生理前はホルモンのバランスが変わるから、感情の起伏が激しくなるのは仕方ないという。
ルディが言うには。
でもこの家でそうなるのはボクだけ。例えば、エリスはちっとも変わらないし、ロキシーはつらそうにしてても感情の起伏はない。
怒りっぽくなるのはボクだけだ。
ルディとケンカした。と言っても、またボクが一方的に怒ってるだけだけど。
ルーシーがボクのブラシでレオの毛をすいたらしい。毛まみれになっていたのを見たとき、気持ちが止められなかった。すぐにダイニングにとんでいって、ルーシーに向かってかんかんに怒ってしまった。
「ルーシー!なんでママのブラシでレオの毛をすくの!ダメだよ一緒にしたら!!」
勢いにまかせて言ってしまった。横目にロキシーの困り顔が見えたけど、急に止まるはずもなく……
おろおろするルーシーには、内心申し訳ないと思ったものの――
「だって、ママもレオも、白いもん!!」
普段なら愛しい娘の言い訳も焼石に水。達者に言い返してくる娘のルーシーに対して、大人げない感情がこみあげた。
わずかに残っていた理性が、頭ごなしに怒鳴りつけるのは違うと警鐘を鳴らす。
「ぐ……」
心ない言葉を、すんでのところで呑み込んだ。だいたい、ヘアブラシの使いわけなんて、幼い子供に分かるはずもないのだから。
「ふふ」
そんなタイミングでルディの忍び笑い聞こえた。
キッとルディの方をにらむと、ルディは慌てた様子で表情筋をしめた。遅い。おそいよ!
ツカツカと靴をならしてルディにつめより、胸をぐいと押して廊下に連れ出す。いきちがいに部屋に入ってきたエリスが、異変を察したのか体を横にどけてボクたちを通した。
部屋から出ていく時、エリスの「どうしたのよ?」という忍び声と、平坦な調子で事情を説明するロキシーの声が聞こえた。
むくれたルーシーの顔が脳裏をよぎったが、構わずルディを廊下に連れ出す。
「なにさ!笑うことないじゃん!」
二人きりになってすぐ、ルディにつめよる。
ボクの剣幕にルディはたじろいでいた。
「ごめ…ごめん。ちょっとルーシーの受け答えが達者だったから面白……」
「分かってるよそんなの!」食い気味でルディを制した。
言葉が続かない。
ボクが怒ってるのは……!
ボクが怒ってるのは……
分からない……とにかく頭にきた。
「いいよ、もう!」
「シルフィ……」
後ろからルディに呼び止められるのを無視して二階にあがる。自室のベットにつっぷした。
ボクが怒ってるのは……ルディだけは……
――ボク、いま、かわいくない。
ルディは悪くない……分かってる……全部ボクの独りよがり。
★★★
夜ご飯の時も、どんな顔をしていいか分からなかった。ロキシーとアイシャがララとアルスの相手をしている。
しょげているルーシーは、エリスが甲斐甲斐しく面倒を見ていた。どことなくぎこちない食卓。
「おかわり」
そんな中、エリスはいつもの調子だ。
「はーい」アイシャが返事をしてエリスの器を受け取り、ボクが作ったスープをよそった。
「何よ、まだケンカしてるの?」
エリスはなんの躊躇もなく、赤い瞳をまっすぐこちらに向けてそう聞いてくる。アイシャの表情が固くなるのが目のはしに入った。
自分の口先が意に反してとがっていく。ルディの神妙な顔つきにまたイラッとした。
なんか言ってよ……
「……そうだよ」
憮然とした態度になってしまう。
「そう」
エリスはそっけなくそう返事をしてから、視線を受け取ったスープに落として、こともなげに言った。
「ちょうど良かったじゃない。今夜はシルフィの日なんだから、仲直りしなさいよ」
「な……!?」
平然とそう言った。
「また兄さんが何かしたんですか?」
帰ってきたばかりのノルンちゃんが聞く。
さっきからとっくに不穏な空気を察していたのだろう、怪訝な顔をしてロキシーに小声でうかがう。「後で教えてあげますから」とロキシーはあたふたしながらノルンちゃんを制している。
自分が食卓の雰囲気を悪くしていることにいたたまれなくなった。
ようやく気持ちが落ち着いたのは、食事を終えて子供たちをお風呂に入れる時だ。
落ち着いて初めて子供たちの態度が目に入ってきた。
ララもアルスも、自然とロキシーとエリスの方にいく。ボクの気がたっているんだから、それはそうだ。
ルーシーは……
ボクが怒ってから、ずっと足にまとわりつくようにしている。ときおり体をこすりつけて、ルーシーなりにボクの怒りをなだめようとしている。ダメだ……そろそろ気持ちを切り替えないと。
「白ママ、おふろ」
