いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
「ふぅん、アルカヌスリーベルと、触魔、ねぇ……」
界外さんを救出したちょっと後。汚家近くの公園。
未だ人払い自体の効果は続いているようで、人通りがないのもあってこれからを話すにはぴったりであろう。
界外さんは、俺が買ってきたスポーツドリンクのでかいやつ2本と、最近流行りの完全栄養食ブロック2食分を瞬く間に食べ尽くすと、事情説明をしていた俺にそうこぼした。
界外さんの惨状はアルケインが指パッチンすることで、服の補修を含めて一瞬で綺麗になっており、なにそれその能力俺もほしい、と思ったが男が魔法少女になるのは大抵の場合悲惨な末路なのでまあそれはともかく……ん? なんか例外がいたような……まあいいか。*1
「なんかヤバいもんに捕まったケドぉ、気持ちいいからちょっとまいっかなー、なーんて考えてたわぁ」
その顔に、触手というわけわからんものに犯されていたショック、というものはまるでない。これについては、本人も言う通り、気持ちいいからいいか、という了見で済ませて良いものなのだろうか……と思うものの。
《鑑定結果》
・名前:界外 祐子
・性別:女
・T/3サイズ:145/84:56:80
・非処女 初体験:田代 祐三
・総性経験値:37232
・状態異常:なし
事実、後遺症の類が一切ないのである。
拉致監禁されて犯され続けていたのなら、普通に考えてその対象について軽度、あるいは一時的な恐怖症とか忌避感とかそういうのがあっても良さそうなものなのだが、それがない。つまり、精神的ショックをほとんどないし全く受けていない証拠となるのである。
……今気づいたが、総性経験値が3万7千代の前半の前半であることから、ここ3日であれこれされていたことが、今までの経験の1%にも満たないとか、そういう解釈で良いのだろうか……?
ゆえにけろっとしている、あるいは、一部のエロゲ登場人物特有のエロに関してはクソ強メンタルとかであろうか。
「どうせおシズが助けてくれるでしょ、って思ってたんだけど……」
ちら、と界外さんはこちらを見る。
「そうねー、盲点だったわ。おシズ頭雑っ魚だもんね、どこにいるかわからなかったからどうにもならなかったんでしょ。で、来たのがおにーさんとおねーさん……」
そう。
界外さんはアルケインを中田さんとして認識できていないのである。
俺はなぜ? 鑑定したからか? それとも単に気づいたからなのか? あるいはシナリオの外だから?
ドヤ顔しているマスコットをアルケインがまた握りしめているので、マスコットの顔色がだんだんと青白くなっていっている。
「で? それでおにーさんとおねーさんはどうするつもりぃ? 聞いたところ、触手? ってのはおねーさんじゃないとどうにもならないんでしょ?」
「そうだぽん! 魔力がなかったら触手は傷一つつけられないぽん! だからアルカヌスリーベルしか対応できないぽ……ぐぎゅぇ……」
ドヤ顔のマスコットを再びアルケインが握りしめる。
「それじゃ、今回のアタシみたいに連れ去られた人とか、どうやって見つけるつもりぃ? 3日かかってぇ、しかもおにーさんに手伝ってもらわないと見つからなかったダメダメさんはぁ? 魔法でサーチとかそういうのなかったのぉ? ……出力が足りなくて見つけられなかったぁ!? はー……クソ雑っ魚」
「ぽぉん……じゃ、じゃあそこの男に手伝ってもらうぽん! 拒否権はないぽん、触手を放っておいたら下手したら地球がコナゴナになるぽん!」
「おい、マジか」
そこで俺に期待されても困るし、なんか言い出したことが予想外過ぎて思わず突っ込む。
同様に、アルケインも、界外さんも嘘だろ、みたいな顔をしていたが、それが俺に向く。
「でも、そうなるとどうやってアタシを見つけたのぉ? おにーさんはぁ、魔法少女でも触手でもないふっつーの一般人なんでしょぉ?」
「いや、普通に聞き込みしたら偶然釣り上げたんだよ」
