ひみつな道具でエロエロライフ 作:ひゃっふ~
この話で、夏が終わるまで の世界から出ます(苦笑)
そして、久しぶりにR18なシーンかけましたね〜〜なんか長かった!!
でも、明くんはヤレてませんw(°o°)w
――やり直せる?
由比の頭の中で、明の言葉が反芻される。
未来永劫続くであろう生き地獄。自身が齎した因果応報とはいえど、息をすると肺が内側から焼き尽くされそうで、目を開けようとしたら砂利をねじ込まれる様な、そんなこの世の地獄をやり直せる?
そんな事はあるわけがない。
如何に今の彼女の精神状態と言えども、そんな戯言を信じるわけがない。
でも、それでも自然と言葉に出ていた。体感時間はかなり長い様に思えたが、実際は間髪入れずに、だった。
「―――
やり直せるのなら、全ての元凶の二つの命を奪うと由比は断言したのだ。
そんな由比を見て、ノータイムで出てきた(アキラの体感で)答えを聞いて明は少しだけ驚いた顔を見せる。それでもわざとらしい顔に見えるのは、明のキャラだから、と言えるのかもしれない。
「へぇ~。でも戻って殺っちゃったとしてさ? 由比ちゃんも死ぬことなくない? あ、後あの桑原ちゃん、由比ちゃん以外にも結構な人数抱えてたっぽいよ。やー、そんな
明はおどけつつ、少しいやらしい笑みも浮かべた。
由比はその仕草を見て。
「……結局、あなたは私を抱きたかった、ってこと? 今ならつけ入る隙があるからって。………まぁ、別にそれでも良いけど」
嫌悪した顔を見せたのはほんの一瞬。
今はどこか穏やかな顔つきになり、明を見据える由比。
「私の、私たちの全て壊れたけど、―――あなたは、明くんは、全部壊してくれた。って思ったら、感謝してる面もあるから。………あたし、へんかな? こんなふうに、思う資格なんて、ない筈なのに」
明がばらさなければ、もう少しだけあの色欲に支配された、欲に塗れ、爛れた関係性は続いた事だろう。でも、明が言うように、あんな関係がばれないわけがない。どこかでは必ず終わりが来る。……何でこんな簡単な事もわからなかったのか? と問われれば、やはりバカだった、と言う結論しか出ないが。
「明くんの好きにして良いよ。こんな限界まで身も心も汚れた身体で良ければ、だけど」
「ぐへへへ~~☆ なーーら、遠慮なく~~♪」
由比は、目を閉じた。
僅かに震えてしまうのは何故だろうか?
そうだ。全てが壊れた時から、いや、この場で何度も何度も取り返しがつかない後悔にさいなまれ続けたその時から。
コウ以外の男はもう生理的に受け付けなくなってしまったから、だろう。
今更どの面下げて、と思うが、それでも。……でも、これから夜の店で。風俗、ソープランド、裏オプション。何でもつけて出来る限り高額で、出来る限り厳しくきつい夜の店で稼がなければならない。
抱えている慰謝料もそう賠償金もそう、養育費もそう。
コウと言うプロ野球選手を旦那に持った由比ですら、見たことのないくらいの金額が頭の中で刻まれている。
全てを終える為にも……、生理的嫌悪とか意味が解らない戯言で、働けないなんてありえない。
そういう意味では……明のおかげで、明が抱いてくれるおかげで、次の男へ行けるのかもしれない、と由比は自虐的に笑う。
一筋の涙が、その頬を伝う。
何で泣いているのかわからない。バカだからわからない。全て自分のせい。泣く資格なんてない筈なのに。
最愛の筈だったコウもアキも、優しかった両親も義両親も、そしてこんな自分を姉と慕ってくれたユウも。そして顔も知らない、ただただコウを応援し続けてくれていたファンの皆も、すべてを傷つけてしまった。
死んで償う事が一番だと思ったけれど、それは逃げだと思った。死を恐れたわけじゃない。何も償わずにあの世へ逃げるだけなのだと。
――― 一生苦しめ。
怒りのままに言われた言葉。
誰からだったか、両親なのか、義両親なのか……もう覚えていないが、その通りにしようと思ったんだ。
その時、だった。
「ちょいと足を拝借」
不意に持ち上げられた足。
脱がされた靴。
そういう趣味、趣向なのか? と思いきや、また靴を履かされた。
でも、感触的に自分の靴じゃない。なんだか温かく感じたその靴は不思議だった。浮遊感? のようなものを感じさせられた。
「んじゃ、いこっか?」
「え? え??」
浮遊感……どころの話じゃない。
本当に身体が浮いている。浮いているんだ。
そして考える余地なんか一切なかった。
「最初のページに戻ってやり直そう!」
理由のわからないままに、明のその言葉と共に、由比の視界の中は光で満たされ―――――意識は消失した。
何だろう?