洗い物を終えて廊下に出たボクの服の裾をつかんで、ルーシーがそう言った。
――よし、切り替えよう。
「ん、おふろしよっか」
無理やり笑顔で言うと、ルーシーの表情がいっぺんに明るくなった。
子供のこの切り替えのはやさ、ものごとの引きずらなさ、気にしなさ……
子育てに対する自分の不足は、子供たちのこういう態度に何度も救われている……
「ルーシー」
「なあに」
しゃがんで目線を合わせた。ルディと同じ鳶色の瞳が、こちらを見返している。
「ママ、さっき、怒ってごめんね」
申し訳なかった。
謝るとルーシーはぎこちなく微笑んで「いいよ」と許してくれた。
ちゃんと言わなきゃいけない。
「ママ、優しく言わなきゃダメだったよ。ママのブラシと、レオのブラシは分けて使って、って」
「ママ怖かった」
「ごめんね」
抱きしめると、ルーシーの温もりが胸をあたためてくれる。
「どうしてブラシ、分けて使わなきゃダメ?」
耳もとであどけない娘の声がくすぐったい。たどたどしい口調で、しかしキッパリと疑問を口にしている。
怒らないで、きちんと説明しなきゃだめだ。
「レオはお外でゴロゴロ転げ回るでしょ」
「うん」
「砂がつくでしょ」
娘の背中をさすりながら言う。
「ママの髪の毛に、レオの砂がついたらイヤだな」
言うとルーシーの顔がパッと輝いた。
「そっかあ。ママの髪にレオがお外で遊ぶから、あのう、レオの砂がママの髪につくから、ママ嫌だったんだ」
文法がめちゃくちゃ。でもいい。
「そうなんだ」
「分かったあ」
ぎゅっと娘を抱きしめると鼻の奥がじわっといたんで、涙がにじんだ。こんなに素直で賢いのに、ボクはルーシーに怒鳴ったんだ……!
気づくと背後にリーリャさんが立っていた。
濡れた手を手拭いで拭きながら、ボクたち二人を見まもっていた。きまり悪くなってあわてて涙をふくと、柔らかい微笑みで返してくれる。
また涙が出てきた。
その後はすっかりいつも通り。二人でお風呂に入って体を洗い終えて、ルーシーと湯船に浸かる。
「ママ見てー!」
すっかり調子を取り戻したルーシーは、湯船のお湯を水鉄砲のように器用に飛ばす。
「すごいじゃんルーシー、いつの間にそんなことできるようになったの」
「あのねえ、アイシャお姉ちゃんが教えてくれたの」
ニコニコ顔で教えてくれた。
ルーシーはルディの子。水の魔術どころか全属性の初級くらいなら操れる。
けれどこの単純な水鉄砲が妙に胸を打つのだ。親の知らないところで、親の知らないことをいつの間にか覚えてくる娘。
この家に抱かれて育ってるんだ。
ニコニコと上機嫌なルーシーをみて、わだかまりを水に流すこの力を見習いたいと、素直に思った。
温まったころ、お風呂にエリスが入ってきた。アルスを抱いて、後ろからララもついてきている。
お風呂に入ってくるなりララがエリスの間をぬうように、一目散にこちらへきた。
「こおら、ララ。体を流してから湯船に入るのよ」
小言を言うエリスを意に介さず、ララは湯船の方へ歩み寄ってきた。
「白ママ、もういいの?」
上から見おろす蒼い双眸。その瞳にロキシーの知性を感じて、内心どきりとする。
「――うん、もう大丈夫になったよ」
エリスは、ララを捕まえようとするのをやめて、神妙な顔でこちらを見守っていた。
「パパとは?」
パパ――ルディとは。
「パパとはこれから」
こたえると、ララはもじもじとした。何か言おうとしているのをじっと待つ。
アルスがララの後ろから様子をうかがっている。
「白ママは、パパが好き」
ララはボクの目を見て真っ直ぐそう言った。
「――そうだよ」
「なら大丈夫」
ララはにへらと笑って、エリスの元へ戻っていった。ララはいつも何かを察している。
「そうよ」
エリスがララの捕まえながら「当たり前よ」と言った。
隣にいるルーシーと目が合う。
わけもなくはにかむルーシー。
「あがろっか」
「うん」
――こんなに可愛いのに、どうしてボクはあんなに怒っちゃうんだろう。
★★★
寝室に入ると、ルディはベットに背をもたせかけて目をつむっていた。
読みかけたままの冊子がひざの上に伏せられている。
ボクが部屋にきたのをみとめると、冊子を閉じてサイドテーブルに置いて言った。
「来ないかと思った」
少し響きが冷たい……気がする。シルフィはきまり悪さを感じながら、おずおずとルーデウスのそばに近寄った。
「ルディ」
「ん?」
こちらをうかがう仕草。その様子を見てそんなに怒ってはいないのかもしれないと考えを改めた。ベットに上がって足を崩し、ルディの隣に座る。
「お話できる?」
