評価
バタンっ!
俺が乗り込んだ直後にドアが勢いよく閉まる。
濡れた革靴が気持ち悪かったが、この際気にするのも面倒だった。
俺は、窓を開けて外にいるティアーユ先生に話しかける。
「本当は私が付き添わなきゃいけないのに……ごめんなさい」
「気にしないでください。明日は休日だし、今日は遅くなっても大丈夫ですから」
「……御門をよろしくね……」
眉尻を下げたティアーユ先生の傘が離れる。
屋根のなくなった窓から大粒の雨が流れ込んできたのを見て、急いで窓を閉めた。
辺りは既に暗くなっている。
車のバックライトでティアーユ先生の姿が眩む。
エンジンが唸り、車はやっと動き始めた。
ティアーユ先生の姿が見えなくなったころ、車内に女の声が小さく響いた。
「生徒を付添いにするなんて……」
車が道路を進み、体が揺れる。
横を見ると、薄暗い車内に一人の女性が座っている。
そう、御門先生だ。
御門先生は白いファーのついたロングコートを体に巻きつけて俺の隣に座っていた。
先生はこちら側と反対の手で頬杖をついて、少し疲れたような表情を浮かべている。
この時期、夕方は寒くなる事もあって、雨は余計堪えるのだろう。
「まあそう言わないで、先生」
俺は笑う。
俺は前を見ながら、ブレザーに付いた水滴を手で払う。
横から視線を感じて、先生の方を見る。
「っ…………」
目を逸らされる。
視線だけが動いただけで、元々顔はこちらを向いていないようだった。
車は30分程かけて信号にも捕まらずに目的地に到着する。
以前、来たことのある自宅だ。
道路から入り口まで結構な距離があるのを俺は知っていた。
「…………」
雨は先程より更に強くなっていた。
「先生、濡れると思いますけど、一気にいきましょう」
「ええ……」
先に外に出た俺はあっという間にずぶ濡れになって、反対側のドアを開けて御門先生の手を取る。
ビュオッと突風が体を押した。
「……こっち」
よろける先生の肩を抱きながら、急いで鍵を開けて入り込む。
「はあ…………はあ……」
「先生、体が冷えますから、コートを……」
「ええ、ありがとう……」
鼻に滴る水滴を感じながら、俺は少し息の荒くなった先生のコートを脱がせる。
幸いにもコート自体はぐっしょり濡れているが、中身の先生までは水が浸透していないようだった。
「あなた、びしょ濡れじゃない」
シャワー浴びてきて
そう言いながら部屋の明かりをつけた先生が、タオルを俺に差し出してくれる。
先生を先に入れようと思ったが、有無を言わさずといった感じだったので、そのままシャワーを浴びさせてもらう事にした。
「お先にいただきました」
5分も経たずにシャワーを終えた俺はバスタオルを腰に巻いて、広いリビングに戻ってきていた。
下着まで濡れていたため、俺に着る服はない。
白いバスタオルだけが俺の裸体を隠している。
「もっとゆっくり、……っ!」
入ればよかったのに___
そう言いかけて先生の言葉は途切れた。
と言うのも俺の格好を見たからだ。
御門先生は口を半開きにして、俺の全身を足元から首元まで目で追った。
「先生?」
「あ、え……それだと、体を冷やすわ……バスローブがあるから待ってて……!」
先生は顔を赤らめて、さっと背を向ける。
胸元の空いたノースリーブシャツを着たままの先生は、そのまま脱衣所へ姿を消す。
部屋が少し薄暗い照明のせいか、いつもより胸元の陰影が映し出されてより色っぽかった気がする。
十秒も経たずに、右手に白いバスローブを持って出てきた。
「これを着てちょうだい」
「え、はい」
普通に受け取ろうとしたが、先生は俺にローブを渡さなかった。
「あの……?」
首を傾げていると、先生はローブに目を移して、バサッと広げた。
「着せてあげるから、ほら」
先生は俺の後ろに周り、俺がローブを着やすいように広げて袖を通してくれる。
その甲斐甲斐しさに少しだけ面食らう。
普段先生が使っているローブなのだろう。女性用のデザインだが俺の着丈でも十分着れる。
うっすらとだが、香水のようないい匂いまで漂ってくる良い生地のローブだった。
「これでいいわ」
「ありがとうございます」
俺は前を留める前に腰に巻いたバスタオルを解く。
ばさり、と床に落ちる大判のタオル。
「…………」
御門先生が背後で何を見ているか俺にはわからない。
しかし、俺の目の前に回れば、俺のあられもない姿を見ることが出来るのだから、何も思わないわけがないだろう。
「先生?」
「……な、何かしら?」
「次は先生がシャワーを浴びる番ですよ」
「そっ、そうね……じゃあ行ってくるわ……」
御門先生に向き直って、瞳を見つめる。
一瞬先生の視線が俺の下半身に向かったが、すでに前は閉じている。
ミニスカートに包まれた大きなお尻が左右斜めに上品に揺れながら、脱衣所に消えていった。
シャワーの音が聞こえる。
俺は廊下を音を立てないように進み、脱衣所の入り口まで来ていた。
何をするか。
当然、覗きだ。
俺は息さえ音を立てないように気を配りながら、脱衣所の扉を開く。
御門先生の家の脱衣所は、かなり広めで白を基調とした上品なものだった。
先程使った時に気づいたが、リラックス効果のありそうな馨香が漂っている。
今は電気が消され、奥の浴室だけから光が漏れている。
「……」
俺は部屋の端にある黒い籠に入っているものを手に取る。
まだ暖かい服だ。
御門先生が脱いだばかりの。
俺はピンクのトップスを顔に押し付け、胸いっぱいに息を吸い込む。
先生の汗と何か香料の匂いがする。
生地が柔らかくて、ずっと頬擦りしていたいくらいだ。
シルクか何かが入ってるに違いない。
手に持つ服を肩にかけると、俺は次の獲物に手を伸ばす。
それを手に取る。
軽い。
そして薄い。黒い紐みたいだ。
「……っ……す……」
肌を覆う役割を完全に放棄している、御門先生の下着だった。
これは後で楽しもう、そう考えた時のことだった。
バタンっ!
