※この作品はR-18です。

ToLOVEる転生物語   作:大軍

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感想
評価


第19話 古手川の転機

 

 丸眼鏡をかけた白髪混じりの無精髭を生やした男が、横にいた髪の毛を茶色に染めた若い男に話しかけた。

 

「なあ、生きていると、今見ているこれは夢なんじゃないかと考える時はないか?」

 

 若い男は眉を顰め、いつもの与太話かと気が付く。

 

「ないね。夢だったらもっといい夢を見たいからな」

 

 無償髭の男はタバコを咥えながら、うーんと唸ってから神妙な顔になった。

 

「俺は小便をする時に、毎回これは夢なんじゃないかと疑って慎重にやるんだ」

 

 

 

(何言ってんだ俺)

///

 

 女子生徒の甲高い会話。

 ガハハと粗野な笑い声。

 

 雑多な音があちらこちらから聞こえてくる、授業終わりの校舎。

 窓から差し込む茜色の日差しが、廊下のコルクボードに影を作る。

 

 そのまま下校する生徒が多いからか、生徒たちは殆どが一緒の方向へ歩いている。

 大勢の人間がそちらの方向へ押し歩かされているようにも見えた。

 

 そんな中、一人だけ、キリッとした目元をした黒髪の女子生徒が、その他大勢に逆らうように歩いていた。

 

 周りの生徒を避けながら、どこか俯き加減で、歩みも少しだけ遅い。

 

 キャハハ、と耳につく声で笑いながら、二組の女生徒が廊下をすれ違った。

 いかにもとヤンチャそうな生徒で、一人は長い髪をうっすらと茶色に染めて、ゆるいパーマをかけており、もう一人はショートヘアの前髪が横一文字に切り揃えられた、今時の少女達だった。

 

 黒髪の女子生徒はその二人組に視線を移すと、ピタッと足を止めた。

 

「ちょっと、あなた達」

 

「あ〜、コテガワさんじゃん。どうかした?」

 

 黒髪の少女の声はよく通った。

 一方、呼び止められた女子生徒の返事はどこか間延びして不真面目だった。

 

「風紀活動の一環よ。大丈夫だと思うけど、寄り道しないで下校するように。わかったわね?」

 

「ハーイ。コテガワさんもお疲れ〜」

 

「気をつけて帰るのよ」

 

 長い黒髪の女子生徒は腰に当てた手を下ろし、たった今呼び止めた女子生徒二人組が歩き出すのを確認すると、自らも踵を返して歩き始めた。

 チェックのスカートがフワッとはためく。

 

 学校指定の上履きが鳴らす足音がお互いに聞こえなくなるほど距離が開いた時。

 

 くふふっ、と二人組から息が漏れた。

 

「ぷっ、『気をつけて帰るのよっ』だって!」

 

「マジウケるよね〜」

 

「『風紀活動の一環よ!』」

 

 二人組は互いに先ほどの少女の口調を真似をして、頬を歪ませながら囀る。

 

 ひとしきりモノマネ遊びしてやることがなくなったのか、茶髪の少女が手元のスマートフォンを弄り始め、前髪の少女はこの後どこに寄り道するか話し始める。

 

 茶髪の少女は今来た廊下を一瞬振り返る。

 

「ほんっと、いい子ぶっててウザ」

 

 その呟きはあまりにも小さく、誰にも聞こえない。

 

 

 もちろん、あの少女にも。

 

 

 

/////

 

 俺は放課後、結城フトに変化して、薄暗い部屋で人を待っていた。

 誰も使っていないのか、埃の匂いがする。

 人も努力しなければこうやって、誰にも使われずに埃を積もらさせることになるのだろうか。

 この醜い肉体だと、なんだかメンタルも引っ張られそうだ。

 

「し、失礼します!」

 

 コンコン、と扉をノックする音が部屋に響く。

 どうぞ、と部屋に入ることを許可すると、その人物は背筋をピンと伸ばして現れた。

 

「お待ちしていましたよ。……古手川さん」

 

 俺は壁際に飾られていた安っぽい壺から視線をずらし、たった今入室してきたばかりの女子生徒、古手川唯を部屋に招き入れた。

 俺は放課後に、指導者権限を使って古手川を呼び出していたのだ。

 古手川は何の疑いも無く俺の命令を了承した。

 今日は古手川にちょっとだけ過激なことをお願いしてみようと考えていたのだ。

 

「放課後のお忙しい中、ありがとうございます。本日も風紀活動は順調でしたか?」

 

 古手川は、ええ、と返事をして俺を見たが、一瞬で目を逸らしてしまった。

 俺の格好はただの茶色のスーツなのだが、何か問題でもあっただろうか。

 この体型のせいか?

 

 これから古手川にすることを考えると、ニヤつきがどうしてもやめられないからそのせいかもしれない。

 

 俺は制服姿の古手川を下からじっくりと舐めるように見る。

 

「……っ」

 

 紺の靴下が上まで上げられ、彼女が真面目な生徒であることが一眼でわかる。

 白くてスラッとした脚。

 10代の少女でなければ有り得ない瑞々しさがそこにあった。

 

「くくっ……」

 

 そしてチェックのスカートが、大きすぎず小さすぎない古手川の尻を包む。

 やはり、彼女のスカートの丈は少しだけ短くなっている。

 前回の約束はちゃんと守っているのは、普段見ているから確認済みだ。

 

「ふむふむ、この前頼んだことはやっていただけましたか?」

 

「は、はいっ、スカートは少しずつ短くして……今、校則ギリギリの膝上30cm、です……」

 

 古手川は逸らしていた目を俺に向けた。

 その表情は硬い。

 恥ずかしい思いをしているが、それを表に出せない、そんな表情だ。

 

「スカートの丈に気づく人はいましたか?」

 

 これはかなり重要なことだった。

 もし他の生徒にあからさまにバレていたら、今後の計画に支障が出るかもしれない。

 

 古手川は、いえ誰も、と答えかけたが、ハッとして一人だけ気づいた生徒がいたと答え直した。

 

「ほう!それは素晴らしい生徒ですな。きっと古手川さんのことをよく見ているのでしょうな。校則にも敏感と見ました。きっといい男になりますよ」

 