「いや――」
「え?」
慌ててルディの顔をみる。
「できないよ」
怒ってる様子はな……
「ぅわ!?」
部屋の景色が反転、押し倒されてベットに組み敷かれた。利き手を取られるように持ち上げられ、胸を押され、ベットに倒されたのだ。
何が起きたか分からなかった。
一気に警戒心が高まる。
ルディがボクを上から見下ろしていた。
「何!?やだ、ルディ!こんなのヤダ!ちゃんとおはな……」
ボクが話してるのに、ルディの膝がボクの足の間に忍び込んで、左右に割ってくる。
無遠慮に……容赦なく……膝がしらをまともに
みるみる自分の頭に血がのぼっていくのが分かった。
「やだったら!」
真っ赤になって拒否した、かなり語気を強める。でもルディはびくともせず、表情も変わらない。
「なんなんだよ!!」
ルディに向けてこんなに強い語調になることはない。
「シルフィ」
ようやく口を開いた。混乱した頭でルディの言葉を待つ。
「いま、おれは、シルフィと、話なんかしたくない」
「どう言う意味!?」
真剣な表情のルディ。ゆっくりと、しかしはっきりと単語を区切るようにして言った。
「言い合いなんか、どうでもいい、シルフィを、抱きたいから、大人しくしなよ」
ゾワっと背中が冷たくなった。
ルディの感情が押し付けられているという、なまなましい実感。いつもとちっとも表情が変わらないから全然分からなかった――ものすごく荒々しくて、絶対にボクに抵抗させないというルディの強い気持ちが胸の中に流れ込んできた。
「
ルディの下でもがいた。
こんなの嫌だ……
左手に魔力を集める。やりすぎかもしれない……でもこんなにルディとケンカしたことがなくて、加減なんか分からない。
あっという間に
「こんなの最低だよ!女の子にこんなことしちゃダメなんだよ!」
言いながら強烈な違和感を感じた。それは当たり前。王族の護衛術士が言っていい言葉じゃない。護衛――命の削り合いに、性別が関係していたことなどなかった。
だからルディへの特別な想い――ボクはルディの前でだけ女の子だったんだ――を、思い知らされながら必死に抵抗した。
全然ルディはひるまない。
「だから何?夫婦の形なんて、それぞれだろ?」
そういってボクを力ずくで組み敷いて、耳もとで囁いた。
――シルフィが、怒ってるかどうか、いま、おれは、どうでもいいんだ、シルフィを、抱きたいから、
全身ゾワーっと総毛立つ。甘い毒のような囁き声が、お腹に直接届いた。
「ぁ」
情けない声が漏れた。抵抗する意思がくじかれる。
「ずるいよルディ……」
涙が滲んできた。
「ボクがルディに敵わないってわかってて、そうやって言うんでしょ!」
利き手を掴んだルディの手を振り払う。ルディは平然としている。
「そうだよ?」
最後の抵抗。利き手に魔力を集めた。けどやっぱりすぐに散らされてしまった。
敵わない……悔しい。
悔しくて、けれどルディに仰向けに組み伏せられて、胸の奥にはしびれるような甘さが湧いてきている。
甘い毒を仕込まれてしまった――シルフィのこの気持ちは、きっと誰にも理解できない。
こんなルディ……見たことない……
こんなにルディの
毒の主――ルディはボクの寝巻きをなんの配慮もなしに、無機質にめくりあげた。
あらわにされた下着を無遠慮に見つめるルディ。その視線に上気する。静寂の中、鼓動が早くなっていくのを自覚した。この鼓動、ルディととっくみ合って速くなっただけじゃない……
「何?」
目をほそめて睨みつけても、ルディはちっともひるまない。
それどころか指がのびてきて――ボクをさいなんだ。
「あ……」
「怒ってても感じるんだ」
ルディの平坦な表情に、恥ずかしくなって顔に血が昇っていくのを感じる。
「んん……ん……」
悪魔のような指の動きで、下着の上からボクの弱点をまさぐってくる。
「気持ちいいんだ?」
「黙ってしてよ!」
「シルフィ……こんなにしてるんじゃん」
最初に触られた時の感触で自覚してる。ルディに組み敷かれてボクは……
はしたなく濡らしてしまった。
顔が熱い。
きまりが悪い。
悔しいし、イヤだし――
――でもだめだ……ルディに反応してしまった。指がどうしても気持ちいい。
我慢しても我慢しても、甘く湿った吐息が漏れる。ルディも鳶色の瞳で、ボクのことをじっと見つめていた。この色は……ボクをおかしくする色。
「そんなに見ないでよ……」
「なんで?」
「馬鹿にしてる……」
「そんな風に思ってるの?」
そんな風には……思っていない。でも――
「シルフィ、四つん這いになって」
「ぃやだ!」
