いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
「んで……ここ? どう見ても商店街の閉店したクリーニング店だけど」
「表向きはそうですね。グリモアノクターンの製作サークルの、毎作ごとのお約束的な配置の仕方をされるお店です」
「へぇ。魔力探知してもな~んにも引っかからないんだけど、本当に?」
そういうわけで、まずは一旦引き返して俺や魔法少女どもの通う学校の最寄り駅。から繋がる地元商店街の、クリーニング店跡地。
確か、経営していた老夫婦が、体力の限界、ということで円満に閉店したところだ。
シャッター横の通用口に向かって、理沙さんは手を上げて、
コンコン
と、ノック。
「……なーんにも反応無いけど?」
コンコン
コンコン
コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン
「……? あー、つまり、10回チェックか」
「はい、そういうことです」
俺の質問に理沙さんがうなずき。そして鍵が掛かっていたはずの通用口が、多少きしみつつ開いたのだ。
「へー……ハイテク、じゃなくてこの場合なんて言うんだろ。マジテク?」
「……スクテク?」
「すく?」
スクリプト。
それはさておき、中に入ると、そこには……。
「のん? お前達、結局ここに来たのん? てっきり、ここに気づいてないかいらないみたいだから、そろそろ店仕舞いしようかと思ってたのん」
と、ミツキくんもといルーローがいるのかと思いきや、ここにいたのは緑色の二頭身だった。
「こんにちは、ガパオ。商品を見せていただけませんか?」
「お前誰だのん? なんで僕を知ってるのん? 魔法少女以外には売れないのん」
「そこをなんとか。ここにあるものが無いと本当に色々と困るんです……!」
理沙さんが店番らしきマスコット、ガパオというらしいが*1、これに理沙さんが話しかけるものの、けんもほろろにあしらわれている。
言う通り、ここは魔法少女のための店であって、理沙さんは対象外ということか。
「ん? じゃあ、アタシらなら見せてもらえるわけ?」
「お前ならいいのん。これがとりあえずのリストだのん。でも、今更こういうの必要なのん?」
中田さんが聞いてみたところ、出されたリストを全員で覗き込む。
名称:淫乱度下降薬
価格:10万円
貞淑な心を取り戻させる(淫乱度減少10)薬。
名称:淫乱度上昇薬
価格:100円
貞淑な心を粉砕する(淫乱度上昇10)薬。
名称:性経験リセットの宝玉
価格:100万円
性経験を完全にリセットする宝玉。
名称:性経験増加の宝玉
価格:1000円
性経験を増加させる宝玉。淫乱度を最大まで上昇させたうえで、各部位の使用回数を100000増加させる。
「たかいのかやすいのか……」
思わず声が漏れた。エロ方向に突っ走る分にはサクッと行けるが、潔癖と言うか、そういうのを消す分には高いということか。まあエロゲーだもんな、それの逆方向となるとある意味存在意義の否定に近いもんな。
「あ、それは魔法少女の場合なのん。お前らの場合はその10倍になるのん」
「たっか!?」
今回の目的のリセット宝玉とかつまり一千万かよ!?
「そ、そこをなんとか! 100万円でもかなり厳しいと言うか消費者金融に駆け込まないとってレベルなのに、一千万とか絶対に無理ですぅ!」
「お前らに売らなきゃいけない理由がないのん」
「ほ、ほんとにそこをなんとかぁ! コレがないと苗床になっちゃうのが避けられなくて!」
「だからといって値下げはしないのん。これだってタダじゃないのん」
「ぐぐぐぐぐ……」
「あっ、お前ら見つけたぽん、ここにいたんだぽん、探したぽん」
「あら、ミツキくん」
とりつく島もないガパオ。それでもなんとかと必死に理沙さんが食い下がっていたところ、唐突に別のマスコット、仮称ミツキくん、ルーローがやってきた。
ルーローは俺と魔法少女どもの近くまで寄ってくると、
「お前ら、何を倒したんだぽん? よくわからない報酬がお前らに送られてきたぽん。苦ッ1aT円だぽん」
「……なんだって?」
いやマジでなんだって?
そういうルーローが取り出した封筒は、なんていうのか、こう、厚さがぼんやりとしてよく見えない。幻覚とかそういうもんじゃなくて、リアルがバグったとか、そういう……?
「何その封筒」
中田さんがそうつぶやき、界外さんが引いている。何故か俺に差し出すので、恐る恐るその封筒を受取り*2、中を除くと、札束が見え……んんんんん? 封筒のキャパシティ以上に詰め込まれているように見える……。
恐る恐る、指を突っ込み一束つまみ出してみると、引っかかることなく普通に出せる。しかも封筒にはまだまだ詰まっているようにすら見える。
……つまみ出せるだけ札束をつまみ出して、カウンターにつまみ上げていくと……。
「……ろくせんまん……?」
「ぽん。おまえらめちゃくちゃがんばったんだぽん。でも、実績タイプだから、二度目はないぽん」
胸を張るルーロー。封筒は、いわば物理演算がバグった見た目だった茶封筒はぺらぺらの一枚に戻っている。無論、どう考えてもこの茶封筒の中に収まり切る分量ではない……そんな分量ではない。
「……ろくせん……まん……?」
そして、額が額であるので現実味がない……ない、のだが。
「じゃあ五等分で千二百万ずつね」
「ワイは?」
と、界外さんが事もなげに分配していった。普段からこんな額を扱っているのだろうか?
