良い日というのは何をしても良い気分になるものらしい。
俺は連日、ララ、御門先生という全国の男がヨダレを垂らすほどの美女を抱いた。
俺はルンルン気分で、校門を通り過ぎる。
気分がいいと、こんな古びてぼろっちい校舎も、どんよりして今にも雨が降ってきそうな曇り空でさえも、美しいものに見えてくるのが不思議だ。
「?」
ふと、振り返る。
なんだかいつもと違うような、変な気がしたのだ。
虫の知らせというやつか。
いや、こんなハッピーな日が続いてるのだ、いつもの違うのは当たり前のこと。
「家に帰ったら……うへへ」
多分側から見たら、相当気持ち悪い顔をしている。
俺は、股間と胸を膨らませながら、家に帰ったら誰が居るかを想像してしまう。
可愛い少女たちが俺を待っているのだから。
家に帰れば、お尻の穴を弄ったりできる美柑がいる。
今度はチンポを咥えさせて飲ませてみたい。
JSとヤルなんて滅多にないチャンスだ。
ララも、まだやり足りない。
おっぱいも、もみくちゃにして、あの天真爛漫なララの顔を歪ませたいな。
モモも、ナナもあの未成熟な肉体で、気持ちよくなりたい。
俺は小躍りする。
「あ〜、楽しみだ」
ぽつ、と水滴が鼻先に落ちてきた。
困った。
ここら辺は、あまり店とかが無い。
俺は急いで帰るか、雨宿りするか迷いながら、取り敢えず屋根のあるところがないか、当たりを見渡す。
「ん?ナナ?」
丁度、家の方向を見るとに、ナナがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
今日は帰りが遅かったから、ナナは先に帰宅していたのだろう。
おーい、と手を振る。
「あれ?」
だが、おかしい。
なんであんなにナナは走ってるんだ?
なんで、あんなに血相を変えてこちらに向かってくるんだ?
ポツ、ポツ、とどんより曇った空から雨粒が落ちてきた。
ナナがこちらに着く頃には、あっという間に地面が雨で色が濃くなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……リト」
「ナナ、どうしたんだよ、一体」
ナナはずぶ濡れになって、激しく息を吐く。
髪が濡れて肌に張り付いている。
俺はたまたま近くにあった屋根のある軒先で、息を切らしたナナに手を貸す。
「……いいから来い」
ナナは俺の腕を掴むと、有無を言わさない様子で、家と反対方向へ引っ張られる。
いつもの様子と明らかに違う。
名前を呼んでも、俺の事など無視して、走る。
水溜りを踏んだ。水が靴に入ってる。
傘もないから、俺もずぶ濡れだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
走って、走って、誰もいない公園までたどり着くとやっと止まる。
俺も息が上がっていた。
灰色の雲から、ゴロゴロ、と不気味な音が鳴り始める。
ゼーゼー息をしながら、曇天を見上げる。
これは長い雨になりそうだ。
視線を下ろして、多分下着までずぶ濡れになっているナナを視界に収める。
ナナも俺のことを見ていた。
ナナが俺の目を見て、静かに、だが、確かな声で言った。
「ヤミが……ダークネスになった。リト。お前を追ってくる」
「え?」
平穏な日常が崩れていく音が、空から降ってきた。
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公園にはたくさんの遊具がある。
その中には、ドーム上の雨を凌げるものがあった。
俺たちはその中に四つん這いで入り、横並びに座る。
「言った通りだ。ヤミが……いや、ダークネスがリトを追ってる。家のみんなはおかしくなってる。多分ダークネスの仕業だと思う」
俺は最初理解ができなかった。
ダークネス。
確かにヤミにはダークネスという、第二人格みたいな存在がいる。
だからって、俺を追ってる?みんなおかしくなった?
いやいや、家に帰ったら、美柑やララたちが迎えてくれて、平和な生活が待ってるはずだ。
「……」
だが、ナナがふざけている様子はなかった。
こんな大真面目な様子が演技だとしたら、人間不信になっちゃう。
「事情は……一応わかった。取り敢えず、家に電話してみていいか?」
「うん……無駄だと思うけど」
膝を抱えたナナがボソリと返事をする。
俺は横の彼女を見ながら、デダイヤルを開く。
かけるのはララの電話だ。
『あ、リト。どうしたの?』
ああ、やっぱりいつものララじゃないか、と俺は思った。
俺は普段通りのララの声に安心しながら、ダークネスについて話を振る。
『ダークネス?ヤミちゃんでしょ?どうかしたの?』
(ん?)
