夢主の名前、容姿が出ますが今回はほとんど出番は無いです。
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朝起きる。
すぐ目の前にニヤニヤと人を小馬鹿にしたかのような顔の黒い長髪の女性が私を覗き込んでいた。
気にせず殴る。潰れたような声と共に煙のように消えた。
なんともまぁ、目覚めの悪い…いつもの朝だろうか。
** 視えている悲鳴嶼は怖がらない **
私が眠れるサイズの特注の布団から起きれば敷き布団の下から伸びてきた長い腕に足を捕まれる。
もう片方の足で踏ん付ける。
気にせず厠…御手洗いへ行く。便器の中から白い手が伸びてきていた。
二番煎じだ。堪えろとでもいうのだろうか。我慢はよくないというのに、全く面倒な。レバーを引き水を流せば白い手は戸惑い、激しく動きながらも引っ込んでいった。
洗面所に向かい手や顔を洗う。水の色が赤い。まるで錆のようだ、だが赤錆ではないならば弁償してもらわねばな。ん?
声を多少荒らげれば数秒後透明な普通の水になる。なんだただの錆か。
別に伸びてはいないが髭を剃ろうと鏡を見る。鏡の中の私はニヤニヤと笑っている。
別に笑ってようが関係なくそのまま無視して剃る。
何か朝飯を食べようかと冷蔵庫を開ける。小さな男性が中に待機してニヤニヤしていた。
構わず引きずり出す。…中身が何も無い。
床に転がってる男性を睨みつける。俺のせいじゃないと泣き叫びながら消える。
むぅ……買っていなかっただけか。涙が流れる。
スマートフォンが鳴っている。電話だ。受話器のボタンを押して、出る。
「私メリーさん、今アナタの家の前に…」
切る。いつもの嫌がらせ電話でしかない。
歯みがきをする為に洗面台へ向かう。鏡の中から男性が出てこようとしていた。
顔を掴み、押し戻し歯を磨く。鏡越しに怒りの顔を向けてきた男性を真っ直ぐに見つめ、睨み付ける。
物凄い勢いでいなくなる。
箪笥を開けて着替えの服を取り出す。5cmの隙間に女がいてこっちを見ている。
構わず閉める。何か潰れた音がしたが気にしない。
家を出る前に夜の間に来た郵便を見る。呪いと書いてある手紙ばかり。
破ってそのままごみ箱に突っ込む。
扉を出ると何かにぶつかる。背の低い女児が立っていたらしい。
申し訳ないがそこに立ってるのが良くなかったな。蹲って泣きべそをかきながら「メリー」……だとかなんとか言ってるが気にしない。
「あ…悲鳴嶼さん」
隣人と会う。初めて会った時と比べ物にならない程ゲッソリと痩せている。
「昨日も叫び声とかがうるさくて……本当に大丈夫ですか?」
「寝つきは良い方なので」
大事な睡眠を邪魔する等…それは万死に値する。
通勤途中に朝食分の飯を買い、軽く食べて職場へ向かう。特に何もない。
学校に到着、昨日の仕事の続きをする。機械類はどうにも苦手で……むぅ、上手くいかない。涙が出る。
昼飯は同僚に誘われ外へと行く。遠くで私よりも背の高い女性がこっちを睨み付けている。
睨み返すとおどおどしたあとどこかへと消える。怖気づくのならやってこなければ良いのに。
授業を行う。机に座る生徒より頭数が多い。上がる腕も数が多い。
構わず進めるも涙が溢れ出てくる、生徒も誰も気にしていない。
仕事終わり。家に戻り穏やかに過ごしたい。同僚の背中に赤子がしがみ付いているのを発見する。
構わず帰る。個人のプライベートに踏み込むべきではない。
帰宅途中に店に寄り適当に買う。冷蔵庫に中身が何も無かったのだから。
生きている女にニコニコ話し掛けられるも適当にあしらう。
ずっと見てましたとは何なのだろう。ストーカーとやらになるのだろうか。今現在そこら辺は厳しいというのに。
