※この作品はR-18です。

俺の大学性活はまちがい続ける。   作:滝 

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つい一ヶ月ほど前に完結したばかりですが、ぬるっと再開。
今回はタイトルの通り、いろはすです。




アフター編
小悪魔いろはす。


 それは俺たちの通う、大学のほど近く。

 場所はよりによって、テラス席。

 

「おい、見ろよ」

「うお、すげぇ。みんな可愛いじゃん」

 

 どこから遠くから届いたその声は、きっとお喋りに興じている彼女たちには聞こえていないだろう。いや、そう願いたい。

 

「ってか、男いるな」

「⋯⋯だな。男避けか?」

 

 きっと聞こえていないはずだ。だといいな。ついでに俺にも聞こえないように話して欲しかったな⋯⋯。

 

 四人がけのテーブル席には、俺と結衣、いろは、それに雪乃が腰掛け、優雅なアフタヌーンティータイムを過ごしていた。しかしそれを優雅と感じているのは、恐らく彼女たちだけであろう。

 何故ならば、俺に投げかけられる視線が痛いほどに鋭いからである。言葉は無遠慮、視線は不躾、ついでに俺のメンタルも不死であればよかったのだが、流石にこうジロジロと見られると落ち着かない。

 

 きっと道行く彼ら彼女らには、こう見えているだろう。

 見目麗しい三人の女性と、男避けの目の腐った男。そしてこんな会話が繰り広げられているのだ。

 

『この辺りのカフェも行き尽くしてしまったし、今度はどこに行こうかしらね』

『あ、それならわたし、いいところ見つけたんですよ。天井の木組みが素敵な、パンケーキが美味しいお店で』

『それ知ってる。外苑前にできたお店でしょ?』

 

 しかし。

 しかしながらである。

 そうはいかないのが現実なのだ。

 

「わたし思ったんですけどー。先輩を一人占めにできる日は、やっぱり必要だと思うんですよ」

「⋯⋯それはいろはが、ということかしら?」

「いえいえ。わたしだけじゃなくて、雪乃さんも結衣さんも、みんなそれぞれに。流石に全員予定合わせるのも大変ですし、ちゃんと日を決めて好きなだけ先輩とイチャつける日を作るべきかなーって」

「あはは⋯⋯。いろはちゃん、最後本音が漏れちゃってる」

 

 現実はまぁ、こんな感じなのである。これ大丈夫? 俺ここに居ていいの? というか俺が居ない時に話してくれないかなぁ⋯⋯。

 

「雪乃さんは今まで先輩を一人占めしてたんであんまり感覚分からないと思うんですけど、わたしは先輩と付き合いだしたばかりですし」

「一人占めしていたと言われるのには違和感があるのだけど⋯⋯」

 

 シナモンティーを一口飲んでからいろはが言うと、雪乃はティーカップをソーサーに戻して眉根を寄せる。うん、それ一人占めって言わないね。普通に付き合ってただけだね。普通に⋯⋯。

 

「それは置いておいてもですよ。わたしは結衣さんみたいに先輩とデートしたり、ホテルでしっぽりなんて経験もないわけですし」

「⋯⋯結衣?」

「⋯⋯」

 

 雪乃が薄い目で結衣を見ると、彼女はつつーっと視線を机の端から端まで滑らせた。

 えぇ⋯⋯。ガハマさん、あの日の事いろはすに話したの? 雪乃には話しているかもとは思ったけど、いろはにまで?

 

「というわけなので、平日は当番制で先輩持ち回り、土日にみんなで予定合わせて集まる感じでどうですか?」

「⋯⋯私は大学が千葉だから、少し条件が悪いわね」

「あー、じゃあ雪乃さんは土日の空いた方でとか。流石に正妻ポジションなので配慮はします」

「そう言いながらどうしていろはが仕切っているのかしら⋯⋯」

「あたしは水曜日がいいなぁ」

 

 もはやどこから突っ込んでいいのか分からない。あとちゃっかり自分の希望を通そうとしているガハマさんが逞しすぎる。

 きっと周りからジロジロと見てくる男性諸君は、こんな会話が交わされているとは露ほども考えないだろうし、きっと信じられないだろう。

 

 この子たち全員、俺の恋人なんです――なんて。

 

「⋯⋯ってことで、明日は早速わたしの番ですよ。先輩」

「え⋯⋯?」

 

 いつの間にそんな話になったのだろうか。いろははそう言いながら、ブルーベリータルトを刺したフォークを俺に向けている。

 

「あ⋯⋯。あたしのも食べる?」

「そう言えば、あなたは飲み物しか頼んでなかったわね」

 

 結衣と雪乃はそう言って、いろはに倣うようにそれぞれ切り分けた桃のタルトやらショコラテリーヌやらを俺に向けてくる。さあ誰のものを一番に食べるのかと、少しだけ楽しそうだった。

 しかし彼女たちは俺の方ばかりを見ているから、気付いていない。

 道行く人々がさっきからジロジロと俺たちを見ている事に。怨嗟の籠もった視線と嫉妬の炎で、焼き尽くさんとされている事に。

 

