★エリス視点★
夜半、魔法都市シャリーア郊外のグレイラット邸。住人はみんな寝ているのか、物音が聞こえない。ルーデウスが寝室に来るのを待つ間、ロアの跡地で別れてからの五年を考えていた。
あの時は身一つで別れた。それからはひたすら剣の腕を磨くことに専念した。オルステッドと闘うルーデウスの横で、自分も一緒に闘えるようになるため。
修行がつらいと思ったことは一度もない。けれど、この五年間でそれ以外のことを考える余裕はなかった。
そう、なかったのだ。
ルーデウスはその間に、屋敷をもって妻をふたりも娶っていた。その意味を考えていた。
彼とオルステッドとの闘いを目の当たりにして改めて気がついたのは、森を消しとばすほどの魔術を駆使して闘うルーデウスと、邸宅をかまえて八人のグレイラット家の当主をつとめるルーデウスがいるということ。
この五年間でなにをどうすればそうなるのか、家を買い、結婚までも。
ひたすら剣をふっていたわたしにはわからない。
色々あったものの、こうして今の生活があるのは闘い以外の地道な積み重ねを彼がしていたからだ、とも言える。ルーデウスはいつもそうだ。一緒に旅していたときから。
もちろんシルフィとロキシーが受け入れてくれたことも、ルーデウスと家族になれた要因だ。正直にいえば魅力的な二人に引け目を感じる。可憐なシルフィは、華奢な見た目に反してこの家を支える芯の強さをもっている。数日この家で過ごしてみてわかった。ルーデウスはシルフィのことをエッチな目で見ているだけじゃない。家を支える彼女を頼り、甘えている。
美少女のロキシーはいつも物静かだけど、この家では彼女の発言が大切に扱われる。それもそのはず、ルーデウスがずっと尊敬していた師匠だもの。師匠を娶るという感覚はわたしにはわからない。けれどロキシーとルーデウスがふたりきりでいる場面に遭遇したとき、ルーデウスは彼女を師匠として扱うというより、ただ妻として可愛がっているだけのようにも見えた。
ルーデウスは二人の奥さんをとても大切にしている。
じゃあ、わたしはどうだろう。
エリスは考える。
わたしは今、どんなふうにルーデウスに接すればいいのか分からない。
二人には正直に言った。ルーデウスに愛されたい、結ばれたい。一緒にいるために強くあろうとした、と。シルフィとロキシーは「そのままでいい、自信を持ってほしい」と言ってくれた。ルーデウスを愛するあの二人に、自分の胸にある思いを認めてもらえたのが分かって震えた。
けれどそのままでいい、と言われてもわたしとルーデウスの関係は五年前とは変わってしまった。ルーデウスは話し方もあの頃となんだか違う。
だから、ちょっとぎこちない。
それも含めてそのままでいいということだろうか。
弱気は良くない。
ルーデウスはわたしのことももらってくれた。きっと大丈夫。
そんなことを考えていたら、寝室に向かってくるルーデウスの気配があった。
とにかく……先手必勝だ。ぐっと両手をにぎる。
夢中でルーデウスを押し倒して組み敷いた。やっと二人きりになれた。薄暗がりの視界がキラキラしてみえる。弱気な気持ちとは関係なく、わたしはルーデウスとそういうことがしたかった。
強烈にしたかった。
昔と違ってたくましくなった手や首すじを見るだけでムラっとして、そのたびにグレイラットの浅ましい血のせいかもしれないと思う。けれどルーデウスはこういう場面になっても、意外にもいろいろなことに気兼ねしてくる。
普段はあんなにいやらしいのに。
だいたい初めての夜がそうだった。
なかなか手をだしてこなかった。耳元でお母様の殺し文句をささやいてようやくはじまったのだ。忘れるはずもない。だから今日もそうする。
シルフィとロキシーに、だけじゃない。