物凄く―――物凄く懐かしい匂いがする。
夏の土と汗の匂いと―――何度も何度も感じた事のある野球の道具の匂い。古い革のグローブ、汗を吸ったユニフォーム、日焼けた木のにおい。どれもが一瞬で、彼女の胸の奥にあった不確かなものを呼び覚ました。一般的には、嫌う臭いと言えるかもしれない。臭いと敬遠する臭いかもしれない。でも、これ以上落ち着ける臭いは……匂いは他に知らない。
そして、下腹部が熱く、熱く感じる。
何故だろう? 心からの幸せを、多幸感を感じられるのは、何でだろう?? もう忘れてしまった。遠く遠く、遥か遠くの記憶が……身体の内から感じられる。
いや、身体の内―――と言うより、これは膣だ。膣内が喜んでいるのが解る。
何故だろう? 何故、こんなにも伝わってくる? 何度も、何度も膣内に熱い熱い塊が出し入れされて、される度に身体が火照る。膣内から愛液が溢れ出る。あの日失われた時間と重なる。嘘じゃない。夢じゃない。
由比の胸の中で、熱と氷が同時に溶け合った。
「すごい、すごいな! 由比! 今日のおまえ、めっちゃすごい! めっちゃ、しまる~~~~っっ」
懐かしい、何処か懐かしい声が、頭の中に響いてくる。
熱い息遣いが、その温もりが身体を貫き続ける。
「なん、なん―――で?? え……?? こ、こう……ちゃん??」
「んん? どう、したんだ?? ひょっとして、気、うしなってた?」
夢じゃない、夢じゃない、と魂が叫びをあげていくが、由比の頭の中での処理能力が追い付いていなかった。
だけど、時間は流れていく。白い世界が彩られていく。
輪郭が、形成されていく。
目の前に居るひとの姿を――――ハッキリと、彩ってくれる。
まだ、ぼやけているのに、わかる、わかる。心が、身体が、魂が……目の前の彼の名を叫んでいる。いつもの、慌てたような笑顔で、半ば冗談めかして言いかけた。その声の芯にある戸惑いを由比は聞き取った。
「わ、悪い! 無理させたか!? 部室内で、なんてやっぱ不味かったか?? いや、めっちゃ無理させたか!?? い、いったん抜くから――――」
気絶させるまでに至るのは初めてだったんだろう。かなり動揺しているのが解る。
でも、それ以上に突き入れられた腰が離れていくのが解る。
子宮口にピッタリと付いた彼の亀頭の先の先、精子を出す役目を終わらせていないと言うのに、その竿が子宮口から遠ざかり、軈て膣口から出ていくのが解る。
「だ、だめ――――っ……」
「っうお!?」
それが解ると同時に、由比はコウを逃がさず、足で挟み込み、力強く引き寄せた。想像以上の力に、コウは驚きつつも、再びペニスが膣の奥、子宮口にまで誘われ、それが新たなる快楽を、射精を促す刺激となる。
コウと視線が交錯する。
由比の視線の奥で何かを決めるようにゆっくりと息を吐いた。涙が一粒、まっすぐに頬をつたう。目が、笑っているふりをしている間に、彼女の内側ではずっと別の決意が育っていたのだ。その意味をコウは知る由もない。
だが、由比は、由比の中は、拒んでいる。終わらせたくない、と嘆いているのは解る。
「ふ、ふふ。もう……っ、部室で、えっち……なんて、だれか、だれかきたら、どうするの……?」
由比は、涙を流しながらコウを抱き寄せ、そしてその唇に自身の唇を押し付ける。
腰を何度も何度も振り、彼のペニスの全てを忘れまい、と膣内に刻み付けている。
「ぷはっっ、い、いきなり積極的になってビビった! でも、マジ大丈夫、なのか? 由比」
「ふふ、ふふふ。うん、きもち、いいだけ、だよ。でも、ほんと、大丈夫なのかな?」
由比から解放されたコウは顔を更に赤らめながら、それでいて射精感をどうにか抑えつける。今日の由比は、いつもの比じゃない。信じられないくらいに、気持ち良い。
