「葛城艦長、重要監視対象の検体BM-03、仮称碇シンジ、私的通称『ハズ』の個室への収容を完了した。引き続き同室内で監視を継続する」
『了解、式波大尉。対象監視を厳となせ』
「対象との一次接触を試みる。映像記録を開始して」
『既に開始している。幸運を祈る。天井と頭側と足側、そして側面から撮像する』
その部屋の大きさは、広めのリビングルーム一つ分といったところだ。モスグリーンの壁面タイルには無機質ながらも落ち着きを感じることが出来る。
室内の壁面パネルで、葛城ミサトと思われる声とやりとりを重ねる眼帯の少女を見て、その少女にこの部屋まで連れてこられたシンジは確信する。やっぱり、アスカだ。かつての同居人にしてクラスメート、式波・アスカ・ラングレーだ……!生きていたんだ!
「あの……アスカ……なんだよね?」
「あんたこそ、碇シンジで間違いない……のか」
「え……そう……だけど……アスカ?僕のこと忘れたの?」
「そう……やっぱりシンジなのね」
両手に手錠を嵌められたまま、部屋の中を見回すと殺風景な部屋には小さなテーブルとダブルベッドしかなかった。
……ダブルベッド?
「この部屋、二人部屋なの?」
「船室だから、一人部屋はごく限られている。みんな二人部屋だ。我慢して」
ということは誰かと相部屋なのか。その相手が誰なのかも気になるが。
「船室……船の中なの」
「XXXヴンダー……トリプルエックス、ヴンダー。希望の船」
「希望……」
しかし、葛城ミサトがシンジを見下ろす目線は冷たく、希望というよりも絶望しか感じられなかった。
「あの、ミサトさんは……僕はエヴァにはもう乗らなくていいと言ったけど、本当にそれでいいの?」
「そうよ。あんたには今後、エヴァではなく別のものに乗ることが求められている」
「別のもの?それはどんなものなの?」
「まだ未分化で、かろうじてヒトの域に留まっているもの。十四年間、つがいを求めてきた、エヴァの呪縛に囚われてきたもの」
「やっぱりエヴァ関係なんだね。でも、よく分からないよ……そんなものに上手く乗れるのかな」
「最初はあんたが乗られる側になる。それで操縦を覚えればいい」
「僕が乗られる?」
曖昧模糊として、容易な理解を拒絶する表現に、怪訝な顔をする。何らかの比喩的表情なのだろうか?
「そう。手錠もしばらくは外せない。あんたは当面は言いなりに……命令に従ってもらう……これは規則だから」
眼帯の少女がいきなり構えた黒いものをシンジは一瞬で理解出来ない。そして次の瞬間にはその構えられたテーザーと呼ばれる銃から秒速55mで打ち出される射出体がシンジの身体に突き刺さり、その電極から高圧電流が流れる。
シンジは意識を失い、くてんと後ろのベッドに倒れ込む。
「他愛のない……所詮はガキね」
アスカはシンジを直下に見下ろせる位置まで近寄りゆっくりと屈み込む。そして、意識を失ったままのシンジの唇に、自分の唇を近付け、相手の意識もないというのに、乙女のように睫毛を震わせて目をつぶり、おもむろに、唇同士を重ねていった。
(シンジ……ンジ……むちゅ、んちゅ……)
無意識のシンジの舌をおのれの舌で掬い、一方的に蹂躙し、弄ぶ。法的には犯罪ではない。人類社会の法秩序が崩壊して久しいが、そういう意味ではなく、旧来の法秩序であっても、「ハズ」に対するこの程度の行為はおそらく合法だ。もっとも、シンジはこの十四年の間に、自分がアスカの「ハズ」になっていることなど知らない。
そして、それは少女と少年にとって初めての接吻でもあった。
『式波大尉、遊びは程々に。これはあくまで任務なのよ、シトでは行い得ないヒトとしての交わりの継続的遂行により、あなたをヒトの枠に留める為の立派な作戦です』
「作戦に乗る条件として、あたしはこいつを正式にハズにするよう求めた。それから作戦中の行動は一切、あたしに一任するとも。あたしは作戦プラン通り、ハズにキスをしただけ。その後、コイツの童貞を奪う……気絶していて、シンジが何も知らないうちに」
『彼が抵抗するリスクが少なければ、彼を起こすプランBでも構わないのよ』