 一応自分のことを上げておく。

 人間、自分の評価よりも自分より上だと思ってる人間の評価を信じるものだ。

 古手川ならその気質が強いに違いない。

 

「結城くん……」

 

 古手川は小声で生徒の方の俺の名前を口に出した。

 見直した。すごかったのね。そんな意味が込められている声だった。

 

 俺は手揉みをしながら、古手川の方へゆっくりと歩いていく。

 

「では、胸の方についてもお聞きしますが、よろしいですかな?」

 

「!」

 

 古手川の方が硬く震えた。

 予期していたが、聞かれたくもないし、答えたくもない、そう思っていたのだろう。

 

 古手川は直立のまま手を握り締める。

 

「ど、どうぞ…………」

 

「……では、ノーブラで生活していて何か支障が出たことはありましたか?」

 

「……特には……」

 

 古手川から唾を飲み込む音が聞こえた。

 この質問で終わってくれ、その願いが全身から発せられている。

 もちろん、この質問だけで終わらせる気など全くない。

 

「他には何かありますか?」

 

「いえ……」

 

「本当に?これは今後の中等教育に関わる重要な調査ですので、ぜひ協力していただきたいのですが……」

 

 俺はわざとらしく、知っているんだよ?とにっこり笑いながら、古手川が自主的に言い出すのを待つことにした。

 

 古手川は、う、と俯き、ぽつりと答える。

 

「………………乳首が……」

 

「ん!?ち、乳首ですかッ!?」

 

「ちょ、声が大きっ……」

 

 古手川が誰か聞いていないかと、周囲に人気がないか確認する。

 安心していい。

 この部屋は元は来客用の一角で、現在使われていないのを俺専用に使っている。

 ここを使っていることを知る人間は俺と古手川以外にいないのだ。

 

「っと、失礼しました。これまでになかった要素だったので興奮してしまいました。ハハハ。それで、乳首、いわゆる乳頭がどうしました?」

 

 俺は手を後ろで組んだまま、ずいっと古手川の顔近くにしたから見上げるように古手川に問いかける。

 もちろんバレないように視界の端で、古手川のノーブラ制服姿を見ている。

 

「動くと乳首が、擦れることが……ありました」

 

「なるほど……それは痛いのですか?気持ちいいのですか?」

 

「…………痛い時も……あります」

 

「具体的に乳首はどんな状態になると痛いのですか?」

 

「シャツや体操服とかの布が擦れ続けると……痛みが出る時が多いです……」

 

 古手川は顔を真っ赤にして若干瞳に涙を溜めながら、俺の質問に一つ一つ答えていった。

 恥ずかしがるのも無理はない。

 普段信頼している年齢の大人に、自分の乳首のことを答えているのだ。

 思春期である年代の少女にとってこれほど心乱されることはないだろう。

 

「では、擦れると乳首が勃起してしまうのですね?」

 

「ぼ、勃起って……結城先生何を仰って……」

 

 古手川は顔を真っ赤にしてセクハラされたような反応をした。

 まあ実際セクハラなんだけど。

 俺は極めて穏やかな口調で声を出す。

 

「人体の自然な生理的反応なのですから、そんなに恥ずかしがることないのですよ、古手川さん。私だって古手川さんを見ていると股間が勃起することもあります。古手川さんの乳首が勃起することだって自然なことなのです」

 

「た、確かに、そうです……ん?」

 

「さてっ!!これでシャツ等によって乳首が擦れるという問題があることが分かりました。ありがとう。古手川さん」

 

 俺は古手川がいけないことに気づく前に、グッと彼女の手を握り、ブンブンと上下に振る。

 その振動で胸がブルブル揺れる。

 制服に包まれた乳首を摘んでやりたかったが、グッと堪える。

 

「い、いえ、お役に立てて良かったです……」

 

 古手川は若干引きつらせながら不自然な笑顔を作っていた。

 俺が手を離すと、握られた手をさすりながら、古手川はそれでは、と切り出した。

 帰るつもりだ。

 

「古手川さん、もし良かったらこの後、服装規定調査に協力してもらえないでしょうか。ちょうど準備が整ったところだったのです。もちろん無理にとは申しません」

 

 古手川はこちらを少しだけ訝しげに見た気がしたが、足をとめ立ち去ろうとするのをやめた。

 

 俺は心の中でガッツポーズをする。

 

 ついでにソファへと古手川を座らせ自分も正面に座る。

 

「服装というのはさっきみたいな……?」

 

「体操服ですよ。今、体操服のデザインや機能性を高めるプロジェクトが立ち上がっているのです。どうです、興味が湧きませんか?」

 

「はあ……」

 

 古手川は緩く首を傾げながら曖昧な返事をするしかないみたいだ。

 俺は続ける。

 

「想像してみてください。生徒の成長には運動は欠かせません。健全なる肉体には健全なる精神が宿るのです。今回新しいデザインと新しい技術開発によって作られたものなどを比較検討して、より良いものにすることで、生徒の精神が健やかに育ち、風紀が改善されるのです。素晴らしい試みだと思いませんか」

 

「す、素晴らしいです……!」

 

 俺の話を聞くにつれ、古手川の顔は怪しむような表情から、ハッと何かに気づいた顔をして、次第に希望に満ち溢れた明るい表情へと変わっていった。

 

「是非、協力させてください!」

 

「ありがとうございます……古手川さん」

 

「ゆ、結城先生っ!?」

 

 俺は目元を抑え、涙を流した。

 古手川は俺の元に近寄ってくる。

 

「いえ、古手川さんの純粋で気高い精神につい……歳をとると涙もろくなって仕方ないです。お見苦しいところをお見せしました」

 

「先生…………」

 

 本当は涙など出ていないので、眼球を直接指でいじって痛みで涙を出しているため、目が凄い充血してそれっぽい感じになっていた。

 

 古手川は意外な一面を見た、となんだか爽やかな笑顔を浮かべている。

 そして、これから風紀のために協力できると誇りに思っている表情をしていた。

 

 

 

 

「こちらになります」

 

 涙を落ち着かせた俺は、少々お待ちを、と言ってアタッシュケースを古手川の前のテーブルに置いた。

 

