なんとか目的の村に到着するも、ナメクジたちはルーシェを気まぐれに責めたてる。
皇族たるルーシェは村人たちの前で肛門悦楽に震え、羞恥を晒すことに……。
村の内と外の境を示すもの。看板と門柱が見えてきた。飾り気のない書体で『どいなか村』と印字されている。
「ここが……」
目的地に無事到着し、ルーシェは安堵の息を吐いた。
城下から遠く離れた小さな村である。この村の住人が、帝都を騒がせる女武芸者誘拐犯の姿を目撃したというのだ。今までまるで尻尾を掴ませなかった彼ら。そんな連中を一転、一網打尽にできるかもしれない。ルーシェは改めて気を引きしめる。
「んんっ……」
精神に力を入れると、身体の方にも影響があるのだろうか? 自分の中で、なにかが窮屈そうに身をよじった……気がした。
忌まわしい快楽の予感にルーシェは身構える。しかし単なる思いすごしだったらしい。身体に異常は起こらない。ルーシェは再び、肺に溜まった重い空気を追いだした。
どいなか村までの近道である森中。ルーシェはそこで大ナメクジの魔物であるスラッグの群れと遭遇し、不覚にも寄生を許してしまったのだ。彼女の直腸内には今、二匹の軟体生物が居座っている。
衝撃を振りはらい、再び歩きだしたときは大変だった。スラッグが侵入するために広げられた菊花。一足ごとにそこが甘く疼き、腰が砕けそうになった。愛槍を杖代わりにせねばならぬという、武人としてあるまじき醜態を誰にも見られなかったのは僥倖といえる。
現在、ルーシェはスラッグから受けた陵辱を完全に脱したように見える。胸元にまで広がっていた朱色は落ち着き、下半身の粘液痕も蒸発した。金髪のポニーテールと優美な軽鎧が、彼女の凛々しい美貌を変わらず飾っている。
だが寄生されたという事実は消えることはない。スラッグ寄生症は駆虫薬で簡単に対処することができるが……。あいにくと、ルーシェはそれを持ち合わせていなかった。
――早く、誘拐犯の目撃者に会わなくちゃ――
それでもなお彼女の脳裏に浮かぶのは、自分の身体のことではない。アトラスの民を脅かす者どもを誅すため、ルーシェは歩を進めた。
ルーシェはまず村の役所を訪ねた。誘拐犯に関する情報が上がっているのは、間違いなくここだろう。その読みは正しかった。
「は、はい……。怪しい男の話なら昨日の夕方、リンちゃん……、いや、リン・メイフィールドという娘から……」
「気にしないで。楽にしてちょうだい」
ルーシェはこう言ったものの、ルカクと名乗った職員の緊張に変わりはない。両肩がぐっと上がり、自ら首を絞めているようである。実際、彼は呼吸がしにくそうだ。本来そこまで恐縮しなければならないのは、朝方に急に押しかけたルーシェの方なのだが。
「まだ寝ているみたいなので、私が呼びに行ってきますね。もうしばらくお待ちください!」
ルカクはそう言うとカウンターを飛びこえて役所を飛びだした。転げそうな全力疾走に、ルーシェは心配になってしまう。
リンという娘は単なる誘拐犯の目撃者ではなく、連中を撃退した猛者であるらしい。今までの被害者は皆、連れ去られているというのに。
――市井にも実力者はいるのね――
当たり前といえば当たり前の話である。彼女もそうだった。ルーシェが以前の事件で知り合った、怪力の女剣士を思いだした瞬間……。
ず……、ずずぅ……。
「んんっ!? くぅっ!」
自分の内部から、そんな音が聞こえた。恐れていたことがついに起こった。スラッグたちが運動を開始したのだ。
件の女剣士の顔は、淫蟲との戦いを思い起こさせた。一年前、森で起こった事件。思わぬ真相に辿りついたルーシェと仲間たちは解決のために奮闘した。彼女たちは、そこで……。
「くっ、うぅ……! あ、あぁぁ……」
回想が強制中断される。そう。今のルーシェを苛むのは過去ではなく、紛れもない現在なのだ。
腸を降りてきたスラッグがアヌスから顔を出しはじめていた。裏門をぐるりと、粘体で撫でられる感触……。腸とは関係のない部位のはずなのに、子宮が潤みだすのがはっきりとわかった。
「あぅぅ……、っ! ぅ、ぐうぅ……!」
「ん……あれ?」
男の声がした。そういえば役所には、女性を暴行しようとしたならず者が捕らえられているとルカクが言っていたような気がする。彼を捕えている牢獄は、ルーシェが通された応接スペースの死角にあったのだ。
「いい匂いがするなぁ……、女の……。間違いねぇ! 愛液の匂いだ!」
「!」
ルーシェの顔が真っ赤に染まった。慌てて下を見る。彼女のビキニタイプのボトムスには、くっきりと蜜染みができていた。いや、胎内から吐きだされた滴りは着衣を超え、クッションにまで広がっている。ルーシェを座らせる前、ルカクが慌てて持ってきた代物であった。