「今日は甘いもんは、いいかな⋯⋯」

 

 そう言って俺が顔をそらすと、ふっと小さな笑いが重なった。

 

「⋯⋯逃げましたね」

 

 いや、当たり前でしょ、こんなの⋯⋯。

 俺はそう思いながら、カップに残ったブラックのコーヒーを一気に飲み干した。

 

 

       *       *       *

 

 

 そしてやってきた翌日。

 平日ではあるが既に夏休みに入っている為、今日は一日フリーだ。だから午前中からいろはと過ごしているのではあるが。

 

「⋯⋯なあ」

「はい?」

 

 俺が声をかけると、いろはは振り返ってこちらを見る。とても近い。いや、それは一旦置いておくとして。

 

「一人占めって、こんなのでいいのか?」

「ええ、こういうのがいいんです」

 

 もうすぐ正午になろうかというのに、俺たちがしている事と言えばいろはの家でくつろいでいるだけである。

 もっと具体的に言うのなら、ベッドを背もたれにして床に座った俺の脚の間に、いろはがすっぽりと収まっている。彼女の方はと言えば俺に体重をあずけ、テレビを見ながら自らの身体に回された手を時折り触ったりしているだけだった。

 

「だってこの暑い中で出掛けても、先輩すぐ帰ろうぜとか言い出しそうですし。それに家の中なら人目も気にせずやりたい放題です」

 

 確かにすぐ帰りたくなる可能性は否定出来ないが、何をやりたい放題するのかなぁ⋯⋯。

 しかしその答えというのが、現在進行系のこの出来事なのだろう。

 俺を一人占めにしてイチャつく。

 それがいろはの求めたもので、俺からしたらまだちょっと慣れない行為だ。

 

「まあ、いろはがそれでいいんなら、いいけど」

 

 俺はそう言って、いろはの身体に回した腕に力を込める。クーラーの効いた部屋で感じるいろはの体温は、ドキッとするぐらいに熱い。

 

「むしろそれがいいんです。家でベタベタするのって、王道じゃないですか」

 

 王道、か。本当は定番って意味ではなく近道って意味なのだが、それはともかく。こうやってねだってくる姿を見ると、気になってくることがある。

 一色いろはは、俺と関係を持つまで処女だった。それは破瓜の血を見ているから間違いない。

 しかし恋人が出来るのは、果たして初めてなのだろうか。妙に手練な雰囲気を醸し出しているから、ひょっとしたら過去に彼氏とかは居たことがあるのかも知れない。だからどうこうってことは、全く全然何もないのだが。

 

「先輩? どうしたんですか、急に黙って」

「⋯⋯いや、別に」

「なんですか。わたしの顔見ながらめっちゃ考えてたじゃないですか」

 

 いろはは俺に向き直ると、うりうりとでも言うように頬を突いてくる。ええいやめろ可愛いな。あとちょっと突いてくる力強くて痛いです可愛いな。

 

「この期に及んでわたしのことが面倒臭くなってきたとか?」

「んなわけあるか」

「じゃあ何なんですかー」

 

 もしかして、これがいろはの言うベタベタという行為なのだろうか。いろはは俺を突いてくるのをやめると、楽しそうに両手で頬を引っ張ってくる。

 

「なんでもねぇって」

「ありますー。ちゃんと言うまでやめませんよ」

「聞いたら後悔するぞ」

「ブラフですね、得意の。それには騙されません」

 

 心底楽しそうに笑いながら、いろはは俺の頬をこねくりまわしてくる。

 こいつ⋯⋯。本当に聞いたろか。絶対後悔するけど。主に俺が。

 

「わたしの顔見ながら何を考えてたんですか。はい、三、二、一、どうぞ」

「⋯⋯いろははいつも可愛いなあ」

「棒読みですね。本当は?」

 

 なんだそれこれが正解じゃないのかよ。今のは「やだもー先輩ったら!」のフラグだっただろ完全に。

 しかし百戦錬磨のいろはがそんな定石にのってくることがないのは、今先のやりとりでよく分かった。故にこれ以上、俺に躱す手段がないのである。

 

「言ったら、ちゃんと答えてくれるのか?」

「ええ。わたしは先輩の彼女ですから、ちゃんと応えます」

 

 何やら漢字変換の齟齬はありそうだが、そこまで言われては仕方あるまい。やぶ蛇になることこの上なしだが、赤信号もみんなで渡れば怖くない、だ。地雷を踏んで巻き込まれても、どうか恨まないで頂きたい。

 

「あー⋯⋯その⋯⋯。いろはって、前に彼氏が居たことあるのかなって⋯⋯」

 

 そう言った瞬間、俺の頬をみょーんと伸ばしたまま、いろはの動きが固まった。ぽかんと口を開けたまま、徐々にいろはの頬が赤くなってくる。

 

「⋯⋯いえ、ありません、けど⋯⋯」

「ほう」

 

