いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
休日、早朝。
タッタッタッ、と軽快な足音が、ニノミヤ公園内を巡る。
そもそもの外見がモデル並みに整っている上にスタイルもよいのが日紫喜美南という女だ。それがボディラインも顕な短パンタンクトップ姿で、しかもかなりの速度でのランニングをしていたためか汗だくで荒い息を整えながらスポーツドリンクをごくごくと飲み干している。
……見せつけるように。
当然、周囲の視線を集めるのだが、何故かこの辺りには不思議と美南からしても少年と呼ぶべきのような、そんな感じの男の子しかいない。
そんな彼らの視線が突き刺さる中、美南はゆっくりとベンチに腰掛けクールダウンのストレッチ、いや、周囲の少年たちへの誘惑となるように、脚を抱え、体をほぐしているように見せかけつつ、短パンの裾から下着をチラ見せしたり、その形の良い胸が脚を押し付けられて形を歪ませるところをじっくりと観察させる。
聞こえるのはわずかにつばを飲み込む音ばかり。そんな状況で、ふらふらと引き寄せられるように近づいた男の子が、ご褒美をせがむかのように、上ずった声を出す。
「お、お姉ちゃん、言われたとおり、僕の友達を集めておいたよ……!」
「ええ、えらいえらい。ちゃんと集めてきましたね」
「うん! だ、だから、僕にももっと、おっぱい見たりさわったり、せっくすさせたりしてくれるんだよね!?」
期待満々な男の子の様子に、美南はストレッチを続けながら、ふと湧いた悪戯心を口に出す。
「さて、どうしましょう。お友達を連れてきて、とはいいましたけど、そんなこと約束しましたっけ?」
「えっ……そ、そんな……」
ガーン、あるいは絶望の声を上げる男の子、もしくはその周りの男の子たちも。
それを見て満足気に美南は口元を歪ませ。
「ふふふ。それじゃあ、まずは……」
「いや、何やってんですか生徒会長」
スパーン!
そんなタイミングで、俺は生徒会長の頭を引っぱたいた。
◇
蜘蛛の子を散らす用に周囲の男の子たちが逃げ去った後、俺は生徒会長の隣に腰掛ける。
「えっ……え、あ、あの、えっ? あ、あなた、誰、ですか……?」
衝撃に呆然としていた生徒会長が、叩いた頭を抑えつつそして困惑しつつ俺に聞いてくる。
「同じ学校の生徒です。いや、まあ、その……あんないたいけな子たちに手を出そうとしてるのを黙ってみているのは流石にまずいでしょう……?」
ぼ、と生徒会長の顔が真っ赤になった。
……ん……?
「……後は、そこの植込での青姦ハメ撮りに、公衆トイレ前での全裸露出自撮り、なんかエグい形状のディルドーで……」
「……」
そして、冷や汗がだらだらと凄い勢いで……。
……あれ?
「や……やばい、みられてたみられてたみられてたどうしようどうしようどうしよう……」
……記憶が、ある?