畳みかけるようにルディがボクを支配しようしてる。
「シルフィ?」
ルディの冷たい口調に背筋がヒヤッとした。
「四つん這い」
有無を言わせない調子。
「……はい」
返事をして、のろのろと身体を起こして、全部を無防備にルディに向けて伏せた。
「両足首、自分の手で持って」
両手と両足の自由を言葉で奪われていく。
動悸で息が詰まる。
「……いやだ」
「シルフィ?」
首をのばしてルディをちらりと見た。目が合う。
分かるよね?
そういう表情。
四つん這いで、自分の足首を手で持ったら――もう何も抵抗できなくなった。
こんな時でもルディと寝るから一応、そう思って選んだ綺麗な白い下着の腰のところに手をかけられて、無造作に膝までずり下ろされた。
「やだぁ……」
「やなんだ」
ボクの拒否を意に介さない両手、その親指がお尻に添えられて左右に割った――
ヌルリ
熱く、柔らかく、なまめかしい感触がシルフィの
「ルディ、やなの!今日
「してないから?」
「してないから、いやなのお!」
後ろ側の
「あ!ダメ……あ、そこ」
情けない声が出てしまうのは、まさにルディに散々そこの良さを仕込まれたせいだ。
「今日はいやなんだ?」
ルディはそう言って、すぼめた舌をねじ込んできた。
抵抗したい衝動にかられ、足首をぎゅっと握る。
手を離してしまうのは簡単だが、ルディの冷たい声を思い出してそれが出来なかった。
熱く、滑らかな舌がねじ込まれる感触に、胸が苦しくなるほど興奮した。
「あ……ああ!」
否応なしに息が荒くなる。ボクがあきらめて、力を抜いて受けいれるようになるまで、ルディは決して譲らなかった。
……はっ……はっ……はっ……
自分の荒い息が寝室にこだまする。
背後でスラーっとベットのサイドテーブルの引き出しを開ける音がした。
カチャ……カチャリ……
ローションの入った陶器のビンの蓋をあける音。ボクにとっては
「それはいや、本当に今日はいや。するって思ってなかったから、きれいにしてないから」
「だから?」
「だからじゃないよ」
思わず身体を起こして、抵抗しようとした。
とたんにボクの身をすくませる、ルディの冷たい声が降ってきた。
「シルフィ?」
「……やなのぉ」
「両手は足首って言ったよね?」
冷たい声に、どうしようもないほど胸が苦しくなる。
容赦がなかった。
「シルフィがイヤかどうか、いまは関係ないよ?」
そう言ってから、さんざん舌でほぐしたところに指をあてる。
「おれがしたいだけ」
指をゆっくりと沈めてきた。
――指が、なかで、熱い
「あっ!……や……あっ!」
二本指で、内側の深いところを力強くゆすられた。もうダメだ、なんにも考えられない。
熱い指で奥をじんわりと圧迫される感触――
自分のありとあらゆる部分――幼い時と、今の全部――を知っている相手が裏庭に侵入して、自分の中身をじっくりとまさぐってくる感覚。
「やだあ……やだあ……やなのお……」
何重もの意味で
絶対に
誰にも
見せないところ
「本当に嫌なの?」
ルディの意地の悪い問いかけ。
甘えた声が止められない。
「嫌なの?」
答えたくないよ……
徹底的に後ろ側をいじられた時にしか出ない自分の低い喘ぎ声――
すすんで力をぬいて受け入れるように覚えさせられた身体――
いつもと違う、深くて重たい絶頂――
・・・
クポ……クポ……
クポ……クポ……
「あっ! あっ! ああ!! ルディ! シないで!」
視界が涙で滲んでいる。
「キツいの!」
奥。
ルディの太くなっているところが、狭い部分を押し通る。
「ヤダぁ、優しくしてよお」
涙と洟で顔がひどいことになっている。でもそんなのかまってられない。
全身から力を抜かないと頭がおかしくなっちゃう……身体中が灼熱に包まれて鳥肌が立つ。
仰向けで正面からルディを受けとめていた。
深々と後ろ側を貫くたくましいモノのきつい刺激でしがみつきたくなる。
「抱っこ……抱っこして」
お願いすると、頭の後ろに手を差し込まれたので、そのまま背中に両腕を回してしがみつく。
後ろ側にいるルディがきつく膨らんだ。
「あぁ……」
奥深くを押しのけるように圧迫してくる。快感が急激にこみあげてきた。
全身が硬直する。
それとも弛緩してるかもしれない。
分からない。
おかしくなる。
「ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!」
ルディが耳元でささやいた。
「イクんだ?嫌がってたの、ウソだったの?」
「ちがうもん!」
呑みこまれる――!