直ぐに終わってしまいそうで……それでいて、それが本当にもったいなくて―――いつまでも由比を感じていたいから、とどうにか己の精を抑えつける。
「言ってること、と、やってる事、全然違うな! 大丈夫って由比もわかってる、だろ? こんな遅くまで残ってる生徒なんていやしねーって」
「ん、んんっ、あんっ! ……ぁっ!」
喘ぎ声と身体がシンクロする。
うねる膣内はコウのペニスを刺激し続け、速く欲しいと言わんばかり。
「ぁ………!」
でも、由比はいつもとの違いに気付く。
そう、コウのペニスを直接に、直に感じていないからだ。
薄い薄いコンドームと言う隔たりがある事に気付いた。
「まぁ、いたとしても傍から見たら、夜遅くまで居残りしてる大エース様と、頑張り屋のマネージャーさんだけだよ」
「ふ、ふふ。自分で、だいえーす、って言っちゃう……んだ。あっ……んんっ」
「ふ、ふっ、そりゃ、事実、だし! んっっ」
勢いよくストロークをしたため、それでいて、由比の両足を使ったホールド、大好きだと離さなかったホールドが緩んでしまった為、勢い余ってコウのペニスが引き抜かれてしまった。
ぽろんっ、と引き抜かれた瞬間に、由比のヒダはペニスを求めたかったと、まだまだ物足りない、とうねる。そして、そのうねりが、由比の脳内へと伝わり、次の行動を示唆、支持する。
「っと……、あぶねっ、いや、ちょうどよかった、か!」
もっともっと感じていたかったと言うのに、あれ以上やってたら間違いなく出ていただろう。それは勿体なさ過ぎる、とコウは感じていた。本当に忌々しいのは賢者タイム。もっともっと連続でしたいというのに、それを阻んでくる。でも、由比とは何回戦でもやれるつもりではいるが、今日の由比はいつもと違う。本当にとんでもないのだ。睾丸の中の精子の全て。今若さと強靭な肉体が、懸命に製造し続けている精子でさえも、吸い取り、吸いつくされてしまうと思える程にだ。
これまでに無い量の精子が放たれると予感があったから。
「んっっ!!」
「ちょっっ!!?」
そんな一時休憩、と身体が止まったコウを、由比は逃がしはしなかった。
いや、由比にとっても丁度いい、と感じていた。膣内で感じていたそれを、邪魔な隔たりを、除去する為に。
由比は、素早くコウのペニスを加える。フェラチオをすると見せかけて、コンドームを外す為に、根本まで吸い付いて……そしてそれを、コウの全てをあらわにさせた。
「ちょ、いや、いや、待ってまって――――!」
コウは慌てて由比を止めようとするが、由比は止まらない。
じゅっぽ、じゅっぽ、じゅっぽ、とイヤらしい音とそのストロークをペニスで感じながら、身体に電流が流れた様だ。
どうせなら、由比の中で果てたい! と思っていたコウだったが、このままではそれを果たせない―――と思った途端に、由比は吸い付くのを止めて、ペニスを解放する。
何もかもが呆気に取られていたコウは、考える隙も与えられず押し倒される形で、騎乗位の形で、由比に跨がれるとそのままコウのペニスを由比の膣内へと埋めた。
「い、いや! さ、さすがにまずいって―――! 膣内に出ちまう……!」
「んっんっっ、ま、まずい、っていまさらっ!! あんっ、んんっっ、だい、だいじょうぶ、だから! きょうは、大丈夫、だから………!」
何度も何度も腰を上げては落とす。リズミカルに、時にはリズムをずらし、そして膣内のヒダをも連携して、コウの全てを刺激していく。
このままじゃ、一瞬で持っていかれる!! と思う間もなく。コウは果てた。
びゅるっ、びゅるっっ、びゅるっっっ!!!
