空港まで圭司を見送りに行った真子は、VIPだけが許される特別な出入り口を抜け、黒い一台の乗用車に乗り込み空港を後にした。
圭司がいなくなれば、ぽっかりと大きな空洞ができたみたいな真子の胸。
(負けずにガンバルわ・・・・・・)
いつも気丈にふるまっていた真子の眼にも光るものが有った。
「爺や、悪いけどこのまま川崎まで・・・・・・」
「お嬢さん、それは困ります」
真子は執事を兼ねている老運転手に行き先を告げた。
これから真子が向かおうとしているのはS&Mで有名なクラブ。
憂さを晴らすにはこれしかなかった。
真子の引き出しは奥深い。圭司さえも知らない世界を真子はひそかに持っていた。
仮面を被れば素性は隠せるし、このような場所にきてまで素性を詮索するような野暮な客はいない。
マンションの一室にある扉を開ければ、無言で真子は貴賓室への案内を受ける。
爺やは、更に奥にある喫茶室でお茶を飲んでいるのであろう。
真子は来客名簿の名から1人の男性を選択した。
いかにも知識人ぶった格好をしている男性は、白髪交じりの長髪を四分六分に分け、鼻の下にはやしている髭も、ゴマ塩みたいに白髪交じりだ。
スパンコールが施されているレザーウエアを纏った真子はムチを右手に携えホールの中央に立った。
一段高いステージには、真子が指名した客が素っ裸で四つん這いになっている。
だらしなく後ろに突き出している臀部は皺に覆われ、皮膚の張りなどは見事にない。
苛められていない体の下半身についている性器さえも、ペニスと呼ぶにはまだほど遠いモノだった。
犬の性器でさえ、下腹部につこうかとしているのに、彼のソレはだらしなく、床に向かって垂れ下がっているようだ。
(いまの私にはこんなゲスなオトコが似合っているのかも・・・)
「この豚野郎。私の命令が聞けんのかっ!」
頭上に振り上げたムチ。
バチッ
男性にムチをふるう前に、フロアーに張られている冷たいタイルの床を一ムチ打つ。
「あ~。面白くないわ・・・・・・」
真子はクラブを後にした。
乗用車の後方のシートにうずまりながら、呟いた。
(私の憂さ晴らしは・・・・・・ふふっ)
邸宅の車寄せに停止した車から降りた真子に、集まってきた使用人の挨拶も聞かずに住居に消えた。
秘密の出入りから抜け出た真子は、広い公園の中に設けられている生け垣を乗り越え、うっそうと木々が茂る森へと消えていった。
夏の夕暮れは薄暮も長い。
森の中に据え付けられている長いベンチには愛を確かめ合っているカップルも多い。
休んでいる人々も様々で、年相応のカップルもいれば歳が親子ほど離れた組み合わせも見受けられる。
真子はお嬢様には似合わぬつなぎを着用している。模様も迷彩柄の模様は木々に紛れ込みやすい。
つなぎの便利さはファスナーにある。体の前面についているファスナーは首元から下げることも出来れば、股間から上に解くことも容易に可能だ。
数多くのポケットが有り、少々のものでも構わず入れることが出来る。
真子はたくいるカップルの中から、一組を抽出し近寄った。
女子大生とみられる女性は、裾がダボダボに広いパンツを着けている。しかも上着はオープンショルダーのニット。
男の手が誘いそうな恰好をしている。
「ダメだよ・・・タケシ・・・」
女大生の膝に置かれていたオトコの手との格闘が始まった。
しばらくすると、決着は見えている。彼女の背に回されたのは腕が一本。
彼女の自由を奪い、オトコの指が暴れようとしている。
「ダメよっ・・・」
言いながら周りに視線を送っている女子大生。
カップルの声が聞こえるくらいまでに近づいている真子は、下肢をX脚に折りモゾモゾと動いている腰。
これも圭司と都心の公園で見つけた娯楽。
「いや~ん・・・」
圭司の手前、興味を覚えても口に出せないもどかしさが有った。
音の手がニットの上から胸を揉んでいるのだろう。
背後から覗いている真子は妄想を逞しくするしかない。
大きな木を見つけた真子はその大木に隠れた。
カップルの行動を横から眺められる絶好の位置に樹木は会った。
(間違いないわ・・・)
背に回されていたオトコの指が広いパンツの裾に入ろうとしている。
「ダメよっ!」
女子大生が叱るようにオトコの手を止めた。
(!??・・・?ハハ~ン)
パンツのファスナーに指を誘っている女子大生。
真子も股間についているファスナーを上げた。
(いやだ~ん・・もう・・)
溢れた淫水が潤滑油の役目をしている。抵抗なくスルーと上がる真子のファスナー。
赤い傷口で暴れる真子の細い指。
真子が大樹の大樹の根元に崩れ落ちたころ、カップルの姿はもうそこのベンチにはなかった。
それでも乾いた真子の下半身が潤うことは無かった。
(あぁ~、圭司さんがいてくれれば・・・・・・・)
つづく