「はいうっそ~。アタシが捕まったときも今みたいに人気がなくなってたんだからぁ、目撃者なんているわけないに決まってるじゃ~ん?」
「……」
言われていることは道理なのだが……かといってエロステ鑑定を話すのは憚られると言うか何か想定外かつ致命的なバタフライエフェクトを何処かに確実に起こす予感がする。
「言えないのぉ? んー……これマジで言えないやつ? じゃあ次ぃ。ちょっと、そこの雑っ魚のミツキ君?*2」
「ぽぉん? 僕ぽん?」
握られたままのマスコットが返事をして首だけそちらを向く。
ミツキ君呼ばわりに疑問を覚えないのだろうか。
「あるんでしょぉ? だ~せ?」
「ぽぉん?」
「この私も契約してあげる、って言ってるの」
「ぽぉん……クソビッチはちょっと」
「いいから寄越せっつってんのよっ!」
渋面を作るマスコットを割と本気で殴る界外さん。でもクソビッチはあたってるんじゃないかな、あの総経験値量を見る限りは。
「ぽぉんっ!? 暴力反対ぽん!」
「その暴力をクソ雑っ魚にさせてる雑っ魚は誰だっつってんのよ! いいから寄越しなさい! 何があるの!? ステッキ? それともカード? コンパクト?」
「……しょうがないぽん……」
渋々マスコットは腰の後ろに手をやり、何かあるように見えないそこから変身用アイテムを取り出……
「……これ、モーニングスターだっけ? あとはハンマー、クロー、えー……確かジャマダハルにチャクラム? 殺意たっか」
「ぽぉん! アルカヌスリーベルは大人しめの文学少女だったから本を選んだぽん! だから役割が被らないものを選んだぽん!」
「……うん?」
並べられたアイテムをよそに、これには俺も界外さんも、当のアルケインも怪訝そうな顔をする。
アルケインはどう考えても正拳突きぶちかまして押忍って叫んで残心キメてるカラテカ系では?
「粗暴なお前にはコレがぴったりぽん!」
「お~け~お~け~、その喧嘩買ったげるわ」
その最初に出てきたモーニングスターの前でふんぞり返るマスコットと、明らかに苛ついてる顔でそれを取る界外さん……と、持ち手を持ち上げたところできょとんとする。
「あ、なーるほど、そういうアイテムなのねぇ……形はそんなに関係ないんだ……おいでなさい、マギアストラ!」
界外さんがそう呟いた瞬間、光りに包まれ、シルエットが裸となり、そこに各種衣装が次々と装着……つまるところ見事な変身バンクを披露して、界外さんも魔法少女としての姿になった。
外見だけなら文系清楚+魔女の要素を持ったアルカヌスリーベルとはまあ当然異なり、活動的で露出度が高い、ブーツとショートパンツにシャツと上着に複数の星の意匠。
つまるところ前衛系魔法少女である。
「あ~……やっぱりおシズじゃ~ん。おシズってばこ~ゆ~の弱そうだもんねぇ」
そして同じ魔法少女には認識阻害?が通用しないのか無効対象に入ったのか、アルケインを中田さんとして認識しており、ニヤニヤとアルケインを煽るように前かがみから見上げており、色々と魔力使用面においてこき下ろされたアルケインは引きつった笑みを浮かべている。
一方……
《鑑定結果》
・名前:界外 祐子
・性別:女
・T/3サイズ:145/84:56:80
・非処女 初体験:田代 祐三
・総性経験値:37232
外見が変わるので界外さんとして認識が結びつかなくなっていただけで、その姿でも界外さんだと知っていれば普通に界外さんと俺は認識できる。鑑定などするまでもなく、マギアストラ?が界外さんだとわかっているが、それはそれで念の為というやつだ。
「ざぁ~こざぁ~~こあたまよわよわ~」
「……ゆっこ?」
「補習室のじょうれ~んまじめにやるからぎゃくにたちわる~い」
「…………ゆっこ?」
「ガチでやってすうがくぜろて~ん、お情け問題すら見落としたざこざこおつむ~♪」
「ゆっこ」
うっわ、アルケインのこえひっく!? 自分でも暴力性能が高いとわかっているはずの相手を煽るのはやめていただきたい! トドメのあのパンチとかどれだけの破壊力があるか実験しようとすら思わんと言うのに! ……いや、もしかして見てないな?