信じられない程の射精だった。ペニスが脈打つ回数が今までと違う。2,3度で収まる筈なのに、奥へ奥へと促してくる。
うねる由比の膣内がコウのペニスをもう逃がさないと言わんばかり。ずっと――ずっと、いて欲しい。傍に居て欲しい。
そう切なる願いがこもってるかの様。
「(さいごに………、さいごに、コウちゃんと、できるなんて………愛しあえる、なんて、おもってなかった)」
由比は、ぎゅっ――――――っとコウを抱きしめた。
そして、コウに顔を観られない様にし、抱きしめ続けてーーー涙を流した。
ーーーさよなら……コウ、ちゃん。
そして、運命の日。
朝の光は、思っていたよりも静かに、そして容赦なく世界を明るくしていった。薄いカーテンの隙間から差し込む光が、布団の上に細い線を描く。その線に頬を当てると、昨夜のことが一気に身体の奥から押し出されてきた——熱、湿り、誰かの匂い。夢ではない。由比は目を閉じて、ゆっくりと呼吸を整える。瞼の裏で再生される映像は鮮明で、だからこそ残酷だ。手のひらを胸に当て、鼓動の震えを確かめる。確かに鳴っている。彼女は目を開け、窓の外に広がる朝の空を見た。それはただの朝ではなく、始まりを告げる光線だった。
「本当に、戻ってきたんだ」
——言葉に出すまでもなく、由比の中でそれが回る。
これは奇跡でも偶然でもない。心の奥底で既に知っていたはずの事実が、ようやく外套を脱いで全身を晒したように、明晰に在る。過去を取り戻すことができた。だが取り戻したものはやさしい贈り物ではない。取り戻したということは、もう一度決着をつける責任も自分に戻ってきたということだ。
ーーー今日で、全て終わる。
彼女の心は短く、それでいて鮮明に宣言した。
言葉の背後には、自己犠牲の影が見え隠れするが、それは誤りだ。全ては自分が蒔いた種。全てをあの教師に視られて、性欲……色欲のソレに染まり切り、全てを捨てた。全てを壊した。それが私自身の罪なのだ。
戻ってこれたのは、その罪を清算する為。
自分が何を失っても構わない。自分の手で、壊れたものを断ち切るという決意が、由比を突き動かす。許しを乞うような気持ちや、逃げたいという衝動が完全に消えたわけではない。
むしろそれらは彼女の中で燃料に変わり、冷えた決意をさらに硬くしていった。
予定調和だ。
昼食時……いつも通りのクラスメートの皆と一緒にご飯を食べている時、校内放送が響く。
自分を呼ぶ声が、広がる。
『3年2組 橘由比さん。橘由比さん。至急生徒指導室まで来てください』
皆、不振がっている。
これもそうだ。あの教師―――生徒指導の桑原は皆に嫌われている。
性格悪く、説教は嫌味。ねちっこい。そして女子の事を観る目が完全にセクハラオヤジのそれ。
最初は自分は否定していた。
でも、一言一句―――違いは無かったんだ。
「じゃあ―――皆。……行ってくるね?」
笑顔で向かう由比。
でも、その表情に、何処か違和感があるのは、長く付き合っていた友達だから、だろう。
まるで、もう戻ってこない。
そんな予感をさせる雰囲気だった。
でも、止める事は出来なかった。それさえもさせない雰囲気が、その身にあったんだ。
ーー生徒指導室。
「飯時に呼び出して悪かったな」
「…………」
桑原が、あの時と変わらない。何ら変わらないゲスびた顔をして待ち構えていた。
何故、あの時はわからなかったのだろう。
どうして、こんな男が良いなんて思ったんだろう。