わたしにも気兼ねしてるからルーデウスがぎこちない事くらい分かるんだから。
「ルーデウス、大好きよ」
そういって馬乗りのまま、口づけする。
「エリス……」
続けて何か言うかと思って待った。ちょっと何か考えるように視線をはずすルーデウスがじれったい。
沈黙。
また沈黙。
普段シルフィとロキシーにはあんなに屈託のない顔をむけているのに。
「……好きだよ、ずっとこうなりたかった」
顔が熱くなった。
「……わたしでもいいの?」
自信が持てない。
顔が見れない。
また沈黙。なんでルーデウスが黙るのか分からない。
おそるおそる顔を見る。
表情がない。
「なによ」
ルーデウスからピリついた空気が出ている。
気がする。
ズルいと思う。
普段からわたしは手が出る。
そんなわたしを大げさに怖がってみせたりするけど、本当に怖いのはルーデウスの方だ。
「エリス」
「なによ」
「わたしでもって何?」
でも、って。
ルーデウスの声に色がない。
その理由、口に出すとみじめになる。
「わたしは二人みたいになれない」
どんなに頑張ってもわたしはシルフィのようにはできない、ロキシーのようにもなれない。
「ならなくていいよ、俺はエリスが好きだって言ってるんだ」
ルーデウスがわたしのことを気に入ってくれたら嬉しいと思う。
また顔が熱くなってきた。
ルーデウスはわたしをまっすぐ見てる。
「本当なの?」
「ホントだよ、俺はエリスが好きだ」
胸がジワリと温かくなる。
自分が睦言のヒロインになるなんてくすぐったい。
いつもの自分じゃない。違う自分になった気がする。
ルーデウスがわたしをどう思ってるか、まだよく分からない。
でも、言うように、本当にわたしのことが好きなのかもしれない。
わたしはルーデウスが好きだ。
もう一度大好きと告げ、深い口づけを交わした。
ルーデウスの身体がたくましくなっている。
あたりまえだけど、もう十三歳の華奢な少年じゃない。
馬乗りのまま、大好きなにおいに思いきりとびこむ。
下の方で熱くてかたい主張が直接あたって、初めてホッとした。
嬉しい。
嬉しい。
……うれしい!
「なによ、これ」
いいながら腰を押しつけるとベットがギシリギシリと鳴った。
「エリスがあまりにも魅力的だから」
言いながら、にんまりと笑うルーデウス。
「なによそれ、最初のときとおんなじじゃない」
つられてにやける。嬉しくて、ぐりぐりと押しつけてしまう。
やっぱりわたしをそういう風には見てくれる。
初めての時と同じ会話。
「わたしでも興奮するってことよね?」
「うん」
「わたしがいやってわけじゃないのよね?」
「いやで求婚するわけないだろ」
ふふふと笑った。
緊張がとけていく。時間が引き戻される感覚がした。
ルーデウスの下半身を手でまさぐると、お返しとばかりに手が伸びてくる。下着ごしに的確に触れてくる。
しばらく無言で触り合った。
ルーデウスの手、目、息遣いが興奮を伝えてくる。
初めての時と違う慣れた手つきに腰が浮く。
「気持ちいいんですか」
「……いい」
ゆっくりと適切な力加減でなぞってくる。
「そのしゃべり方……昔みたいね……ぁ……」
カリっと爪を立てられ吐息がもれる。
「うん、二人きりになって思いだした。どう……かな」
ルーデウスも距離をはかりかねているのだ。
遠慮がちなのに、指の動きだけはなんの遠慮もない。
「わたしは今のルーデウスも好きよ」
気持ちいい、腰がうく。
仰向けに寝ているルーデウス。
フっと笑ったあと、きまじめな顔をして上体を起こしてきた。顔がわたしのすぐ目の前にくる。
唇を、下からすくいあげるように口づけされた。
柔らかくて妖しい感触に夢中になる。ルーデウスがわたしの背中に手を這わせる感触で、つい腰がうごく。
まつげが触れそうなほどの近い距離。