 開かれたケースの中には見るからに体操服とわかるもの、紐状のもの、変な機械などが入っていた。

 俺からは見えるが、古手川からは見えていない。

 

「一体どんな体操服なんですか?」

「ブルマです」

 

 

「は?」

 

 俺は間髪入れずに答えた。 

 古手川の顔が笑顔のまま固まる。

 

「原点回帰というやつですね。現在ではもう見ることはかないませんが、かつてはとてもメジャーな体操服だったのですよ」

 

「え、ええ、それは知っていますが……」

 

「古手川さん、運動に適した服装とはどんなものかわかりますか?」

 

 眉を顰めた古手川はどうやら理解が追いついていない様子だった。

 数十年前の遺物を今更持ってくるなんてどうかしている、と思っているのだろうか。

 

「機能性、でしょうか」

 

「その通りです。現在の一般的な体操服は生地が分厚く、ズボンの丈が長いです。それでは運動による摩擦で運動効率が下がったり、皮膚を擦って痛めたりしてしまいます。現在の体操服は生徒のためを思って作られていない、安い工業製品なのです!」

 

「……な、なるほどっ」

 

「その点ブルマは丈が短く、空気抵抗も軽減されています。昨今の水泳選手が全身を覆う特殊な水着で記録を伸ばしていることはご存知のはず」

 

 一気に捲し立てる。

 古手川は理解しているのかしていないのかわからないが、気づきませんでした、と驚きの表情を浮かべていた。

 

「もちろんただのブルマ体操服ではありません。政府で採用された最新技術を使用した今までにない機能的で新素材のブルマとシャツになっています。ぜひ!」

 

「き、着替えるんですか?」

 

「ぜひ、お願いします!」

 

 

 

 

 紙袋を渡された古手川は、渋々といった感じで部屋の隅にあった簡易的な試着室に入っていった。

 

 上着を脱ぐ音がカーテンの奥から聞こえてきた。

 

「……何よこれ……嘘でしょ?」

 

 よく耳をそばだてていると、微かな古手川の声が発せられている。

 俺はソファに座りながらウキウキしながら、カーテンの向こう側から漏れてくる音に耳を傾けていた。

 

 5分程経過したところで、布が擦れる音が止まった。

 どうやら着替え終わったようだ。

 

 カーテンが音を立てて開かれる。

 

「着替え、ました……」

 

 

 

 そこには、痴女が立っていた。

 俺は思わず立ち上がり、その光景を目に焼き付けようとする。

 

「す、素晴らしい……」

 

「ゆ、結城先生!な、なんなんですか、この衣装はっ……」

 

 古手川は顔から火を吹きそうな勢いで吠える。

 俺はハッと我に返り、懐から撮影用のカメラを取り出して録画をオンにする。

 

「それが、新たに開発された試作品の一つです。どうですかっ」

 

「どうですかって……こんなの恥ずかしくて……っというか生徒がこんな格好できるわけありませんっ」

 

 古手川は右手で股間を、左手で両胸を抑えて内股になって立っていた。

 

 白いTシャツからは肩周りから胸元までピチピチで体型が丸わかりのデザイン。しかもブラを着用することを前提としていないので、乳首のポッチが丸わかりだ。

 ついでにへそ出し。

 

 そしてブルマ。

 色はスタンダードな濃紺。

 昔のような野暮ったい尻を覆うような広い布地ではなく、生の尻がこれでもかとはみ出るように作られた、ハイレグTバックの超絶ミニブルマが古手川の尻と股間に食い込んでいた。

 腰骨で引っ掛けられたブルマが、見事な逆三角形を描いている。

 

 ちなみにローライズ仕様だ。

 

 食い込み好きの俺としては、ここまでの完成度に感動すら覚えてしまう。

 むちむちの肉感に思わず唾を飲む。

 

 俺はもっと近くで撮影するためにズイズイとカメラを持って近寄っていく。

 

 近くに来るとより一層下品でエロく見える。

 俺の股間はもうフルボッキしていた。

 

「こんな……こんなっ……」

 

「古手川さん」

 

「なんですかっ! こんな、こんな卑猥な格好をさせてっ」

 

 はあ、はあと息を荒げながら俺を睨みつける古手川に俺はカメラを構えたままゆっくりと近づく。

 そして手を伸ばせば触れられるまでの距離になる。

 

「気持ちはわかります。落ち着いてください」

 

「落ち着いてって……こんな格好させられているこっちの身にもっ……」

 

 俺はふぅ、と一呼吸置くと、部屋に響く声である数字を口にした。

 

「300万。これが何の数字かわかりますか」

 

「な、何言って……」

 

「その体操服の値段です」

 

「……っ!!!!」

 

 古手川はわかりやすく眼を見開き、後退りする。

 裸に諭吉の札束を貼り付けられたような、そんな錯覚に陥っているに違いない。

 

「そ、そんな」

 

「事実です。実際着用してわかるはずです。締め付けることなく体にフィットする着心地。肌に張り付くような生地の肌触り。下半身の可動性を計算され尽くした仕立て……」

 

「た、確かに、すごくいい生地……」

 

 古手川は秘所を隠すのを忘れて、シャツやブルマの生地に手を這わせている。

 

「わかりますか?私は本気でこの体操服を作っているのです。それもこの国の税金でです。何百人という研究者たちが何年も研究に研究を重ねて作った試作品たちなのです。最初の印象だけで否定していいものではないのですよ」

 

「わ、私、そんなこと知らなくて……なんてことっ……」

 

 古手川は俺の説明を聞くにつれて、ぽかんとした表情から顔を青くし、ついには口元を押さえて戦慄く。

 俺はカメラを持ったまま、古手川の肩に手を置いて、にぎにぎしながら、ピチピチの肩の感触を楽しむ。

 

「あなたが身に纏っているのは、国、ひいては国民の期待と未来そのものなのです。私は古手川さんにそれをぞんざいに扱ってほしくない」

 

 自分でもよくここまで口が回ると思う。

 だが古手川は、とんでもなく重大なことだと受け止めているようだ。

 

「先生っ……わたし、ごめんなさい……」

 

