リーファは 一人 エギルの店の喧噪の中を、誰にも気付かれずに抜け出していた。
自分が致命的に間違った選択をしている予感すらある。
誰にも相談せずに抜け出した事、義兄であるキリトに相談しなかった事。
しかし。
(あの人は私のリアルネームを知っていた…現実世界から来て 私の事を知っているという事は私の知り合い…? 違う、そう言うんじゃなくて…)
名前を耳元で囁くと同時に。
現実世界に帰ったとき、黒の剣士キリトに迷惑をかけたくないのならば、指定する宿に来ること。但し、その決断は個人に委ねる。誰かに相談するもしないも自由。
キリトを名指しした上で、このデスゲームをクリアした後の事について と言う名目が刺さる。
目を背けていた事とでもいうべきか。
キリトにはついぞ言えていない事がある。
自分のこの行いは、母にも父にも秘したもの。
兄の傍に居たい。その一心で行った行い。
デスゲームであるという事実をその目で、その現実で知っていながら。
自らの意志で、デスゲームであるSAOにきてしまった。
これが、現実世界においてどう言う意味を持つのか。
リーファという少女は、桐ヶ谷直葉という少女は。
異なる視点を持った現実世界よりの来訪者の口から知らされる事になる。
そして、選択を迫られる事になる。自己の内に。
リーファの眼には、指定された宿屋。
言われたとおりの部屋番号を指示すると 部屋がアンロックされる。
開け放つ扉の先には ポータルポイント。
転移石 とも呼ばれるそれは 触れれば、指定された場所へ自動的に移動させるというもの。
76層の宿の一室にこれを仕込むという暴挙。
いや。それが可能なのが、あのクィネラを名乗った人なのだろうとリーファは納得せざるを得なかった。
ここに触れれば自分がどこに誘われるのか。
意を決する。
そして、彼女は 76層の宿屋から転移した。
~77層 主街区 トリベリア 浮遊島の隠れ宿~
寝室に一人の少年が横たわる。
彼にしてもここ数日の出来事は濃密であった。
整理すべき事、したい事は山ほどあって。
その手に抱いた、抱いてしまった少女の事。
SAOの登場人物だとまで認識していなかった数年来の知己である少女の事。
これ以後の辿る過程は、名前が一致するぐらいで人物相関図は欠片も当てになりはしないだろう。
ふと、あの広場で見かけた少女の姿が頭に過ぎる。
ALOアバターの特徴をそのままに此方に来たのであろう少女。
少年は頭の隅に閉じ込めた原作知識を引きずり出す。
そう。彼女の名は【リーファ】。現実名:桐ヶ谷直葉。
本来、SAOには居ないはずの原典であればフェアリィ・ダンス編のヒロイン。
黒の剣士キリト=桐ヶ谷和人 の義妹。
VRMMO自体にはそこまで興味は無かったが、SAOから帰ってこれない和人が何故そこまで仮想現実を体験するVRに惹かれていったのかを知るため自身も後発VR機器のアミュスフィアを使いALO:アルブヘイムオンラインをプレイする事になり、自在に空を飛ぶその世界観に魅了されていく。
情報を引き下ろす都度に頭痛がする。
ペインアブソーバーを越えて痛みを感じさせるのは、これが正しく禁断の知識だからだろう。
摺り合せる。その状況までが同じだとしたら。
何故、彼女はここに居る。何故、ここに来た。
手段、方法、現実世界に置ける実体の安全性の確保は?