「不自然だったかな」
「わかんないわ、長く離れ過ぎていたもの」
「じゃあもっと近づいたら、どうするのが自然かわかる?」
「もっとって、これ以上どうやって近づくのよ」
またがって抱き合い、顔がくっつくかと思うほど近いのに。
「俺たちは、一度やってるよ?」
少し考え、五年前に一つになった時のことをいっていると思い当たる。
「馬鹿ね」
……あ。
おおいかぶさってくる、組み敷かれた。香油で手入れした髪が広がり、慣れないあまい香りが寝室にひろがった。
興奮してクラクラする。
「なによ、そんなにわたしと近づきたい?」
軽口を叩く。
「……そうだよ、エリス」
なのにルーデウスがいつもみたいに茶化した空気にしない。
「俺はエリスが好きなんだ」
ルーデウスが真剣な表情でわたしをまっすぐみつめている。
さっきから同じことを何度も力を込めてわたしに伝えてくる。
分かってる。
分かってきた。
鼻がいたい。
涙が出てきた。どんどんあふれてきた。
「ルーデウス……わたし、ずっとこうしてほしかった」
後から後から出てくる。
イゾルテに手紙を読んでもらったときからずっと胸にしまってあった不安が押し流されていく。
ルーデウスはわたしのこともそういう目でみてくれた。
「俺は大切な人としか結婚しないよ」
「そうね」
分かっていた。
今、頭が追いついた。
あの二人とおなじ位置に自分がいることの意味。
――ルーデウスがどれだけ大切にしているか目の当たりにしたもの。
「命をかけるほどわたしが大切なのね」
「そうだよ」
よどみなく言った。たまらない。
たまらない。
「エリス、キスしていいかな?」
こくりとうなずく。
夢中で口付けした。
声色と視線で、きちんと自分が受け入れられているとわかった。
それからは寝巻きと下着を、二人で協力しながらゆっくりととった。
……絶対ダメといったけど「大丈夫だよ、まかせて」というルーデウスに身をゆだねることにした。
なんだか慣れていて、頼もしい感じがしたから。その結果両足をかかえられて、子どものようなかっこうをさせられる。ルーデウスの顔が、股の下にある。
みんなこんなことをされるのかしら。これはとても――
「恥ずかしい」
「そうだよね、やめる?」
「……やめなくてもいいわ」
でもやっぱり死ぬほど、恥ずかしい。
「大丈夫、エリスはここも最高にきれいだよ」
「何よそれ」
中心部分に軽くキスされる。
「……っ!」
そんなところに口をつけるなんて信じられない。
胸の鼓動がはやくなる。そんなことしていいの……?
そのまま口に含まれて、なめらかな感触でなぞられた。温かくてあまい快感。
「ふぁ……ぅ」
声を我慢できなかった。自分でも聞いたことない、鼻にかかったような声がする。家人に聞かれるかどうか気兼ねする余裕がなくなった。
「だめ……だめ……だめ……」
気持ちいいけどあまりの刺激と恥に、口が勝手に拒んでしまう。おかまいなしで続けるルーデウスを追っていると、目が合った。
「エリス、気持ちいい?」
うなずくと、ルーデウスは思案気な表情になる。何だろう。おもむろにさっきよりも柔らかく、優しくゆっくりと舌でなぞってくれた。とろけるように気持ち良くて、ため息が出る。
「――いいわ」
そういう魔法でもあるんだろうか。
ルーデウスのことだから何かしてるかもしれない。腰が前後に動く。自分が浅ましく見えないか心配だ。顔が熱い。
剣では。
剣では呼吸が乱れて崩れればそのまま命を落とす。だから呼吸を乱さず相手の動きに息を合わせる。エリスも闘いであればその通り動く。けれど今、慣れない快感に呼吸がみだれて、ルーデウスはそれに丁寧に合わせてくれる。息は粗くあがり、声が出る。
頭がふわふわする。
「指でしてもいい?」