「――っ!――っ!――っ!」
激しい絶頂で声が出なかった。苦しくて、視界が涙で歪む。
「もう許して!ルディごめんなさい!」
「ダメだよ、許さない」
普通じゃない方に挿れられて、最奥を太いものでこづくルディの表情に容赦がない。
その顔をみて、自分の鼓動がおでこまで響くのを感じる。
「ダメ!いましたら、やだあ!!!」
めいいっぱい、思いっきり、力の限り拒絶した。
それ以上の力で、押さえつけられる。
ああ……かなわない……
胸の奥に、ドロリと甘い快感がわく。
叫ぶように……うわごとのように……口のはしから次々と漏れる拒否を、ルディは全部無視してボクを追い詰めて――
お腹の奥、入っちゃいけないところにルディが繰り返し出入りしてくる不協和音が、抗いがたい快感になってる。
「イクっ!ルディまたイク!イっちゃう!!」
後ろ側のルディを不随意にぎゅううっと噛みしめて、ベットの奥まで堕ちていく。
みじめで、熱くて、つらくて、どろどろのきもちよさ。絶対に誰にも見せられない緩んだ顔。あさましくルディの剛直を受けとめて悦ぶ自分の嬌声。
ふしだらで、灼熱の快感。お尻でされてる時にしか感じない被支配の感覚。
全部ルディに教えられた。こんなの知らなかった。
力を抜いて。
おぼれるように。
「ああ、いい、もっと」
口をついて出ていた。
肌に肌が触れる感触。
体温。
首筋のにおい。
大きな手、指先。
柔らかい髪の毛、厚い身体、荒い呼吸。
端正な顔だち。
「もっとして、ルディ」
「言われなくてもするよ」
「あっ!」
首筋の一番柔らかいところに歯を立てられて、全身が硬直した。
この人に……!
この人に全部……!
「ルディ」
「なに」
「チュウして」
柔らかな口づけ。
なめらかで温かい舌。
今日、ルディがこんなにボクを追い詰めるのは――
「ボクがルディにあんな風に接したからなの?」
「そうだよ」
「怒ったの?」
由来の分からない涙があふれてくる。
悔しくて、嬉しくて、惨めで、誇らしい。
「違う」
「わかんないよ」
足を開いて、腰を押しつける。より深く呑みこみながら両手でしがみついた。
「分かるだろ?」
中でまた一段と太くなった。
おなかに絶頂の波がこみあげてきた。
「シルフィ、イクんだろ」
ルディの息遣いが部屋に満ちている。お腹の中をかき混ぜられて、品のない気持ちに落っこちていく。
「イク……イク……ルディ、なか、深いの、もっとぐちゃぐちゃして」
中でルディの、太いところ、奥深くですごい……
「ル……そこ……ルディ……すごい」
喘ぎ声が太くなる。
自分が自分じゃなくなる。
「そこ……すご……もっと」
ルディの硬い灼熱がボクをダメにする。
「シルフィ変態だね」
「ルディにされたんだもん!!」
大きい波が押し寄せてきている。
耳にくちびるを添えられて、そっとささやかれた。
――俺のものなんでしょ?
「はい」
脊髄反射の返事。ボクは……あんなに怒っていたのに……もう、もう……!