切り捨てても良い事柄ではある。
だが、連想する思考はついぞ回答を得る。
彼女の現実はもっとも最悪を辿って完全な家庭崩壊コースを迎える。
軽く見積もっても 和人と直葉の間は他ならぬ両親の手で兄妹としての縁も切られる事になるだろう。
単純な話しだ。
SAOを初期から巻き込まれる形で挑む事になった者達。
彼等は ナーブギアの販売元、SAOサーバーの保守管理を行うアーガスとSAO事件対策本部の元、その現実の肉体を限りなく損なわないように多額の財貨を投じて病院や特殊な施設によってあらゆる管理をされている。
だが、後追いで。
ソードアートオンラインがデスゲームであるという事実が既に公表された段階で自己の意志を持ってログインを試みたものに対してその保障が為せるのかどうか。
答えは否だ。
それこそは自己責任の対象となり生じる費用の合財を自分で支払う事になる。
おそらくは 桐ヶ谷直葉個人ではなくその肉親、母親、父親に対して生存し、帰還した後で莫大な請求が行われる事になる。
病気や怪我などによるものでは無いため保険の類が一切効かない事と前例が全くないため、保険商品の類も使えない。
SAOに接続し目を覚まさない子供二人を病院に任せきりにした両親ともなれば世間体も最悪の一途を辿ろう。
家庭によっては離婚してその世話を押し付け合うなどという事にもなる。
金の切れ目が縁の切れ目という言葉がある。
少年はそういった形で SAOによって現実の生活が破綻していく様を見ていたのだ。
生きていく、生きている場所が現実である。と言う捉え方もある。
間違いではない。その時、自己の意志を持ってある場所が現実。
だが、その現実がもう一つの現実を破壊してしまうのならば。
ふとそこまで思いが錯綜して頭を振る。
手を差し伸べるにせよ、差し伸べないにせよ。
必要なのは事実と真実だ。
彼女が何故ここに来たのかのその回答は彼女自身にしか示せまい。
寝転がるベッドの上、転移光が見えた。
■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》
それが人形を彩り 確実な姿を結んで落ちてくる。
ベッドの上でくるりと廻転し、横に避ける。
どさんとそこに降ってくる イメージカラーは緑。流れるような金髪をポニーテールに結わえた美少女。
際立つ胸は尻もちつく形で降ってきた少女のセックスアピール。
胸の谷間が目立つソレは嫌が応無しに男の目を惹きつける。惹き付けてしまう。
「…いたたた。ベッドの上…?宿から宿って何よこれぇ…」
落ちた形がMの時で尻もちをついている事に気が付いていないのか。
Mの字開脚に近い形であるが故に見える真っ白いショーツ。
見られている。視線がそこに行っている事を察して咄嗟姿勢を入れ替えて座り直す少女。
その顔は羞恥で真っ赤た。
「あ、あの!…み、見ましたか?」
「…この条件下と状態で見てないって方が不自然だと思うけどね?」
顔の向きが少女を向いている。
降ってきたときから見ている。
落ちてきた少女が美少女。
初見でガードしていない。
どキッパリとみられた事を肯定されると二の句が継げなくなる。
彼女の交友関係の仲でここまで明け透けにラッキースケベを誤魔化さない人間はいなかった。
あたふたするでもなく落ち着いた振る舞いでそれでいて『見なかった事』にするわけでもなく。
身を起こしてベッドサイドに脚を下ろし少年はテキパキと飲料の操作をする。
湯気の立つ鎮静効果のあるお茶を用意する。
「…まぁ、どう言う経緯でここに送り込まれたのかは知らないけれど。とりあえずは歓迎するよ。それ飲んで落ち着いたら用向きを聞こうか?」
上背のある少年から見下ろされるように飲物を渡されたとき、少女の。
リーファの中に 言語化出来ない何か が生じていた。
~現在の状況~
リーファルートが開始されました。
リーファは 誰にも告げないまま 76層から姿を消しました。
リーファは 肉親に相談しないまま、SAOに飛び込んでしまったようです。
リーファには 破滅願望(弱) が根差しています。デスゲーム判明後のSAOに自分の意志だけでログインしている事から無自覚に根差しています。
リーファには 兄に対する異性としての慕情が根付きつつありました。
リーファは 初見初回の接触で白のショーツを見せつけてしまいました。
リーファは 自分より背丈の高い男に見下ろされる事で 急激に性差を意識したようです。
■現実世界のSAO接続者に対する対応の違い。
初期からの接続者には国や企業からの大幅な金銭的補助がある(9割)
デスゲーム判明後の接続者にはほぼ金銭的補助はない。
SAO接続中の肉体の維持管理費も実費の全額負担になると考えられる。
初期型ナーブギアには回収命令が出されているため、接続環境の性差や接続目的など生きて帰ったとしても厳しいカウンセリングという名の尋問を受ける事になる。
完全な巻き込まれやその用途で使用をしていないという証明が第三者から為されるまでは SAOを使った自殺志願者 か SAO内部で何者かの殺害を計画していた などの扱いを受ける事になる。