作者の冬場の低活動期が過ぎ夏場になってくそ暑い中、物書き作業が再開されます。
但し、一週間に一回程度の更新速度が基本になり後はテンション次第の模様。
そして、彼女【桐ヶ谷直葉】は二択を迫られた。
自分の現実世界の状況を第三者が見ればどれほどに自分の将来に影を差すのか。
自分だけならいざ知らず、確実に家族に迷惑をかける。
明日にでも死ぬ可能性のある兄に。義兄に会いたかったという自らの裡にあった処理しきれないまだ明確な形を得ていない思慕とも言えない感情にしたがった結果。
生存し帰還が叶ったとしても、おおよそ明るい未来にはなり得ないのだという事実。
リーファは知らずのうちのその目から涙を流していた。
自らの成した行いが誰にとってもよくない未来を引き起こすのだという現実に心が軋みをあげ始めていた。
キリトでは気がつき得なかった現実世界の視点。
そう。
リーファはすべてをあかさなかったにしても ソードアートオンライン と言うログアウト不可の一方通行のデスゲームに自らの意志で来た。
キリトは当然のことながらリーファを守り抜く覚悟を決めていた。
だが、それは現実世界に戻った後に起きるであろう、想定されるであろう状況を回避するものではない。
残酷な話しだが。 SAOの中で今や英雄に近い名声を得つつある 黒の剣士キリト は現実世界においてそれほどまでに力があるわけでもない。
立場も財力も。義理の両親の庇護下にある未成年である桐ヶ谷和人には可能ではないことの方が多い。
つまり。現段階において、現実世界の桐ヶ谷直葉に訪れるであろう破局は 蟠りを残したままでは居られず逢いたいと思った義理の兄 桐ヶ谷和人 では対処がおおよそ不可能。
冷えた現実が仮初めの肉体の少女の心を切り裂いた。
だが。
切り裂かれひび割れる心に染み渡るのは何時だって 都合の良い言葉と甘い猛毒だ。
「……まぁ、知り得てしまった以上は仕方ない。選択を迫りはしたが どちらを選ぶにしても此方で手を打てる手は打とう」
ユートは 指折り数え、ブツブツと呟き出す。
それはいわゆる掛かる金の算段だ。
何事でもないように金銭による損得勘定を始める。
それは、彼女が直面するであろう多大な金銭的問題を。
「まぁ、比較するのはよくないことではあるが。これでも、結構なお手当をもらえる身分でね。後、ついでに言うと今回の一件も成功報酬が約束されてる」
そう。金銭が問題になる部分は容易に解決できると。
それはけして 桐ヶ谷和人個人では超えられない差。
「その上で、でっち上げの事実を被せれば 君の現実世界での事情もどうにか誤魔化せるだろう。もっとも、ナーヴギアを隠し持っていた友人との関係まではフォローできないが……そうだな。こうしようか」
そう言うと対面に座っていたユートは回り込むようにリーファの背後に立ち そして。
彼女の華奢な肩に被せるように手を置く。まるで椅子に押し付けるように。逃がさないように。
「僕と君はALOの中で知り合ったフレンド。君はSAOに接続し現実世界に帰って来れない義兄のこと。つまり黒の剣士キリトに会いたい旨を相談して今回の一件を指示された。つまり、此方のプロジェクトに外部協力の形で参加する。その報酬は成功報酬。生き延びてから精算が行われる。家族にこの事を伝えなかったのは茅場晶彦に電脳を通じて盗聴などの形で情報を抜き取られる可能性が否定できなかった。その為、決行の時まで伏せることを厳命されていた。本案件に関わる
蛇が獲物に絡み付くようにその手は馴れ馴れしくリーファの両の肩に置かれる。本来であれば 犯罪抑制コード【ハラスメント行為】に該当する接触行動。
この宿屋の持つエリア属性がそういった男女間の接触を解禁している。この部屋は既にユートのヤリ部屋になっているのであった。