浴室から何かが倒れる音が響いた。
俺は突然のことに体が勝手に動いてしまった。
「み、御門先生! 大丈夫ですか!?」
俺はすりガラスで作られた浴室の扉に駆け寄り、ドアノブに手をかける。
「っ!! ね、ねえ、もしかしてそこにいるの?」
「……あ」
俺は自分の失態に気づく。
さっきまでリビングで待ってる人間が使用中の脱衣所に居ると言うのは不味い。
すりガラス越しに御門先生の裸体が映し出されていた。
先生が腕で胸と股間を押さえていることが、ガラス越しであってもわかる。
俺は極めて落ち着いた声で答える。
「もしかしたら、先生が倒れてるんじゃないかと思って」
「えっ?……ああ、そう言うことだったのね……大丈夫、今のは物が落ちただけだから」
うまく誤魔化せただろうか。
じゃあ俺はこれで、と足早にその場を立ち去ろうとする。
「待って!……結城くん、待って……」
俺は足を止めて振り返った。
すりガラス越しに御門先生の身体が見えると思ったが、予想と違うものがそこにあった。
先生の両手がガラスに添えられていたのだ。
当然そこまで近くなれば、御門先生の肉体はより鮮明になってガラスに映る。
豊かな胸の輪郭、乳房の下にできた臍あたりまで伸びる陰影。
唾を飲んだ。
「今日は本当に、ごめんなさい。……私の勘違いであんな酷いこと言って……」
俯く先生は、胸から絞り出すように言葉を紡いだ。
俺はその言葉を聞いて、ああ、と息を吐いた。
そして、本日あった出来事を記憶から呼び起こす。
先生の自宅に来る前のこと。
実は今日、学校でちょっとしたトラブルがあったのだ。
今日、先生は朝から体調が悪かった。
熱っぽくて、身体が火照っていたらしい。
俺のクラスへ授業した後、廊下で倒れたのだ。
そこに駆け寄って介抱したのが俺で、偶然その場に居合わせたことを不自然に思った先生は、真っ先に俺を疑ったらしい。
先生は頭がいいから、直近の出来事から俺が犯人じゃないかと推理したんだろうと思う。
その後保健室に連れて行って、ベッドに寝かした時にその疑惑が確信に変わったらしく、俺に出て行くように叫んだのだ。
今まであそこまで感情的になった先生を見たことがなかったので、面を食らった。
結局、心配になってティアーユ先生に来てもらって、実はセリーヌがララの道具で悪戯していたことが原因だったことが判明。
おまけに、俺がティアーユ先生を連れてくるなんて、俺が犯人だったら不自然だ、と言うことで俺の疑いも消え去った。
「いいんですよ。もう謝らなくて」
「でも……」
その事が分かった時の御門先生はすごかった。
目を見開いて口元を押さえたと思ったら、喉を震わせてた。
自分はなんてことをしてしまったのか、そんなことを考えているのがありありと伝わってくるくらい、先生は狼狽していた。
俺が気にしないでください、と笑って伝えたら大粒の涙を流して、俺のことを胸に押し付けて抱き締めてきたのだ。
あの時はどうやって勃起をバレないようにするか本当に大変だった。
まだ足元のおぼつかない先生を介抱して、こうやって御門先生の家まで送ってきた、と言うことなのだ。
「失敗は誰にでもありますから。俺、そう言うのには結構寛容なんです」
「結城くん……」
無意識なのか、俺が見ていないと思っているのか。
御門先生はすりガラスに更に体を寄せて、胸が付くぐらいこちらに近づいていた。
胸が押しつけられ、二つの肌色の円がガラスに映し出される。
円の中央には、それぞれセピア色の小さな円が鎮座している。
ペタリとつけられた額と、濡れた髪の毛。
手の平がガラスに映されている。
呼吸するたびに円が小さくなったり、大きくなったり、その乳房の柔らかさがそのまま伝わってくるようだった。
「お、俺行きますから」
「結城くん……なんであの時________」
俺は先生が何か言っているのを聞かず、足早にその場を後にした。
一人リビングで手持ち無沙汰になった俺は、ローブを着崩してソファに横になった。
あそこまで濡れてしまうと、流石に寒い。本当は熱い湯船に浸かりたかったが、仕方ない。
まあ、この部屋も既に暖かくなっているからもう問題ないんだけど。
「くぁ。。。眠くなってきた」
クッションを枕にして、改めて寝そべる。
目を閉じると真っ暗な瞼の裏が見える。
はだけた胸部にあたる自分の鼻息が心地いい。
一度冷えて、今暖かいから血行が良くなってるのかもしれない。
四肢からいい感じに力が抜けていく。
瞼を開こうと思っても、重くてすぐ下がってしまう。
意識だけが、薄っすら開いた瞼の隙間から、外の景色を見ている。
身体はもう動かない。
まずい、すぐにでも寝てしまいそうだ。
カチャ
リビングの扉が開く音。
誰だろうか。
十中八九、御門先生だろうけど。
不思議な感覚だ。
身体は寝ているのに意識だけが外の世界を感じている。
