※この作品はR-18です。

凄ノ王の仮面   作:気まぐれさん

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第八話

1

お風呂を上がって食事の時間。私達家族とマガミさんの4人で団欒の一時。

最初マガミさんは、私は大丈夫なのでご家族水入らずでお食事を!と頑なに拒否してたんだけど、パパやママ、特に私の強い希望もあってか申し訳無さそうに席についた。

 

今は「支給される弁当も美味しいけど、やっぱり全然違うわ!」とかブツブツ独り言を言いながら休みなく箸と口をモグモグ動かしている。

その様子を見て私は狼っていうより、わんちゃんみたい。と思わずクスッとした。

 

「随分仲良くなったのね。まるでお姉ちゃんができたみたいに楽しそうよ」

 

私達の様子を見ていたママに笑顔でそう言われれ、顔が熱くなった。隣のマガミさんも少し頬が赤い気がする。

 

そしてマガミさんは箸を置き姿勢を正した後、真剣な顔をして

「旦那様、奥様本当にすみませんでした!お嬢様に失礼のないようにと気を付けてはいたのですが…、これもお嬢様に必要なことと思い…」

 

今日の護身術指導のことを改めてお詫びし始めた。

 

「いやいや、いいんだよマガミ。僕達もこういう家系に産まれた時点で、香澄にも教えていかなければならなかったことだからね。それが早いか遅いか、それだけの話さ。感謝しているよ」

パパはそう言ってマガミさんの言葉を遮るようにお礼を言った。

 

それに、と

「明日からはうちの屋敷で働くのだから、これからも香澄のこと、よろしく頼むよ」

と付け加えた。

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

 

え、私聞いてないし。

 

 

 

嬉しいけど!と、先に言っといてよ!という思いを込めた非難と歓喜の籠もった複雑な眼差しをパパとママに向けると、

まあそういうことだから。という目で二人は私を見つめ返し、そして頷いた。

 

 

 

その日はマガミさんと一緒にベッドに寝転んで、私が疲れて眠るまでずっとお話をして過ごした。

 

 

 

2

翌朝の日曜日、どちらともなく目が覚め、お互いに笑い合っておはようと挨拶をし合った。

親以外の誰かと寝るなんて初めてで、緊張して眠れないかななんて思ったけどそんなことはなくて、むしろ良く眠れた気がする。手を繋いだままで寝ていたようで少し気恥ずかしかった。

 

 

 

そして朝食を済ませ、帰りの準備を手伝ってもらいながら私は、

「お姉ちゃん、ありがとう!」

と言った。

そうすると

「…どういたしまして、香澄ちゃん」

と照れくさそうにそう返事をした。

 

 

昨晩寝る前に、二人だけの呼び方を決めようよと私が提案した。

『明日香お姉ちゃん』だと長いからと言い訳をして、ほんとは私がそう呼びたいだけだったのだが。

 

最初は戸惑った様子だったお姉ちゃんも、なんだか妹ができたみたいで嬉しいと喜んで賛成してくれた。

勿論、二人だけの秘密だ。

 

 

 

帰りの準備も終わり、使用人たちが車に荷物を運んでくれた。

荷物を運び込み、車を離れる度に皆が口を揃えて「くれぐれもお気をつけください。まだ安心は出来ませんので」と心配そうな顔で声をかけていく。

パパは穏やかな顔で、心配ないよありがとうと応えている。そんなに帰り道が心配なのだろうか。確かに山下と二人で来たときも結構長い時間車に乗っていたけど、事故なんて滅多に起こらないから大丈夫でしょ!なんて心の中で思っていた。この時はまだ使用人の言葉の違和感に気付いていなかった。

 

 

さあ、行こうか。

そう言って私達家族は揃ってお辞儀をする使用人達に手を振りながら、屋敷に向かった。

車の中は私達家族と明日香お姉ちゃんの四人だ。

 

山道を下っている途中でふと、車が動き出す前から思っていたことがあったので聞いてみた。

「そういえば、パパが運転するの初めて見たかも。いつも山下か、他の人達が運転してたから、てっきりおね…、マガミさんが運転するのかと思ってたんだけど」

私のその一言に皆が、え?と声を上げた。

パパは運転で前を向いているが、助手席に乗るママがシート越しに振り向き、私と並んで後部座席に座っているお姉ちゃんがこっちを見た。

なんかまずいこと言った?