無論リーファもその異常に気がつかないわけがない。彼女とてSAOと比してより心身の管理にタスクが割り振られたALOの経験者。
ナーヴギアよりも安全性を高めたアミュスフィアは一定以上の心拍数の鼓動と脳波の異常な乱れを感知すると安全のために冷却切断を行う機能すらある。
もっとも、彼女は知らないがALOカーディナルはその最高管理責任者である須郷伸之の手により多岐に渡る心身に影響を及ぼしうる改造が済されてはいるわけだが。
ハラスメントアラームが鳴らないが故に口答で馴れ馴れしく置かれた手を注意するリーファ。
しかし。
「……あ、あの! ちょ、ちょっと肩の手……っ」
「当然のことだけど、命の危険が有り得る状況に行くことを促されて簡単に頷ける人間はそうはいない。つまり……ALO、ひいては現実世界の君と僕の間には 僕を主として君を従するような関係性が存在していたとする方が望ましい」
「な……何を言ってるんですか……!?」
事ここに来て、風向きがよくない方向に変わっていることをリーファは理解する。
だが、フルダイブ型VRMMOにおいて、一つ残酷なことがある。それはステータスによる能力の差。
肩を軽くやんわりと抑えられたようでいて、実際は押しのけることすら困難なストレングスの差がある。
力をかけてはいないが数値による圧迫が成立する。彼女にはそれを振りほどき引き剥がす技巧が備わってはいなかった。
「カバーストーリーだよ。要は悪いのは僕の所為ってことにするためにはそういうことにしてしまうのが手っ取り早い」
抑え込まれた肩からその手は首に纏わり付くように。背中から感じる圧力。
ぱんっと軽く、ほんの軽く背中を叩かれる。
「とまぁ、こんな感じで威しはしたけど。お兄さんと相談してくると良い。兄妹仲を引き裂きたいわけでもないし、現実的な状況の解決策が彼にあるならそれで済む」
■ 無限の歓喜 性愛の断片《インフィニティエクスタシー エロスフラグメント》
そうして、リーファは来たときと同じように宿屋のポータルから転送され、アークソフィアに戻った。
迷いの中、答えは出せない。
背後からかけられた声。それが印象に残っている。
「『君の勇気に敬服を』かぁ……」
彼、ユートはリーファの行いの結果を咎めるようではあったが、その行いのための動機はけして咎めることはなかった。
それどころか。
『正直言えば、僕は君に嫉妬している。あの日、あの手遅れになってしまうその時の前にこちらの世界に来る勇気は僕には無かったものだから。会いたい人のために自らの命を賭す。これは誰にでもできることじゃないからね。だから……君のその勇気に敬服を。君が出す答えがどうであれ 答えの先が不幸な結末にならないように最大限の力を貸すことは約束しよう』
どちらであっても力を貸すとまで言われた。結局それでは……ただの顔合わせのために引き合わされただけじゃないかと。
答えは実のところ定まってはいる。
明確な重荷になる。一ヶ月近く傍に居て感じる空気から、これまでも相当な無茶をしてきているのが透けて見えている。
言わないだろうし、言うつもりもないがおそらくはキリトはもう、SAOで正当防衛の形で何名かその手に掛けているだろうとも。
黒の剣士。この呼び名は良い。だが ビーター と呼ぶ人達もいて、そう言う人達は少なからず、キリトに対しての悪印象を語る。
曰く レッドギルド ラフィンコフィン討伐戦で複数人を斬り殺した。 曰く 閃光のアスナに手を出した血盟騎士団団員を体術スキルを使ってその胸を抉った。
曰く 一つのギルドを自己保身のために壊滅させた男。曰く 罪滅ぼしで蘇生アイテムを探してたらしいが一つしかないアイテムで誰を甦らせる気だったやら。 曰く 76層に来てからは女をとっかえひっかえしている。
事実であれ、やっかむための飛語流言であれ、キリトを嫌う人間や悪印象を持つものも明確にいる。中でもリーファに影を落とす言葉は。