今では由比は、あの時と同じことを繰り返したとしても―――――この男の虜になる事は無い、と断言できる。
だから、全てを終わらせに来たんだ。
あの時と同じように、不快な褒めから始まる。
野球部のこと、コウとのこと、おべっかーーー全ては繋がっている。
「……前置きはいいですから」
「……!」
途中から、自分の目が冷たいものへと変わって言っているのに、桑原は気づかなかったんだろう。あの時の様に、あの時の自分を演じ切っていたつもりだったが……、この男の口から、コウの名が出る度に、演技をしていられなくなってきたんだ。
「御託は聞き飽きましたので。そろそろ核心をお願いいたします。……昨夜、観ていた事、でしょう?」
「……ほぉ~~、わかっていたのか? わかってて、見せつけてきた、って事か?」
桑原はゲスびた笑みを向けて、件の写真をばらまいた。
丁度、コウと交わってる写真。正常位で交わり、そして涙を流している所。
恐らく、自分が戻ってきて、コウと交わっているのだと深く認識したタイミング……だろう。なんというタイミングの写真を撮るのか、と由比は嘲笑する。
「プロ注目のエースが放課後学校でマネージャーと淫行。それを見せつけていた、って訳だ? どういった理由なのか気になるなぁ~~~? 橘?? ん? 実はアイツを貶めたかった、とかなのか? 幼馴染の漫画的な展開――――……を……?」
背後から近づき、写真を由比に見える様に机にばらまき、ゲスの様な顔で舌なめずりをしていた、その時だった。
足に、灼熱が走る。熱い! と感じた直ぐ後には鋭い痛みが走る。永遠にも感じた体感時間を経た後、その後は時が動き出したかの様にあまりの衝撃に体が跳ね、思わず声を上げる。
「があああっ!!! な、なに……!?」
自身の太ももに突き立てられていたのはカッターナイフだった。
それも、抉る様にぐりんっ、と回されたそれは、太ももを大きく損壊させて、床を血だらけにさせる。
激しい痛みに襲われ、膝をガクガクと揺らしながら倒れる。汗が額を伝い、思わず息を荒くする。普段なら小さく笑い飛ばせるような部屋の空気が、今はひどく重く、冷たく、張り詰めている。
「漸く、漸く……終われる」
「たち、橘!! な、なにーーーーッッ!!?」
激しい痛みに襲われている筈なのに、その由比の顔を見た瞬間、まるで凍らされたかの様な感覚に見舞われた。
由比の瞳が、じっと桑原を見据え、捕らえている。
こんな子供が、誰かを刺したと言うのに、何処までも冷酷に、見据えている。
そこにあったのは、普段の彼女からは想像もできない、冷たく、鋭い光。まるで命そのものを断つかのような意志が宿っている。
桑原は、一瞬、呼吸が止まったかと思う。
目の前の生徒に、こんな感情を向けられるなんて——考えたこともなかった。普段なら罵倒されても、無視されても、皮肉を返すか、笑ってやり過ごせた。だが、今は違う。
確かに、今回は弱みを握り、そしてその身体を求めようと考えていたのは否定しない。だが、ここまでの事とは思っても無かった。
手に持った刃物も、太ももに触れた痛みをも消し去る程に、由比の視線は強烈だった。
その視線が、桑原の思考のすべてを凍らせる。体が重く、足も、声も、指先すらも動かなくなった。口を開けようとした瞬間、喉が硬直し、言葉が喉に張り付く。
―――殺される。
そう思わされた瞬間、桑原は声も何もあげれない。
「……無用な、それ、先ずは切り落としておきましょうか。……それの、せいで、それの―――せい、で!!」
