いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
次の目的地は神社。
不穏な視線や雰囲気を醸し出していたオッサン御老人達が、不思議なぐらい浄化されて昨日見たようなのほほんとした雰囲気になった教会からそう遠くないところにある。
というわけで、俺達5人は、ぞろぞろと連れ立ってその神社に向かっていた。
「なんで俺まで……」
「今のところ幻影幻覚が効かないと言えるのがパパだけだからだね~」
「たすけて」
そう、なんでか俺もその攻略メンツに入れられてしまっている。
“淑女の尾”には全くと言っていいほど歯が立たなかったのだが、認識阻害などへの備えとしての同行を断りきれなかったのだ。
魔法的な能力が高いと思われるマギアストラとて、ビルの隠蔽などを見破れず、一方で俺はそれを特に意識することなく突破していたという前例があるせいで、同様の事態があると困る、という論に反論できなかったのだ。ゲームシステム的に問題ないのでは、とも思ったが、それならそもそも理沙さんはほぼ詰みのような状況に陥らない。
そんなわけで、この半分以上のメンバーがコスプレしてんじゃねみたいな外見のチームで、神社まで連れ立ってゾロゾロと歩いているわけである。
と、そんな時、ふと俺の耳がこんな声を拾った。
「おんやぁ……あの嬢ちゃんなんか担がれてすげぇ勢いで運ばれてた子じゃん、無事だったんか?」
判るだろう、色々とこの発言はおかしい。
だが、その辺を俺が噛み砕く前に、理沙さんが黄色い声を上げた。
「わ、わぁ~、幸運のチワワイベじゃないですかやったぁ~」
チワワ?
一瞬、俺の頭を緑色と紫色のコーギーが駆け抜けていく。なんで毒チワワでコーギーだったんだよ……というのは置いておくとして、チワワ?
……あれがチワワ?
理沙さんが駆け寄っていく先には、一匹の小動物がいる。ちょうどチワワぐらいのサイズで、クリーム色の、滑らかでツヤツヤした毛並みをしている。
そしてその頭は、胴体とは変わって黒色の毛が少量だけ生えており、ぎょろっとした目と厚ぼったい唇と脂ぎった素肌。
つまり、おっさん顔の人面犬だった。
「このチワワ、原作でもまれーに出てくるやつで、出てくるとしばらくレアドロップ率が上がるんですよ。あと、可愛いからちょっと正気度が回復します」
「うひゃへへへ、このお嬢ちゃんワイのこと知っとるんか? まあええか、きれーなねーちゃんはいつだって眼福やし」
笑顔で理沙さんはその人面犬の頭を撫で、あるいは顎をくすぐったり。
これが本物の可愛いチワワちゃんなら微笑ましい光景だが、脂ぎった顔でゲヘゲヘ笑っている汚ッサン面の人面犬である、悍ましいことこの上ない。
「へー。なんも魔力感じないけど、なんかそういうのなんだ?」
「はい、後でインターフェース開いたら確認できるんですけど、戦利品の質にブーストがかかるバフがついてるんで、ひゃんっ」
「んへへへへへシスターちゃんの乳首ここー?」
「こんな感じにやんちゃな子なのが玉に瑕ですけどね……」
「へ~……わわっ、こっちきた」
「うへへへへへへ魔法少女のぱんつ~○んこ~いい臭い~」
キッッッッッッッッッッショ!!
中田さんの足元でうろちょろ、場合によってはスカートの中に頭を突っ込もうとするこの人面犬の、首根っこを掴んで持ち上げる。
「おわっ!? なんやにいちゃん、そんな無体なことせんといてや~。わいの女体~、あのロリっ子の体まだ堪能しとらんっちゅうに」
脚をジタバタさせられるが、サイズそのものは小型犬なので片手で余裕で持っていられるし、頭のせいで可愛いとかそういう感覚はまったくない。
「そういう魂胆がバレバレなんだから、好きにさせるわけ無いだろうが」
「いけずなにいちゃんやなあ、ちょっとくらい減るもんじゃなし、ええやろ? 降ろして?」
「減る減らない以前に、目の前でセクハラ始めたら妨害するのも当然と思わんか?」
「ええやん、こっちの人生の数少ない楽しみなんやで、どうせ兄ちゃんも彼女らとずっこんばっこんなんやろ? ちょっとぐらいわけてーな」
「お生憎様。こちとらそういう関係じゃなくってね」
「ええ……こんなエロゲーから出てきたような奴らとヤッとらんなんて、兄ちゃんED?」
「……」
めちゃくちゃイラっとしたので、こいつ地面に叩きつけてやろうか、なんて考えていたところ……
「んっ❤」
突如、岡本さんが喘ぎだす。
「なんやこのロリっ子、いきなり喘ぎだしたで?」
「……え?」
きょとんとする岡本さん。ゴソゴソとポケットを漁り、また、
「……んっ❤」
ぴくん、と震えて艶めかしい声を上げる。
何故? と思っていたが、ふと思い至った。
「あー……岡本さん、もしかして、時間停止して放させようとか?」
「はい、その、可愛そうじゃないですか……でも、なんで? 時間が止まらない……」
正確には、遠くの車が一時停止しているので時間停止そのものは発生しているようだが、我々が止まっていないのである。
「……岡本さん、ジョークの類なんだけど、聞いたこと無い? 時間停止AVと犬のお約束っての」
「え、なんですかそれ」
「あー、あるある、人間は止まる演技できるんやが、犬はできんので動き回る。それが時間停止は犬には効かない、っちゅーお約束扱いされるやつやな」
「お前の発言はみんなには聞こえていないから改めて言うと、犬は時間停止の演技ができないので、すなわち時間停止は犬には効かないっていうお約束になる、ってやつだな」
「そんなお約束が……」
感心したようにつぶやく岡本さんだが、俺は俺で、この人面犬の知識量に色々とどうなってやがんだ、との驚きを隠せない。
「まあともかく……俺が同行させられた理由がさっそく引っかかってて俺は悲しいよ……」
「えっ?」
理沙さんが驚いた顔でこちらを見て、そして中田さんが薄々気づいた顔で、俺に問うてくる。
「つまり……磯田ぁ……このチワワ、何?」
つい先程までかわいがっていたチワワが、「不確定名:チワワ?」になってしまったことに気づいた彼女たちはSANチェック……は、別にしなくてもよいが。
「人面犬。しかも頭は脂ぎったオッサン顔で、スケベオヤジって形容がぴったりな言動してる」
「い、いや……」
呆然とした顔で拒否反応を示す理沙さんだが、俺は残酷な真実を告げねばならない。
「シスターちゃんのパイオツ~、とかふざけたこと抜かしてた」
「オイ兄ちゃんワイそこまでいうとらんで、乳首~や、ちくび。にぷる」
「うそ……わた、しの、ダンジョンの癒し……?」
かなりのショックを受けてしまったようだが、さっきも言った通り、目の前で行われるキショイセクハラを見逃すわけには行かないのである。
「……んぅっ……ほんとに時間止まらない……ううん、車は止まってるから、あのチワ……犬?の周りだけ止まらないんだ……」*1
岡本さんも岡本さんで、人前でオ○ニー始めるのはご遠慮いただきたいのだが……そういやそういう人だったなあ……。
「ああでも、このイベントの後ちょっとだけ開発度上がってるんだっけ……知りたくなかったそんなこと……」
一方、セルフでSANチェックして2、3点SAN値を失ってそうなのが理沙さんであった。
まあ仕方あるまい……あの認識阻害か幻影付き人面犬も、あの「退魔師理沙」に登場するナマモノってことなのだろう……。