帰り道、不動産屋が話しかけてきた。
「な…なんともないんですか。本当にあの部屋に住み続けているんですか」
「はい。住み続けていられるのがそんなに不思議なのですか。あ、もしやあの家賃の値上げ交渉とか…」
「い、いえそうでは…でも……入られる際に言いましたが、前の住民さんは3日以内に全員逃げ出してましたし、何人もあの部屋で亡くなられて…」
「寺生まれです。人の死には慣れていますのでお気になさらず…南無」
まぁ敷金礼金免除の月々家賃が一万円というそれの時点で理解していたし、特に私は不便であると感じていない。需要と供給が擦りあうならば何より素晴らしい事だ。
建物の外に麦藁帽子を被った白いワンピースを着た女性がいる。この寒気漂う季節だというのにひらひらのそれ一枚しか着てない。
なんとご苦労な。涙が流れる。
部屋の鍵を開けようとすると中から鍵をかけられて永遠に入れない。
扉を蹴飛ばせば次は大人しく空いた。地味な嫌がらせは止めてほしい。
部屋に入ろうとすると隣人が叫びながら飛び出してきた。なんでも壁から子供が泣きながらすり抜けて出てきたらしい。
嗚呼……さっきの地味な嫌がらせの犯人だろうか。通りで小さな嫌がらせをすると思えば。
買ってきた食物や飲料を冷蔵庫に入れる。何かわからない、ぐちゃぐちゃしたものが入っているが気にしない。
誰か知らないが汚した者が掃除しなさい、と小さくポツリと呟けば周りから小さな悲鳴が聞こえる。
室内が妙に冷える為に暖房器具をつける。中の隙間にある目玉と目が合う。
徐々に熱くなってきた暖房器具に耐え切れなくなったその者は叫びながら逃げていった。
スマートフォンが鳴っている。出れば朝のと同じ声だ。
「もしもし私メ…」
「用が無いならかけてこないでくれないか」
切る。
便所に行く。今度は手ではなくの年老いた男性の顔が笑っていた。
気にせず流す。
洗面台が真っ赤な液体で汚れていた。蛇口を捻れば普通の水が出る。
そのまま真っ赤な液体を流す。
空腹を覚え、冷蔵庫から買ってきた物を取り出して食べようといつもの席に鎮座する。冷蔵庫は綺麗になっていた。
壁の中から歌声が聞こえるが気にしない。私は音楽に詳しくない。
ほとんど見もしないが備え付けで置かれていたテレビが勝手に起動する。人々が苦痛に喘ぎぐずぐずと溶ける謎の映像が流れる。
これは何なのだろう。食物を口に運びながら眺めている。しばらく代わり映えのない同じ映像が流れる。なんとも変動……バリエーションがないな。
いつの間にか知らない女性が隣に立っていた。テレビに映ってるのと同じ女性のようだ。
「アナタも呪われてこうなるのよ…」顔がミイラになっている。
無言で女を見ながらお茶を飲む。殆ど風邪すら引いた事のない体だが呪いとか受けれるのだろうか私は。
しばらくして女性は気まずそうに玄関から出て行った。そこは煙みたいに消えるのではないのか。なんともまぁ中途半端な。
テレビもいつのまにか違う映像になっていた。小さい子供が泣きながら壁を叩いている。クレヨンを持ち壁に何かを書いている。
仕方ないが絵も文字も下手で読み取れない。揚げ物を噛みきり、涙を流しながら見る。
電話が鳴る。聞こえてきたのはとろとろの弱い声。
『こんばんは行冥様』
「まい子…!」
予想外の声に無意識に私の声が一段階跳ね上がってしまう。しばらくぶりだ。
『引っ越したらしいですね、申し訳ないです
しばらく連絡先が出来なく……ん?今、平気ですか?騒がしいですが』
「ああ、大丈夫だ。少々待ってくれ」
口を離して机にスマートフォンを置き、部屋の中を見渡し両手を構える。
パァンッッ!
