セックスして欲しい。
予想外の言葉。
こんな陰キャラの自分と、どうして? 日向の頭の中に真っ先に浮かんだのはそれだった。
つまり、日向はまだ自分の希少価値を正しく理解していなかった。
だからこその硬直だった。
だが、それと同時に日向はその言葉の意味をしっかりと理解していた。
つまり、セックスができる。
目の前のアルビノ少女を組み敷いて、自身のペニスを彼女の割れ目にズブりと奥まで侵入させ、その柔らかな肉の穴にそれを出し入れし、肉ヒダの感触やその体温、水音や嬌声を心いくまで楽しむことができる。
なればこそ、日向の答えなど決まっていた。
「き、如月さん……その、うん。そ、そういうのは、も、もっとお互いのことをよく知って、もっと仲良くなってからのほうが良いと思うんだ」
決まっていたのだ。日向は『もちろん、俺で良ければ』と言いたかった。
だが、そんな勇気などなかった。なにせ日向は童貞だった。これから得られる未知の快楽よりも、ヘタクソと言われる恐怖のほうが上回ったのだ。
もしかしたら、次がある。その時にはきっと今よりは上手くなってる。エロ本やエロ動画で勉強すれば、きっと満足させられるテクが身についているはず。そんな風に日向は未来の自分に望みを託してしまったのだ。
「そう……残念だよ」
「ごめんね、如月さん」
「いいんだよ。じゃあ、そこに横になってくれるかな?」
「え?」
花音は椅子から立ち上がると、ゆっくりと一歩ずつ日向に近づく。日向はぽかんとしたまま、彼女を見つめることしか出来ない。
「横に、なろうね」
――ドサッ。
日向は胸を優しく押される。花音はそこにふわりと覆いかぶさった。ダボダボの大きな白衣もあいまって、日向はまるでクラゲか何かに飲み込まれてしまったかのような錯覚に陥った。
「あ、あの、一体なにを……」
まさか逆レイプ。
「くすっ……犯されるとでも思っているのかな?」
思考を読まれた!? 日向は目を見開き驚く。
「あは、わかりやすいね? 君はとってもわかりやすい」
「あっ!」
トランクスの膨らみ、その頂点から下へ花音の人差し指がつぅ……となぞるように降りてゆく。すると日向のペニスはぴくっと跳ね、その硬さが増した。
「あらら嬉しい。期待してるのかな?」
「そ、それはその……」
正直に行ってしまえばしている。だが、日向はそれを伝える事ができなかった。一度拒否してしまった手前、そんなことを言う
「ふふっ……ねえ、どうして私が君にズボンを渡さなかったんだと思う?」
花音は日向に洗濯済みのトランクスを渡したが、学生服のズボンと上着はまだ返していなかった。それを疑問に思うこともなかった日向であるが、言われてみれば確かにおかしかった。
「ど、どうして」
「ダメだよ日向くん。少しは自分で考えないとね」
カリカリカリカリッ!
「ああっ!」
花音の人差し指。その爪の先が、トランクスの膨らみ、その頂点を何度も引っ掻く。
「ほら、ちゃんと考えて?」
「そ、それは……あっ……こ、ここから逃さないため……とか?」
「ふぅン……? そんな恐ろしい事をするように見えるのかな、私は」
「で、でもそれしか」
「しないよ。しない。君が望むなら、今すぐ放してあげる。玄関に制服がかかっているから、それを着て、どこへなりとも行けばいいさ」
――にち、にちっ、にちちっ。
今度は人差し指の腹がトランク過ごしのペニスの先端を撫でる。わざと先走りを包皮の中で絡ませて、いやらしい音を立てながら、くる、くる、ちょんちょん、と手遊びするように。
「お、俺は……」
日向の頭が快楽に染まり、もはやスケベなことしか考えられなくなっていく。
「そ、その……どうしたらいいか、わからないよ」
「そっか。じゃあ、僕から提案があるんだけど、いいかな?」
「な、なに?」
「セックスするかしないかは一先ず置いといて」
「置いといて」
「仲良しになろう?」
「仲良し」
「そう、仲良し。私と白衣に包まれながら、あったかぽかぽかになって、二人で色々と気持ちいいことしながら、お互いのことを知るんだよ。何が好きとか、どこが気持ちいいとか、そういうこと」
「そんなの、い、いいのかな、こんな出会ったばかりで」
「出会ったばかりだからするんじゃないか。それに、お互いのことを知りたいって行ったのは、遊馬くんだよね?」