 これは意外だった、と言ったら多分いろはに怒られるだろう。俺は悪い笑みを堪えるのに苦労しながら、考えを巡らせる。

 高校時代、出会った時からいろはは男を手玉に取る手練手管を持っているように見えた。その言動は男なんて千切っては投げ千切っては投げですよと言わんばかりだったが、しかしその実態は――。

 

「つまりいろはは、男と付き合ったことがないのに知った風なことを言ってたんだな」

 

 俺が言うと、いろはは口をパクパクと動かし出す。やっぱりこれ、地雷だったか。しかしダメージを受けるのがいろはだけとは、ちょっと予想外だった。

 

「な、なんですかその顔。先輩の方が経験が豊富なのは認めますけど⋯⋯」

 

 頬をつまんでくるいろはの手を下ろさせると、代わりに今度は俺はいろはの頬をつまむ。

 

「いや、そうやって背伸びしてたんだなって思うと、なんかなぁ⋯⋯」

 

 そう言って口角を引き上げると、いろはの頬がぶわーっと赤くなってくる。え、何この子可愛い。実は結構いじり甲斐があるとか、ちょっといけない趣味に目覚めそうだ。

 

「可愛いな、お前」

 

 赤くなった頬を一頻(ひとしき)りこねくりまわした後、ぽんぽんと頭を撫でた。恥ずかしさの限界を突破したのか、いろはは少しだけ涙目になってきているように見える。

 このままからかい続けてみるのも一興なのだが、あまりやりすぎると別の機会に盛大にやり返されそうな気がして、俺はいろはの表情を隠すように抱きしめた。それでもまだ恥ずかしいのか、いろはは俺の胸に顔を埋めたままぷるぷる震えている。

 

「⋯⋯先輩、意地悪すぎます」

「否定はしない」

 

 そう答えると、いろはは非難するようにぎゅぅうと俺の身体を抱きしめてくる。ちょっといろはす? さっきから色々と力が強いんですが。

 

「はぁ⋯⋯。ご飯、作りますね」

「おう」

 

 いろはは俺から離れて立ち上がると、逃げるかのようにそそくさと台所の方に歩いていく。冷蔵庫の中身を確認すると、こちらを振り返った。

 

「先輩、冷やし中華でいいですか?」

「ああ。トマト抜きで頼む」

 

 かしこまでーす、といろはは軽快に返すと、がさごそと冷蔵庫から中身を取り出し始める。

 ついついその動きを目で追ってしまうが、あまり見られているといろはもやり難いだろう。テレビに視線を戻すと、ちょうど昼時だからか駆け出しタレントがランチを食べながら大げさなリアクションをとっていた。映された料理は大変彩り鮮やかなのだが、不思議とそれにそそられるものがない。どうやら自分でも思いのほか、いろはの手料理に期待しているらしい。

 

「先輩」

 

 呼ばれてキッチンの方を見ると、いろははエプロンをつけて、何故か胸を張るようなポーズをしている。

 

「エプロン新調したんですけど、どうですか?」

 

 ほぉーそうかー新しくしたのかー。⋯⋯って俺、新調する前のエプロンを知らないからそう言われましても。

 しかし当然ながらそれを正直に言ってしまえば、先輩は乙女心が云々と文句を言われるのは必定である。

 

「いいんじゃないか。似合ってる」

 

 事実、胴回りにリボンのあしらわれたそれは見られることを意識されたデザインらしく、いろはによく似合っていた。もしカフェの店員が着ていたら、ちょっと可愛いに振りすぎていてあざとく感じるデザインだが、そういうところも含めてやはりいろはに似合っている。

 

「そうですか」

 

 しかしいろはの方は俺の答えに満足していないのか、反応はどこか素っ気ない。何これ、もっとオーバーリアクションで褒めた方がよかったのん? 三人も彼女がいるというのに、やっぱ女心は分かんねぇな。

 いろははトイレにでも行くのかキッチンを後にしたので、俺はまたテレビに視線を戻した。画面の中でタレントが、山盛りのかき氷を頬張っている。

 

「先輩」

 

 そうしてしばらくした後。

 またも同じトーンでいろはに呼ばれて、彼女の方を見ると――。

 

「机の上の雑誌とか、片付けておいて貰えると助かります」

 

 そこにはエプロンを着たいろはが立っている。

 もっと正確に言うなら、エプロンだけ(・・)を着たいろはだ。

 

「お、おう⋯⋯」

 

 あまりのことに呆気にとられ、ちょっと上擦った声になってしまう。

 いや、本当、マジかこの子。

 裸エプロンって、こんなに破壊力あるのかよ⋯⋯。

 

「お願いしますね」

 

 そう言ってまたキッチンの方を向いたいろはの顔は、流石に恥ずかしいのか僅かに赤くなっているように見えた。しかしその表情に向かっていた意識も、今度は裸エプロンの後ろ姿に持っていかれてしまう。

 エプロンは当然、その布地はほとんど前方だけであり、後方は紐ぐらいしか存在しない。つまりいろはのなだらかな肩が、艶めかしい曲線を描くくびれが、張りのあるヒップが、丸見えなのである。

 