直接、女性周りのことに苦言を呈すれば、斬り殺されそう
……そう。噂話や事実を重ねていくと 黒の剣士キリトは閃光のアスナに手を出すものがいれば、その者を斬殺する。そんな話しが信憑性を持ってしまうのだ。
自身の兄、桐ヶ谷和人は条件が整えば人を斬り殺せる人間である。などと聞かされては正直たまったものでは無い。リーファは幾度も反論しようとは思ったが、口々に語る人々はその目には恐怖や疑念、懸念を貼り付けていて。
SAOの中でキリトが成してきたことは万人に肯定されるものでは無いことをまじまじと実感させられたのだ。
だからこそ、誰かが傍に居なければならない。支えてあげなければならないのに。
自分では、現実世界のことが重荷になる。黙っていたとしても、もし、最悪の想定の通りになってしまえば 最後の最後、現実世界に戻ってからキリトを。和人を傷つけることになるとわかってしまったから。
鬱屈して下方向に落ちていくメンタルを頬を叩いて活を入れる。身体を動かそう。現実ではないけれど、心地好い運動の後の疲労感とかはたぶん無いのだけど。
そういえば、特別チャレンジイベントをやっていたはず。リーファの足はその会場に向かっていた。
■ 無限の瞬間 空洞の断章(インフィニティモーメント:ホロウフラグメント)
~ギルド風林火山 ギルドハウス 隠れ居酒屋 陰山雷。その一室~
キリトとアスナの間に挟まるようにアルゴ。今の位置関係がそのまま、距離感を示してるようだと当事者のキリトは思った。
近いはずなのに遠く、誰かを間に挟んで漸く届くようなそんなもどかしさ。
「ま、楽しいテンションで話せる状況でも無いしな。オレッち、一旦はずそうか?」
「いいえ。アルゴさんには一緒に居てもらいたいかな。なんだかんだで最初期からの知り合いってキリト君だけじゃなくてアルゴさんもそうだし」
「まぁ……オレッちは構わないけど、そーなると欲しいのは、証人って事かナ?」
突っ伏したような形でカランカランと氷のはいったグラスを回すアルゴと何を飲むでもなく目を閉じて何かしらを考えるかのようなアスナ。
キリトは言わねばならないこと、聞かねばならないことがあるのを理解はしていた。そして同時にここでの答えを間違えればきっと。
だが、わかってはいてもその瞬間、瞬間に最適な回答を採れるものが何人居るのだろうか。
「……そうだね。あまり引っ張っても良いことないし。変に隠したりしないで単刀直入に伝えておこうかな」
アスナの眼は透徹に。迷いを振り切ったように真っ直ぐな眼。
その目はもう届かないところに自分がいるのだと告げているかのようにキリトに錯覚させる
「ねぇ。キリト君。ハジメテの時、経験あるんですかって聞いたよね? あの時はないって答えたけど」
言葉は時として残酷なまでに心に深い一撃を齎すことがある。
私 君以外の男の人に抱かれたよ
「……え?」
~現在の状況~
リーファは一旦、解放され、特別イベントに挑戦するようです。
リーファは自己の状況を受け入れた上で決め倦ねています
アスナはキリトに対して……【ルート確定のため、事象変動は発生しません】
原作因果【初夜を迎えるその直前に誘いをかけてきたアスナに対して 男性経験の有無を直接問う】が固定因果として存在。
キリトはあの時、もし、アスナに経験があったのならば、どう答えたのか?
ゲーム版因果により、複数人のヒロインが集まる状態でありハーレム状態が形成されていた。
キリトはアスナと交際関係、システム内婚約関係があっても、平気で他のヒロインをお姫様抱っこして自室に連れ込むことができます。
アスナは以上のポイントを捉え、キリトの答えを探ろうとしています。
女性からの問いかけにおいて必要なものは その大部分において答えは確定しているため賛同や共感が求められている