もし俺が今何かに襲われたら、なす術なく食い殺されてしまうに違いない。
歩く音が聞こえてくる。
歩くたびに布が擦れているから、きっと御門先生もバスローブを着ているに違いない。
「結城くん?寝ちゃったの?」
起きています。そう伝えようとしても声が出ない。
薄目でぼんやりと、ソファの脇から俺を覗き込む先生の姿が見えるだけだ。
案の定、先生は俺と同じバスローブを身に纏っていた。
シャワーを浴びたせいか、首元から頬にかけて肌が赤くなって色っぽい。
「………………」
先生は何も言わず、俺の事を凝視している。
そう言えば胸元を丸出しにして横になったから、胸が丸見えかもしれない。割と恥ずかしいな。
御門先生が上から俺を覗き込んでくる。
先生の濡れた髪の毛から垂れた水が俺の首元にぽたりと垂れる。
御門先生は更に距離を詰めて、髪の毛が俺の頬に付くぐらいまで、顔が近くなる。
先生の息遣いが温度を伝って首元に感じる。
「ねえ、車に乗る前、ティアが見ていない隙に、何故、私にキスをしたの?」
俺を起こさないくらいの小さな声で、でもしっかりと、先生はそう俺に尋ねた。
うっ、と俺は恥ずかしさで頬が赤くなってないか心配になった。
車に乗る前、俺は先生にキスをした。
唇じゃなくて、頬に。
肩を貸している時に、俺から気を逸らした瞬間を狙った。
「軽蔑されて当然なことを、あなたにしたのに……」
キスしたのは衝動的なものだった。
すぐ真横で、いつも余裕で笑みを浮かべている先生が暗く泣きそうな顔をしていたら、ついキスしてしまいたくなったのだ。
「……なんで私の心を掻き乱すの……?」
その声は震えていた。
彼女が近づくにつれ、吐息が温かくなっていく。
先生の指先が俺の頬に添えられる。
「結城くん……」
ちゅ、と先生の濡れた唇が、俺の唇に触れた。
唇は濡れていた。
柔らかくてねっとりとした粘膜が、俺の唇と合わさる。
体が動かないことが幸いして、反応はしなかった。
もし体が動いたら起きていることがバレていただろう。
突然のことに体の感覚が徐々に戻ってくる。
「ちゅぷ……ちゅぱ……」
御門先生は瞳をぼんやり開きながら、俺の上唇を一回、二回と挟んでは離すを繰り返えす。
舌こそ入ってこないが、力の抜けた柔らかく溶けそうになる感触。
俺に息がかからないように息を止めているからか、粘膜が発する淫猥な音だけが耳に響く。
体の感覚は完全に戻ってきていた。
「……っ!!」
こちらの様子すら伺わずに、キスに耽っていたと思っていたら、先生は突然目を開き、飛び上がる。
指先で自らの唇を押さえ、はっ、はっ、と肩が上下する。
「やだっ……私、何てことをっ……!」
先生は声を戦慄かせ、自らのしたことに困惑しているようだった。
吐息の震えが、徐々に泣き声に変わっていく。
「うぅ……ぅ……」
ただでさえ昼間酷い事をした相手に、しかも寝ている無防備を利用して。
それも十代の生徒に。
先生から溢れた雫が俺の胸に落ちた。
俺は両手をヌッと手を伸ばす。
突然動いた手に、先生は見るだけで何もできない。
俺は御門先生の胸元のバスローブに手を掛ける。
「……えっ……あっ!」
しっかり掴んだ胸元の衿。
俺はその後の事など考えずに、勢い良く左右に開く。
ブルンっと御門先生の乳房が外気へと暴れ出る。
白い杏仁豆腐を思わせる大きな胸が上下に大きく揺れた。
「え、結城く……きゃあ!」
寝ていると思っていた男の突然の暴挙に、反応が一瞬遅れる。
俺は掴んだローブを自分の方に引っ張る。
先生はなす術なく、胸を曝け出したまま俺の上へと倒れ込む。
二つの白い餅が俺の胸にぴっとりと押しつけられる。
「やっ、お、起きてっ……!?」
すぐさま離れようとする先生。
俺はバスローブから手を離し、先生の背中に手を回してガッチリと押さえつける。
これ以上無いほど押しつけられた胸が、潰れてはみ出る。
細い腰、豊かな胸、すらっとした太腿が俺のものになる。
「あっ……!!」
しなやかで筋肉の薄い背中だった。
抵抗が失敗に終わり、俺の耳元に置かれた唇が熱い吐息を吐く。
風呂上がりのほんのり赤い肌が俺のはだけた胸に直接伝わってくる。
それにしても、先生の胸は素晴らしい。
俺の体に触れている先生の肉体の中でも、二つの乳房が異質な弾力と柔らかさを宿している。
ずっと感じていたいと思えるくらい。
先生の肉体を楽しんでいると、んっ、と呻きが耳元で発せられた。
抱きしめるだけで何もしない俺に疑問を持ったのか、先生はゆっくりと顔だけを上げる。
「ゆ、結城くん……?」
先生は恐る恐るといった感じに俺の反応を確かめる。
俺は目を完全に閉じて何も言わない。
もちろん腕の力を緩めることはない。
「もしかして、寝てるの……?」
信じられない、でもよかった、そんな声だった。
御門先生は俺に抱き締められながらも、体をずらして俺の肩をトントンと叩く。