 それを見せられてしまえば、もう俺に選択肢はないに等しかった。もう俺の昼食は冷やし中華などではない。目の前の据え膳を食べずして、何を食すと言うのか。

 

「いろは」

 

 キッチンまでくると、俺はそっといろはの背後に立った。錦糸卵を作るところだったのか、いろはの手には卵が握られている。

 エプロンの前側にあしらわれたリボンを抱くように、いろはの細い身体に腕を回す。首筋に唇を触れさせると、んっ、とくぐもった声が漏れた。

 

「⋯⋯なんですか」

「やっぱり、よく似合うなと思ってな」

 

 我ながらなんて白々しい台詞だろうと思いながらも、こんな姿を見せられた後では止まることもできない。いろはの身体にまわした腕からそっと力を抜くと、ゆっくりとその身体を這い上がる。淡黄色のエプロンごとその柔らかい部分を両手で掴むと、いろはの手から卵が転げ落ちて、シンクの中でぐしゃっと割れた。

 

「んんっ⋯⋯。卵、割れちゃったじゃないですか⋯⋯。そんなことされてたら、ご飯作れないんですけど⋯⋯」

「作る気ないだろ。そんな格好して」

 

 いろはの頬に唇を寄せると、にわかにその身は固くなる。しかしその反応は拒絶でも何でもない。事実、いろはの乳房は俺の指の間でその頭頂を硬くしていっている。

 

「あ⋯⋯♡ ちょっ、んんっ、せん、ぱい⋯⋯っ♡」

 

 いろはの切なそうな声が耳朶を撫でるたびに、下半身に血が集まっていくのが分かった。わざとらしく作られた声よりも、その甘い声の方が断然脳天に響く。

 

「ストップ。ほんとに、待ってください」

 

 そう言っていろはは、俺の腕の中でくるりと身を翻した。ぐいぐいと押されてベッドまで来ると、そのままの勢いで座らされる。

 かちゃかちゃとベルトを外すと、躊躇いもなくズボンごとパンツを脱がしてきた。いろはは脚の間に入ってくると、鼠径部のあたりをさわさわと撫でながら俺を見上げる。

 

「いっつも先輩のペースになっちゃうんで、今日はわたしからです」

 

 そう言っていろはは、俺の硬くなったものの根本を握った。上下にそれを擦り始めると、いろはの唇が円弧を描く。

 

「もうガッチガチじゃないですか」

「そりゃな⋯⋯。っていうか、そこまでやって勃ってなかったら文句言うだろ」

 

 裸エプロン姿をまじまじと見ながら言うと、いろははうっと少しだけ言葉に詰まっていた。やっぱりこの格好、自分からするのは恥ずかしいのだろう。いや、着せられてても恥ずかしいと思うけど、エロ可愛いからなんでもいいや(思考放棄)。

 

「⋯⋯そりゃ、もしそうなら言いますよ。わたしがここまでしてるのにって」

 

 いろははそう言うと、ぺろっと俺の亀頭の先を舐める。そうやって鈴口をチロチロやっていたかと思うと、いろははおもむろに俺の肉棒を咥え込んだ。

 

「う、ぁ⋯⋯っ」

「んっ、んぅ⋯⋯ふ、ぁ⋯⋯んっ⋯⋯」

 

 いろはが顔を上下に動かし始めると、ちらちらのその向こうで彼女の胸の谷間が見える。それに妙に興奮してしまって、いろはの可愛らしい唇の間でバキバキに勃起している肉竿を脈打たせた。

 思えばいろはも、随分とこういった行為に慣れてきたと思う。それもこれも、きっかけは俺にあると言えるが、ここまでいやらしくなったのは元奉仕部の先輩方の指導があっての事だろう。いろはだって、まさか雪乃と結衣から性技を教わる事になるとは、想像すらしていなかったと思う。

 

「は、あぁ⋯⋯。いいぞ、いろは」

 

 労うように名前を呼びながら頭を撫でると、いろははペニスを咥えたまま目元に笑みを浮かべた。その表情があまりにも小悪魔然としていて、思わずまた肉棒を跳ねさせる。熱いものが込み上げてくる感覚を、肉竿の根本の方に力を入れて必死に堪えた。

 

「んっ、んー⋯⋯はぁ⋯⋯。先輩、ひょっとしてちょっとイキそうになってません?」

「ああ、ちょっとどころじゃないけどな」

 

 口で奉仕してもらってものの数分だったが、出していいと言われたらすぐに出せてしまうぐらい、ほとんど余裕はなかった。こういった性行為には随分慣れたつもりだったが、やはり彼女たちの痴態の前に興奮を抑えきれないし、全く我慢できる気がしない。

 いろはは俺の答えに自信を得たのか、ふふっと小さく笑う。その表情は俺のよく知るあざと可愛いもので、しかし今はそれにエロさまで加わっているせいでより夢中にさせられてしまう。

 

「じゃあ、出しちゃってもいいですよ」

 

