※この作品はR-18です。

凄ノ王の仮面   作:気まぐれさん

5 / 12
第五話

 

 

午後七時頃。

剛志からLINEメッセージが届いた。

 

 

内容は必要最低限なものに感じる。だけどこうやって何時も、メッセージの最後に何気ない言葉で心配してくれている。それが嬉しいし、胸が温かくなる。そしてもっとくだけてくれても良いのにと溜め息をつく。

 

無理もないか…まだ知り合ってから2年だし、私のことも身元引受人という目で見てるだろうしなぁ…。

 

 

でも、それもあと少しの我慢。

もうすぐ彼も目覚めるはずなのだから。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

週に3回はある中山グループの会合。

各グループ会社のトップ12名が一堂に会する。

会合と言っても業績や経営方針を話し合うものではなく、とある使命の進捗と確認報告。

そしてそれが日本でも有数のトップ企業体、中山グループの存在理由の1つでもある。

表の顔は、IT、投資、建築、飲食業界等、手広く運営する巨大な企業体だ。

政財界にも影響力があり、大抵のことをしても警察、検察にも黙認されるほどだ。

 

 

 

そして裏の顔。

 

 

 

 

それは、“神産み”によって力を宿した者を守護し正しい道を示すという、にわかには信じ難い使命だ。

 

 

 

“神産み”

それは話を日本神話まで遡る。

 

その昔、イザナギ神とイザナミ神が契を交わし、アマテラス、ツクヨミ、ヒルコ、スサノオという神が産まれた。

“神産み”という言葉自体はそのことを指す。

だが時は流れ、その神の力を人の身でありながら体に宿す者達が現れ始めたことから、この言葉は転生者が産まれた時に使われる言葉となった。

 

 

 

神産みが起きた。と

 

 

 

そして古から代々その人達を保護し、導いていくという責務を私達の家系が背負い、果たしてきたのだと。

 

 

 

最初私が物心をついた時に両親からその話を聞かされた時は、

 

「ふーん」

 

という感じで特に感動や関心もなく話を聞いていたと思う。想像がつくわけもないし、半信半疑だったからだ。

小さい頃から可愛がられ、両親の怒った顔など今まで見たことがなかった。

しかしその話をする時の両親は、初めて見る真剣な目と雰囲気だったのが印象的だったのを覚えている。

 

 

グループ会社をまとめる会長の一人娘。

私はいつも自由にさせてもらっていた。自分で言うのもなんだが、ある程度勉強もできたし交友関係も私の生い立ちや立場に関係なく接してくれる友人も多かった。

 

 

楽しい日々。

 

これで素敵な彼氏が居たら人生最高だ!なんて思ってた。

 

 

 

そんな順風な日々が突然終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

高校2年生の時、不思議な夢を見た。

 

 

 

 

 

夢の中の私は蹲って泣いている。視界は涙でボヤけよく見えない。自分で涙を止めようと思っても、まるでダムが決壊したかのように止めることができない。何故かは分からないけど体全体を言いようのない悲しみと絶望感が包んでいる。死が迫ってくるような。

 

 

 

 

そんな風に蹲る私に、誰かが二人後ろに立ち、泣きながら両肩に手を添えている。

とても暖かい手だ。涙は止まらないがとても安心する。

パパとママなのかな?顔は見えないがそんな気がする。

 

 

 

 

そして暫くの間私達がそうしていると、誰かが声を掛けてきた。

 

 

 

 

 

「あなたたちは誰だ?」と。

どこかとても力強く、そして安心する男の人の声だ。

 

 

 

その声に応えるように私の肩に手を置いていた人達が手を離し、

 

「私はアシナヅチと申します。」

「私はテナヅチと申します。」

 

 

そう答えた。

 

 

 

パパとママじゃなかったんだ…。そんなことを思ってちょっとガッカリした。

 

 

 

「そこに居るのが娘のクシナダヒメと申します。」

そして続けて二人が答えた。

 

 

多分私のことを言っている。

何故だかそう感じた。夢の中で、どうやら私はクシナダヒメというらしい。

 

 

 

 

 

 

「どうして泣いている?」

続けて彼が優しく問いかける。

 

 

 

それから聞かされた話はあまりに不幸な話だった。

 

ヤマタノオロチに食い殺された七人の姉の話と、近々私も同じ目に遭うという絶望的な話。この体を包む感情の原因が解った気がした。なんて辛い話なんだろう。悪夢としか言いようがない。

 

 

 

 

 

その話を聞いたあと、男の人が言った。

 

 

 

 

「あなたたちの娘、クシナダヒメをわしにくれるならヤマタノオロチを退治してやろう。お前たちは今からわしの言う通りにするのだ。そうすれば、化け物は必ず退治できる」と。

 

 

 

 

え?