「…………」
俺は薄目を開けたまま何もしない。
御門先生はしばらく俺の肩を揺すると寝ている事を確信したのか、ほっとしたような絶望した様な声でうめいた。
「そんな……私どうしたら……」
俺の手を解こうと後ろを振り向いた先生。
自分を固定する俺の腕をどうすれば外れるか試そうというのだろう。
俺は右手を先生の背中から離し、先生の後頭部をガシッと掴む。
「え、ゆう……き……んんっ!!」
掴んだ先生を腕づくで引き寄せ、唇を奪う。
あまりにも突然なことに、目を見開く御門先生。
固まって動かない先生をいいことに、俺は彼女のぽったりした唇を蛞蝓のように唇で包み込む。
あ、と声が漏れる。
柔らかくていやらしい唇だ。
先程先生がキスしてきた時よりも、生々しい感触がより俺を昂らせる。
「んんっ!、チュプ、ちゅぱ……んぷぁっ……!」
俺は首を左右に調節しながら、執拗に御門先生の唇を貪る。
上唇を唇で挟み、じゅぼっと吸ってからムニムニと捏ねる。
男の舌で唇をなぞってやると、ぬるりと妖しく滑る。
先生は唇を嬲られながら、体を捩るが、頭を押さえつけられて動くことができない。
いやらしい水音と先生のくぐもった声が部屋に響く。
「ひゃらぁ……ちゅ、あちゅ、……ひゅう、き、あえっ……!」
先生は俺に唇を吸われながら、弱々しく俺の名を呼ぶ。
その声に俺はゾクリと背中を粟立たせる。
なんだその情けない声は。
いつもの先生はどこにいるのか、と。
俺は舌を尖らせ、薄く閉じられていた先生の歯をこじ開ける。
「おぁっ!……あはぁっ、いやっ!んんん、じゅぼっ……!!」
いきなり舌を差し込まれたことで、舌を噛まれるかと思ったが、先生は肩を振るわせるだけで、抵抗という抵抗をしてくることはなかった。
一瞬だけ、未知の異物を排除するかのような動きがあったが、無理やり舌を回し入れるとすぐに大人しくなった。
こじ開けた先生の口を舐める。
女の唾液は何故こんなにも甘く感じるのだろうか。
俺は勢いを緩める事なく、先生の白い歯、歯茎、上顎に至るまで全てを舐めて、舌のザラザラで丹念に磨いてやる。
先生は俺が新たな部分を舐め始める度に、苦しみとも喜びとも取れる声でうめく。
「ああ、へああぁっ!、えにゅ、ぶあっ!」
俺に舌を突っ込まれて閉じることができなくなった先生の口からは、ダラダラと唾液が垂れ、俺の口にドンドンと流れ込んでくる。
ごく、ごく、とその唾液を飲み干しながら、俺も口から唾液を溢して、それでも舌の動きを止めない。
御門先生は悩ましげに眉を寄せて、俺から与えられる口への侵略に耐えるだけ。
舌を止めさせる素振りすら見せていない。
俺は中に入れていた舌先を少しずつ引き、先生の前歯をチロチロと舐める。
すると、口腔を舐られなくなった先生の舌がちょっとだけ外に出てくる。
彼女の分身をねっとりと味わう。
「えろ、ちゅぁ……はぁっ、ちゅ……」
這い出てきた彼女の舌に舌を絡ませる。
御門先生は、カフェでお気に入りのチェリーパイを食べるように俺の舌を受け入れる。
俺もそれに応えて、ねっとりとそして湿っぽく舌を絡めていく。
ねちょ、ねちょ、と唾液が愛液になったと錯覚するまで、御門先生と舌を合わせる。
もはや、頭を押さえる手は先生の背中に添え、逃げようと思えば簡単に逃げられる様になっても、先生は俺とのキスをやめようとしない。
手持ち無沙汰になった手に、俺はいいことを思いつく。
俺は自由になった右手を、バスローブの裾と先生の脇の間を通らせる。
「ちゅ、ちゅぷ……れぉ、ぇぉっ! あっ!!」
汗でねっとりした背中を通って、御門先生の弱点、アナルに中指の先を当てると、先生は目を見開いて驚きの声を漏らす。
俺はそれを無視して、指をツプ、と御門先生のアナルに爪の長さだけ入れる。
「ん!んんん!!ひゃ、ひゃめっ!、そこは、ぁぁぁっ!……」
御門先生は、あれほど熱心にしゃぶりついていた俺の唇から舌を離し、振り返ろうとする。
俺はそれを意に介せず、指をミミズのように動かしながら少しずつ、腸内に侵入させていく。
「あ、あっ! んっ!やっぁ! きゃ!んぷっ!」
ドンドン侵入してくる指に狼狽する先生の頭を、空いている左手で最初と同じように掴むと、引き寄せて無理やりキスをする。
「んんっ!ちゅぱっ、ちゅ、ちゅぶっ……?」
また口内で愛し合いが始まるが、御門先生は何か違和感を覚えたようだ。
それもそうだろう。
俺の指の侵入が止まっているからだ。
御門先生は眉を寄せて、舌を絡める。
俺は口角をバレないように上げながら、ナメクジのようにはいずり回る先生の舌を丁寧に抱きしめてやる。
「クチュ、ちゅ、……ぷはっ!はぁ、はぁ、、、あ、あああああっ!!!」
いきなり侵入してきた俺の舌に、堪らず先生は口を離した。
離してしまった。
俺は指を更に中に入れた。
先生は一瞬惚けて声を漏らす。