 いろははそう言うと、頭を上下に動かす動きを速くさせる。じゅぷっ、じゅぷっといやらしい水音が響き、音と感覚から彼女の口が窄められたのが分かった。少し前に、結衣がいろはに手取り足取り教えていたバキュームフェラだ。結衣の感覚的でよく分からない説明と、俺のものを使った実地練習とで磨いた口技は、確実に最後の時に向けてカウントダウンを進めていた。

 

「んぅっ、んっ、ん⋯⋯。は、んっ⋯⋯んぅぅ⋯⋯っ」

 

 いろはを宥めるみたいにその頭を撫でると、いよいよ本気で我慢ができなくなってくる。吸い付いてくるいろはの口は精液を搾り取ろうとしているかのような、強烈な快感を与えてくるのだ。

 

「いろは⋯⋯。う、ぁ⋯⋯もう、出る⋯⋯っ」

「んっ、はぁ⋯⋯。いいですよ、このまま出してください。ん⋯⋯っ、んぅ⋯⋯っ」

 

 さっきまでの恥ずかしがっていた表情はどこへやら、いろは俺を追い詰めるように激しいフェラチオを繰り広げる。まだ出さないんですかと言いたげな視線が上目遣いで送られてくると、俺はそこで限界を迎えた。

 

「は、あ⋯⋯、イ、くっ! はぁ⋯⋯っ!」

「んぅっ!? んっ、んー⋯⋯」

 

 いろはの口の中で射精した瞬間、彼女の目が見開かれた。きっと大量に出ているのだろう、いろはは再び吸引を始めると、批難めいた視線を送ってくる。

 

「はぁぁ⋯⋯。あー⋯⋯、すげぇ出た⋯⋯」

 

 俺は最後の一滴までいろはの口内で精液を出し切ると、ぽんぽんとその頭を撫でた。いろははその中のものを零さないようにか、ゆっくりと俺の肉棒から口を離す。

 

「ほんろ、いっはいらひまふね」

 

 ちょっと何言ってるのかよく分からなかったが、いろははそう言って口の中を見せてくる。濃厚な白濁液の中でちらりといろはの舌が見えて、次の瞬間それはこくんと嚥下された。

 

「ん⋯⋯、はぁ⋯⋯。先輩、本当一回目は、濃いし量が多いですね」

 

 いろはは唇から零れそうになっていた精液を指先で拭うと、それすらも口の中に含んで見せる。精液を飲んでくれるのは最早いつもの事なのだが、やはりいつ見ても興奮するしかない。

 だからその一発だけで俺の下半身が満足仕切らないというのは、致し方ない事だと思うのだ。

 

「先輩のここ、わたしの中に入りたがってますね?」

 

 いろはは握ったままだった俺の肉棒を、上下に擦りながら上目遣いで聞いてくる。蠱惑的で小悪魔的、あざとエロ可愛いその行為に、俺の分身はびくんと反応してしまう。

 

「いろは、今日は⋯⋯?」

「今日は危ない日なんで、生はダメですよ」

 

 そうか、と答えて俺がゴムを忍ばせてある財布を取ろうとすると、いろははベッドの枕元から小さな箱を取り出した。見覚えのある黄金のパッケージは、男性用避妊具。つまりはコンドームである。

 新品、という事は、今日の為にわざわざ買ったって事か? 薬局やらコンビニやらでちょっと恥ずかしがりながらコンドームを買ういろはす⋯⋯それある。

 

「わざわざ買っといてくれたのか?」

「ええ。先輩が箱ごと持ってくるとか、想像できなかったんで」

 

 うーんなんで一箱必要って話になるのか分からないなー。⋯⋯まあ一回ぐらいじゃ収まらないのは確実だけど。

 

「どうせ使い切っちゃうんですよね?」

 

 小首を傾げてそんな事を聞いてくるあたり、ひょっとしたらいろはも期待しているのだろうか。パッケージに書かれた六個入りという文字を見て、こくんと唾を飲み込んだ。

 いろはは避妊具の箱を開けると、パッケージと同じ金色をした個包装を取り出す。それを開けてコンドームを取り出すと、俺を見ながら言う。

 

「着けちゃいますね」

「⋯⋯ああ、頼む」

 

 いろははそう言って、取り出した避妊具をまじまじと見た。そう言えば、いろはにゴムを着けて貰うのは初めてだ。すなわち彼女にとっても、男に避妊具を着けさせるというのは初めての経験という事になる。

 彼女の目の前でゴムを着けた事があるから、やり方が分からないという事はあるまい。そう思いながらいろはを見ていると、彼女は何を思ったのかコンドームに向かって息を吹きかけ、男性側の面を露出させる。そしてそのまま、するすると俺のペニスに避妊具を着けていった。

 

「こうした方が、ちゃんと密着して気持ちいいらしいですね。そういうものなんですか?」

「⋯⋯まあ、そうだな」

 

 いや、本当⋯⋯いろはすさぁ⋯⋯。そういう事にも勉強熱心とか過去の雪乃を彷彿とさせるし、色々エロ過ぎてヤバい。主に股間が。

 いろははベッドに腰掛けたままの俺に跨ると、その入口に肉竿をくっつける。その可愛らしい顔が一等近くなって、思わず心臓の脈動が大きくなった。

 