ララはさして気にならないように、いつもの調子だ。
少しだけ違和感を覚えるが、いつも通りの調子から、考えるのを放棄する。
やっぱりナナの勘違いなんじゃないだろうか。
そう思ったら急に気が楽になった。
ダークネスが俺を追ってるとか、怖くて出歩けない。
俺は一旦電話を切る。
「なあ、ナナ。家に帰ってみよう」
「っ!?ダメに決まってるだろ!!」
ナナは目を見開いて、こちらに体を向ける。
何を言ってるんだ、信じられない、と言った表情だ。
少し胸が痛むが、一旦家に帰らないことには、この濡れた服も乾かせない。
実際、ダークネスが追ってきてたら、既に俺の前に現れていてもおかしくない。
ナナの走ってくるスピードと、ここに座ってた時間を考えれば、ダークネスが現れない方がおかしいのだ。
この公園は家からせいぜい百メートルだ。
「なあっ、リト!ダメだ!!」
「ララもいつも通りだったし、ダークネスが暴れてたら、もっと焦ってるはずだし」
「だから、みんなおかしくなってるんだって!!」
ナナの声がドームに反響する。
肩を掴まれる。
俺は内心、大したことないだろうと思わざるを得なかった。
「でもさ……」
「っ……!静かに……!」
ナナは、手で俺の口を塞ぐ。
細い指が頬に食い込むが、ナナの横顔を見る。
その表情は真剣そのものだった。
よくわからない。
よくわからないが、俺もナナと同じように、外の音に耳を澄ませる。
_____パシャ……パシャ……
ザアザアと雨が地面を叩く音に紛れて、足音が聞こえていた。
俺だったら聞き逃しているくらい、僅かな違い。
音を隠す様子もない。
子供が裸足で遊んでいるような。
だが、さっきまで子供なんてこの公園にはいなかった。
俺たちが入っているドーム型の遊具には、筒のように両端が繋がっている。
俺たちと反対側の出入り口に、誰かが近づいている。
足音がこちらに向かっている。
すぐそこにいる。
「……っ!!」
裸足の足。
金色の長い髪の毛。
それだけが、ここから見えた。
その瞬間、ナナが俺の腕を掴んで、ドームから飛び出す。
「_____!!」
ナナが何かを叫んだ。
多分、逃げるぞ、って言ったんだと思う。
頭が真っ白になって、俺はナナに引っ張られるまま、走り出す。
(本当なのか……?あの髪の毛は、ヤミにそっくりだった。でも、ヤミがあんな格好で出歩くはず、ない……)
つまり、正真正銘、ダークネスだ。
自分の愚かさを呪う。
ナナの言う事を信じなかった。
あいつの目的は?
なんで俺を?
そんな言葉で頭がいっぱいになる。
(待てよ?)
俺は不意に立ち止まった。
俺たちは逃げている。
逃げるのはダークネスとは逆の方向。
家とは逆の方向だ。
(家のみんなは?)