 顔を白くしていた古手川の目から涙が溢れた。

 自分も大切にしている自分以外の誰かの努力、想い。

 それを自分が見た目だけで否定してしまったことに、心が悲鳴をあげたのだろう。

 

 どう弁明しようとも覆し難い状況で、自分を怒るべき相手が肩に手を置いて優しい言葉をかけてきたのだ。

 古手川の涙腺は容易く崩壊し、いつもキリッとしている瞳からポロポロと涙が溢れていく。

 

 俺はこちらが映るようにカメラを横の棚に置く。

 

 手をワキワキさせながら、古手川の背中に両腕を回し、力強く抱きしめた。 

 そして美しい黒髪に鼻を埋めながら、耳元で呟くと同時に耳の中へ息を吹き込む。

 

「いいのですよ、古手川さん。最初は誰でも困惑します。世の中には表面だけ見掛けだけでしか判断できない愚かな人間たくさんいます。しかし古手川さんは物事の奥にある真の価値を見極めることのできる素質があります。だから私はあなたを選んだのです。それを忘れないでください」

 

 さらにキツく抱きしめると、AV女優顔負けの古手川のEカップが俺の胸で潰れる。

 役得感満載の状況にフルボッキしたチンポをズボン越しに古手川のお腹に擦り付けると、生地がピチピチですべすべだからか普通に擦り付けるよりかなり気持ちがいい。

 

「大丈夫。私は古手川さんが頑張っていることを知っていますから」

 

「せ、先生……ぅ……」

 

 その一言がきっかけになったのか、古手川はうっ、と押さえきれなくなった感情が溢れだし、静かに熱く泣き出した。

 古手川の涙が俺の服に染みてくる。

 

 そんな古手川に俺は、よしよしと子供にはまずしない感じで、さりげなくハイレグTバックブルマからはみ出ているデカ尻を両手で掴む。

 手に吸い付くシルクのような肌とプリッとした尻肉が両掌にキスをしてくる。

 そこら辺のグラビア女優よりエロいと言っても過言ではない。 

 

 ぶっちゃけお前の尻の方がその服より断然触り心地がいい。

 手を離したくない。

 

「ヒック……グスッ……」

 

 ここまで泣いてしまうと、人間そう簡単には平常には戻れない。

 かなりの時間この状況を堪能できることが確定し、俺はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 しばらくそうして、古手川の体の感触を涙の温もりと共に楽しんだ。

 

古手川の体温が俺の体に馴染んできた頃、ゆっくりと古手川の頭が俺の肩から離れる。

 

「……あの……」

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「手が、お尻に……」

 

「おおっと失礼。掴みやすかったもので……そんなことより、落ち着いたようですね、古手川さん」

 

 はい、と返事をした古手川が一歩下がったので、惜しみながらブリブリの生尻から両手を離す。

 思わず舌打ちが出そうになる。

 

 身体を離して古手川のことを見ると、まだ目尻に涙が溢れそうになっていた。

 俺は紳士らしく古手川の涙を指で掬ってやる。

 

 いつもツンツンしている瞳が充血して雫を垂れている光景にゾクゾクしてくる。

 

「では、試験に協力していただけますかな?」

 

「ええ!私でよければ、是非!」

 

 古手川は自分の手の甲で目元を拭うと、なんとも晴れやかな表情で返事をした。

 あれほど隠したり騒いだりしていたのに、この変わりようには吹き出しそうになった。

 

 今ではハイレグTバックのブルマが王族直属の騎士団の正装とでも思ってそうな立ち振る舞いに変わっている。

 

「いったい私は何をすれば……?」

 

「ふむ、では、これを……」

 

 俺はケースから、両端に黒いプラスチックの取っ手がある長いゴムでできた紐状の物を手渡した。

 そう。

 縄跳びだ。

 

 思わず口元がにやけそうになるのを無理やりキリッとした表情に固める。

 

「これから実際の使用に耐えられるか検査をしていきます。手始めに縄跳びをお願いします。縄跳びはできますか?」

 

「ええと、そこまで得意ではないですが……」

 

 古手川は縄跳びを受け取って、よし、と真剣な眼差しでスタートポジションをとった。

 

「カメラよし。準備できましたのでいつでもどうぞ」

 

「これも撮影を?」

 

「ええ、映像を元にさまざまな分析を行いますので。顔は映りませんからご安心を」

 

「はいっ、い、いきます!」

 

 古手川が縄跳びを始めた。

 

 その光景に、俺は本当に気絶しかけた。

 あの風紀委員としてガミガミして周りから時として白い目で見られているあの古手川が。

 ハイレグTバックを着ながら胸を張って縄跳びをしているのだから。

 この光景を見た人間は間違いなく世界で俺一人だけだ。

 

「い、いい!素晴らしいですよっ!」

 

 しかも乳首をポッチさせながら。

 古手川は真剣な面持ちで軽快なリズムをとりながら、地面を蹴る。

 

 つま先が地面を離れる時、Eカップの乳がTシャツの中で上へ持ち上がり形を変える。

 そして足が地面につくと、ワンテンポ遅れて二つの果実が下に落ちる。

 

「もっと!もっと高く!胸を揺らす感じでっ!」

 

「は、はいっ!」

 

 見ているだけでこちらの心臓までバクバク言い始めた。

 このままチンポを取り出してシゴいて全てを台無しにしたい気持ちに駆られる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 古手川の息があがる。

 俺に顔も含めた全身を撮影されているのにも関わらず、懸命に、懸命に、飛ぶ。

 俺は無意識に涙を流していることに気づいた。

 主に股間から先走りが。

 

「きゃっ」

 

 1分ほど経った頃、古手川が縄を足に引っ掛けた。

 息を上げながら額にじんわり汗をかいた古手川が俺に視線をよこす。

 

「はぁ、すみません、もう一度……」

 

「も、もう結構です。素晴らしいデータが撮れました」

 

「はぁ、はぁ、そうですか。よかった……」

 

 古手川は汗を拭いながらニコリと微笑む。

 俺もお返しのように微笑む。

 

 

「次は休憩がてらにこのポーズをとって頂けますか?」

 