 

「なんだマガミ…仲良くしてたからとっくに話したと思っていたよ。香澄、マガミはまだ14才だから運転免許を持っていないんだよ」 

 

 

ええー!

まだ14才なの?!

 

 

 

 

私は大声を上げた。

9才の私が言うことではないのかもしれないけど。

こんなに大人びた14才っているんだ…。

 

 

 

 

「私って、そんなに老けて見えますか?」

 

 

 

あ、お姉ちゃんが落ち込んでる。

パパとママは堪えきれなくなったみたいで大笑い。

 

 

 

 

その後、帰りの車中でお姉ちゃんのことをたくさん聞いた。

出産前に神産みが起きたことによって、お姉ちゃんは産まれてすぐに中山グループが運営する孤児院「光の庭」というところに引き取られたらしい。

光の庭では、男女の勝手な都合で産まれ捨てられた子や、親の様々な事情で育てられなくなった子供達を引き取って育てている。

そして、それとは別に特別な力を持つ巫女の神託によって、神産みが起きた子供達を特定し保護する役目を担っているという側面がある。

 

でもいきなり知らない人たちが現れて、「あなた達の子供が神様の転生した魂を宿しています。私達で保護しますから引き渡してください」なんて言われて親達は納得できるはずがない。むしろ誘拐の類を疑われて警察を呼ばれるのがオチだ。

私はそれを疑問に思っていた。私だって急にそんな人達が来て、パパとママから離れるなんて嫌だ。

 

 

その疑問にパパが答えてくれた。

神産みという現象は、不思議なことに孤児や周りに身寄りのない子供、もしくは大人にしか起こらないという。

旅行先や普段の生活で、家族全員が巻き込まれるような事故や大災害から独り残されてしまった人も例外ではないらしい。

 

 

だからお姉ちゃんみたいなケースは稀なんだということだった。捨て子でもなく天災孤児でもなく、両親に望まれて産まれてきたのにも関わらず神産みが起きてしまった。

 

私はそのことでお姉ちゃんに聞きたいことがあった。産まれてきた自分の子をお姉ちゃんの両親はどうして光の庭に引き渡したのか、と。

…でも、とてもじゃないが聞けない。お姉ちゃんが何かとても辛いことを思い出してしまうんじゃないかと思ったから。

 

私が俯いてるとお姉ちゃんは軽く溜息をついて、そっと私の手に自分の手を重ねてきた。

「お嬢様がお考えになっているような悲しいことはありませんでしたよ。」

そして、ニコッと笑った。

「私の両親は今、二人とも光の庭で働いているんです」

 

 

何があったのかはまた機会があった時にお話します。とても素敵なお話ですからとお姉ちゃんはそう言って前を向いた。

 

良かった。なんかホッとした。

 

 

 

3

そうこうしている内に辺りを見回すと、もう屋敷の近所だ。見慣れた建物や公園が視界に飛び込んでくる。

出発してから2時間ぐらいしか経っていない。

 

 

ふと思った。

 

 

多少出発地点は違うけど、山下と学校から直接向かった距離を考えても、途中漫画を買った時間を差し引いても、行きと帰りがこんなに時間が違うのはどう考えてもおかしい。

 

「ねえ、パパ。私と山下があの屋敷に車で行ったとき、すごく時間がかかったのに、なんでこんなに帰ってくるのが早いの?」

斜め後ろから見たママの横顔は何かを察したようにハッとしたように見えた。

パパからは何か動揺している雰囲気がシート越しに伝わってくる。

「…山下はあの屋敷に来るのは初めてだったからね。ナビに頼ってるとかえって遠回りをしちゃうんだ。パパは何度もあそこに行って慣れてるから近道を知っているしね。あと、香澄のことも考えてゆっくり運転していたと思うし、何度もパパに電話をくれてたから、その度に車を停めていたはずだよね。そんなに気にすることじゃないよ?」

 

 

うーん…釈然としないなあ。

 

 

 

そうして間もなく屋敷の前に着いた。

到着したタイミングを見計らったかの様に山下と使用人二人が門を開けて出てきた。

山下が、

「おかえりなさいませ。お荷物とお車の方は私共でお運びしておきますので」

そう言って後部座席を開けると、

「ほら、マガミも早く降りて手伝いなさい」

「はい!」

私の耳元でこっそり「後でね」と囁くと、お姉ちゃんは元気よく車を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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