超えるけれど、エリスが言っているのはそれと関係のないことだった。
ただ、尊いと感じた。
「え、そんな話してるの」
頭をふく手が思わず止まった。
アスラから帰ってきた日の晩。
風呂から上がって寝室に入るとエリスが先にいて、ろうそくに明かりを灯して、ベッドに腰をかけて待っていた。
真新しいろうそくの灯りが、エリスの四肢に光を投げかけている。
大抵こういう時のエリスは、薄手の悩ましい下着姿でいることが多い。が、今日はなぜかショートパンツにタンクトップというラフなスタイルだった。まあ、エリスはどんな格好でも様になるんだけど。
豪奢な赤い髪と端正な顔立ち、凛とした姿勢、そして鍛え上げられた四肢によるものだろう。
「そうよ」
俺の質問――俺がいない時の三人の会話について――に、なぜか得意げな調子で答えるエリス。夜中にダイニングででくわして、ロキシー秘蔵の酒を痛飲した話を嬉々として語っている。
――珍しいな。エリスが自分からこんなに話をするなんて。
たどたどしくてよく分からない部分もあるが、なにやら楽しかったということがエリスの表情と身振り手振りから伝わってくる。
それにしても三人で夜中に酒盛りか。
ついつい、我が家の防衛は大丈夫かしら…… などと現実的なことがよぎる。戦国武将の話にそんなのなかったっけ。
城主が留守の間に遊びまわって、油断が国を滅ぼすから罰としてなんとやらって。
まあ、我が家の妻三人が起きている状態なら、かえって防衛力は上がるからいいんだけど。酔ってたとしても、何かあればロキシーとシルフィが解毒するだろうし、そうなれば我が家は要塞もかくやという防衛力だ。
仲良きことは、良きことかな。
だからそれはいい。
それより聞き間違いじゃなければ、エリスのたどたどしい話の中に、どうも「お尻に指をいれる」という発言があった気がする。それはいったいどういうことか。
もしかして――そろそろ、本格的にあたしの処女の危険があぶないということだったり。
「ルーデウス、こっちにきて」
「ひっ」
小さな悲鳴をあげると、ベッドの上に座ったエリスが、心外だという顔をしている。
「もう、なによ。そんなに警戒しないでよ」
「そのう、エリナリーゼさんが言っていたということを――やるのかな?」
おそるおそるたずねてみる。
なるほど。ベッドの上の、見慣れない光景に目をやる。薄明りの中に浮かぶ厚手のタオル数枚、土魔術でつくったと思しき洗面器――シルフィがつくった?――それからローションの小瓶。
いや、見慣れていないわけじゃない。シルフィではなく、エリスがいるのが見慣れないのである。
んんん?
もしそうなら、いろいろと心の準備とか、その……身体の準備とか。あるじゃない。
「なあに、いつも口でしてあげるじゃない。ルーデウス、好きでしょ?」
エリスにいたずらっぽくそう言われると、ぐうの音もでない。好きか嫌いで言えば、そりゃあ好きだよ。温かいし、胸が満たされる。
でもな……
「大丈夫よ、わたしが中もきれいにしてあげるわ」
言われて一瞬どういう意味か考える。やがて意味がわかると戸惑い…… そして、俺が想像していたよりも大きいエリスの愛情に気がついた。
「なにそれ」
戸惑いながら照れ隠しでそう聞くと、エリスはニッと笑う。
「安心した? 別に、本当に大丈夫よ」
子供が出来て、エリスは変わった。
「あのね、わたしだっていつまでも生娘じゃないのよ?」
たぶん、俺は耳まで赤くなっていただろう。
「ほら、はやくそこに仰向けに寝転んで」
うながされるまま、おそるおそるベッドに横たわる。
合わせるように俺に身を寄せるエリスの少し興奮した息づかいが伝わってくる。豊かな赤い髪をかき上げて、端正な顔を寄せてきた。
「ふふ、もう…… 大丈夫だったら。ちゃんと気持ちよくしてあげるわ」
耳元でそう囁いて、エリスはそのまま柔らかい唇を、ぎゅうっと俺の耳におしあててから、すらりと着ているものをとっていく。
黒いセットアップを身につけた見事な四肢が、ろうそくの灯りに浮かび上がった……
・・・
ロキシーの話を思い出しながらルーデウスのバスローブを脱がせて、肌に口づけをする。