「あの、生徒会長。もしかして、色々とやったことの記憶あるんですか?」
「えっ!? ……き、記憶あったらまずいんですか?」
「……」
ふと思うところがあり、スマホを取り出し、例の裏垢を開く。
「あ、あっ」
めちゃくちゃに慌てる生徒会長をよそに、操られてるんだからな、と見るのを最低限にしていた裏垢をじっくり見る。
「生徒会長ですよねこれ」
「ふぐっ!? い、いえ、なんのことだか……」
まあとりあえず否定されるが、裏垢の生徒会長の様子を改めて見る限り、思い浮かぶフレーズは一つしかない。
それにしてもこの生徒会長、実にノリノリである。
……ま、今生では誰もわかってくれないボケは置いておくとして。
この人、覚醒しちゃった系かい……。麻衣子とか古谷とかの同類かあ……。
なんだろうな……催眠術師に催眠を受けて、アレコレしたのがきっかけでどかーん、とかかなあ。ただ、まあ、
「ごちそうさまでしたじゃねえんですよねえ……」
「ひぐっ!?」
いやマジでな。
さっき見かけたお子様たちに囲まれて記念写真とかどこのエロゲー……エロゲーだったわ。
「……まあ、いいです。俺は生徒会長に淫事反省を促しに来たわけじゃありません」
「……?」
「まあ……ちょっと荒唐無稽な話なんですが、とりあえず最後まで聞いてください」
と。俺はここ数ヶ月における、仮称「シナリオ」の存在と、それの与える影響について話し始めた。無論、エロステ鑑定の事は除いて。
「とまあ、そんなわけで。今の所、俺は生徒会長がその催眠術師に襲われているのをなんとかしよう、と考えていました。無関係ならまだしも、知ってる人が意図に反して乱暴されてるのを放置とか目覚めが悪いですし、その催眠術師が別の人、あるいはもっと親しい知り合いに手を出さないとも限りませんから」
「……」
《鑑定結果》
・名前:日紫喜 美南
・性別:女
・非処女 初体験:瀧口 泰樹
・総性経験値:4427
・開花済み性癖:破滅願望(軽度)、露出癖(中度)、被虐癖(軽度)、倫理観欠如(軽度)、貞操観念崩壊(中度)
・状態異常:催眠・隷属(6%)、軽度疲労(慢性的)
相変わらず経験値の上がりは凄まじい。数日で上がる範囲ではない。
ただ、催眠の度合いが下がっているのはどういう理由だろうか……?
さて。
なにか気になるようで、考え込む生徒会長にはなんと声をかけたものやら。
「まあ……それでなのですが。生徒会長に、その催眠術師をどうにかする手伝いをしていただければ……と」
「……私に、生徒会長らしい振る舞いをとか、そんなことするなとか、そういうことを言いに来たのではないのですか?」
「は? いえ、生徒会長はこういう人だったのか、と思いはしますがそういうつもりは特には」
だって覚醒しちゃった人にそういうこと言ったって無駄だってのは麻衣子とか古谷が証明してるしな。
「なので、一次被害の解決、二次被害の予防。それが目的です」
「……」
「それで……今までのパターンからすると、今週頭ぐらいだと思うのですが、」
「すみません、ちょっとまってください」
「はい? どうしました?」
「催眠術師ってなんですか?」
「は?」
……は?
「……ええと。この場合チート性能な催眠を使って自分の欲望を一方的に満たそうとする輩を便宜上催眠術s」
「言葉の意味ぐらいわかっていま……チート性能とは?」
少しばかり不機嫌そうな生徒会長に遮られかけたが、逆に質問が増える。
……そうか、エロゲーの催眠のお約束を知らんのか、この人。
「そう……ですね。通常催眠とは一種の誘導であり、混乱法とか驚愕法とかあるのはご存知ですか?」
「それならば」
「では、それらの誘導ステップを全て省き、単一もしくは少数の手順で意識喪失から機械の再プログラミングレベルの暗示誘導や、果ては常識を置き換えたり、記憶の改変などを行うものを、チート性能の催眠と今回の場合呼んでいます」
「……まるで魔法か何かではないですか?」
訝しげにこちらを見る。そうです魔法かなんかなんですよ。
……話題には関係ないが、周りのお子様を誘惑するためのスレスレなスポーツウェアは直視できない。
「当たらずとも遠からずかと。で、そこに先程の話の『シナリオ』が絡んでくるわけですが……」
再びの説明フェイズ&質疑応答である。
しかし、生徒会長、本当に頭がいい、ということがまざまざとわかる。さっきまで自分の中に存在しなかった概念を、あっという間に理解していくのだから。
「……」
また考え込む生徒会長。といってもほんの数秒だが。
「そういうことであれば、催眠術師の心当たりはありますし、催眠手段もわかります。あなたの言うところのデバイス型でしょう。妙な音の出る道具を見た記憶があります」
「おお」
「ただ……」
ふと、そこで一旦言葉を切る。少し躊躇するような間を置いてから、
「少し、話を聞いてもらえませんか」
「……? ええ、はい」
断るようなことではないので頷く。
「よくある話なのですが……」
そう、前置きして彼女は話し始めた。