いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
女の子がいました。
家は、名家と言ってもいいでしょう。ただし、地元のと枕詞が付きますし、名家たる所以も過去の栄光のみ。つまりは地元でだけちょっとだけ有名な一般家庭でしかありません。……多少は裕福だったかもしれませんが。
さて、プライドばかり高くて、それに伴うべき人格を持ち合わせてはいなかった両親がその子にすることといえば、一つしかありません。重度の詰め込み教育、あるいはスパルタ教育です。ピアノ、習字、華道茶道に始まり、柔道剣道合気道。普通はそんな詰め込みをされたら過労で倒れそうなものですが、不幸なことにその女の子はある程度の才能があったようで、倒れるどころかこれら全部である程度の成果を出してしまいました。自慢じゃありませんよ、よく言うじゃないですか、十で神童十五で才子、二十過ぎては只の人、って。まさにそれでして。ただし、両親の認識はずっと神童のままでした。
もうわかりますよね、女の子がいくら努力しても、トップクラスの成績を出せなければ怠けるな、出せても当たり前で特に褒められることも何もない生活。習い事で良い成績を出したものそんな無限地獄の入り口でしかありませんでした。
さて、そんな時のとある夏休み明けのことでした。
成績を保つためには勉強時間を伸ばさざるを得ず、必然として睡眠時間が削られ、眠かったのでしょう。
ネットで調べ物をしていた時に、うっかり誤クリックしてしまいました。
何をかって?
成人男性向け漫画の広告です。
その女の子みたいな女の子が、プレッシャーに耐えかねて、ストレス発散に露出徘徊してたちの悪い男性に見つかって破滅する内容でした。
その内容はどうかと思いましたね。
もっとも、その場でコンビニにプリペイドカードを買いに走った女の子も女の子でしたが。
で、まあ、数時間その漫画を読みふけった後に、女の子は自宅から少し離れた公園に向かいました。
世界が変わりましたね。
得も言われぬ高揚感と、素肌を撫でる風の気持ちよさ。無論、誰から見ても破滅的な性癖です。
女の子にとって不運だったのか、あるいは幸運だったのかはわかりませんが、しっかり確認したはずの無人の公園でしたが、それを見ていたのが一人いました。
ええ、あなたのいう催眠術師です。
逃げようとした女の子は、手に持った機械から妙な音を出しつつ何事か語りかけられて逃げるのをやめてしまい……そして犯されました。ただ、女の子は無抵抗ながらも意識ははっきりしており、そして浅ましいことに漫画と似たような流れにとても興奮していたのです。
それから、夜毎に催眠術師に犯される生活が始まりました。
といっても、女の子の側も操られているふりをしての乗り気だったし、妊娠は御免ですのでその手の薬も用意しました。父親の名声が初めて役に立ったと思いましたね。
そして、あなたも御存知の通り、裏垢に写真を投稿したり……させられたり、女の子も女の子で公園にいた男の子を誘惑してみたり。
ええ、こう言ってしまってはなんですが、とても充実した生活でした。無論、いつまでも続くものとは思ってはいませんでしたし、あなたから話を聞いて、終わりにするべき時が来たとも思っています。
というわけで……ベタな話の組み立てでしたが、もちろん女の子とは私のことで、催眠術師にどうこうされたというより私自身の性癖が開花してしまったと、そういうべき状況です。
ぶっちゃけ、もうやめられないでしょう。
そんな女が、私です。
◇
「幻滅したでしょう?」
「いえ、特には」
「……!?」
「ベタな話ですし」
「!?」
いや、実にベタな話である。
そこで生徒会長が驚愕の顔を晒しているが、まあ特に気にするものでもない。麻衣子に比べればぬるいぬるい。
「べ、ベタ!? 自分でもよくある話といいましたが、ベタ!?」
「ええ」
エロゲーではな!*3
「そんなことより、催眠術師をどうこうするのが先です。見ず知らずの人を催眠にかけてどうこうする危険人物を放置しておけませんし、かといって官憲も当てにできませんので我々でどうにかする必要があります。協力してくれますね?」