勢いよく打った柏手によって、今まで何かしら聞こえていた音が消えて静寂が訪れる。テレビも消えている。
「すまない、待たせた」
『……ほ、本当に大丈夫ですか?結構大勢の声がしてましたが…』
「気にしなくて良い。それで、私に何か用か」
『は…い、すみません急ですが明日会えませんか。ちょっと話したい事があるのです。こんな相談事……知り合いで相談出来るのはもう貴方くらいしか…』
「! うむ、大丈夫だ。では時間と場所は……」
まい子と話をしながら室内を歩く。どうにも心中がそわそわし、手持ち無沙汰でベランダに続く窓際に移動しカーテンを開ける。
外に血まみれの男性がぶら下がっている。男性は私の顔を見て、顔をひきつらせ上へと消えていった。
その間に何度も待ち合わせ場所にしている喫茶店で、正午前にと決める。
『はい。それでは……ちょっと早いですけど、おやすみなさい』
「ああ…嗚呼。おやすみ」
スマートフォンを置く。電話が切れている事を確認し、大きく息を吐く。
無意識に笑っていた頬を落ち着かせるように撫でる。涙が流れる。
猫の模様が入った湯飲みの表面にいつの間にか謎の水滴が付いており、それが手形の形に歪んでいた。誰かが掴んだかのように。
まぁそんな事はどうでも良い。無視して全部飲みきる。
入浴をしよう。身を清めよう。
引き出しの中に入っていた何本もの腕を窓から捨ててタオルを取り出す。
勝手にシャワーを浴びている女性がいる。大量の真っ赤な血がシャワーと共に流れている。
肩を掴み水道料金について懇々と問いただせば泣きながら消えていった。払って貰えるのだろうか、今の人からは。私の方こそ泣きたい。
シャワーを浴びていれば違和感。私の髪は結構短いというのに指に絡まるそれは……どうにも妙だと感じる。
水が入らないよう閉じていた目を開け確認すればノズルから真っ黒の長い髪の毛がずるずる出て来ていた。
シャワーノズルから出ている髪の毛を引っつかみ、そのまま引っ張ればノズルより大きな生首がついてきた。ニヤニヤと笑っている。
そのまま壁に叩きつける。
生首は嗚咽をあげながら泣いている。それを床に置き、飛びちっている髪の毛と血をシャワーで洗い流す。
長い黒髪がまだないかと確認していれば水を張った浴槽から蓋を押し上げて頭が見える。白い髪。
蓋を上げれば出てきたご老人と目が合う。困惑している。手のひらで軽く追い出す。
別に何という訳でもなく身体を綺麗に洗う。身を清めるのは大切だ。浴室の扉を痩せ細ったな女性がゆっくり開けてきた。
手についていた泡を相手の目に押し付ける。地獄みたいな悲鳴をあげられる。
関係ない。身を清めるそれら全てを終わらせ湯船に浸かる。
いつの間にかご老人も脱衣所から聞こえる謎の音も声も聞こえなくなっていた。邪魔をせず消えるそれは懸命だ。
風呂場から出て頭を拭いていれば鏡の中の私と目が合う。なんとも泣きそうな顔をしている。
何故泣きそうになっているのだろう。今の私は泣いていない所かとてもとても嬉しくてたまらないというのに。言えば泣かれる。
……南無。
お風呂場を出れば耳元に触れそうなすぐ後ろから「お前を呪い殺す…」とザリザリした声で言われる。
無視する。
お風呂上りに冷水を一杯湯飲みに注ぎ飲む。ラップをかけて机の上に置いていた卵焼きの残りが腐っている。
窓枠から逆さにぶら下がって笑っていた男性の口の中に放り込む。叫びながら落ちていった。
天井から何本も黒い手が生えている。ゆらめくそれを見て息を吐く。
どうでも良い、無視する。掴んできた腕は曲がる反対方向に折る。
目の前を飛んでいるなんだかよくわからないふわふわしたものを眺めていたら眠くなってきた。
床がバキリと大きな音をたてるが関係ない。眠い。
布団に転がり込むように入れば天井に老婆 が張り付いている。
ニヤニヤ笑っているが眠いので無視する。何か慌てたように言っているが眠いので完全に無視をする。
夢だと自覚している夢を見る。赤色の内臓のような空間を歩かされるが無視して寝転ぶ。
せめてこれが煉瓦色ならまだ歩いたやも知れぬのに。
ぐちゅぐちゅ文句を言いながらうねる地面を殴りつけて大人しくさせる。
違和感を感じて起きる。男性が心底恨めしそうな顔つきで私の首を絞めに来ている。
だが苦しくも無いし、眠いので無視して眠る。
夢だと自覚している夢をまた見る。複数の猿がチェーンソーを持って襲い掛かってくる。
「ミンチだミンチだミンチだ」
「静かにしなさい」
頭を掴み握り潰す。トマトのようにあっけなく潰れた仲間を見て他の猿は動きを止め、悲鳴をあげて逃げ出す。
なんと無意味に仲間を見捨てるとは!納得がいかず追いかければ泣き喚かれて追い払われる仕草をされ、夢から覚めた。
次は夢を見ずぐっすり朝まで眠れた。