「入れちゃいますね」

 

 ああ、と俺が返すと、いろははゆっくりと腰を落としていく。狭すぎるほどの膣内に進入していくと、ぞくぞくとした快感が背中を駆け上がってくる。

 

「あ♡ あぁ⋯⋯っ♡ 先輩の、奥まで届いてます♡ んんっ♡」

 

 いろはの喘ぎが、甘やかに鼓膜を震わせた。ずっぷりと肉棒をその膣に咥え込み、悶えながらもその腰を上下に振る。

 このベッドでいろはと交わるのは、彼女の処女を貰って以来という事になる。その間に色々あった訳だが、それにしてもこの子、えっちになり過ぎじゃないですかね⋯⋯。

 

「は、あぁ⋯⋯。いろは」

 

 いろはの身体を抱き寄せると、喘ぎを漏らすその口を塞ぐ。エプロン越しにいろはの柔らかさを感じながら、舌を絡ませ合う。そうしないといろはの腰使いが凄すぎて、あっという間にイカされてしまいそうだった。

 

「んっ、んぅ⋯⋯。はぁ⋯⋯。先輩って、口でした後でもキスできる人なんですね」

 

 唇を離すと、いろははおかしそうにそんな事を聞いてくる。確かにフェラチオして貰った後はキスしたくない、という男は一定数いるようだが⋯⋯。ゴックンをして貰いまくっている俺がそれを言い出したら、二度と飲んでくれなくなるのではないかと思う。

 

「まあ、そんなに気にするもんでもないしな」

「あ、じゃあ今度自分で出したの飲んでみます?」

「やらねぇ⋯⋯」

 

 恐ろしい事を言い出すいろはの顔は笑っていて、そのまま悪ノリでやられてしまうような気さえしてくる。っていうかそれ、大昔に雪乃さんに口移しでされた事あるんだよなぁ⋯⋯。

 

「自分がしたくないことを人にさせて興奮するとか、先輩もけっこう性格悪いですね」

 

 そう言ういろはも、中々にいい性格をしていると思う。俺は段々といろはの言葉だけで興奮して来ている事を自覚して、もう一度その口を塞いだ。

 

「んっ、んぅ⋯⋯ふぅ、ん⋯⋯っ」

 

 いろはの腰を掴むと、その動きを催促する。会話のあいだ強烈な快感から解放されていた肉棒は、どれだけ持つかも分からないのにその続きを求めていた。

 舌で唾液を交換しながら、いろはは腰の動きを再開させる。まるで精液を搾り取ろうとしているかのように蠕動する膣内で、俺の肉竿はびくんびくんと元気よく脈打つ。

 

「せん、ぱい⋯⋯っ♡ これ、深い、ですっ♡ あぁ♡ ん、あっ♡」

 

 舌を解くと、途端にいろはの口から喘ぎが溢れた。互いの唇の間に銀糸がかかり、だらしなく開いた口元がどこまでもいやらしい。

 いろはの背中に手を回すと、彼女は俺の首に手をかけた。俺の手に体重を預けるようにしながら腰を動かすと、彼女のもっと奥まで入っていくような気がした。

 

「うぁ、あぁ⋯⋯。いろはの中、凄いな⋯⋯」

「あぁぁ♡ んっ、あぁ⋯⋯っ♡ 先輩の、すっごくおっきいです⋯⋯♡ もうイッちゃいそうなんですか?」

 

 俺の肉棒の硬さから、その限界を読み取ったのだろうか。いろはは淫靡な声でそう聞きながら、腰振りを止める事はない。

 いろはと結合してまだ十分も経っていないのに、俺はもういつでも射精できるほどに張り詰めていた。というかこんな扇情的な格好を見せられて、ここまでよく持ったなと思うぐらいだ。

 

「は、あぁ⋯⋯っ。いろは、出していいか?」

「あぁ、んっ♡ あ♡ はい♡ いいですよ♡ あぁ♡ あんっ♡ わたしももうちょっとで、イキます♡ ぅんんっ♡」

 

 そう言ったいろはの腰使いは、今までになく激しくなっていく。たんっ、たんっと腰のぶつかり合う音が聞こえ、甘美な喘ぎが耳朶をぞわぞわと撫でた。

 

「はぁ、う、ぉぉ⋯⋯っ。あー、イクっ! いろは、出す、ぞ⋯⋯っ!」

「んんっ、あ♡ あ♡ あぁぁっ♡ はい♡ 先輩っ、一緒に♡ んぁあっ♡ 一緒に、イッてくださいっ♡♡」

 

 ずぶんっ、といろはの腰が深く落とされると、俺はその最奥でドクドクと射精する。いろはの細い身体を抱き締めながら、その中で脈動を繰り返した。

 本当に、途轍もない快感だ。四方八方から締め付けられ、腰はもう止まっているのに、まだその膣襞は蠕動する。もっと精液を出せと言わんばかりに、最上の快楽を与えてくるのだ。

 