「へ……?あ、こうですか?」

 

「そうそう、手で膝を上から掴む感じで、股を開きながら脚を伸ばして……」

 

 古手川は俺の言われるがままに撮影するためのポーズを取る。

 立ったまま尻だけを突き出しためちゃくちゃ下品な格好だ。

 側から見れば誘ってるようにしか見えない。

 

「あの、このポーズ……必要なんですか……?」

 

 古手川は先程の余韻が残っているのか、そこまで過剰な疑いの目を向けてきてはいない。

 それでもこんな尻を男に触ってくれと言わんばかりの格好に違和感を覚えているようだ。

 

「もちろん。ブルマの伸縮性確認に必要ですので」

 

 俺はそう言いながら、スマホのカメラに切り替え、パシャパシャと一心不乱にシャッターを切る。

 

 食い込んで白い尻肉が丸出しの臀部を超至近距離で撮ったり、ローアングルから、最後は恥ずかしそうな古手川の顔までちゃんと撮影した。

 

 全身が汗でテカテカしているのがまたエロい。

 

「うひひ」

 

 順調に古手川のエロ画像コレクションが増えていくことに思わず声が出た。

 

「あの、もういいですよね?」

 

 さっきまでの古手川はこれまでにない位に純粋な目で俺を見てくれていた。

 若干俺の方が気が咎めるくらいに。

 

「も、もちろんです!最後はスクワットです!」

 

「……はいっ!」

 

 古手川は両手を胸の前でクロスさせると、足を肩幅に開いてスクワットを始めた。

 

「ふっ……ふっ……」

 

 大きな尻が上下に揺れる。

 これはこれでいいのだが、もっといい方法があることを俺は知っている。

 

「古手川さん、ちゃんとしたスクワットをご存知ないようですね……」

 

 俺はやれやれ、とため息をつきながら古手川の目の前に膝立ちになる。

 

「あ、あの……私何か……」

 

「本当のスクワットとは、こうするのです!」

 

 俺は、腰を下ろした古手川の膝を掴んで、ガバッと開かせる。

 もちろんブルマにうっすら浮き出た、股間の造形を見ることを忘れない。

 

 古手川は突然のことに、あ、と声を漏らす。

 

「こ、こんなに、ふっ、開くんですかっ……ふっ……」

 

「そうですっ、そうでないと意味がありませんっ。そして!腕も胸の前ではなく、首の後ろですっ」

 

「は、はいぃ」

 

 古手川は俺の命令通り、足をガニ股に開き、胸と腋を強調するような格好で、ひたすらスクワットを繰り返す。

 

 俺はカメラを構えながら、古手川の周りをぐるぐる回りながら古手川の全身を隈なく撮影する。

 

 

 腰を下ろすたびにぴちぴちのシャツに包まれたEカップの巨乳がプルンと揺れ、殆ど衣服として意味をなしていない際どいブルマが、古手川のデカ尻に食い込む。

 

 

「はぁ……んっ……」

 

 古手川の顎から汗が滴り落ちる。

 古手川は懸命にスクワットをしているが、如何せんどこかぎこちない。

 そういえば、古手川は元々運動が得意じゃなかった気がする。

 

「古手川さん、もっと尻を深く下げてください」

 

「は、はいぃ」

 

「ふーむ、全然ダメですね」

 

 俺はここでいいことを思いつく。

 これはカメラを片手に古手川の背後に移動し、仰向けになって床に寝そべる。

 

「んっ……すみませ、ん……っ……」

 

 俺は彼女が運動を続けているのを確認すると、逆さまになったゴキブリのようにゲジゲジと床を蹴って古手川の真下に顔が来るように移動する。

 

「古手川さんっ、私の顔に付くぐらい深くです!」

 

 俺がそう言った瞬間、古手川は俺の声がどこから聞こえてくるのか、左右を確認したあと、最後に真下を向いて、驚愕で顔を歪めた。

 

「きゃっ、せ、先生っな、何やってるんですかっ!?」

 

「これはあなたがちゃんとスクワットできるように我が身を犠牲にしているのですっ、あと少し、頑張ってください!」

 

 古手川は生理的嫌悪を隠せず頬をヒクヒクと歪ませながら、歯を食いしばって思い切り腰を落とした。

 

「いいっ、素晴らしいですっ、最高だっ!!」

 

「ううぅ……ふんっ……ふんっ……!」

 

 俺は究極のローアングルから、古手川の股間をカメラに収める。

 鼠蹊部と女性器と肛門が申し訳程度に紺色の布で覆われているだけの下半身が俺の真上で

 

 離れる。

 

 近づく。

 

 を繰り返す。

 鼻先ギリギリまで迫ってくる古手川の股間。

 太腿と尻の境目が美しい。

 

 古手川の下半身が近づくたびに、女子高生の濃い汗の匂いが俺の顔に降りかかる。

 

 俺のパンツは我慢汁でびちょびちょになっている。

 

 古手川はその状態で5回もしないうちに限界を迎えた。

 

 

「ああっ……も、もう無理っ……!」

 

 古手川が、キャァ、という声と共に尻餅をつくことでスクワットは終わりになった。 

 

 因みに下にいた俺の首を古手川の尻が直撃し、呼吸困難になったことを、俺は許さない。主に神を。

 

 

「…………」

 

 

 俺を下敷きにして、派手に咳までしている俺に対して、古手川は謝罪も何もしなかった。

 正確には、すみま、とまで言いかけ、なぜかその後を言わなかったのだ。

 俺の事を意識しつつも、視界に入れたくない、そんな様子だった。

 

 

 俺はそんなことを気にも留めず、最後の衣装を古手川に着せようと立ち上がった。

 

 それはネックレスだった。

 銀色の細かい鎖の真ん中には、赤い宝石のような丸いボタンがついている。

 

 ヨタヨタと立ち上がって、尻についた汚れを手で払っている古手川にネックレスを差し出した。

 

「最後はこちらです。まだ試作も試作ですが、超最新の電子技術が組み込まれたものです」

 

 古手川は、う、とたじろぎながら、俺を見た。

 そして視線を下にやり、自分の格好を改めてまじまじと見る。

 

 