「そ、そうだけど」
「けど?」
「う、けどって付けるのクセで……」
「じゃあ、本当の気持ちは? 仲良しに、なりたくない? それとも仲良しになりたい?」
「あっあっ! な、仲良し、仲良しになりたい!」
「――っ♥」
花音はぎゅうううううううっと日向を抱きしめる。その理由は、日向があまりにもいじらしくて、可愛らしくてたまらなかったからだ。
デミサキュバス化した者にとって、男はその容姿に関係なく愛おしく思えるし、美味しいご飯でもある。しかし好みが無いわけでもない。
花音にとっての好みは童貞陰キャ男子。好きなシュチュエーションは
『本当はエッチしたいくせに尻込みして逃げてしまう童貞を適当な戯言で煙に巻きつつ追い詰めて追い詰めてエッチしたいと自分から言わせること』
である。
「あ、あ、き、如月さ」
「花音って呼んでいいよ♥ 日向くん」
耳元で吐息混じりに囁く花音。
これはたまらない。ゾクゾクとした甘い痺れが背中に走る。
同時に、日向は花音の胸が自身の胸板でふにゅうっと変形している柔らかな感触と、シャンプーやボディソープと雌臭い汗の香りが入り混じった甘い甘い、脳みそを麻痺させるような匂いにより、ドバっと多幸感が押し寄せてきた。
もはや日向のスケベゲージは最高潮だ。
「花音さん、俺!」
「きゃんっ♥」
日向の中の雄が目覚め、花音を抱きしめたまま体を返し、逆に花音に覆いかぶさる。
「くすっ……どうしたのかな? まだ、仲良しゲームは始まったばかりだけど……?」
「も、もう、十分かなって……」
「ふぅン。そっかぁ……日向くんはちょっとエッチなことするとすぐ仲良くなっちゃうのかあ」
「そ、それは」
「ふふっ、冗談さ。いいよ、きて」
「う、うん」
日當はトランクスを降ろそうと手をかける。
「あ、ま、待って」
しかしその手が止まる。
「うん? どうしたのかな?」
「いや、そ、その……ちょっと」
花音はわかっていた。わかっていて問いかけた。
もはやスケベゲージハイボルテージな日向は、もはやコップの水が満杯になり、表面張力によってその状態を保っているような状況であった。つまり、あとほんのひと押し、一滴、わずかな振動で溢れるということである。
端的に言って、挿入前に射精してしまうような危うい状況であった。
「もう、焦らさないで欲しいな。ね、はやくもっと、仲良しになろ?」
わかっていた。十分わかっていた。だからこそ、なればこそ、花音は急かす。
「ほら、手伝ってあげる……」
花音の手が、トランクスへ伸びる。日向は我慢するのに精一杯でその表情は見えなかった。
花音は今、頬を真っ赤に染め、涎を垂らしながら、目に♥を浮かべてている。
やる気なのだ。彼女は。童貞の心に傷跡を残す、あれを。
「ま、花音さ、あっ」
ドビュゥウウウウウウウウ!!!
暴発。
「~~~~~~っ♥」
同時に、花音は絶頂した。彼女の秘所からプシッと飛沫が放たれる。潮吹き絶頂だった。指一本触れず、興奮だけでイってしまったのだ。
このシュチュエーション。彼女にとって最of高。暴発は彼女の大好物だった。
「あ、あう、あうあうあう」
一方日向は絶望していた。
格好悪い。嫌われるかも。先っぽさえ入れずに。情けない。所詮は陰キャ。ゴミ。死ぬ。
頭の中に流れるネガティブな思考。もはやここからセックスに挑むなど不可能。
「ご、ごめん……俺……」
日向は一刻も早く逃げ出したい衝動に駆られ、その体を花音から話す。
「気持ち良かった? ふふっ、嬉しいな。私でそんなに興奮してくれたんだね?」
しかし花音はそんな日向を優しく捕まえて、しっかりと抱き寄せる。
「ね、逃げないで? 何度でも出して、何度でも気持ちよくなっていいよ。もし何か罪悪感を感じているなら、それは違う。だって、私は――」
花音は日向の耳元に唇を近づける。
「今ね、日向くんがイクとこ見て、一緒にイっちゃったよ♥」
日向のペニスが高度を取り戻す。
男というのは単純だ。セックスの相手が絶頂を迎えたと知るだけで、男としての自身を取り戻すことが出来るのだから。そして日向もまた例外ではなかった。日向のペニスは硬度を見る見るうちに取り戻す。
――さあ、第二ラウンドの幕開けだ。