無意識に足がピンと伸びて、一番奥に受け入れようとする。
息が出来ないほど大きな絶頂の波だった。
ルディも大きく息を吐きながら、中で力強く脈打つ。
繰り返し、繰り返し、くりかえし、くりかえし、くりかえし、くりかえし最奥で、力強く太く……硬く……
熱いものが、中に……そんなに奥でしたら、明日の昼まで漏れてきちゃうのに……
でも今、そんなことどうでもいい。
「あ! すごい……」
ああ……ルディの命がボクの奥に入ってくる……とけちゃう……
荒い呼気と、喘ぎ声が耳元にかかる。
耳が冷たい。
自分の涙でぐしょ濡れになっている。泣いてるの、全然気が付かなかった。
圧倒的な満足感と、どうしようもない乾いたうずきがボクのお腹を支配してる。
「ルディ……」
「……」
呼びかけると、気配で相槌をうたれる。
「前にも欲しいよ……」
ルディのそれ、がお腹の中でビクリと脈打った。ボクがねだって興奮してるんだ。
「ダメだよ?」
今度はボクがぎゅううっとルディを噛み締めてしまう。
冷たくされて、どうしようもなく興奮してるのが、とっくにルディにバレている。
期待でうわずった甘え声をあげてしまった。
「もっといじめて、いっぱい」
結局ルディは一回も前にしてくれなかった。胸が苦しくなるくらい興奮した。聞いたこともないような自分の声をきいた。
太くて低い、うめきのような喘ぎ声――
「こんなの変だよ……」
「何と比べてんの?」
息を荒げたルディが、耳元で囁いた。
「分かんないけどだって普通じゃない……」
ルディは何か考えてから、ゆっくりと言った。
「普通なんかどうでもいい。シルフィのこと、たまにメチャクチャにしたくなる」
温かい吐息に、おもわず小さなあえぎ声が漏れた。
その後はボクの望んだ通り、うっとりするほど優しくしてくれた。
★★★
たくましいルディの腕枕に耳を押しつけて、足に足を絡めてしがみついていた。
ケンカは終わった。
言葉よりもっと深いところでルディとやりとりした。
怒りごとルディに呑みこまれ、流されてしまった。
「シルフィ」
耳元で囁き声で呼ばれ、返事をするかわりに目でうかがう。
鳶色の瞳と目が合った。
「なんであんなに怒ってたの?」
理由――自分でも分からなかったはずだ。なのに、ルディにあんな風にされてはっきりと分かってしまった。
言うのが恥ずかしい。
本当に恥ずかしい。
ルディがボクを抱き寄せて改めて訊いてきた。
「なんでか教えて」
「……ルディには……」
言い淀むと、ルディはいつもの優しい表情で待ってくれる。
「あの時は……ルーシーの達者な口ぶりじゃなくて……怒ってるボクに気遣いしてほしかったから」
こんなの……まるで子供だ。
「あ……なるほど」
ルディはポカンとした表情を浮かべる。
「ルーシーじゃなくて、ボクをみてよ」
ボクは娘に嫉妬したんだ。
「ただそれはボクのわがま……」
「シルフィ、ごめん。当たり前だ。気付かなかった」
ルディは、自分の発言を引っ込めようとしたボクを制して、重ねるようにして言った。
その言葉で、どうしようもないくらい浮かばれて気が晴れた。
「うん」
甘い声が出た。
「ボクのこと見て」
ルーシーの「ママ見てー!」という笑顔が浮かぶ。分かるよルーシー、ママと一緒だね。
またジワっと涙が出た。鼻の奥がいたい。
ルディにのしかかる。涙を見せるのはリーリャさんには恥ずかしい。でもルディならいい。
「ルディ好き……好き……」
額にキスをする。ルーシーのこと、もっと愛そう。ララもアルスも……ボクに見てほしいんだ。こんな気持ちなんだ。
「大好き……」
「おれもだよ」
ルディが耳元で応えてくれる。
「ボク、ルディを愛してるの」
今度は言葉じゃなくて、ルディは深い口づけで応えてくれた。
翌朝、顔を洗いに洗面所に降りて行くと、エリスがいた。
ボクの顔を見るなり、まだ何も言ってないのに微笑んで「よかったわね」そう言った。
「なんで?」
「見れば分かるわ」
そうなの?
「シルフィ」
「ん?」
「どんなに怒っても、ルーデウスは好きでいてくれるわ」
エリスの口から出たその言葉には、特別な重みがあった。
今後
-
無色転生二次創作をつづけろ!
-
オリジナルも書け!