いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
さて、それからしばらく。
不定期に発生する触手、そのバリエーションとしての不定形生物や怪人、異形型の怪人などをアルケインとマギアストラの二人は滅ぼして回っていた。
探知ができないが接近できればめちゃくちゃ強いアルケインと、探知ができる中~遠距離型のマギアストラのコンビは実にうまく噛み合っていたようで、こちらの行動範囲であればマギアストラが探知してアルケインが突撃、さらにそのバックアップとしてのマギアストラ、というコンビがえげつない威力を発揮していた。
特に、あのマギアストラのモーニングスターであるが、もはや持ち手とスターがチェーンで繋がっておらず、マギアストラの魔力操作によりものすごい速度かつ精度でスターがかっ飛んでくるのである。ガ○ダムハンマーがチェーンの軛を外れ、ホーミングして襲いかかってくると考えればその恐ろしさのいくらかでも伝わるだろうか。あまつさえ、魔力は籠もっているものの魔法を経由しない単純物理衝撃がダメージソースであるがゆえに、例の触手の魔法無効結界を素通りするという凶悪さ。物理無効結界を逆にその上から物理無効無効でぶち壊すアルケインとどちらが凶悪だろうか。ちなみに予想されることだが、マギアストラは魔法攻撃も強い。
日曜日、ファストフード店。
「で、なんで俺まで招集されたんだ?」
「んー、ノリ?」
「おい」
あっけらかんと言ってくれるアルケイン……ここでは中田さんにしておくか、にジト目を返す。そのとなりには界外さん。
最初に界外さんを助け出したとき以来、この二人は事あるごとに俺を童貞弄りするか、ベッドへのお誘いを掛けてくる次第である。ぶっちゃけ、生徒会長が3人に増えやがった、以外の感想が出てこない。誰かに手を出せば芋づる式に全員に手を出すことになって、俺の尻穴が破滅するであろう。
「まーまー。それもあるけどぉ、これから話そうとしてることに、おシズが頭よわよわだからついてこれなさそうだから、参謀役ね」
「参謀……ねぇ」
招集メンバーは中田さんに界外さん、そして*1マスコット。
つまるところ、招集の目的は作戦会議である。
界外さんの発言に俺は胡乱なものを返す。
「で、結構な数を今まで倒してきてるんだけど、ミツキ君いわくどいつもこいつもただの末端かその少し上ぐらいらしいのね。つまり組織自体にはちっともダメージが入ってない、ってことなのねぇ」
さらさらと、トレイに敷かれたナプキンに、今まで倒してきたとされる連中のイラストがバツマーク付きで並べられる。先に述べた通り、触手型、あるいは不定形、人型、異形型……およそ手下と呼べそうな者たちである。聞く限り最下級戦闘員、あるいはそれのリーダー程度までしか遭遇しておらず、末端の暴走を潰したのか、組織行動の端緒を切り取ったのかの判断がつかない模様。そのくせ、女性を拉致して凌辱することだけはしっかりやるので放置もできないとか。
「というわけで、まず第一。敵、というか、触手とか怪人とかの生産元の見極めが必要ねぇ」
「そんなのいないぽん、あいつらは知性のない、本能だけで活動する害獣ぽん」
「そんなわけないでしょ……」
界外さんは大きくため息をつきつつ、ぼやくように言った。俺も同感である。中田さんは……だめだありゃ、はてなマーク出てら。
ミツキ君はこう、一番最初の触手のイメージだけで物事をすべて見ているような、そんな気がする。だから俺もいつまで経っても不審な男扱いのままだ。
「人払いして奇襲して拉致監禁、というどう考えても計画性というオツムが必要なことがぁ、本能とかいう計画性のないものにできるわけがないでしょぉ~?」
そうなのである。
初回のあの触手とかも、巣を作り、連れ込む、という単純なステップしか踏んでおらず、似たような事例でも同様の2ステップしか踏んでいない。ただ、考えてほしい。