そして何かに気づいたように、俺の口に吸い付くように戻ってくる。
そう。
俺は御門先生がキスを中断したり止めた瞬間から指を入れる。
だから今回先生が息継ぎをした時に、更に指を挿入した。
すでに指の中ほどまで、アナルにしっかりと入ってしまっている。
「ンンっ!んあぁぁ……! ちゅぷ、れお、レロ、クチュ……」
先生は腰を上下に痙攣させながら、艶かしい声を漏らす。
終わらないキスに俺自身も頭が白く濁っていく。
汗が肌と肌を張り付け、体の熱が混じり合っていた。
「ぁ……ぁ、れろ、……ちゅぷ……」
俺に半ば強制的にキスとアナルへの快楽を与え続けられた御門先生は、涙と唾液を垂れ流す。
俺の方はというと、御門先生のベロキスに応えながら、俺の指は根本までズッポリと先生のアナルに納められていた。
ぎゅ、ぎゅ、と一定のリズムで俺の指を締め付ける。
ネチョネチョとした粘液が指に絡みついて、動かす度に聞くことすら憚られる淫猥な音が部屋に響く。
今は先生が顔を真っ赤にしながら、俺とキスをする事に集中しているため、動かすことはない。
ここからでは見えないが、先生の体内は綺麗なピンク色に違いない。
指を目一杯使って、先生をいじめたらどうなるんだろうか。
そう思うと首筋がゾクゾクしてくる。
「ん…………ちゅ…………」
先生の顔を目を薄く開いて見てみると、眉間に皺を寄せ、耳まで赤くした顔があった。
そこには快楽に蝕まれた心と、後悔と贖罪の感情が浮かんでいた。
自分が寝ている生徒にキスをしたから、こんな事になっているのだ、とでも思っているに違いなかった。
「うっ……ちゅぱ……」
先生の唇が俺の唇を絶え間なく愛撫する。
時折流れてくる先生の涙と唾液が合わさって、いくら続けても苦ではない。
俺はアナルとは逆の手で、彼女の頭を優しく撫でてやる。
精一杯の優しさを込めて。
いけない事をした子供を撫でてやるように。
湿った髪の毛が手に張り付くが、それさえも官能を刺激する。
「んん……あ……っ……ちゅ……」
舌を絡めながら頭を撫で続けていると、徐々に御門先生の肩から力が抜けていった。
どうやら手の平で包む様に撫でられるのが先生は好きらしい。
キスをする度に、先生が好きな撫で方で甲斐甲斐しく撫でてやると、その度に舌が柔らかくなって俺の口に奉仕する。
アナルを刺激されないためにやっていたキスではない。
彼女の体温が急に高まっていくのを俺は感じていた。
「ちゅ……レロ……ちゅぱ……」
芯を無くした粘膜が水音を立てる。
御門先生の前歯を舌先でコリコリとなぞってやると、くすぐったそうに身じろぎして、先生の舌が俺を絡めとる。
俺は舌や唇だけに収まらず、唇ごと先生の頬肉さえもパクりと口に含んでしゃぶる。
「あ、ひゃぁ……ひょこ……は……」
口ごと肉を吸われてまともに言葉も紡げない。
派手にジュボボと音を立てて口を離すと、先生は、あ、と声を漏らす。
それでもキスを止めないように、唇を合わせる。
「あん……はぁっ…………ちゅ」
ずっとキスをしているせいで、思考がどんどんと鈍くなっていく。
おそらく先生の方が鈍くなっている。
先生と唇と舌がネチョネチョと絡み合って思考さえも溶けていきそうだ。
御門先生の手が俺の頭を包んでくる。
ねっとりと、熱く、執拗なキスだった。
若い男から生気を吸い取る淫魔のような。
「っ……はぁ……っ……んんっ!」
俺も負けじと、俺を貪ろうとするこの女を貪り返す。
そこからは見るに堪えない痴態を繰り返した。
唇の裏の皮が剥けるのではないかと思う程、啜りあって、舐めて、齧った。
俺の方も何か小技を考える暇もなく、没頭して、御門涼子という女性と過ごした。
それも終わりが訪れる。
「はぁっ……はぁっ……」
横隔膜が痙攣するのと連動して、吐息が俺の顎にかかる。
先生は遂に唇を離し、俺の鎖骨に顎をつけた。
ぐったりとしたその重量に、俺の口角は一人でに上がった。
御門先生はキスを、止めてしまったのだから。
俺は先生の下半身に回していた腕に力を入れる。
御門先生は俺の腕に力が入ったことで、はっと顔を上げる。
「え……あ! うそっ!い、いやっ! ご、ごめんなさっ、ダメっ!あっ!!」
だがもう遅い。
ごめん、御門先生。
俺は指を少し曲げ、腸壁を扱くように抽送する。
「やっ!! だぁ!!!! あ!あっ、ああっ!!」
御門先生の肉体が跳ね上がる。
キスしている間、いつの間にか馴染んでいた指が動き出したのだ。
「んん!あああ!!」
一瞬声を我慢しようとしたようだが、それも直ぐに意味をなくした。
トドメを刺そうと意識を向けた俺に邪魔が入る。
バタバタと手を動かして俺の指の動きを止めようとしてきたのだ。
「んっ!いやあっ!」
往生際の悪い女だ。
二、三度狙いを外しながらも、自らアナルを抉る俺の右手を掴んだ。
「……」
パアァン!!