そう思った瞬間、俺は直線方向から右の道に方向転換する。
ここを曲がれば、幾分近道だった。
「リトっ!行っちゃダメだ!!」
「ララや美柑たちのところに行かないと!」
ナナが後ろから追いかけてくるのがわかった。
ナナを待つより、家のみんなが無事であることを確かめたい。
俺は雨で滑らないようにデダイヤルを取り出し、今度は家に電話をかける。
『あ、リトさん?』
数コールの後、すぐに電話がつながる。
モモだ。
モモの様子はいつもと一緒だ。
だが、ララもそうだった。
あの時の違和感。
ダークネスだと言っても何も反応してなかった。
だから、もう一度、ダークネスが追ってきてると伝える。
『大丈夫ですよ〜。ダークネスさんですよ?もう、からかってるんですか?』
モモは面白そうな声でそういった。
やっぱりララと同じだった。
ダークネスを全く警戒していない。
もしかして、これがナナの言っていた、おかしくなってる、ってことなのかもしれない。
電話を切ると、すぐそこに自宅が見えていた。
一旦家に隠れて_____
「あ、結城リト。はっけーん!!」
ヤミの声が、上から聞こえた。
だけど。ヤミの声だけれど。
_________ヤミの喋り方じゃ____ない。
その瞬間、ドカンッ!!、と何か硬いものがコンクリートに打ち込まれたような破裂音が鳴った。
「熱っ」
鎖骨辺りに衝撃と、焼けたような鋭い痛みが走る。
同時に何かに突き飛ばされ、そのまま俺は地面へと尻餅をつく。
金色の鋭い何かが、視界の端に映る。
俺にの腹に覆い被さっているのは、ナナだ。
ナナが俺を突き飛ばしたのか。
右手で、さっき変な衝撃があった左の鎖骨を抑えると、そこには雨の水とは違う、ねっとりとした感触。
俺の手には、真っ赤な鮮血が付着していた。
ナナが咄嗟に突き飛ばしたことで助かったのだ。
衝撃に息が詰まって呼吸が乱れながら、スッと地面に降り立った金髪の少女を視界に収める。
金色の長い髪の毛。
白い肌に、中学生くらいの膨らみがある幼い体型。
下着よりも卑猥な黒いボンテージ。
頭部に生えた角。
ゾッとするような瞳が俺を見ていた。
「あーー!外しちゃったじゃん!ってうわぁっ!?」
次は俺の首を狙うであろう、ダークネスの変身した髪の刃が、動いた気がした瞬間。
バブッと音と共に、網目上の膜がダークネスに発射される。
ナナだ。
たぶん、動物の捕獲用のやつ。
綱に絡め取られ、ダークネスの動きが止まる。
多分、持って十秒だろう。
「リトっ!」
「うっざー。逃げても無駄なのに」
ナナが俺の手を取り、結城宅に走る。
雨か汗ともわからないが、視界が液体で歪む。
とにかく逃げたかった。
ただただ恐ろしい。
自宅に戻ったら、誰かが助けてくれるはずだ。
俺はそれでなんとかなると思っていた。
「リトっ!一旦宇宙船で逃げるぞ!」
ナナが言った。
妙案だ。
だが、家のみんなもどうにかしないと。
最悪の場合、ナナのいう通り、ここから遠く逃げないといけないのかもしれない。
そんなことにならないと願いながら、俺は頷くと、そのまま家へと走る。
「美柑っ!ララっ、モモ!」
玄関を開け、土足で中に入る。
リビングに向かう。
「わ!リト?何やってんの、そんなにずぶ濡れで」
「おかえり〜!雨すごいね!」
「リトさん、お帰りなさい!どうしたんですか?」
三人がいた。
みんな、ソファで寛いで、お菓子を食べていた。
いつも通り。
穏やかな日常。
一瞬、今までのがドッキリか、白昼夢なんじゃないかと思った。
思いたかった。
「な、なあ。たった今、ダークネスに襲われたんだ。みんな大丈夫なのか?」
「ダークネスさん?なら、さっき出ていきましたけど?」
皆、キョトン、とした顔で、俺を見る。
血を見せても、ダークネスがやったと言っても、誰もダークネスを疑わない。
「どうなってるんだよ……!なんで……」
頭がおかしくなりそうだった。
少女たちを前に、俺は立ち尽くす。
そして、2階に行っていたナナが戻ってくる。
「……リト」
ナナが、深刻そうな顔で口を開く。
「宇宙船が破壊されてる」
その瞬間。
_________ドカンっ!!
という轟音と共に、玄関が吹っ飛んだ。
「うっ!」
パラパラと木材やら家具の破片が飛び散る。
破壊された玄関の向こうには、それをやった張本人と思われるダークネスが立っていた。
「くそ……」
全て合点がいった。
ダークネスがすぐ俺を追って来なかったのは、宇宙船を破壊していたからか。
卑猥な格好で、こちらに近づきながら、ダークネスがクフフ、と笑う。
「最初から詰んでたってこと。プリンセス・ナナがこっち側にならなかったのは想定外だったけど」
切られた傷が痛い。