久々の肌のぬくもりを堪能しながら、ロキシーの話を思い出していた。エリナリーゼの口伝とやらは
指を第二関節くらいまで入れておへその方に曲げると、男性が快感を覚える部分があること(そしてそれには個人差があること)。
慣れない感覚に戸惑うはずだから、優しく声をかけて安心させてあげること。
もし硬くなっていなくても、感じているものだから、気にしなくていいこと。
男性の肝心な部分に触れても触れなくてもいいけれど、少なくとも
男性は後ろ側を愛した後だと、一度達しただけでは満足できない人がいること(ロキシーは「何回するかは、ルディの様子をみて決めればいいと思います」と言っていた)。
男性のよがる姿に戸惑わず、愛してあげること……
何より、自分がしてもらって良かったことを相手にもすればいい、というのが分かりやすくて気に入っている。
ルーデウスの開いた足が疲れてしまわないよう、自分の腰でおさえて支える。彼の見慣れない体勢と不安げな表情を目の当たりにして、エリスは頭がくらくらするほど興奮した。
「緊張しちゃだめよ、力抜いて」
「うん……」
神妙な顔でこちらを見るルーデウスに声をかける。
言われていた通り、下にタオルを敷いて潤滑剤をたっぷりと使ってゆっくり……
「痛くない?」
「痛くはない」
ゆっくりと指を沈めて(内心おそるおそる)圧迫した。
「ゆ……っくり……頼む……あ、う」
なまめかしい声。
「これ…… ルーデウスがいつもわたしにしてるの。気持ちいい?」
圧迫するように指を曲げて固定しながら聞くと、彼がコクコクと首を縦にふる。
「そう……」
言いながら胸に、舌と指をはわせる。
「わたし……いつも……これ、すごく気持ちいいの。ルーデウスは?」
鳶色の瞳と目が合う。
「これ、気持ちいい?」
目線だけ彼の顔の方にあげて訊くと再びこくりとうなずく。
自分の髪の毛が垂れて、彼の胸や腹にかかってしまう。――頭の後ろでまとめておけばよかったかもしれない。
けれどそんなことは気にしていなさそうだ。目をぎゅっとつぶってと短く喘いでいる。
(あんまり喋る余裕がないのね)
「ルーデウス…… 」
ゆっくりと動かしてみると、聞いた通りだった。眉根を寄せて、低い声で喘いでいる。
はっきり言って、エリスは胸が張り裂けそうなほど興奮した。
ふと『言葉責め』を思い出す。……なにを言えばいいだろうか。
ロキシーからたくさん聞いた。いくつかは忘れたが、きちんと覚えているのもある。それらを頭の中で並べ立ててみる。
なんて言おうか… 『いやらしいのね』それとも『硬くなっちゃったのね』か。考えているうちに…… エリスは機会を逸してしまった。
全部しっくりこない。
どれもちっともエリスの気持ちに当てはまらない。ルーデウスを「責める」なんて、なにか違うとエリスは思った。
「エリス……」
逡巡していると、ルーデウスがこちらを向いた。
「気持ちいいよ……すごい」
ドクン。
ルーデウスの切ない表情を見てしまうと、興奮のかたまりが喉をせりあがって息がつまりそうになる。
しっくりこないことは、今はもう捨てよう。技巧はどうでもいい。指の動きだって、何を言うのかだって、自分の愛情がこもっていればなんでもいいはずだ。
エリスは自分の中にある、本当のことを言うと決めた。
「ルーデウス、気持ちいいのね。いつもルーデウスがわたしにしてくれるのよ? いつも優しくしてくれてありがとう」
できるだけ、耳元でそっとささやく。これもルーデウスにされて嬉しいこと。
「いつも守ってくれてありがとね」
彼の情けない声が漏れ出た。『よがる姿に戸惑わずに、愛することです……』ロキシーのそんな言葉を思い出す。
戸惑うなんて、とんでもない。
「きもちいいの?」
指を、ゆっくりと。自分がされてきたように。
「エリス…… す……ごい」
初めてみる顔。うっとりとしたルーデウスの様子をみて、エリスは興奮のあまり何を言えばいいか分からなくなり、本当にめまいがした。
不意に古い記憶がよみがえる。
ミリス神聖国の宿の一室。
ルイジェルドが去ったあとの、ルーデウスと二人きりの部屋。ちょうど今と同じ、ろうそくのうす暗い明かりの中の記憶。
確か十三歳か十四歳の頃だ。
ルーデウスが