「いっ!はああぁっっ!!」
破裂音が部屋に響き、間髪入れずに御門先生の口から叫び声が漏れる。
御門先生の大きくて程よく脂の乗った尻を空いた左手で引っ叩いたのだ。
手の平と、肉の塊が勢いよくぶつかる音。
心地いい打撃感と充実感が俺の胸を満たす。
「ぁ……ぁぁっ……ぁぁ……!」
意識のないと思っていた男から尻を引っ叩かれた御門先生は、視線を宙に彷徨わせながら、力なく声を漏らした。
抵抗なんて許さない。
その事を理解するまで何度でも教え込んでやらないといけない。俺はそう考えていた。
「ん……ぁ……」
また俺の攻めを邪魔してくると思ったが、御門先生は俺の予想とは裏腹に、恍惚とした声を漏らした。
俺の右手を掴んだ彼女の手は、ゆっくりと力なく離れ、俺のバスローブの裾をぎゅっと掴んだ。
御門先生の肛門がこれでもかと固く締まる。
わざと肉壁を引っ掻くようにして、指を引き抜く。
「あっ!んぁ〜〜〜〜!!〜〜〜〜っ!!」
御門先生が音を出さず叫んだ。
俺に押し付けられる大きな乳房以外の全てが脈動し、カクカクカクっ、と尻が上下に震える。
俺の指は一瞬だけ肉の壁から解放される。
しかしすぐさま、住処に帰るミミズが目の前の全てを喰らうかのように、先生のアナル肉を抉って穴に押し込む。
「ッ!……〜〜〜! あがッ!!……っ!!!」
何度も。
何度も。
何度も。
目の前の女が堕ちるまで。
じゅぽっ、ぬぽっ、と下品な音を響かせながら、先生の肛門が無理矢理に形を変える。
ついにその時は訪れた。
「ーーーぁっ ーーーーーっ!」
御門先生の顎がカクカクとぶれる。
絶頂。絶頂。
身体中から淫霧を吹き出す。
「っ……っ…………あ……」
全身から汗が吹き出し、まるで土砂降りの雨に当たったかのようだった。
背中から全ての緊張が消え失せ、どかっと俺に倒れ込んだ。
指をゆっくりと引き抜く。
濡れた唇から、ぁ、ぁ、と音にもならない声を吐きながら、全身が小刻みに痙攣し、体の熱が押し付けられる。
ついさっきまで先生の体内に入っていた指を先生越しに眺める。
こんなに粘ついた液体を溢れさせている。
俺はその手で御門先生の尻を撫でながら、顔の真横にある先生のほっぺをべろりと舐める。
しょっぱい。
俺の媚熱に侵され、塩分を失った肉体には御門先生の体液が舌に染みる。
何分そうしていただろうか。
絶頂の余韻が和らいでくる頃。
身体が動く度に汗の音がクチュクチュと鳴って、御門先生は額を俺の胸に付けてポツリと呟いた。
「わ、たし……生徒に、イカされ……ちゃった……」
その声には後悔のような感情は間違いなく混じっていたが、ただ覆せない事実がそのまま口から漏れたように聞こえた。
御門先生が俺の顔を見た気がした。
俺は目を閉じているから、実際のところはわからないが、多分、見た。
「………………」
言いようのない時間が流れる。
俺の上に覆い被さる御門先生の肉体は小さく痙攣を起こし続けている。
ぴと、と水滴が俺の首元に落ちて、首の後ろへと落ちていった。
御門先生の汗か、涙か、唾液か分からないが、それだけはわかった。
「ん…………」
小さな呻き声と一緒に、ゆっくりと先生は頭を起こす。
頭の重みが先に消え、最後は先生の前髪の先だけが俺の胸に残った。
俺の右手は変わらずに御門先生の肛門に触れていた。
御門先生は、十秒にも満たない間、俺の事を眺め続けた。
「結城、くん……?」
掠れた声に名前を呼ばれた。
薄目で御門先生を見ると、しっかりと俺の顔を覗き込んでいた。
「もっと……」
「……」
「……なんで、キスしてないのに、してくれないの……?」
もう終わろうとしていた俺は、内心驚いていた。
御門先生のピンク色の口腔から、湿った熱い吐息が俺の唇を撫でる。
つい、先生のアナルに当てていた指が動く。
ん、と声を漏らして身じろぎする。
「こうすれば……いいの……?」
御門先生の声には、先ほどまであった後悔や躊躇いがなくなっていた。
細く美しい両手が俺の頭を包み、俺の唇が先生に奪われる。