「抵抗する可能性は低くない。コイツはいつだってあたしを拒む。起こして抵抗されたら厄介だ。子供のように喚かれたり、女の子のように泣かれても、困る。リスクは冒せない。抵抗出来ない間に既成事実を作り上げ、支配下に置く必要がある」
『……相変わらず生き方が不器用ね、アスカ』
葛城ミサトの声は悲しげだ。
「最初が肝心。眠り姫……いや眠れる王子様を犯すのは最初の一回だけでいい。それでコイツの心を完璧に折る。オスとしてのちっぽけなプライドを打ち砕く。シンジは書類上、二等兵として召集してある。メスであり雲の上の上官であるあたしに逆らう事は無理だとカラダに叩き込んで納得させる。文字通り、あたしの尻の下に敷いて、女……それもかつての同居人、級友……に支配される屈辱の中で理解させる。たぶん、これからシンジは女の子の事が苦手になる。女が怖くてたまらなくなる。あたしの事が大嫌いになる」
やにわに、アスカの顔が歪み、自分自身の発した言葉に泣きそうな顔になった。
でも、それだけで、あとは毎晩……定期的に交わればアスカはシトにならずに済む。リリンのままで居られる。明日からシンジに求められるのは、アスカの夜の相手を務めることだけになる。シンジがあくまで抵抗するなら、手錠は外されないだろうし、言葉や叫びを奪うために猿ぐつわを噛ませたりするだろう。そうしたところで何も支障はない。アスカに必要なのは、シンジの言葉や心ではなく、シンジの下半身と彼から注がれる体液だけなのだから。
「だが、コイツもこんなんでも、一応はあたしの
『ニアサーを起こした彼には、殺処分を求める声も強い。だからこそ、今度の作戦の需品としての非人間的な扱いには理解が得られる。そして、需品が壊れないように、あなたの夫という名目上の地位でメンタルケアを担保するのもいい。でも、アスカ……あなたは本当にそれでいいの?』
「需品と結婚すること?もともとあたしたち、式波シリーズも需品じゃないか。需品同士でお似合いだ」
『そうではなくて……もっと人間らしい二人の関係性を……』
「もう人ひとりに構っていられる状況じゃないでしょ、艦長。コイツがあたしの夜の需品になり、一生この部屋から出ることが出来なくても、ニアサーで消えた連中より遥かにマシな運命だ」
アスカは、シンジの手術服のような医療用スモックを下半身からめくっていく。白いブリーフを履いているので、それをゆっくり脱がすが、片足の途中にだけ脱ぎ残しを残しておいたままにする。ブリーフの下にある生白く、男性器なのにどこまでも可愛らしいばかりの男の子のものを、しばらく不思議そうに眺めて、皮の余った先端をやわやわとしごきはじめる。
「皮が余りまくってる。オナニーのしすぎ?……これじゃ、おちんちんとしか言いようが無いわね。幼稚園とか小学生とかそんな年代の男の子が持っているものと同じ」
それを多少大きくしただけの代物で、おそらくだが、大人の男性のものとは比較にならないとアスカには思われるのだ。
アスカにしてみれば、ずっと焦がれてきたものであり、度々夢想してきたものであり、初めて現物として見る異性の性器であったが、大したものでもない、だが、正常に機能するのであれば別にかまわない、そう思った。
「シンジのこと、ギリギリまで、無理やり犯したりしたら可哀想だと思ってた。男の子なんだから、ちゃんと起こしてあげて、どうせすぐにあたし専用の夜の需品になるにしても、最初だけは男として女の子を抱かせてあげて童貞喪失させるべきかとも……そう思って、ちょっと悩んだ。でも、こんな子どものおちんちんなら配慮は要らない。どうせこんな赤ちゃんみたいなものなら、起こしてやっても女なんかまともに抱けるものか。赤ちゃんおちんちんのシンジは寝てる間に……知らない間に、あたしに犯されて童貞喪失するのがお似合いだ。相手の女にしか最初のセックスを知られておらず、自分自身は何も知らない、みたいな惨めな初体験がお似合いだ」
そんな風にシンジと初体験をしてしまったら、もう二人の想いは決定的にすれ違ってしまう、そう理解しているのに、アスカは強がる。子供みたいなシンジのものに、スカジャンのポケットから取り出したコンドームの封を破り、シンジの硬さを取り戻すべく愛撫しながらぎこちなく被せていく。
