無く、リムルのユニークスキル『
「リムルさん…ありがとう」ガク
リムルにお礼を言って気絶した。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
──シズの暴走事件から既に3日がたった。
事件後からシズは眠ったままで、エレン達を中心に皆が心配していたがリムルだけはその心配具合がおかしかった。
この3日間は片時も離れずに看病をしており、ヴェルザードが強引に休ませなければ一生離れないのでは?…と思うほどに真剣に看病していたのだ。
───
当然ながら、そんなリムルの様子を見たヴェルザードが黙っているはずも無く、強引にシズから引き離し。
現在リムルとヴェルザードは2人専用のテントで向かい合って話していた。
「……ねえリムル?なんで私が怒っているかわかる?」
「…………ヴェルザードのことを……ほったらかしにしてたから」
「わかっているなら……理由を教えてちょうだい」
「……リムルは…あの女が……シズが好きなの?………私よりもシズの方がいいの?」
ヴェルザードが悲しげに聞いてくる。
質問の仕方が既に確信を得ている聞き方だ。
だが、リムルの答えは───否定だった。
「違う!」
「違うんだヴェルザード!」
「俺が好きなのはヴェルザードなんだ!」
「ヴェルザードなんだよ……」ポロポロ
リムルは大きな声で否定する、しかもポロポロと涙を流しながらだ。
想定外の事態に驚愕するヴェルザードだが、何とか持ち直して再度質問してくる。
「ならどうして、あんなにシズを気にかけるの?」
「分からないんだ…何故か分からないけど……眠っているシズさんを見ていると「スライムさん」って呼ばれている気がするんだ。」
「そして……その声を聞くとどうしようもなく悲しくなるんだ………どうしちまったんだよ俺は………」ポロポロ
どうやら、リムル自身にもシズに執着する理由がわからないようだ。
「……それはおかしいわね…色々と………」
ヴェルザードの言う通りである。
シズは出会って以降リムルのことを「リムルさん」と呼んでいる。
リムルもヴェルザードも大賢者すらもシズが「スライムさん」と呼んだ記憶は無い。ましてや、それを聞いて思わず涙がこぼれる程に悲しむ理由が不明だ。
これはどう考えても普通のことでは無く、精神干渉を受けていると考えるべきだが、大賢者にも、ヴェルザードにもその痕跡は見つけられなかった。
───とりあえず、リムルの精神状態がかなり不安定のため、ヴェルザードは尋問を終わりにして2人でベットに入って休むことにした。
ーーー
ーー
ー
────リムルの精神異常が発覚してからさらに4日がたった。
この4日間もリムルはシズの看病を優先していたが、ヴェルザードが彼に付き添い、適度に休憩や息抜き(9割は性行為)をさせていたため、彼の精神的な負担はかなり軽減されていた。
一方でヴェルザードは、リムルへの精神干渉の原因を見つけられないことに憤っていた。
元々、解析が得意な訳ではないが竜種として保有する膨大な魔素と知識を持ってすれば大概のことはわかるのだ。
──しかし、今のヴェルザードは『永久凍結』の影響により大幅に力を制限されており、そのことが彼女の自身への怒りをさらに増大させていた。
そして、今日もシズの意識は戻らずに1日が過ぎるかに思われた、その時───
「……リムルさん」
「シズさん!?気がついたのか」
「ずっと傍にいてくれたの…?」
「ああ…良かった、もう目を覚さないかと思った」
「ありがとうリムルさん……ユキさんも」
「私はまた……大切な人を……殺してしまうところだった」
「……この手で…」
目を覚ましたシズはかなり衰弱していた。
彼女の身体は既に限界に近づいていたのだ、元々、イフリートとの同化によって延命されていたため、リムルがイフリートを捕食したことは寿命という観点から見るとシズを追い詰めたと言える。
しかし、イフリートを浄化しなければシズの自我が消滅するのも時間の問題であったことも事実だった。
「ねえリムルさん、ユキさんも……聞いてくれるかな?」
「私という人が居たということを覚えていて欲しい…」
シズは朦朧としながらも自身の過去を2人に語った。
──召喚されたこと。
──イフリートを憑依させられたこと。
──その力で友達を殺めてしまったこと。
──召喚主である魔王に仕え続けたこと。
そして
──勇者に助けられたこと。
勇者のおかげでシズは魔王から解放され、勇者と共に世界を見て周りいろんな体験をした。特に勇者から与えられた【抗魔の仮面】はシズの中にいるイフリートを抑え込む力があり、今後のシズの人生を大いに支えた。