「は、あぁ⋯⋯っ。うぁ⋯⋯」

「あぁ♡ あん⋯⋯♡ 先輩、まだ出してるんですね♡ あぁあぁっ♡♡」

 

 色欲に濡れたいろはの声を聞きながら、俺は彼女の膣内で肉棒を脈打たせる。こんなのこっちまで、ダメになってしまう。ゴムをしていても、その快感の鋭さは鈍る事がない。

 最後の一滴までいろはの中で放精すると、彼女はゆっくりと腰を上げていく。ぬるんと抜け出たペニスはまだ勃起したままで、精液の詰まった避妊具をその先に垂らしていた。

 

「うわ⋯⋯。いっぱい出てますよ、これ」

 

 いろはは俺の脚の間に入ると、嬉しそうにそう言って肉棒を握る。滑らせるようにして使用済みになったコンドームを外すと、俺の目の前に掲げて見せた。

 

「やっぱりゴム着けてもらって正解でした。こんなにたくさん中に出されちゃったら、一回で妊娠しちゃいますよ」

 

 いろはは俺を興奮させる為に言っているのか、それとも天然なのか。

 そして次の瞬間、そんな疑問が馬鹿らしくなるような光景が目の前に広がる。

 

「見て下さい、これ。すっごい糸引きながら垂れていってます」

 

 コンドームを逆さにしたいろはは、何を思ったのか勃起を続けている俺の性器に出したてのザーメンを垂らし始めた。びくんびくんと仰け反る肉棒に、熱い生殖液がトロトロとかかっていく――。

 

「んっ⋯⋯、ん⋯⋯」

 

 肉竿を伝い落ちていった精液を、いろははその可愛らしい舌先で舐め上げた。睾丸にまとわりつく白濁液を、裏筋をトロトロと流れていくそれを、全てその口内に集めていく。

 

「ん⋯⋯っ。はぁ⋯⋯まだまだ、濃いですね」

 

 こくんと白い喉を鳴らすと、またいろはは俺の精液を嚥下した。浮かべた笑みはもう、小悪魔なんてものではない。性の大悪魔だ、こんなの。

 

「いろはっ」

「きゃっ、ちょ⋯⋯。先輩⋯⋯?」

 

 いろはをベッドに引っ張りあげると、その勢いで彼女を仰向けに転がす。覆いかぶさるといろはは、僅かな不安をのせた表情で俺を見上げていた。

 

「もう一回、いいか?」

「いいですけど⋯⋯。ちゃんとゴムしてくださいね?」

「ああ」

 

 ベッドに置いたままだったコンドームの箱から、個包装を一つ取った。包装を破って薄っぺらいものを取り出すと、するすると自分の分身に装着させる。

 

「入れるぞ」

「はい⋯⋯。あ♡ あぁぁっ♡♡」

 

 ずぶんと正常位でいろはの中に進入すると、さっきよりも艶めいた声がその口から漏れる。期待するような目が、俺を捉えている。

 やっぱりこいつは、わざとやっていたのだろう。俺を興奮させて、見事なまでに手球にとって、そして――。

 

「動くぞ」

「あぁっ♡ は、いっ♡ んんっ♡ あ、あぁ⋯⋯っ♡」

 

 そして乱されたいのだろう、いろはは。俺に火を着けたらどうなるかなんて、身をもって知っているはずなのだから。

 いろはの両脇に手を突くと、パンッ、パンッと音が鳴る程に深く、激しく彼女の身体を貫く。さっきよりも滑りの増したいろはの膣内が、俺を迎え入れるようにまとわりついてくる。

 

「あぁ♡ あぁぁ~~――♡♡ これっ♡ んんっ♡ すっごい、です♡ あぁぁっ♡」

 

 いろはの目が、声が、淫欲にまみれていく。もの欲しそうに開かれた口が艶かしくて、俺はその唇を塞いだ。

 

「んんんっ、は、んっ、ンんぅ、ん~――♡」

 

 また舌を絡ませ合いながら、いろはの最奥に肉棒を送り届ける。背中に手を回してきつく抱き締めながら、大きなストロークでいろはの膣内を突き続けた。

 

「んぅ、んんっ、あ、あぁぁぁっ♡♡ せん、ぱいっ♡ 興奮、しすぎです、よ♡ あぁぁっ♡」

「はぁ、はぁっ⋯⋯。興奮させたの、お前だろうが⋯⋯っ」

 

 もう一度いろはの脇に両手を突くと、彼女は俺の首に腕を回してくる。そのまま性の運動を続けていると、また脳を蕩かすような、耽美な声が俺を迎えた。

 

「せん、ぱいっ、あ♡ 先輩ぃぃっ♡ 好きって、あ♡ 好きって言ってくださいっ♡」

「うぁ、は、あぁ⋯⋯。好きだぞ、いろは。はぁ、あぁ⋯⋯っ」

「あぁぁ♡ ん、は、あぁ⋯⋯♡ こんなえっちな、わたしでもですか⋯⋯?」

「はぁ、はぁ⋯⋯っ。ああ、どんだけエロくなっても、それがいいんだよ、いろはは」

「んっ、あはぁ⋯⋯っ♡ 微妙な言い方ですけど、あんんっ♡ 嬉しい、ですっ♡ あぁぁっ♡♡」

 