チャッピィがなんかアピールしているが、俺はそれを無視した。
「あ、あの!」
「のん。買うのん?」
「買います!」
「のん。いま出してくるからちょっと待つのん」
なんかもうご都合主義と言わんばかりのヤバい額の臨時収入だが、一発で目標額を超えたので理沙さんはすぐにでも買って使うつもりなのだろう。
ガパオがふよふよと奥へ行き、頭上に乗せるような形で、4つのボールを乗せたトレイを頭上に持ち上げて戻ってきた。
「ちなみにサンプルとして全種一個ずつ持ってきたのん。コッチ側から、下降薬、上昇薬、リセット珠、増加珠のん」
「リセットの宝玉を!」
「のん……ん、ひいふうみ、よー……なーむー……のん。じゃあ持ってけのん」
百万の束を十本、積み上げて渡せば、ガパオはそれをどこかへ仕舞い込む*3。そして、三つ目のボールがふわりと浮き上がり、理沙さんの周囲をくるくると何度か回り、キラキラとしたものを撒きながら次第に消えていった。
「こ……これで、効果出たのですかね……?」
不安げに理沙さんがつぶやく。
《鑑定結果》
・名前:國本 理紗
・性別:女
・T/3サイズ:152/76:55:78
・処女 初体験:-
・総性経験値:0
・状態異常:なし
おお……マジでまっさらになっている。
「理沙さん、赤ちゃんはどこから来るのかご存知ですか?」
「え? 仲の良い御夫婦のところにコウノトリが連れてくるんですよね?」
また岡本さんがマジかよ、って顔して理沙さんを見ている。
「なるほど。ではさっきと同じ様に、今言った内容をよーく考えてみましょう」
「……あ~。なるほど、わかってはいましたし知識もちゃんとありますけど、常識として考えるところが変わってるんですね……」
ぱたぱたと自分の体の各所を、さすってみたりつまんでみたり。
「はー……とても、安心しました……」
と、大きく息をつく理沙さんからは、神社からの帰り道であったような、追い詰められたかのような感覚が無くなっていた。
で。
「ねぇミツキくん、これ私が使ったらまた処女から開発できるってことかしら?」
「やめといたほうがいいぽん、体だけじゃなくて頭の中までガチのオボコになるぽん。歴戦の淫魔が歩くカモネギになって、下手に触手に襲われでもしたら逆にトラウマになりかねないぽん」
「なるほどね~。で、誰が淫魔だって?」
「お前らだぽぐぎゅぇっ」
雉も鳴かずば撃たれまいに。
「ところで、この増加珠ってのはどういう動作をするんです?」
ふと、気になったのでこのおっそろしいことが書いてある増加の宝珠をつついてみる。
「だ、だめのん! 触ったら発動するから触っちゃ……のん?」
ガパオが血相を変えて止めてくるが、俺が何度かつついてみてもまるで動く気配やそういう感じはしない。
それどころか、手に持ってみて多少放り投げてキャッチ、とかしてみても特に何かが起こる様子はなかった。
「のん……? 不良品なんて初めてのん……」
何度か投げてキャッチを繰り返してから、元のトレイに戻す。
ガパオが納得できない顔で首を傾げているが、流石に魔法のアイテムの不良品とか俺にはどうにもできん。
「へー、魔法のアイテムでも不良品ってあるんですね。退魔用品でも稀にあるから困る……」
まあ、戦闘中に使ったアイテムが不発だった、とかかなり困るだろう。
理沙さんが、その黒黒とした宝玉を指でつつく。
と。
にゅるっ、と宝玉から突如触手が雪崩れだす。
「え」
あっという間に触手は理沙さんを絡め取ると、サイズを増した宝玉が理沙さんに近づき、そしてその黒黒とした宝玉の中に飲み込まれていった。
「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ……」
中で何が行われているのか、微妙に振動、収縮する黒い球体を前に、痛いほどの沈黙が降りる。
「のん……」
ガパオがぽつりと。俺だってどう反応したらいいのかなんぞさっぱりわからん。
そして、球体が今度はサイズを小さくしていき、最後には消えて無くなった。
後には、全身白濁した粘液まみれの理沙さんが残されている……。
「磯田さん……」
「……はい」
「すみません、お金貸してください……」
「……はい」
それ以外俺にどうしろと、あるいはどう答えろというのだ……。
<おまけ>
その1
「なあガパオ、あっちの奥の部屋には何があるんだ? 入れるようになってるみたいだけど」
「のん? 回想部屋のん」
「回想……」
「この鍵があれば、起きてない事象も観測できるのん。買うのん?」
「……やめとく。宝玉みたいな変な動作しても困る……*1」
「のん」
「じゃあ私が見に行く」
「私も~」
「のん!?」
「マジで!? 本人たちが見に行くの!?」
その2
「……しかし、こんな金額どうしたらいいのやら。税金とかどうすりゃええんや」
「ぽん! 宝くじと一緒にしたぽん! 認識阻害で受け取りは無課税ぽん!」
「その認識阻害って単語がスゲェ怖いんですけど」
「大丈夫ぽん、仮になんか言われたらボクに言えぽん、なんとかするぽん」
「ソッチのほうが怖くなってきたわ……」