しかし、勇者はシズの前から姿を消した。
理由は不明、それでも、いつかまた会えると信じて強くなり、人々守った。
何十年もの間、英雄として戦い続けた。
しかし、寿命には逆らえず冒険者を引退して学校の先生になって、異世界の子供達を指導するようになったそうだ。だが、やがて平時ですらイフリートの制御が効かなくなり、いよいよ寿命が尽きかけてきた。
そして、シズは最後の旅として、召喚主の魔王【レオン・クロムウェル】を探すための旅の途中にこうしてジュラの森にやってきたそうだ。
「あなたは復讐がしたかったのかしら?」
ヴェルザードが旅の目的を尋ねるが、中途半端に否定される。
シズ自身にも魔王【レオン】に対する感情が整っていないようだった。
とはいえ、彼女の旅はここで終わりだ。
もう、彼女は助からない。
リムルとてわかっているのだ、怪我や病気ならともかく生物としての寿命が既に限界を迎えている以上は打つ手が無いと……
だからこそ、シズのお願いに驚きはしても、否定はできなかった。
そのお願いとは───
「リムルさん……私を食べて」
「私にかけられた…
「嬉しかった…」
「この世界が……嫌い………でも、憎めない……まるであの男のよう」
「だから…だから……この世界に取り込まれたく…ない」
「最後の…お願い……私を…君の中で…眠らせてくれないかな」
シズがリムルに手を伸ばしながら懇願してくる。
ヴェルザードは直ぐにでもその手をはたき落としたかった、これ以上シズの存在をリムルの中で大きくしたくないからだ。しかし、その行動はリムルからの信用を無くす行為であることも理解しているため、必死に押さえつける。最後の願いを踏みにじる行為をリムルが許す筈がないのだから。
だからこそ、シズもヴェルザードすらもリムルの返答に驚愕した。
「いいy「いやだ!」」
リムルが了承しようとしたその時、遮るように強く否定の声が響いたのだ、しかもその声は間違いなくリムルのものだった、シズとヴェルザードはもちろん、言った本人である筈のリムルすらも混乱していた。
──まるで、自分の意思を無視して話したかのように……
しかし次の瞬間、リムルの身体から突然黒いナニカ溢れて出してきた。
そのナニカは瞬く間に3人のいる天幕内を覆い尽くして3人を閉じ込めようとする。
「何よコレ!?」
ヴェルザードは即座に巨大な氷塊を打ち出して応戦するが、黒いナニカにはまるで効かず、3人は黒いナニカに飲み込まれた。
気がつくと、リムル達3人の目の前には、何にもないだだっ広い世界が広がっていた。
リムルはシズを抱き抱えながら大賢者を通して空間の解析・鑑定を実行し、ヴェルザードは
リムルとヴェルザードは最大限の警戒を続ける。
当然だろう──リムル達がいたため、全力を出せなかったとはいえ、竜種であるヴェルザードの攻撃がまるで効いていなかったのだ。
つまり、相手はそれを成せるほどの力を持った存在、間違いなく
そしてついに、元凶と思われる存在が3人の前に現れる。
「やっとだ……やっと…また会えたよシズさん……」
「安心してくれ……今度こそ助けるから」
「俺は、そのためにこの時代に来たんだ!!」
現れたのは、もう一人のリムルだった。
新キャラ
・シズエ・イザワ
作者がヴェルザードと出会う前まで1番好きだったキャラ。
原作においても、重要人物でありリムルにも大きな影響を与えている。
この小説でも重要な役割を与える予定。
[補足情報]
・ユニークスキル『
web版にてヴェルザードが保有している
能力は対象物の性能を格下げし、そのエネルギーの半分を吸収出来る。
ただし、相手の強さによって効き目が変わる。
格下:100%
同格:50%
格上:10%
この数値は対象物のスキルや魔法、耐性、アーツ等の効果を全て無視した理論上の最高値であり、実際の効き目は相手次第でもっと下がる。
・ヴェルザードの内心
現在のヴェルザードはかつて想い人に見向きもされなかったことから自身の女としての評価を"中の下"程度だと思い込んでしまっている。
同様にリムルが告白を受け入れてくれたのも同情心が多分に含まれた結果だと考えてしまっている。
そのため、自分よりもリムルに相応しい女性は沢山いるという考えが存在しており、エレンやハルナとの関係を許しているのも根本的には「私なんかじゃ満足出来ないわよね……」という一種の自虐によるものだった。
しかし、ヴェルザードのリムルに対する愛情は本物であり、誰にも渡したくない!独占したい!っという感情があるのも事実であった。
それ故に自分よりもリムルに相応しいと思う女性を見ると嫉妬してしまうのだ。
次回
第7話 怪物の正体