また聞かれた。拒めない。
「あ……」
拒まずにいたら、ルーデウスの指がゆっくりと侵入してきた。中指の腹を内側からあてがわれ、中心をむきあげるように内側から押し出した。
分からない。
分からないけど、もしかしたらものすごく気持ちがいいかもしれない。
分からない。
とにかく勝手に声が出る。
ルーデウスの指で内側からむき出した部分を、やわらかい舌が優しくなぞった。
「こんなのだめ!!!」
おかしくなる。どうしてこんなにゆっくりするんだろう。あああ、このままされたら、どうにかなってしまう。
★ルーデウス視点★
しめった音とくぐもった声が寝室にひびいている。とてもエロい。これはなんですかな、至福ですな。初々しい喘ぎ声と、悩ましい腰の動きを惜しげもなく見せてくれる。様子をうかがうと、ぱちっと目が合った。眉をしかめて悩ましい。顔を真っ赤にしている。
シルフィもロキシーもこういうとき、ちょっと意地悪して「腰が動いているよ」なんていうと「もう」と顔を赤らめて「ルディのせいだよ」「意地悪いわないでください」などと言い返してくる。でもエリスは違う。エリスはなんかこう、もっと繊細だ。そんなことを言ったら、赤い顔をさらに真っ赤にして照れてしまうだろう。だから余計なことはいわないようにしよう。
エリスの新婚初夜が心地よく素敵なものになるよう全力でがんばるんだ。かわいい妻と仲睦まじく暮らして、エロいことをして生きるために普段からがんばってる。いうなれば今が一番大切なパートである。ここは慎重に……
「すごい……すごいの……ダメ!……ルーデウス!!」
エリスはひときわ大きな声で果てた。
★エリス視点★
ダメといったのに、ルーデウスは腰の奥にこみあげてきた快感を、器用に指と舌ではさんでなぞり続けた。そのせいで何かがはじけてあふれ出た。
わからないけど、そうとしか言いようがない。
ニュルリ。
「ああ!!!」
舌。
反射でひときわ大きな声がでた。
「ああ!……ああ!……あ!」
ルーデウスにぐちゃぐちゃにされている。死ぬほど気持ちいい。もっとされたい。
「ルーデウスのでもしてぇ」
言葉が自然と出てきた。
幼い頃から抱いていた気持ちが溶けてなくなってしまった。
自分のほうが年上だから負けられない。
後ろで守られてばかりだから今度は守りたい、横並びで闘いたい。
ずっと胸の中にあった、張りつめた気持ちがない。
かわりに隠してきた気持ちが出てきた。
ルーデウスにしがみつく。
「してぇ」
甘えた声。こんな声は生まれて初めて出した。
それ、でわたしを女にして。
ルーデウスはうなずいて、おおいかぶさってきた。
背中に手を回してキスをねだる。
もう止められない。
止めなくてもいい。
わたしはこんな風に、ルーデウスに甘えてみたかった。
ずっと。
★ルーデウス視点★
素直にあまえてくるエリスに矢も楯もたまらずとびついて……いきたい気持ちをぐっと我慢した。身も心も柔らかくなって俺に抱かれているエリスは、俺の命を救うためにオルステッドの前に立ちはだかってくれたエリスでもあるのだ。
そう思うと、自然と礼を尽くそうという気持ちが湧いた。
ヒキニートだった時ならいざ知らず、いまや妻をふたりも娶ったベテランの夜の戦士。
いや、ベテランってほどじゃないか。せいぜい中堅くらいかな。
とにかく受けた恩義にこたえるだけの技量がある。
かわいい妻と妹たちからの信用を失い、それと引き換えに得た知識と経験。
エリスに飛びつきたい衝動をぐっとこらえる。
素敵な新婚初夜にするべく、エリスのペースに合わせるのが紳士のたしなみというものだと、自分にいいきかせた。エリスは初めてじゃないし、きっとこれだけ柔らかく力が抜けていれば大丈夫。
「なによ」
あれ、ニヤけてたかな?