「さてと……そろそろハズと繋がる。あたしが眠ったままのシンジを、シンジの合意なく犯す。先ほどのキスなんかとは違って、これはいくらハズ相手とはいえ、明白な強姦であり、犯罪行為だ。記録映像はしっかり撮り漏らしのないようにして欲しい。後でシンジに見せて、シンジの心を折る。二度とあたしに逆らえないようにする。シンジに、あたしに対する恐怖と憎悪と屈辱と屈服を植え付ける。そうすればシンジは萎縮し、支配され、エヴァに乗っても最早、暴走も出来なくなって、世界はまた一歩、フォースインパクトから遠ざかり、たかが女一匹に屈従するシンジを抹殺する理由は何もなくなる……あたしがシンジを世界に対して無害にする。だからシンジを殺さないで。あたしの同胞たちと同じように殺さないで。あたしはこれからちゃんとシンジをレイプして、シンジをポンコツにするんだから!あ、でも、もし希望を聞いてもらえるなら、ミサトたちには、リアルタイムでの閲覧は遠慮して欲しい。これは、あたしとシンジの初めてのセックスで、犯罪であっても、夫婦の初夜、神聖な行為だ。願わくば、あたしがシンジをレイプする時に吐息のように漏れ出てしまう思いの丈、切ない恋心のかけら、そして初恋の哀しい終わりをどうか見届けないで欲しい。あたしとシンジだけの二人の想い出に……」
『アスカ、あなたは静かに狂いつつある。実を言えば、シンジ君との歪な関係を許すのは、最後の破れかぶれよ。それであなたがまともに戻れるのかも知れないという期待がある。テレビを殴って修理するみたいな乱暴さしかない話だけど』
ミサトの声に、アスカは首を振った。もう声の主との対話に興味が持てなくなった。あたしが壊れてもいいから、シンジは殺さないで。シンジはあたしがちゃんとレイプして壊しておくから、ね、シンジを殺さないであげて。壊れちゃったら殺さなくても大丈夫でしょ?だから、シンジとあたしを殺さないで。壊れてしまう二人をちゃんと仲良しのお婿さんとお嫁さんとして優しく保護して。
「シンジ……あんたのお嫁さんになったげる。あんたの意思無視してゴメン。寝てる間にレイプしてゴメンね。シンジのかわいいおちんちん見せて貰ったよ。幻滅したけど、嬉しかった。子供のままだけど、それでいいんだ。勝手だけど、シンジの童貞を貰うね。代わりにあたしの処女もあげるけど、起きたら、たぶん、覚えてないよね。……あたし、あんたのこと……守ってやりたかった……でも、もうあんたを守れる場所が他にないんだ。あたしなんかあんたは嫌いだろうし、こんな事をしたの知ったら、更に大嫌いになるだろうけど、あんたをあたしのハズにしてあげる。これから毎晩しようね……あたしはシンジを強姦するような最低の人間だけど、シンジはちゃんとあたしを愛してね。シンジが毎晩してくれるのなら、あたしはまだまだ人間のままで居られるんだから」
アスカは気絶して中途半端にベッド際でくずおれているシンジを、丁寧にダブルベッドの上に横たえる。ピンク色のコンドームを付けたおちんちんに軽くキスをする。スカジャンを放り投げ、キャスケット帽を脱ぎ捨て、プラグスーツのクロッチになぜかあるジッパーを引き下げて、シンジの上に跨がっていく。
シンジのものが、アスカの入り口に白魚のような指で導かれる。
疼痛がアスカを襲う。なぜ、女だけが初体験の時に痛みを伴わなくてはいけないのか分からない。みんな、あたしのように男をレイプするから罰でも当たったのかしら? だとしたら、世界は狂ってる。ニアサーが起こるのも、まんざらシンジだけのせいじゃないってことになる。
◆
目を覚ましたシンジはアスカと一緒に壁面スクリーンの映像をみていた。アスカは全裸で同じく全裸のシンジにしなだれかかり、シンジは呆然としている。精液まみれで、腹のあたりがヌルヌルカピカピする。
「……分かったかしら。あんたが暢気にオネンネしてる間に、あたしたち、そういう仲になったってわけ。嬉しいでしょ。あんたはもう、あたしのハズなの」
「……どうして、こんなこと」
「あたしの夜のメンテナンス用に、あんたが選ばれたのよね。というかあたしがあんたにって決めたんだけど。だから相部屋というか、ここ、あんたとあたしの部屋なの。夫婦の寝室なの」