エリスはルイジェルドに焚きつけられて、彼をなぐさめようとしていた。初めて意図的に抱きしめた時のルーデウスのぬくもりを思い出す。
あの感触。
あの時の気持ち。
そうだ。
「ルーデウス……」
指を止めて呼ぶ。彼が余裕なくうかがうようにこちらを向く。
「わたし―― ルーデウスより、二つも年上なの」
この意味が、彼に伝わるだろうか。
「だから―― わたしにさせてほしいの」
エリスはこの気持ちをどういえばいいか分からない。
「よくしてあげるわ」
ミリスの時はこんな風に接することが出来なかった。あの時はまだ幼かった。愛情は芽生えていたが、それより張り合う気持ちが強かった。
今は違う。
ルーデウスが無言で手を差し伸べてきた。目と目が合う。エリスが無言で上半身を寄せると、両手でエリスに抱きついてきた。
言葉にならないような大切なこと。
あの時から芽生えていた愛情を、初めてきちんと伝えられたかもしれない。
「ルーデウス、好きよ。愛してるの、すごく」
ここは、なんの変哲もない寝室のベッドの上だ。でもいま、ものすごく特別なことが起きている。
しがみつかれる温もり。
「エリス……俺も」
ここまではシルフィと、ロキシーに支えられてきた。あの二人のおかげ。
でも、ここからはわたしの領域。
エリスはそう思う。
あとはもう、夢中でやった。
――ルーデウス、これ、気持ちいい?
――気持ちいいのね
――好きよ、大好き
――すごい、こんなに出ちゃったの?
――愛してるわ
――もっとしてあげる
――ずっとしてあげる
寝室にはしめった音と、愛しい人のよがり声。
それから、自分の睦言。
シルフィの「エリスはできるよ」と言った時の
そうね。
そうみたい。シルフィは、わたしよりもわたしのことが分かっているのかもしれない。
「わたし、ずっとこんな風にしたかったわ」
まるで、まだ小さかった時のルーデウスに再会したかのようで胸がときめいた。
「エリス、知ってた……」
「なあに?」
「エリスが俺のこと、大切に思ってるってこと」
「そうよ?」
不意に鼻の奥が、ジワリと痛んだ。
「そうなの……」
たっぷりと、時間をかけた。ロキシーに教わった通りにやった。真新しかったろうそくが、もう半分以上なくなっている。
ルーデウスは目をつむって、エリスに身を委ねている。
「ね。こっち、してみる?」
反対側の手で彼のものに触れてみる。ぬるりとした感触で、どれだけ自分の愛情が伝わったのかよく分かる。
胸が満たされた。
「うん……うん」
こくりこくりと、ルーデウスは首を縦にふった。
「じゃあ、するわね?」
体勢を入れ替えて、柔らかいものを口に含んで、ゆっくりとしぼりあげた。
「ああ、エリス……す……ごい」
舌をあてがって深く呑みこむと、あっという間に膨れあがって喉の奥が圧迫された。中の指がきつくしめつけられる。いつもよりも激しく波打とうとする腰を手で押さえつけながら、甘く吸いあげた。
こうして彼に喜んでもらえるのは、シルフィとロキシーのおかげだ。
「あ!!……ぐ……う……エリス!!」
彼の命が口の中にあふれ出てきた。
温かいものが、次々と口の中に放たれている。
つぎつぎと……
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
「エリス、すっ……ごい」
「そう?」
多量を飲み下して返事をする。
「ほんとに…… すごかった」
言ってから深く息を吸い、大きくため息している。
ルーデウスもすごかった。すごい締め付けで、生命の力を感じた……
ロキシーの言った『男性は後ろ側を愛した後だと、一度達しただけでは満足できない人もいます』が、ずっと頭に引っかかっている。中で指をうごかしながら訊いてみた。
「もう満足なの?」
「う」
短いあえぎ、しばしの沈黙。
「なんか――まだ――うずくよ、熱いんだ」
ロキシーの情報の正確性に舌をまく。
「そう…… じゃあ今度は中にしてみる?」
お腹に手を当てていうと、鳶色の瞳に光が宿った。
指でマッサージすると、息を荒げて感じてくれる。こんなに嬉しくて、興奮することない。
下着をとると、自分でもみたことないくらい濡れていた。