「あの……私、もう今日は……」

 

「では、これを首にかけて」

 

 俺は古手川の意を介せず、無理矢理ネックレスを首にかける。

 

「こ、これで最後なんですよね……?」

 

 俺はにっこり笑って、はい、と頷くと古手川は半ば諦めたように、言われた通りに首に掛けられたスイッチを押した。

 

 ピカッと強い光が古手川を包む。

 残光が消え、目が回復して来たところで、古手川から声が漏れた。

 

「い……」

 

「い?」

 

「いやあああああああああああああ!!!!」

 

 古手川の叫び声が鼓膜に響いた。

 彼女はそのまま顔を真っ赤にして、座り込む。

 

 さっきまでのブルマは我慢できた。

 しかし今回ばかりは無理かもしれない。

 

 俺が古手川に渡したのは、ララに作ってもらった着替え道具の量産型だ。

 一種類しか登録できないが、一瞬で着替えられる。

 

 今回俺が登録したのは、絵。

 そう。

 ボディペイントだ。

 他にもビキニ型体操服など候補はあったが、今日の最後を飾るにふさわしいのはこれしかないと思った。

 

 古手川は体操服を絵という形で身に纏っているのだ。

 特別仕様で、元の服は自動で脱がされてしまうから、全裸だ。

 

「ちょっと刺激的かもしれませんが、これが最後ですから」

 

「も、もう無理ですっ……今日はもうっ……!」

 

 古手川の声は今日一番で切実だった。

 白のシャツは白い絵の具で肌に塗られており、とても薄いため、地の肌の色がうっすら透けている。

 

 全裸だから当然、乳首はそのまま外気に晒され、股間も濃紺に塗られているだけで、そのままだ。

 

 俺はうずくまる古手川に上から言葉を叩きつける。

 

「古手川さんのあの涙は嘘だったのですか?」

 

 古手川の方がピクリと動いた。

 

「ち、違います……っ」

 

「なら立ちなさい。その試作品に込められた想いは先ほどと同じです」

 

 鬼教官顔負けの有無を言わさない口調で古手川を窘める。

 古手川は俯きながら、俺の言葉の意味を咀嚼していた。

 

「もう帰りたいとでもいうのですか?」

 

「いや、そ、んな……」

 

 古手川はもう帰りたいが言うに言えない、なんとも妙な声を上げた。

 

 この感じ、何かに似てると思ったが、あれだ。

 確か『国境がないお医者さんたち』とか言う団体の勧誘がこんな感じだった。

 最初は1分だけ、と言っていたのに20分も話を聞かされ、挙句3000円を支払うことになった。

 早く帰りたいが活動内容的に無碍にできない、そんな感じ。

 

「この検査は耐水性の検査ですからすぐ終わります。だから安心してください」

 

「は、早くっ……終わらせてくださいっ」

 

 古手川は、両腕を使って両胸と股間を隠しながら、ペイントされた裸体を見られまいと前屈みに立ち上がった。

 そうすると余計見たくなるというか、際どいところもいい感じに隠れてしまうんだよな。

 

「じゃあ、もっと背筋を伸ばして!」

 

「む、無理です。見えちゃいますぅ!」

 

「我慢してくださいっ」

 

 古手川は、うぅ、と眉をへの字にしながら、グギギと自分の理性で無理やり胸を隠している腕を、外した。

 

 白と濃紺でペイントされた裸体が顕になる

 

 さっきもだいぶアウトだったが、今回は完全にアウトだった。

 ブラにも、服にも何にも覆われていない、ペイントだけのそのままの姿がそこにはあった。

 

 女子高生の乳房が目の前に晒されていた。

 このまま鷲掴みして、めちゃくちゃにしたい欲求が沸き起こるが、理性で必死に抑えて、検査という名目でセクハラすることに集中する。

 

「では行きます。あーん」

 

「な、何を……!結城先生っ!」

 

「たいしゅいしぇいの、検査、です!」

 

「うぅ、うううぅ……いやぁ……」

 

 俺は綿飴を頬張るように、殆ど生の乳首にしゃぶりつく。

 口周辺を古手川の乳房にめり込ませ、上下の唇で、古手川のぷっくりとした乳首を優しく挟む。

 

 いきなり強くしたら拒絶されるだけだ。

 最初はゆっくりやらないといけない。

 

「ジュル、じゅるる、じゅぱ、じゅぱ」

 

「うくぅ……う……やぁ……!」

 

 ハムハムと唇で上下から捏ねてから、唾液をたっぷり付け直して、乳首を溺れさせる。

 古手川はブルリと背筋を震わせて、肩を上げている。

 

「……んっ……っ……!』

 

「ん?」

 

 俺は古手川の声に変化が起きた事に気がついた。

 今さっきまで、乳首を舐められる刺激と、嫌悪感で声が漏れていたのだが、急にその声が少なくなった。

 

「…………ちゅぷ……ちゃぽ……」

 

 俺は乳首をしゃぶりながら、上目遣いで古手川の様子を伺う。

 古手川は目を硬く閉じて顔を逸らして俺の事を見ようとしていなかった。

 おおよそ、俺に乳首を弄られている声を聴かれたくないから、終わるまでなるべき声を出さないようにしているのだろう。

 

「れろぉ……カリっ」

 

「あっ!…………んぁ……」

 

 乳首を歯で少し噛んだだけで、古手川の狙いはたやすく瓦解した。

 古手川は目を潤ませながら、唇を噛んだ。

 

「ぁあっ……ま、まだなの……?」

 

 古手川の声には焦りが混じり始めていた。

 俺には声だけでなく、別の部分でそれを理解する。

 

 古手川の乳首が徐々に勃起し始めていた。

 

「ンン……は、早く……終わって、ぇぁ……」

 

 俺は左右の乳首を平等になるように、隅々まで唾液で濡らす。

 最初は唇で潰し、古手川が身構えたところで、あえて歯を立てて甘噛みしてやると、古手川は簡単に抑えた声を漏らして俺の耳を満たしてくれる。

 

「はぁっ……くぅ……ぉ」

 

 舌を硬くして、先っぽで乳首の先っぽをグルグルとディープキスしてやると、古手川は髪を揺らして頭を振る。

 