「うぅ……っ! うぁっ! あっ、あぁ……っ!」
異種が押しつけるエクスタシーは唇を無理やり開かせ、甘さが溶けた息を吐かせる。宿主の羞恥など知ったことではない。スラッグたちはそう主張するようである。下賎な生物とは思えないほど丁寧に、ルーシェへ快楽を送りこんだ。
「あぁ~。やっぱりいいなぁ、女が発情した匂い……。昨日の女もオレがあぁして、こうしてやれば……。クソッ、なんでいいところで邪魔しやがったんだ、あのアマ……。いや、今度はあいつをヒィヒィ言わせて……」
ならず者は嗅覚と妄想癖は人一倍のようだが、聴覚と注意力は散漫なようである。蜜香には気づいたが、ルーシェの喘声に気づいていない。
なんとなく説教をかましたくなる男だが、そんな場合ではない。淫動に耐え切れぬことを改めて実感し、ルーシェはスラッグ用の駆虫薬を調達することを決意する。
「っ……!」
そろりそろりと立ちあがる。ルーシェが腰かけていたクッションには、コップの水をぶちまけたような跡がくっきりと残っていた。
発情の匂いを放つ蜜濡れ。ルーシェはクッションを裏返し、それを隠した後で役所を出た。
役所を飛びだしたルーシェだが、初めて訪れた村である。当然、店の位置など知る由もない。それでもとりあえず、大通りの方角へ向かおうとしたときだった。
「あ」
道に老婆がいた。曲がった背をこちらに向けて、えっちらおっちらと歩いている。ルーシェは小走りで彼女に近づいた。
「お、おはようございます」
「あー? あ、おはよう」
頭巾、眼鏡、ショールといったお馴染みの装備を身につけた、総白髪と皺深い顔の老婆。田舎の老人の、まさにステレオタイプといった風貌である。
「どうしたね、お嬢さん。なにかお困りかね」
やや聞き取りづらい発音だが、余所者に対しても親切な言葉である。どうやら柔和な性格も、ここの気風そのものらしい。
「実は、道具屋を探していて。この辺りにないでしょうか?」
「道具屋ね。道具屋……」
そう言ったきり、老婆は黙りこんだ。そのまま、時計の長針が一周するくらいの時間が優に経過する。不安になったルーシェは、膝を折って彼女の顔を覗きこんだ。老婆は目を閉じて眉間に皺を寄せ、必死に記憶を検索しているようだった。
「う……っ!?」
ルーシェの姿勢が変わったからだろうか。スラッグたちが再び蠢きだした。
ナメクジの寝床たる直腸は、地面と垂直である。重力に引かれたスラッグたちは粘液を分泌し、腸壁にしがみつこうとする。
ちゅぅっと、ごく小さな面積に鋭い性感が走った。もしかしたら軟体生物は、平常は地を舐めている口をも使ってルーシェへの寄生を続けようとしているのかもしれない。
「う……っ、あ、あぁぁ……!」
ルーシェが淫悶に耐えている間に、ようやく老婆は道具屋までのルートを思い出したようである。
「あぁ、そうそう。道具屋はここから南に……。あら」
老婆は上まぶたが垂れた目で、ルーシェを見上げた。
「ありゃ、随分と色っぽいねぇ。娼婦さんかしら」
ルーシェはアトラス帝国の第四皇女である。皇帝の直系たる彼女を娼婦呼ばわりなど許されざる不敬なのだが……。今のルーシェには、それを否定できない。
顔は熱く、視界もぼやけている。紅潮した頬と潤んだ瞳は、商売女の媚態と見られてもおかしくはあるまい。普段なら彼女の高貴さを彩るはずの艶やかな金髪と装飾された軽鎧も、男を誘惑する小道具に映ったのかもしれない。
老人の言うこと、そして何より処置は一刻を争う。ルーシェは老婆に礼を言い、教えられた道を進みはじめた。
「くぅ……! はぁ、あ、あぁぁ……!」
腰をくねらせ、内腿同士を擦りあわせながらよちよちと歩く。ナメクジから与えられる快楽から口は自然と半開きになり、彼女が通った後は香水を思わせる淫匂がする……。
老婆の勘違いは正しいと裏付けるように、ルーシェはまるで本当の娼婦のような様を晒していた。
幸いなことに道具屋は既に開店していた。ルーシェは身体をよりかかせて扉を押しあける。
「いらっしゃいませ」
店番の青年が愛想よく挨拶してくれる。帝都から遠くに位置しつつも、どいなか村の道具屋の品揃えは悪くなさそうだった。ルーシェはできるだけ足早に……それと同じくらい慎重に、カウンターへ歩みよる。彼女の苦労は実り、腸内のスラッグは大人しくしてくれていた。
「駆虫薬……、スラッグ用の駆虫薬を探しているの。あるかしら?」
「はい。ございますよ」
青年はそう言うと、ルーシェに背を向けて奥の戸棚を開けた。
ずくん……っ、ぐにゅり……!