ゴロリと仰向けに寝転がると、荒い息づかいと共に彼が遠慮なく上からのしかかってきた。
「あ!!……ルー……あ!」
「すご……」
ルーデウスは余裕がなく、性急だった。耳もとでエリスを繰り返し呼んだ後、ガクガクと痙攣してから、声を上げて中で果ててしまった。
大袈裟だと思うほどよがっていた。
自分の上に倒れ込んできた彼の後頭部を、出来る限り思いをこめて撫でた。
「きもちよかった?」
聞くと、こくこくとうなずく。まだ中でビクリと痙攣している。
「ん……ルーデウス……可愛い」
「エリス、好きだ」
「わたしもよ。ねえ――」
耳元に口を寄せて囁く。
「今度はこの姿勢で後ろを、シルフィとロキシーにさせてあげて。すっごくしたがってたわよ」
返事はなかった。
ただ、中でぎゅっと膨らんだのが分かった。そのままルーデウスはエリスの上で気を失うように動かなくなり、静かに寝息を立てた。
・・・
「うわ、ごめん。寝てた。どれくらい寝てた」
やってしまった。エリスは確かに逞しい。けれど抱き合うと俺よりも小さくて華奢なのだ。
のしかかって、重たかったかもしれない。
「全然、今の今よ。ねえ、気を失うほどよかった?」
ろうそくの長さをみてほっとする。ほとんど変わっていない。
本当だ。まだ、俺の半身はエリスの中でくつろいでいた。
よかったか?
そりゃあ、もう。
「こんなにすごいのは記憶にない」
生前も含めて。応えると、エリスはふふふと笑う。
「ちゃんと出来たかしら」
「ちゃんとなんてもんじゃなかったよ。まるでエリスが女神に見えた」
「何よそれ。大袈裟ね」
赤い髪の女神。大袈裟だったかな。でも本当に、エリスの純粋な想いが、ひとかたまりになってぶつかってきた気がする。
名残惜しさを感じつつゆっくりと身体を離すと、エリスが小さく声を上げた。
ごろりと隣に横たわる。
「言ったじゃない。わたしだって、いつまでも生娘じゃないんだからね」
「二つも上だしな」
「茶化さないでよ」
「茶化してない。思い知らされたよ、ホント」
言った時のエリスの表情を思い出すと、胸が温まる。
「そう?」
「うん」
「そう、良かった」
あの凶暴なエリスの奥に潜んでいる、温かな優しさに触れることができる特権を感じるね。
「だいたいわたし、子どもだっているんだから」
そりゃあ、そうだ。
「誰の子よ」
エリスはニヤッと笑った。
「俺の子」
「そうよ」
そう言って抱きしめられた。二人でしのび笑いする。
「ねえ」
「なに」
「大好き」
エリスと、太い何かでつながった気がした。
・・・
「それで、どうでしたか」
翌日の夕方、薄暗い一階の廊下。
エリスの部屋の前で、妻三人の会議が開かれている。声を潜めたロキシーの、期待のこもった質問を受けてエリスはニヤリと笑った。
「どう、も何も……」
ニヤニヤと得意げなエリスの様子を見て、これは成功だったということだろう、とシルフィは思う。
しかし、やけにためてくる。
「もー!どうだったの」
シルフィがつい焦れてせっつくように聞くと、ふふん、と得意げな顔をしてくる。
「すごかったわ」
やっぱり。
「ルディはどうでしたか。喜んでた?」
ロキシーが聞くと、エリスの端正な顔が一瞬ニタっと緩んだ。
「ものすごく可愛かったわ」
「えー、いーなー!!」
得意げなエリス。腹が立つけど可愛い。
「今度、一緒にできるように言ったわよ」
「エリス……! いい仕事です!」ロキシーは力強くこぶしを握っている。
楽しみすぎる。
エリスは得意げに言った。
「当たり前よ!」と。
正直、性癖
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がど真ん中にぶっ刺さるよもっとやれ
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がハードでついていけない、汚された
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はどうでも良い、思いの丈を感想に書く
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癖ぇぇぇぇぇぇ