「いや、エリスの可愛いところが見られて役得だなあと」
つい鼻の下が伸びて本音が。
はたかれる。
………。
あれ。
「ルーデウス」
囁くように呼ばれて気付いた。
エリスの頬は紅潮して、瞳はうるみ、真紅の髪はベッドに広がっている。
口元はへの字。
どこかしおらしい。
「わたし、ルーデウスにとっては……その……かわいいの?」
「そうだよ」
いつも凛々しくて、というか雄々しくて、そんな風に見たことなかったかもしれない。こんなのは変かな、結婚しておきながら。
「エリス、かわいいよ」
でも、本当にそんな風に見たことがなかった。
エリスと夫婦になると、こんな関係になるのか。
「本当に」
静かな感動を味わいながらそう耳元でささやくと、甘い力で抱きしめられた。
「そうなの?」
「ああ」
「もっと言いなさいよ」
「可愛いよ」
「それから?」
「大好きだ、愛してる」
エリスの返事はなく、ただ吐息が漏れたのが聞こえた。
正直に嬉しい。こんなに満足そうにしているエリスの顔が見れるとはね。
ゆっくりと。
しかし、滑らかに一つになった。
「俺がエリスのことが好きなの、知らなかった?」
返事の代わりに、甘いため息が耳にかかる。
くぐもった喘ぎ声を上げながら、エリスはずっとこちらを見ている。
「すごく愛しいよ」
「………」
エリスは真っ赤な顔になって黙り込んでしまった。
あどけない少女が褒められて喜ぶように、ただもじもじと口元をゆるませて嬉しそうにしている。
なんの駆け引きもなく、言葉が素直にエリスの胸に届いているのがわかる。
そんな表情。
こういうところなんだよな。
睦言を囁きあうなんてことは、エリスにはハードルが高い。
エリスはどうしてこんなに俺に大きな気持ちを向けてくれるんだろう。
どうしてーー
「オレのことは?」
「好き、好きよ。愛してる、大好き」
まっすぐ見つめ返してくるエリスの視線の強さに、ついこちらまで照れてしまいそうだ。
身体をこわばらせながら抱きついてきた。
大丈夫だよ、すぐに動いたりしないさ。
安心して俺にゆだねてくれている分、こちらが気をつけて丁寧に扱わねば。
言葉では伝えた。
言葉にならない部分は、今から存分に伝えていこう。
それにしてもつながってあらためて分かる。
筋量、弾力、敏感なバネに、感動した。
反射神経、身体の張りとコシ、柔らかさとしなやかさが直接に伝わってくる。少しの動きにも機敏に反応する。
剣士の修行をしたからか。
はじめてのときは彼女のそういった身体のことは夢中で分からなかった。もっとも、剣の修行をする前だったから今とも違うかもしれない。
自分をおさえて、ゆっくりとエリスの呼吸にあわせて動いていく。
エリスが順調にあえぎはじめたのを確認して、徐々にペースを上げた。
この寝室にまた新しい声が加わった。
なんでも経験というが、エリスを導くだけの経験を積んでいてよかったとしみじみと感じた。
★エリス視点★
あおむけに足をかかえられながら、ルーデウスに荒々しく腰を掴まれている。
おなかの中を満たしている熱く、硬く、太いもの。わたしの快感の波に合わせて動いてくれる。
波が寄せてきたときは激しく、引いていくときは優しく。
目でキスをねだる。口付けが落とされる。
手に手を忍ばせる。優しく握り返される。
足を開いて、めいいっぱい受け入れる。
「ルーデウスぅ」
出したことがない甘え声、不思議と違和感がない。
「エリス、これがイイの?」
ルーデウスは明らかに分かって当てている。
「……すごいの」
息も絶えだえに、やっと応える。
「ゆるめる?」
わたしをうかがう優しげな目。
「そのまま!」
「ん」
思いっきりあまえた。キスをねだり、手をつなぎ、しがみつき、名前を呼び、腰を押しつけた。
どうしよう。
「こんなに優しくされたら……おかしくなる」
何かがあふれそうだ。
「どうおかしくなるの?」
「どうすればいいか分からなくなるの」
ルーデウスはわたしを繰り返しつらぬいてくる。
激しいのに、とても丁寧。
気持ちがいいのに、とても苦しい。
優しくして欲しいのに、めちゃくちゃにされたい。
思いをぶつけたいのに、このままされるがままでいたい。
それが欲しくて、腰がルーデウスを迎えに行く。
浅ましい動きがとめられない。
「どう、って?」
ルーデウスがうかがってくる。
分からない。
わたしはどうすればいいのか分からない。
「ルーデウスはこんなにくれるのにっ……ああ」
気持ち良くて、考えられない。
「うん」
ルーデウスが先をうながしてくる。
「わたし、ん……返せないわ……なにも……ああ!」
二人みたいにできない。
きっと今も。