「やぁ……っ!」

 

 舐め始めて何分が経っただろうか。

 十分ではきかないだろう。

 

 このまま延々としゃぶっていたいが、俺自身の口の筋肉の限界が近づいているのを感じていた。

 古手川にもこれ以上の負担はデメリットの方が大きいかもしれない。

 古手川を見ると、膝が笑い、乳首への刺激にのみ意識が集中しているようだった。

 

 俺は最後の仕上げに息を整える。

 

「ジュルッ!」

 

 その音が合図だった。

 古手川の乳首が俺の口の中に吸い込まれ、引き伸ばされる。

 

「えっ、あっ!〜〜〜〜〜〜あああ、ぁぁ!」

 

 嬌声と共に背筋を逸らした古手川。

 俺は古手川がそのまま倒れないように、腕を回して支えてやる。

 

 制服のペイントがされた裸体が俺の腕の中にあった。

 ビンビンになった乳首が頂点に、見事なお椀型の乳房が二つ俺の目の前に。

 しかも両乳首はビンビンに硬くなり、俺の唾液でテラテラと光っていた。

 

 時折、胸を震わせながら、吐息と共に微かな甘い声が古手川から漏れる。

 俺が古手川を気づかせようと、身体を揺すると、胸と一緒に髪の毛も揺れた。

 

 

「う……ん……わたし、あ……れ?」

 

 古手川は、ん、と声を漏らすとバッと身体を戻して、俺の顔を見て、目を見開いた。

 

「古手川さん……素晴らしい検査結果です。この試作品は少し水に弱いことがわかり……」

 

「い、いや……離れてっ……!」

 

 古手川は俺の説明を遮って、俺の胸をドンと押した。

 俺から離れた古手川は胸を隠しながら、フラフラと足取りおぼつかないまま、壁際に背をつけた。

 

「古手川さん、どうしたのですかぁ?」

 

 俺はいつの間にか荒くなった自分の息に気付きながら、獲物を追い詰めるかのようにゆっくりと古手川に近づく。

 

「こ、来ないでください!」

 

「どうしたのですか?怖いことなんてありませんよ?」

 

 俺と彼女の距離が数十センチになる。

 俺は逃げ場を無くそうと、古手川の真横の壁に右手をつこうとする。

 その瞬間だった。

 

パァンッ!

 

「はぁ、はぁ、はぁ……あ……」

 

 頬に鋭い衝撃が走った。

 突然のことに俺は一瞬思考が完全に停止する。

 

 古手川はというと、俺を引っ叩いたであろう右手が体の横に移動しており、その表情はポカンとしていた。

 

 俺は動揺しながら、なんとか適当な返事を取り繕う。

 

「こ、古手川さん?こ、これは重要な検査項目で……」

 

「……だ、だからって、こんな破廉恥なことばかりっ……!」

 

 古手川は俺を叩いた手をキツく握りながら、キッと俺を見た。

 流石の古手川も我慢の限界だったと言うことだ。

 年長者に対してここまでの態度を取るなんて、彼女の中にはかなりの決心があったのだろう。

 

 しかし、俺は古手川の躊躇いが混じった動揺を見逃さなかった。

 

「古手川さんが協力してくれたらいいものができると……気分を害されたのでしたら、私の落ち度です。申し訳ありません……古手川さんにはまだ早かったかもしれない……」

 

「う、」

 

 案の定、古手川は俺が反省した態度を示すと、わかりやすくたじろいだ。

 普通はそんな格好させられて、謝られたからって許すのはどうかしているが、そこは古手川唯という少女の性格なのだろう。

 

 ダメ押しだ。

 

「許してくれますか?」

 

「いや、あの……私も、その……」

 

 俺は胸の前で神に祈るようなポーズで、赦しを乞うた。

 そこまでされて、古手川はなんとも居心地が悪そうな顔をする。

 

 俺はニヤッと笑った。

 古手川はもう俺の事を許してしまった。

 本来なら、もっと俺を追求すべきなのに、古手川自身が自分の落ち度を謝罪しようとしているのだ。

 

 俺はケロッとした顔で謝罪モードから、指導モードに入る。

 

「あ、そう言えばさっきのボディペイントスーツの試験が残ってました。まだ、陰唇などの粘膜の防水チェックが……あっ古手川さんっ、どこに行かれるのですか!?」

 

「あ…………ッ か、帰りますッ!」

 

 古手川は俺の言葉を聞くや否や、目を見開いて、スタートを切った。

 普段の彼女からは想像できない俊敏さで制服をひったくる。

 

 俺の事を一瞬振り返ると、制服を胸にあてて扉から飛び出した。

 

 

「古手川さぁぁああああん!!!」

 

 古手川はバッグも忘れ、行ってしまった。

 

 俺の叫び声が部屋にこだまする。

 

/////

 

 

 夕暮れ時。

 

 先程までとある女子生徒が出て行ったばかりの部屋で、とある男が大画面のモニターと向き合っていた。

 

 部屋は薄暗く、誰も他人を入れることを考えていないような、小さいが使用感溢れる書斎だった。

 

「それでは、定期報告を始めさせていただきます」

 

 その男は結城フトという名前だった。

 

「ああ、始めてくれ。例の計画はどうだ?」

 

「は。順調に進んでおります」

 

「ああ、これも日本の未来のためだ」

 

 ディスプレイに映るのは同じく紺のスーツを着た壮年の男性だった。

 波部 肝臓。

 第200代総理大臣を務める男だった。

 

 会議はそのまま順調に進められた。

 30分後。

 

 波部が黒革のソファに深く座り直す。

 そして深く頭を下げた。

 

「よろしく頼みます」

 

 これを聞く人間がいたら驚くだろう。

 波部がここまで態度を変え、立場が下の人間に頭を下げるなど。

 

 そしてこう言った。

 

「結城フト元最高顧問」

 

「やめてください、総理。私は既にその立場にないのですから」

 

「ああ、わかっているよ。だが、今でも思っている。本当なら君が首相の座に座るべき人間だった」

 

「そんなことは……」

 

 波部はフッと自虐的に鼻息を漏らした。

 