 いろはそう言って首に回していた手に力を込めると、俺の頭を引き寄せてくる。トロトロに蕩けた声を出すその口を塞ぐと、また舌同士を絡ませた。

 タンッ、タンッと、音を立てながら性的な部分がぶつかり合う。くぐもった喘ぎ声が、頭の真ん中に熱を集めていく。

 

「は、あぁ⋯⋯。いろは、もう、出る⋯⋯っ!」

「あんんっ♡ あ♡ はいぃっ♡ 出してください♡ せんぱいの、たくさんっ♡ あぁ♡ あぁぁ~~――♡♡」

 

 俺はいろはを見つめながらズブンッ、と一番奥までペニスを突き入れると、その奥に向かって射精した。強烈で圧倒的な快感が背中を駆け上がり、身体を仰け反らせる度に快楽が出口を求めて暴れまわる。肉棒はドクドクといろはの中で、濃厚な吐精を続ける。

 

「はぁ、うぁ⋯⋯。いろは、声大き過ぎるぞ」

「あぁぁ♡ でも、これっ、んんんっ♡ すごすぎて、んぁぁあっ♡ ぅぅううっ♡♡」

 

 いろはは俺の射精が終わっても快楽の向こうから帰って来られないのか、ビクビクと身体を震わせる。

 まったく、これもわざとなのだろうか。

 そんな姿を見せられたら、バカみたいに嗜虐心を刺激されてしまう。また彼女の身体が欲しくなって、堪らなくなる。

 

「いろは。もう一回、いいよな?」

「あぁ、んっ♡ はい⋯⋯♡ でもちゃんと、ゴムは換えてくださいね?」

 

 きっとこれはいろはの思い描いた筋書き通りで、俺はまだ彼女の手の上で踊り続けているのだろう。

 しかしそれもそれで、悪くない。むしろそれが、いいまである。

 そんな事を考えながら、俺は再びいろはに覆いかぶさるのだった――。

 

 

       *       *       *

 

 

 カーテン越しの斜陽が、俺たちの身体を照らしていた。身体は気怠く、身を起こす気力もない。

 

「は、あぁ⋯⋯。先輩、本当に絶倫ですね。まさか二箱目まで使うなんて」

「いろはがエロすぎるからだろ⋯⋯」

 

 ベッドに二人寝そべって、天井を見上げる。いつの間にか着ていたエプロンは取れてしまったから、いろはは生まれたままの姿になって俺の腕に乳房を押し付けていた。

 行為が終わってみれば、もう夕方だ。昼飯も忘れて勤しんだ結果、ベッドの上には使用済みのコンドームが散乱しているという、何とも怠惰で淫猥な光景が広がっていた。

 

「あ、そのゴムください」

「へ⋯⋯?」

 

 いろはがそう言って指差したのは、萎えたペニスに引っかかったままのコンドームだ。中には放出したままの内容物が入っているが、流石に薄くて量も少ない。

 とりあえず言われた通りにそれを外して渡すと、いろははぐっと顔を近付けてくる。そしてゴムを持ち上げ──やばい、飲まされる──と、そう思った瞬間。

 カシャ、と小さくシャッター音が鳴る。

 音の出どころを見ると、いろはの携帯の中で俺といろはは頬をくっつけあっていた。いろははその口に使用済みのコンドームを咥えたまま、バッチリ笑顔を決めている。

 なんだ、これ⋯⋯。流出したら女子アナとかが干されちゃうヤツじゃねぇか。

 

「⋯⋯そんなの撮ってどうするんだ?」

「今日の思い出ですよ。二人の」

 

 そう言われて思い出して見れば、初めていろはと出かけた時もそんな事を言って写真を撮った記憶がある。それにしても何故その絵面なんだとは思うが。

 

「先輩」

 

 その声に振り向くと、ゴムをどこかに片付けたいろはが俺の方を見ていた。妙にいい笑顔をしているなと思って見ていたら、唐突に唇を塞がれる。

 

「大好きです、先輩のこと」

 

 散々乱れた後とは思えないぐらい、いろはの笑顔は恋する少女然としていて、思わず見惚れてしまう。言葉で何か返す代わりにその身体を抱き寄せると、いろはは額を俺の肩口に擦り付けた。

 

「今度は一週間後ですね」

「ああ⋯⋯。どっか行きたいところとか、あるか?」

「いいえ。⋯⋯でもしたいことなら、あります」

 

 その言葉とともに向けられた表情は、吸い込まれてしまいそうなほど無垢な笑顔で。

 やはり一色いろははどこまでもあざとくて、可愛らしい。

 

「⋯⋯たぶん俺と、一緒だな」

「ええ、きっと一緒です」

 

 そう言っていろはは、チュッと音を立てて唇を啄んでくる。

 だから俺たちは何度も何度も、戯れ合う小鳥か猫みたいに。

 本当に数え切れないぐらいのキスをして、言葉にならない想いを伝え合うのだった。

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