 

 

かっこいい。

 

 

とか、

 

 

私この人に貰われちゃうの?

 

 

とか、

 

 

彼氏通り越して旦那様?

 

 

とか、なんか訳のわからないことを考えてしまった。こんな状況だし、夢の中の私は私じゃないのに頭の中では「キャーキャー」言って喜んでいる。

そして嬉しさと共に胸の中にスッ…と暖かい光が差し込み、不思議と涙は止まっていた。

 

 

 

少しの沈黙の後、二人が、

 

 

 

「それで娘が助かるのなら」

と、答えた。

そして

「あなたの名前をお聞かせください」

と続けた。

 

 

 

 

その男の人は自信に満ちた声で、

「わしの名はスサノオノミコトだ。」

と答えた。

 

 

 

スサノオノミコトという人の希望に満ちた力強い声と、夢の中の私をもらうと言ってきたその人の顔がどうしても見たくなり、私は涙を拭いて立ち上がり、振り返る。

 

 

 

 

そして顔が見えるというあと少しのところで眩しい光に包まれて、夢から覚めてしまうのだった。

 

 

 

始まりはとても悲しいけど、終わりは幸せな夢。

 

 

 

この夢を見たあと、朝起きて頬を擦ると涙の跡がある。

だけど涙と共に不安が優しく洗い流されたようなスッキリとした感覚と少しの高揚感。

その後、私はこの夢を毎日見ることになったが嫌ではなかった。むしろ、運命の人と夢の中で出会えるという不思議な喜びがあったからだ。

 

 

 

しかし、不満もある。

 

 

同じ夢を見続ける内にいつしか

『スサノオノミコトの顔が見てみたい!』

そう強く思うようになった。

いつも顔が見えそうになるところで目が覚める。どんな顔をしてどんな姿をしているのか、背は高いのか。とか色々知りたいことはあった。

 

学校の授業も上の空で勉強にも手が付かない。経験はないけど、まるで恋に夢中になっている少女そのものだった。どうやったら夢の続きが見れるのかなーとぼんやりと教室の窓から外を眺めていた時、夢の話は両親にも話はしてなかったが、そういえば物心ついた時に聞いていたあの話に、スサノオノミコトの名前が出てきたことを不意に思い出した。

 

 

そうだ!

パパとママなら何か解るかもしれない!

 

 

 

あの夢を見始めるまでは、いつも先生に「早く帰れよー」なんて言われるまで教室に残り、のんびり友達とおしゃべりしてたんたけど、今はそれどころじゃない。

最近付き合いが悪くなった!とか彼氏できた?とか冗談交じりに冷やかしてくる友達を尻目に家路を急いだ。

 

 

 

その日の夜。

 

 

夕食の時間になる頃、いつも帰りの遅いパパが珍しく早く帰ってきた。

久しぶりの家族揃っての食事。学校のこととか、色んな話をしたけど、私は早く夢の話がしたくて仕方がなかった。

 

 

パパとママもそんなソワソワ落ち着きのない様子の私を見て、なんか良いことあった?と笑顔で聞いてきた。

 

 

実はねぇ〜最近毎日不思議な夢を見るの!と興奮気味に話した。

 

 

どんな夢?と、さぞかし良い夢なんだろうなという顔で興味津々に聞いてくる。

 

 

実はね…。

 

 

と夢の内容を話した瞬間。

 

 

ゴトッ

 

 

パパが手に持っていた湯呑を落とした。

 

 

「パパ!大丈夫?!」

 

身を乗り出して顔を覗き込んだ。

 

 

さっきまで笑顔で話を聞いていたパパの表情が凍りついていた。

 

 

ママも何故か動揺し、その感情を隠すようにテーブルと床に溢れたお茶を拭いている。

 

なんかマズイことなのかな、この話。

 

 

少し不安になりながら見つめていると、

パパは天井に目を向け、

「まさかうちの家系から出るとは…。」

と掠れた声で呟いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。