画面の中では、昏睡したままのシンジの性器が上にまたがったアスカの性器に呑み込まれようとしている。この場面を見るのはこれで三回目だ。ループでエンドレスで流してやがる。アスカは嬉しそうだ。シンジは惨めだ。アスカが横のシンジを肘でつつく。ほら、また……三回目の童貞喪失だよ、シンジおめでとう、と。レイプじゃないか。犯罪じゃないか。何がめでたいんだ?この女、頭がおかしいんじゃないか。
「……アスカは僕が寝ている間に、あんなことして恥ずかしくないの?僕にひどいことしたとは思わないの?」
怒りがうまく言葉の調子に伝わらず、涙混じりの声を出してしまって男として情けない。アスカが、優しい目をして、僕の頭を撫でてくる。よくがんばったね、と。触るなよ、気持ち悪いから触れないでよ。でも、頭を撫でられるのは気持ちいい。甘えたい。僕をレイプしてきたアスカに甘えてしまいたい。気絶してたから、まだ感覚を味わっていないけど、レイプされても気持ち悪くて、同時に、気持ちいいんだろうな。みんな頭がおかしいんじゃないか?僕もアスカも。
「じゃ起きてたら、応じてくれてたわけ?あたしにキスして、抱きしめて、女として抱いてくれたわけ?」
「え…………」
「あんたなんて、あたしが何を言ったって、受け入れてはくれない。男をあんたに求めたら、友人を紹介します、みたいな感じよね。ああ、アスカ、男に餓えてるんだね、じゃあコイツを用意するから寝て来なよ、○○は凄くいいやつなんだ、○○によろしくね!みたいな。そういうの虚しいのよ。バカバカしくて殺したくなる!あたしも狂ってるけど、あんたも頭おかしいのよ!」
「で、でも、だからって。こんなの。僕……アスカの玩具じゃないか!……僕だって、男だけど、最初のエッチには思い入れもあった。それなのに、相手も時期も同意も、何もないじゃないか。アスカが僕を乱暴して終わりじゃないか。なんなんだよ、これ……」
画面の中ではシンジがまたアスカにレイプされている。シンジの腹上にアスカの大きな尻が打ち付けられる。パンパンと乾いた音は、まるで拳銃の発射音のようだ。しかしまだ発射は早いぜ、シンジ。アスカは画面に向かって、拳銃を撃つ真似をしてみせる。狂ってる。アスカの静かな狂気にシンジは嫉妬する。だって、こんなの先に壊れた方の勝ちじゃないか。ずるいよ、アスカ。勝手に先に行かないでよ。
「でも、あんたはこれを受け入れるしかない。明日からのあんたの仕事はもっぱらあたしと寝ることなんだから。もうそれだけなんだから。エヴァンゲリオンとかはもうおしまい。あんたにはもうおちんちんしか価値がない。いや、元々そんな価値しかなかったのよ。出会ったときから、下半身にしか意味がなかったのよ。あたしもあんたの下半身にしか興味がなかった。だから、顔とかどうでもよかった。冴えない顔でもいいのは、下半身にしか興味ないからだよ。セックスにしか興味ないんだ。あたしのハズとして─つまりは夫として、毎晩あたしのセックスの相手をしてもらう。あたしはそれで翌日も戦うことが出来る」
そして、ヒトとして生きていける。
「また、明日も気絶させられて僕はやられるの?アスカって凄い女の子だったんだね。そんなに進んでるなんて。想像もしなかったよ。本当にセックスしか興味ないんだね。僕のことなんかどうでもいいんだね」
その声の冷たさは、憎しみは、アスカがこれまで聞いたことのないものだ。シンジは初めて、あたしを軽蔑している。性犯罪者の異常者だと思っている。でも、あんたがあたしの恋心に気付いて、ちゃんと受け止めていたのなら、こんな事にはなってなかった。あたしの処女喪失もあんたの童貞喪失も、こんなに狂ったものにはならなかった。
もっとも、アスカは、シンジには処女喪失の話はしない。シンジにそんな大切なものをあげたなんて絶対に教えてやるものか。
「気絶はもうさせない」
アスカはきっぱりと断言する。
「あんたとあたしの時間がずれることは、これから金輪際ない。あのレイプと童貞喪失が、あたしだけが知っていて、あんたが知らない時間の最後だ」
だから、あんたはもう、何一つ心配することはない。もうあたしたちの時間はずれることがない。