濡れて柔肉が俺の唇をおもちゃにする。
じゅぷ、じゅぷ、と下品な水音が鳴り響く。
タガの外れた彼女を前に、何も考えずに目の前の哀れな女の欲望を叶えてやる。
「いいっ!そこぉ!」
先程あんなにほじったのにも関わらず、きゅっと閉じた尻穴に中指を突き立て、抵抗を感じながら中に指を押し込む。
「ちゅぱっ!んんんんっ!ッ〜〜〜〜!」
御門先生は俺の舌をフェラチオしながら、目を見開いて身体を硬直させる。
喉から乾いた音が漏れる。
下半身だけが別の生き物のように振動する。
「はっ!あぁ!気持ち、いっ……!」
御門先生が下半身を俺に押し付けながら、背を反る。
俺は声が漏れそうになるのを堪えた。
この状況で俺の陰茎はこれ以上ないほどに硬くなり、押し付けられる柔い肉に狂喜していたのだ。
もう、限界が近いほどに。
「すごっ!お尻!ああああっ!」
御門先生が吠えた。
達そうとしているのが直感でわかった。
俺も、先生も。
御門先生は最後の爆発を最高のものにしたいのか、俺の唇にかぶりつき、長い舌を俺の口に突っ込んで舐め回す。
俺のその動きに合わせる。
「んんんんっ!ううんん!!」
俺はそのタイミングで、御門先生の舌にかぶりつく。
先生の全身の筋肉が収縮したかと思うほど、御門先生の身体が動いた。
先生は白目を剥き、焦点が完全にあっていない。
白い喉が震え、声が。
「いぐっ!ああああっ!!イッッッッ!!!!」
先生が今日一番の波を迎えると同時に、俺も射精した。
腰から全てが抜き出されてしまったかのような感覚。
ドクッ、ドクッと脈動し、バスローブの内側に白い粘液をこれでもかと吐き出す。
体に心地の良い倦怠感が襲ってくる。
既に足先の感覚は無くなっている。
「っ!……ぁ……ぁ…………」
耳元の御門先生の吐息すら、遠い。
俺は鈍くなった感覚に、たった今絶頂を迎えた一人の女性の重みを感じて、そのまま意識を手放した。
///////
「んん……?」
意識が浮上する。
俺は目を擦りながら、寝る直前の記憶を呼び起こす。
確か御門先生を虐めて俺も一緒に眠ってしまったのだった気がする。
ちょっと身体がだるい。
あの射精がどれだけ俺の気力を奪い取ったかがわかる。
「あ」
俺は体を起こして、バスローブをめくりあげる。
俺の記憶通りだったら、射精してそのままだから乾燥してカピカピになってるはずだ。
「あれ?」
しかし、俺は首を捻る。
ローブを捲ってもそこにはフルチンの下半身しかなく、出したはずの精液の痕跡すらなかったからだ。
もしや夢だったのかも知れないと頭が混乱してくる。
萎びた下半身を見ながら、唸っていると誰かの足音が聞こえてきた。
俺が急いでローブで下半身を隠すと同時に、ソファの向こうから御門先生の顔が現れる。
「あ、やっと起きた?」
先生は普段着なのか黒のタートルネックに寝巻きなのか緩めのショートパンツという出立ちだった。
「すみません、寝ちゃったみたいで」
全く、俺というやつはどうしようもない奴だ。
あれだけ性的なことがあったのに、起きている俺の前ではこんなに優しい姿を見せてくれる先生に失礼じゃないか。
そんな俺に話しかける御門先生の声は穏やかだった。
「いいのよ、私が送ってもらった方なんだから」
御門先生が手に持ったティーカップを俺に差し出す。
入れたての紅茶のいい匂いが香ってくる。
カップを受け取ると、音を立てないように啜る。
「美味しい?」
「はい、美味しいです」
御門先生はにっこりと微笑むと俺の隣に座る。
なんだか動きがぎこちない気がするが、気のせいだろうか。
それにしても、いつもピンクのタンクトップ姿しか見ていないから、部屋着の先生は妙に新鮮に感じる。
視線を服から上にあげると、ある事に気づく。
(ん?)
「先生、なんか髪の毛が乱れてますよ」
目立つ程じゃないが、まるで髪の毛を前から両手で掴まれたような癖が付いていた。
俺の記憶では先生の髪の毛を乱したりしていないはず。
そう言えば結局射精したんだっけ?