「っ!! ……ふぅ、う……!」
あんなナリで、耳がついているとでも言うのだろうか? ルーシェが駆虫薬という言葉を口にした途端、寄生したスラッグどもが暴れだした。
一匹は肛門に向かった。ルーシェの秘された裏華。その花弁を舐めとかそうとする。可憐なすぼまりの縁を軟体が丁寧に周り、粘液を擦りつけた。
もう一匹は奥だ。猥褻な生物独特の嗅覚だろうか。正確に子宮の裏側にへばりついた。続いて、体内を揺するように運動する。淫謀は見事に機能し、震盪が子宮全体に伝播する。
「ぅあっ……! あっ、あぅぅっ……!」
アナル、ポルチオ、そして子宮そのもの。ルーシェの性感帯をスラッグは責めたてる。あるいはこれは、彼らの説得なのかもしれない。異類の快楽を与えてやる代わりに、貴女の腹を貸してほしいという……。
気づけば、道具屋の青年はカウンターに戻っていた。彼の鼻の穴は大きく膨らみ、顔を赤くしている。興奮しているのだ。その対象は言うまでもなく、ルーシェの痴態である。
「あ……、こ、これは……っ、ぅ、ぅうんっ! あ、はぁぁッ!」
言い訳は己の内部から跳ねつけられた。肛門は責めるスラッグはもはや半分顔を出し、ルーシェの菊花を堂々と舐食する。奥に侵攻したスラッグはぶるりと胴震いし、高貴な血統を育むための子袋を乱暴に揺らした。
二匹のナメクジからのクリティカルヒットを受けて、ルーシェは人前で絶頂を迎えてしまった。
青年が生唾を飲む音が聞こえる。だが彼は何事もなかったかのように口を開いた。
「これ、お探しの聖水浣腸です。お代はけっこうですよ」
「え……」
「いやぁ……、お困りのようですし。それに、いいもの見せてもらったので」
平民は好色な目線で、皇族であるルーシェの全身をねぶっていた。
ルーシェは侵すナメクジの快楽は、とうの昔に全身を蝕んでいた。大きく開いたデコルテにまで広がった朱色、無意識に溢れる涙と唾液で濡れた金瞳とも唇。もしかしたら彼の鼻腔にも、ルーシェの花園から漏れだした蜜香が届いているのかもしれない。
「っ、……ぅぅ……。あ、ありがとう……」
羞恥を煽られても、礼を言うべきなら言うのがルーシェだ。袋詰めもされていない聖水浣腸を手にして、ルーシェは道具屋を辞した。
――もうダメッ……! こ、ここで……――
道具屋から出てまだ幾ばくもない。しかしナメクジのもたらす肛門快楽は、歩行すら困難なところまでルーシェを追い詰めていた。
たまらず、村道脇の木陰に飛びこむ。多少はルーシェの姿を隠してくれるが、完全にではない。
まだ早い朝方。近くに通行人はいない。しかしルーシェが事を終えるまでそうだという保証は、どこにもない……。
ためらいつつ、ルーシェはビキニを脱いだ。垂れながした蜜液は衣類の吸湿量を遥かに超え、色がすっかり変わっている。濃い愛液の匂いが、自身の鼻にまで届いた。
「……ッ、……」
自分の身体は、ナメクジに昂ぶらされきってしまった。その事実をいやと言うほど突きつけられ、ルーシェは歯噛みした。
だがこの恥辱ももうすぐ終わりにすることができる。
ルーシェは両膝を大きく離し、その場にしゃがんだ。和式便器で用を足すような格好だ。皇族が屋外でする姿勢ではない。
しかし彼女はもはやそんなことは頭になかった。続いて腰を捻り、浣腸のノズルを肛門にあてがう。彼女の裏門はすでに、自分のものかナメクジのものかもわからない体液で湿っている。挿入は容易だった。
薬液が注入されると、ルーシェの下腹部は迅速かつ過敏に応えた。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁっ……! あ、あぁ……」
ルーシェは無事、スラッグの寄生を処置できた。地面にはすっかり液状化した、ナメクジだったものが広がっている。二匹分ということもあり、量はかなり多い。名残惜しげに立つ湯気は、ついさっきまでルーシェの体内にいたのだ……としつこく主張しているようである。
ルーシェは立ちあがろうとするも脚に力が入らない。陰部を見せびらかすような蹲踞の体勢で、内腿を震わせるだけ……。騎乗位で悦楽を貪り、疲れ果ててしまった淫女のようであった。
身体が動かないときに頼りになるのは気力だ。ルーシェは歯を食いしばり、悦楽の余韻を振りきる。
「…………っ! ん、はぁ……っ、はぁ、ぁぁ……」
快炎は未だに美体を炙っている。自身を鼓舞するため、ルーシェは己の為すべきことを言葉にした。
「早く……事件を解決しないと。役所に戻らなくちゃ」
下劣な軟体生物に寄生され、羞態を晒した直後である。しかしルーシェの瞳はもう前を向いているのだった。
〈了〉