「入学試験のお勉強あれだけやったのに、もう忘れちゃったのぉ~?」
「ゆっこ」
言うが早いか、アルケインがマギアストラに襲いかかる。
「そうやって暴力しかないからよわよわおつむに……ちょ、ま、マジで暴力に訴えないで!?」
いわゆる変身する前のベースの人の能力の差か、あるいは体格差か。力で抑え込まれるとマギアストラはろくに抵抗ができないようだ。
ところで、フルネルソンというものをご存知だろうか。
正式名称はフルネルソン・ホールド。関節技の一種で、後ろから、腕を相手の両脇を経由して、そのまま首の後ろで手を組んでホールド、そののちに締め付けに移る。
転生前の世において、かのジャイアントなお方の得意技らしい。
なぜいきなりプロレス技の説明を、と疑問に思われるだろうが*3、エロゲの体位にもフルネルソンと呼ばれるものが存在する。
ただし、最初に腕を通すのは両脇ではなく両膝の裏である。そしてそのまま持ち上げ、首の後ろで手を組むなり、ただ持ち上げているなり。相手の両腕は一応フリーだが、そんな窮屈な体勢にされて自由に動かせるようなものではない。
別名、恥ずかし固め……らしい。
つまり、今目の前でそれが披露されているのである。アルケインにより、マギアストラが抱え上げられて。
「磯田ー、てつだって、このままちょっとユッコヤっちゃってよー」
「痛い痛い痛い痛い体そんな柔らかくないんだってば!! あ、でもおにーさんならこのままも悪くないかも、痛い痛い締めないでぇー!!」
無敵……いや、ほぼ無敵かこの人。
ショートパンツ故にダイレクトにその部分、もしくは下着がさらされるということはないが、その体勢は地味に下着の端が裾からチラ見えしており、ダイレクトに見えるよりよっぽどやばいのではなかろうか。あとは腿とかが晒されており、なんというかこう、俺に直視しろというのは無理がすぎる。
「ねぇねぇ磯田、ちょっと手伝ってよ。なんて言ってたっけこういうの、えーと、そう、わからせ! わからせだよ磯田!」
「おシズ、それ違うと思うの、確かに私は小さいけど、それなら私がおにーさんを煽り倒して逆襲されないといけな、んぎぎぎぎぎ」
「いやあのそんな、今日あったばかりの人となんてですね?」
思わずしどろもどろになりつつ後ずさる。
「お?」
それを見たマギアストラが、あるいはアルケインが、こりゃあ面白いものを見つけた、と言わんばかりににやぁ~、と笑う。
「なぁにぃ? おにーさんもしかしてドーテー? ウフフフフ、いーよいーよぉ~。助けてくれたお礼も兼ねてぇ、おにーさんならロハで筆下ろししてあげちゃ~う。ホテル代もいらないしぃ、あっ、なんなら今ここでしちゃう? 今なら露出青姦やりほーだーい♪」
「なーるなーる、さすがカイチョーの知り合い、真面目く~ん。それなら3Pしよーよ、あたしだってゆっこ見つけてくれたお礼もしたいしー? 最近初物食べてないしー?」
「ちょっ!?」
やっぱりこいつら性経験値通りのクソビッチじゃねーか!
しかも言ってることから察して円光までしてるー!!
「あっ、病気ならだいじょーぶだよぉ、この間病院に行ってきたばっかりだし、ウリのときは絶対にゴムつけさせてるし」
「ねぇゆっこ、いっそゴム無しは?」
「あれ? あ、おにーさんならドーテーだし病気の心配ないし、いっそナマでやっちゃうのもありぃ……?」
「なしなしなしなし怖いこと言わないでください!!」
恐ろしいことを言わないでいただきたい!!
いずれにせよ、俺には刺激が強すぎる……。
「お前EDポン? どうしてあの状況で飛びつかないんだポン? 前の魔法少女とか、身元が絶対にバレないからってとっかえひっかぷぎゅぇっ」
ふざけたことを抜かしたマスコットはとりあえずはたき落として踏み潰した。
「おシズ~、ちょっと脱げないから脱がしてぇ?」
「あたしだって手が塞がってるっての。そもそもこれはお仕置きだってのは忘れたのかな~?」
「いたたたたたたたっ!? はー、ふー、もー……」
「人を脳筋呼ばわりするくせに、ゆっこだって赤点だらけでしょ?」
「キコエナーイ。じゃ、おにーさん、脱がせて~? 今なら私、抵抗できないし、しないよ~?」
「そうそう。脱がせて? 抵抗させないし、協力するよ?」
『だから、脱がせて~?』
俺は戦略的撤退を開始した。幸いにしてからかう比重が大きかったらしく、追いかけては来なかった。