まあいいか。
髪の乱れ具合からいって、そこまであからさまじゃないから、少し時間がたってるのだろう。
俺は至って自然な動きで、彼女の髪の毛を手櫛で軽く撫でてやる。
「やだ、って……ゆ、結城君、急に女性の髪の毛に触るのは……」
御門先生は乱れた髪の毛を自分で押さえながら、俺を諌めるために声色を強くする。
俺にはまだ気になる所があった。
「それに口元に白いゼリーみたいなのが付いてるし」
「え?」
先生は口元を指で拭うと、付いていた白い何かを見て目を見開いた。
まるで食べてはいけないものを食べてしまった事を知られた子供のように。
「あ、あの、これはっ……」
「どうかしたんですか?」
「い、いえ、なんでもないわ……」
先生は手を握り締めると、すくっと立ち上がる。
状況がうまく飲み込めない。
御門先生は俺の事を見ないで、背を向ける。
「もう遅いし、タクシー代は出すから、直ぐお家に帰りなさい」
「え、泊まったりとかは……?」
「今日は……ダメ。……お願い」
これ以上はしつこいと感じた俺は、既に乾燥し終わっていた服に着替えるために脱衣所へ向かったのだった。
先生宅の玄関口。
外に出た俺は、後ろを振り返る。
先生は暖かそうなショールを肩にかけて、戸口に立って俺を見送りに来てくれていた。
「今日は本当にごめんなさい」
「いいんですよ。事故みたいなものですから」
「……タクシーが来たわ。気をつけてね」
結局、この日はこれでお開きになった。
タクシーが走り出したくらいに、改めて後ろを見て先生を探す。
その薄暗い中で、妙に御門先生の腰回りの輪郭が浮き立っているのが、俺の胸に残った。
タクシーが曲がり角を曲がって見えなくなるまで、先生は俺の事を見送ってくれていた。
俺はついさっきのバスローブ姿で眠りこける時、あの鼻息が胸に当たる感覚を思い出しながら、ゆっくり目を閉じるのだった。
//////
時間は遡り、その日の早朝。
「失礼します」
「……あら、結城くん」
俺は扉を開けて中に入ると、足を上品に組んで座る御門先生が真っ先に目に入った。
まだ学校が始まったばかりと言う事もあって、保健室で休んでいる生徒もいない。
この前から、少し足が遠のいていた。
御門先生はいつも通り胸元と太ももが眩しい服装。
無意識に喉が鳴る。
おはよう、とニッコリと返してくれる。
やはり御門先生は他の女性にはない色っぽさがある。
俺はそんな御門先生の見せる一面が好きだった。
「どうかしたの?体調が悪いって感じでもなさそうだけど……もしかして本当に体調悪い?」
御門先生は白衣の裾を直すと、俺を心配そうに見つめた。
彼女は医者だ。
一人で医者業をやってきたと言う彼女の生き方は普通では想像できない。
俺はそんな先生の私生活に踏み込もうとしている。
先生は俺のことをどう思っているのだろうか。
その場のノリとはいえ、自らの住居に生徒を泊らせたのだ。
俺がその辺の男子生徒と同じ、と言うわけにはいかないはず。
おでこにじんわり不快な汗が滲んだ。
俺は微笑を作り、ポケットに手を突っ込んでコツコツと足音を軽く立てながら、御門先生の横に立つ。
「先生に会いたかっただけですよ」
俺はそう言いながら、極めて自然に御門先生の肩に手を置いた。
身長が高いだけあって俺の手にもしっかり収まる心地の良い肩だ。
先生は俺と言う男に、体を触られているのに、何もリアクションをしない。
「……もうっ」
先生の足が動き、組む足を変える。
上から先生を見ているからか、首元の素肌がよく見える。
わずかな差だが、御門先生の頬に朱が差したのがわかった。
大人をからかわないで
長い睫毛を伏して、俺から目を逸らした御門先生からそんな意味が感じられた。
上から覗く事でよく見えている、御門先生の胸元の谷間。
俺にからかわれた事で、二つの双丘の間に吸い込まれそうな錯覚に陥った。
つい、肩に置く手に力が少しだけ入る。
御門先生の髪先が手首にかかってこそばゆい。
「本当ですよ?」
手の平に伝わる先生の暖かさを感じていると、御門先生のすらりとした白い手が俺の手に触れる。
幾つもの命を救ってきた手だ。
「あ、ありがとう……もう戻らないと、授業が始まるわよ」
先生の手が俺の手を、先生の肩から滑り落とす。
洋服に包まれた乳房のすぐ横を通ったから、つい胸が鳴る。
御門先生は瞬きをする目で俺を見て、優雅に立ち上がった。
俺の手は先生に握られている。
「……」
よくわからないが、俺には御門先生の唇にやけに目を奪われた。
艶っぽい、唇だ。
「どうかした?」
「……いえ」
チャイムが鳴る時間だ。
もう行かなくてはならない。
名残惜しいが、これでいい。
握られた手が離れようとしたとき、今度は御門先生がぎゅっと俺の手を握った。
「ねえ……結城くん」
「なんですか?」
御門先生は目線を下に向けている。
何か言いかけると、手の力が強くなり、躊躇う度に、その力は緩んだ。
「……ごめんなさい。なんでもないわ」
手がサラリ、と落ちる。
御門先生はニコリと優しく笑い、俺の肩を押した。
俺はそのまま保健室を出て、閉じた扉を振り返る。
俺の手には、針を刺した相手の肉体を遠隔で刺激できる装置が握られていた。
相手につける為の針は既にない。
御門先生の肩に、小さな針が目立たなく付けられていることに、誰も気づいていない。
一日が始まる。
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