由比がにらみつけるのは桑原の股間部分。
どうしてあれほど求めていたのか? どうして、あんなにも快楽を植えられたのか。もう、今となっては解らない。解りたくもない。
その男性器は不要な産物。
男としての全てを奪い……最後は命を奪い……軈ては自分も死ぬ。
写真は処分しないといけないだろう。
泣きながら、ここを飛び出し、桑原に襲われそうになり、思わず無我夢中で……と、制服をはだけ、そして局部や胸を露出させ……最後の演技をする。バレないように……少なくとも自分が死ぬ瞬間までは、コウとの関係性もバレない様に……するために。
由比は、カッターを振り上げる。
こんな小さな華奢なナイフでも、太ももをあれだけ出来たのだ。
大丈夫。出来る、出来る。……命を、奪える。
「私も、悪かった。私のせい、だ」
「や、やめ―――」
「でも―――、おまえの、せいだ!! おまえの!!!!!!!!!」
渾身の殺意と共に、桑原の股間目掛けてカッターを振り下ろす。
漸く声を出す事が出来た。でも、最早手遅れだろう。
振り下ろされる瞬間、まるで走馬灯のようにスローモーションになっていた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり、命乞いをしようとするのだが、もう声にもならない。
ハッキリと迫るカッターが―――見える。
そして、そのカッターが突き刺さる寸前。
「ほいっ、と~~そこまで~~!」
いつの間に、だろうか?
いつの間にか……、誰かが入ってきていた。
「すっげ。マジでここまでしちゃった! 想像以上だ! 由比ちゃんすげーー!」
陽気な声。
聞き覚えのある声。
殺意に呑まれた由比の精神を、この場へ戻してくれる声、だった。
何もかもがどうでも良くなった筈なのに、その男の声が由比を戻し―――そして、その男の手には、今し方由比の手に握られていたカッターナイフがあった。
「はいはい、そっちの豚さんも傷みせて~~……って、グロっ!」
男は、次に桑原の方へと向いた。
桑原は、白目で、失禁して、失神してしまっていた。大量出血も合わさって非常に汚い。彼は、顔を引き攣らせながらも、てきぱきとその傷を応急手当し始める。
かなり深く、捩じり上げた傷だ。そう簡単に手当なんて出来る訳がない、と思っていた。太ももにも太い血管がある事も事前に知っていたから。……それを、狙っていたから知っていた。
でも、ビックリだ。
彼が、取り出した絆創膏を桑原にはると……。
「すぐきずを治すばんそうこう~~~、ってね~~~!」
出血は一瞬で止まり……、傷は本当になくなってしまったんだ。
「死んじゃって楽になる~~なんてもったいないでしょ?? もっともっと現実を楽しまないとさ? 桑原せんせーってば、こーーんなに酷い事、しまくってたんだしぃ」
そして、彼がばらまくのは沢山の……その情事の写真だった。
薄々気付いていた。自分が初めてじゃない事くらい。他に誰かいた事くらい、気付いていた。
「由比ちゃん」
「……っ、っっ!」
頭を、撫でられた。
温かい、手だった。
「よくできました! 流石に、アキちゃんの存在消しちゃうの、かわいそーだから。死んじゃダメ、だよ? この豚さんも。……沢山生きて貰わなきゃ! 色んなもん、背負ってさ?」
彼は……明がそういうと、手をぱんぱん、と叩いた。
すると、また、この部屋に誰か入ってくる。
それを見届けると同時に―――由比の意識は闇に落ちるのだった。