『巣』を作る場所が、どのようにしてあの汚家、あるいは類似例の廃屋などを対象にして決められ、そして行われたのかがわからない。
あるいは、『巣』及びその周辺に仕掛けられていた人払いは一体誰がどのようにして用意したかもわからない。
触手の本能任せのアレコレでは、結局これらが不可能である、という結論しか出てこないのだ。
例え話になるが、熊は人里に餌を探しに来ても、そこに住み着いたりはしない。あくまで住処は山林であり、そこから出てきて市街地に住み着くことはほぼない、ましてや人払いの結界みたいなものを設置したりもしない。ミツキ君から聞いた限りの生態では、本来の生息域である魔界?から出てくることすら不可能だ。
「そんなわけでぇ、私がまあとりあえず魔力最大で探知打ってみたけどぉ、何の成果も得られませんでしたぁ、ってわけ」
「おや、何も?」
「うん、な~んにも」
中田さんが溶けた顔をしている。
「おシズ向けに説明しておくとぉ、磯田にSNSとか掲示板サイトで情報収集してもらったわけぇ。で、このあたりでしか、人がちょっと行方不明になって、なおかつ戻ってきた事件って今のところ起きてないわけぇ」
界外さんが拉致された際にも、界外さんがいないことによる話題が多少SNSに上っていたほか、救急車が人払いされている地域を抜けようとして不可解な迂回をした件がニュースになっている。この情報をオカルトTLに事さらに強調して流してやったところ、住民がそれはもう喜んで喜んで、似たような事件がないかあの手この手で探し回ってくれたわけだ。俺としてはその結果を掬ってくるだけでよく、今、オカルトTLではこの街はとてもホットな話題になっている。
それはともかく、そういう手段を使ったり、自分でも検索してみたところ、他に類例がないので、このあたりでしか触手は活動していないようだ、と結論付けたのだ。
「だから、このあたりに拠点とかがあるはずなんだけど、それが見つからない状況、ということねぇ。ここまではいいかしらぁ?」
界外さん、ご自分が色んな意味で小さいことを自覚しており、それを活かすためとでも言おうか、いわゆるメスガキコーデと口調、仕草を意図的に取る人なので、いっそ頭が悪いかと思われるが、単に勉強をしないから成績が低いだけで、地頭は相当に良いと思われる。割とここまで分析が進んでいるとは思わなかった。
界外さんからの確認に、俺とミツキ君が頷く。中田さんはとりあえず頷いている。
「そういうわけでぇ、これ!」
「うん?」
カバンから取り出されたのは、バインダーに挟まれた書類の束。なんかの資料のコピーのようだが、これはいったい……?
「最近行方不明になった人の写真付きリスト! 警察署からコピーしてきたの!*2」
「お前何やってくれちゃってんのぉぉぉぉぉ!?」
思わず立ち上がって叫ぶ。
「どーどーイソダ、落ち着け、みんな見てるわよぉ」
「あっ」
周辺全方向に、すみませんすみませんと頭を下げてから座る。さしもの認識阻害も、ミツキ君とかの致命的なものを隠すだけで、何をしても平気でというわけではないそうな。
それ用のものは変身状態なおかつ自他域全ての魔力コントロールが必要なのでめんどくさいかつ疲れるとか。
「アタシを見つけてくれた時みたいな手腕、期待してるわよぉ」
投げキスなんぞされながら言われても、厄介な……としか思えねーんですよテメー。
「もちろんお礼は用意する。体が報酬とかそんな腐ったこと言わないし、どうやって調べたのかも絶対に探ったり聞いたりしない。……そのかわり、終わったらそれ全部シュレッダーに掛けて捨ててほしいなぁ~」
「一般家庭にシュレッダーがそう簡単にあると思うなよ……」
数秒前までのからかうような調子から、表情も雰囲気もがらりと切り替えられた真面目な顔に、思わずぼやくような調子で了承してしまうようなことを言ってしまう。
それもこれもミツキ君がちきゅうがどっかーん、みたいなジェスチャーを繰り返しアピールしてくるのが悪い。
俺が呼び出された理由はこれか。
いつか吠え面かかせてやるからなお前ら。