「……」
「協力してくれますね?」
「いえ、あの、私としては今の話をするのもそれなりに決心がいる話だったのですが……」
……まあ、そうなんだろうけどなあ……。
「とおっしゃいますが、様々な重圧に爆発寸前で、今のようなはっちゃけに至らなかったら行き着く先は過労でバッタリ、しかありません」
「……」
「それに、今更禁欲生活、というのも難しいでしょう? 今以上に夢中になれるものが見つかるのであれば話は別でしょうが……ありそうですか? そういうの」
俺の問いに生徒会長は首を振る。
「でしょう? まあ……なので、その辺は一旦棚上げして、催眠術師をどうにかしたいんですよ。生徒会長以外にも少なくとも一人被害者がいまして……その、無惨なことになってるので……」
「無惨?」
きょとんとして問い返してくる生徒会長に、いうべきか言わざるべきか迷ったが……。
「真面目そうな方が、重度の露出癖と被虐癖を植え付けられているのを見てしまったので」
思い返すだに、あの無惨なステータスはやりきれない。何とかアフターケアをしなければあの人の人生は台無しまっしぐらである。
あの電車のOLさんの話をして、生徒会長も一旦気持ちを切り替えてくれたので、俺達はあの催眠術師をいかに無力化するかを話し合ったのだった。
◇
「……へへ、へ、今日もたっぷりぶちおkぐげぇっ!?」
あまり隠密とか気付かれないようにとかはやったことがなくて当然得意どころか苦手だろうと言えるのだが、事前に準備、あるいは下見をして気付かれないようにお膳立てすることならば可能である。砂地を踏まないように草の上を移動するルートの構築などなど。そして相手が恐らく一般人であり、その手の感覚が別に鋭くないと推測できるのならば尚更だ。
何をしたかって?
事前に打ち合わせておいて、非常に心苦しいが生徒会長を囮として俺は公園内の男子トイレ個室に隠れる
↓
催眠術師が現れたら生徒会長にスマホで単純な一報を入れてもらう
↓
催眠術師が生徒会長に気を取られているうちに近づいて外道制裁キック一発
↓
転がった催眠デバイスをインタラプト
である。
「ボタンが二つ……洗脳用と解除用かな?」
「て、てめ、なに、しやがっ……か、かえ、せっ!?」
ま、蹴り飛ばしたショックから立ち直れていない今のうちに。
デバイスのスピーカー部と思しき穴がたくさん空いているところの下に、二つ並びのボタンの左側を押すと、得も言われぬ不思議な音が流れ出てきた。それを催眠術師に向けて、念の為もう片手で催眠術師を指差し、
「お前は今ここで見たことを覚えていない。お前はこのデバイスを手に入れた経緯と、このデバイスを使って行ったことを覚えていない。お前はこのデバイスを使って犯した人のことを覚えていない。そしてお前は今から自宅に帰って寝るが、寝るまでのことを覚えていない。では行け」
数秒待っても催眠術師改め只の男が動かないので、もう一度同じボタンを押してみると音が止まり、同時に男がのろのろと動き出す。念の為警戒しながら道を開けてやると、そのまま公園の外に向かって歩いていった。
恐らく、使い方はこれで正しいのだろう。もう一つのボタンの効果がまるでわからないのがネックだが。
「終わった、のでしょうか?」
「恐らくは。重ね重ねすみません、囮なんかさせてしまって」
「いいえ。私が囮にならなければこうもうまくいくことはなかったでしょうし」
「そう言っていただけると助かります……で」
「?」
「……服を着てください」
「えー」
そう、囮になっていて、先の催眠術師のセリフから想像できる通り、現在生徒会長は全裸である。隣に男である俺がいるにも関わらず、隠そうとすらしない。俺が健康な男子学生であることを理解してほし……いや、理解してるんだからやってるんだろうな。
「手を出しますよ? って言ったらどうします? なんとなく反応が想像つきますけど」
にっこり笑って腕を広げられた。だから隠せ。
「はぁ……」
ずつうがいたい。
「とりあえず俺は帰ります。今なら間に合いそうな気がしますし」
「……間に合う?」
生徒会長はきょとんとしていた。