「ここまでの計画を打ち立てられる人間がそれをいうか?」

 

 波部の手元には分厚い資料の束が置かれていた。

 部屋が薄暗く表題は見ることができない。

 

「一見、女生徒への猥褻行為ともとれる行動も、君の計画を知れば全て合点がいく。いやはや、君の思考の深淵さは人生最大の驚きと言っていい」

 

「持ち上げすぎですよ。総理」

 

「持ち上げ過ぎなわけがあるか。『全ての行動』に重要な意味がある。あそこまでの遠大さ。君の頭脳には舌を巻くほかない」

 

 波部は片眉を上げながら右手でオールバックの髪の毛を掻き上げた。

 その頭髪には所々白髪が混じっており、年齢以上の苦労が伺われた。

 

「一線を退くと言う君を特別風紀機関の重役として起用したのはそれが理由なのだからね」

 

「私は一教官に過ぎませんよ」

 

「特別風紀機関の事実上の最高権力者は君だ。私しか知らないがね」

 

 フトの反論に間髪入れずに波部は言い返した。

 波部はククっとニヒルな笑いを浮かべる。

 

「ところで、君の報告書に出てきた女子生徒、古手川唯君、だったかな?彼女は大丈夫なのか?」

 

 波部は話題を変えるごとに水を飲む癖があるらしい。

 グラスを机に置く音が画面外から聞こえてきた。

 

「……」

 

「今は分からずともいずれ理解する。それまで辛く厳しい活動に耐えられるかだ」

 

 報告書には古手川唯と書かれた書類にこれまでの活動内容とこれから何が予定されているかが記されていた。

 

「全ては未来の子供達のために」

 

「……ええ、その通りです」

 

 フトは脚を組み替えると、目を伏せたまま静かに語り出した。

 

「彼女には本当に期待していました。彼女ほどの逸材はいない。それこそ私が探してきた誰よりも優秀で才能があリます」

 

 波部は目を見開く。 

 よくみると驚きで手が震えていた。

 

「そこまでの生徒なのか。私が知る限り、君がそこまで評価する人間を知らないぞ」

 

「これまで何十万何百万と生徒を見てきましたが、その中でも彼女は上位五本の指に入る。そう言えば想像がつくでしょうか」

 

「……天才、というやつか」

 

 ええ、とフトが肯定する。

 フトの表情は曇っている。

 

「それも出て行ってしまいましたがね」

 

 今度はフトが自虐的な笑みを浮かべる番だった。

 だがその細い目だけは、画面の向こうの暗闇を射抜かんばかりに強く鋭い。

 

「彼女は心のどこかで私の計画を感じているのではないかと、今も勝手に思っているのです。はは、生徒馬鹿ですかな」

 

「君らしくない。希望的観測など」

 

 波部は画面の枠外から一枚の書類を手に取り、さっと目を通した。

 フトの発言に対する行動なのかも知れない。

 その紙にはスケージュールが書かれていた。

 次の仕事がある、と暗に伝えているのだ。

 

「私は……生徒を信じたいのです」

 

 フトは自分に言い聞かせるような声でそう呟いた。

 

「で、どうするんだ?」

 

 波部は頬杖をついて画面越しにフトを見据えた。

 45歳という若さで日本のトップに君臨した哀愁漂う男の目は、信念だけが己の肉体を支えていることを物語っていた。

 

「才能があるからといって無理矢理させることはできない。困難な仕事ですからね」

 

 フトはソファに浅く座りリクライニングするような体勢でそう答えた。

 そしてもう一度先程と同じ言葉を口にする。

 

「私は……あの子を信じたいのです」

 

「わかっているとも。そろそろ時間だ。俺たちの仕事は俺たちだけのためにあるんじゃない」

 

「わかっているさ。昔から胃が弱いんだから無理するなよ。肝ちゃん」

 

「おい、その名前で呼ぶな。一体幾つだと思ってる。結城フト元最高顧問」

 

 フトはハハ、と笑う。

 

「今は、特別風紀機関教官兼、幼馴染である総理大臣の相談相手だよ」

 

 ひとしきり笑い合うと、時間だ、の一言で通信は途切れた。

 

 静寂が、日が落ちたばかりの室内に漂っていた。

 フトはふう、と煙草を吐くような深く長い息を吐いた。

 時計の針が動く音だけが、やけにゆっくり部屋に響いていた。

 

 

コンコン

 

 その時、フト以外、誰もいないはずの一室に、ドアを叩く音が響いた。

 どうぞ、とフトは声を掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、古手川さん」

 

 

 

 

 

 部屋が暗いせいで唯の表情は見えない。

 泣いているようにも、困っているようにも見えるかも知れない。

 

「……先生、私……!」

 

 春の終わり。

 全てを溶かす、灼熱を知らせる初夏の風がこちらに迫ってきていた。

 

 

//////

 

 

 

 二人組の女子生徒に風紀指導をしたその後。

 唯はそのまま廊下を逆走し、そのまま風紀委員室に向かっていた。

 カツカツ、と上履きが廊下を蹴り、身体がそれに合わせて揺れる。

 

「昨日のスクワットのせいね……」

 

 唯は廊下の壁に手をついて自分の尻をさする。

 手の平からは本来あるべきパンティの感覚がない。

 チェックのスカートと自分のお尻だけが感じられていた。

 

「確かに動きやすい……」

 

 唯はある種の感動に近い感情を込めた声でそう呟いた。

 流石にボディペイントスーツを着る気にはならなかったが、ブルマは何とか自分を納得させられるものだった。

 結城フトから支給された新開発のブルマは確かに高性能で、図らずも唯の生活の質を上げていた。

 

 唯が歩き出そうとした時、階段の踊り場から一人の男子生徒が出てくるのを視界の隅で捉えた。

 

「あ、結城くんだ…………先生にも評価されてたし、結城くんになら私が特別に選ばれた生徒だってこと教えあげてもいいかしら……」

 

 唯は制服の上から、今やお気に入りになったハイレグTバックブルマをグイッと腰骨まで引き上げる。

 

 ビシッとブルマが股に食い込んだことを確認して、意気揚々と廊下を蹴り出すのだった。

 

 




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