何もできてない。
わたしはただよがってるだけだ。
「エリス……」
呼ばれ、目で返事をする。
「そばにいてくれるだけでいいんだ」
「ほんとなの?」
もうルーデウスは言葉で応えてくれない。
ただ荒々しくわたしの腰を掴んで打ちつけてくる。
その手の大きさ、中にあるものの硬さ、柔らかな舌の感触だけがわたしの本当になった。
十五の誕生日には身体を女にしてもらった。
今、心まで女にしてもらった。
わたし、ルーデウスのそばにいるだけでこんなにしてもらえる。
溶けてしまいそう。
何度目かの快感の波がこみあげたとき、手の甲で両方の乳房を撫でられた。
ゾクッとした。
おなかが切なくなって力が入り、声が出た。
乳房に親指の腹をあてがわれて、ゆっくりとこねられる。
快感が腰の奥の方に直接届く。遠くで自分の声が聞こえる気がした。
……はぁっ……あっ!……あっ……
夢中でよがってる声だ。いっきに快感が膨れ上がっていく。ひときわ大きな声がでる。
「なんかくるの……ルーデウス」
「エリス、大丈夫だよ」
「ダメなの……あああ」
ここ?といいながら、ルーデウスは臍の下を二本の指で軽くおさえる。
快感を無理やり漏らされて、情けない喘ぎ声が出た。
我慢できない。自分がこんな風になるところを想像したことがなかった。
ルーデウスにしがみついて、よがっている自分。
こんな自分は誰にも見られたくなくて……
「だめ……ダメ……だめぇ……」
「こみあげて、流されそうな感じ?」
返事ができない。
「いくの?」
ルーデウスが耳もとでそうささやいた。
「……っ!……っ!……いく?」
「そう、いく」
いく、が分からない。
「ダメ……ぁぁ……だめなのぉ」
正体を失っている自分。こんな自分は誰にも見られたくなくて……ルーデウスに一番見てほしい。
愛してほしい。
ルーデウスが耳元で名前をささやいてくれる。
「だめ……ダメ……だめぇ……」
ルーデウスは拒んでも腰をとめてくれない。自分の中に、しようとしてる。
だからもっとしてほしい。
やめてくれない。
ずっとしててほしい。
やめてもらえない。
もっとして。
ずっとして。
わたしにして。
もうちゃんと考えられない。
「イク……?」
口に出してみると唐突に分かった。
今から快感の奔流におそわれる。身体をおさえてもらってないと……
「ルーデウスぅ……怖いの」
口からこぼれるようにでた。
「大丈夫だよ」
肩越しに手を差し入れられて
頭を支えられて
まるで子どものよう抱かれて
そうだ、子どもなったみたい
「イクの!」
「そうだね……」
ルーデウス……
ずっとわたしを世話を焼くような目で見つめてきたこの目。
それが嫌だった時もある。
「ルーデウス!」
そんなに丁寧に腰を動かされたら。
「なに?」
「イクの!」
この目。
「気持ちいいの?」
「そう!」
わたしを見つめるこの目。
「好きだよ、エリス」
わたしのことが好きだったこの目。
わたしも。わたしも好きなの。
泣きじゃくりたい気持ちがする。
はじける。
ルーデウスの舌に、無我夢中になって応える。腰の奥から全身に向けて、快感の電撃がほとばしった。
おなかの中でルーデウスがひときわ大きく膨らんで、律動している。ルーデウスがわたしのなかで、してる……
全身に駆け巡る快楽とは別に、温かい気持ちで胸が満たされていった。
あおむけに寝転んだルーデウスにしがみついた。
「ルーデウス……」
「何?」
「死ぬかと思ったわ」
死ぬかと思うほど良かった。
「死ななくてよかった。まだ初夜だからね。」
いたずらっぽく笑うルーデウスにつられて笑った。
「気持ち良かった?」
「ええ……」
「よかった」
胸が詰まりそうだ。ルーデウスはかっこいい。
またムラっとする……もっと欲しい。
目を合わせて、じっと見つめる。
「なに?」
そう言って、わたしの視線を受け止めてくれる。
「もっと……したい……」
「もちろん」
いいよと言い、ルーデウスは身体を起こしておおいかぶさってきた。
初めての時と違って、ぐったりと動けなくなるまで何度も何度もしてもらった。
どの話が好き?
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1 エリスの初夜のやつ
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2 エリスの日常のやつ
-
3 ロキシーの初夜のやつ
-
4 シルフィ&ロキシーサンド
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5 シルフィの新婚のやつ