※この作品はR-18です。

泣き虫のデビルマンはありふれた異世界で再起する   作:Hetzer愛好家

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初めましての人は初めまして。ご存知のお方はこんにちは。それとごめんなさい。他作品へのモチベが完全に消えてしまいました。そんな時に読んだ不朽の名作「デビルマン」の御蔭でまた別の方向ではありますがモチベが戻ったので、新作という形でまた投稿していこうと思います。
どうかよろしくお願いします。


第零話 全ての始まり

「っ、ここは……?」

 

 自殺を図った1人の男は、今現在の状況に脳が付いていけずに混乱する。高層ビルの屋上から飛び降りてそのまま死亡したはずの彼は、何故かごく平然と呼吸をしていた。

 

 四肢にもまるで問題が見つからない。高所から飛び降りれば骨の数本砕けるのは当然のはずなのだが、それすらもないので男は混乱を深めていく。

 

『目が覚めたみたいだね』

 

 不意に響き渡る声。男なのか、それとも女なのか。区別をつけるのは少々難しい。そんな声を聞いた男は心臓が止まるほど驚いた。まさか他に、意思疎通が可能な生物がこの場に存在しているとは夢にも思わなかったのだ。

 

 声のした方向を男は見る。そして2度、3度とその声の主の体を見返した。

 

 煌々と輝く金色の髪の毛。中性的な顔。きめ細かい肌。美しく官能的に膨らんだ乳房。力強く綺麗に割れた腹筋。猛々しく伸びる陰茎。背中から生え揃う天使のような翼。

 

 間違いなく人間ではないその姿は、見る者全てを一瞬で魅了してしまう。それは男も例外ではなかった。

 

 両性具有の何かは男に語りかける。優しい声で。

 

『私の名は大魔神サタン。世を治めるため、地上に住む生物を洗脳して圧政を敷く神に反逆する堕天使だ』

「堕天使……え、堕天使!?」

『驚くのも無理はない。だが、この時間は有限だ。詳しい説明はまたの機会にさせてもらおう。今はもっと、大切な事を伝えなくてはならない』

 

 唖然とする男を無視してサタンは一方的に話を始める。

 

『死にそうになっていた君を“この世界”に呼んだのは私だ。君には狂った神共を殺す手伝いをしてほしい』

「は、え。ちょ、どう言うこと? この世界?

神を殺す? 何が何だか分からない……」

『もっと分かりやすく説明しよう。君は異世界転生をしたんだ』

 

 異世界転生。その言葉を脳内で数回反芻して漸く理解した男は、自身に何か非現実的な事が起きたのだと察することができた。幸い、男はマンガや小説を読み漁っていたのでこう言った事態への理解は比較的深かった。

 

 幾分かの冷静さを取り戻した男は深呼吸をすると、逆にサタンに問う。

 

「貴方は、自分に異世界の神を殺す手伝いをしてほしい。そういうことか?」

『流石は私が見込んだ男。その通りだよ。神によって狂わされたこの世界を救う手伝いをしてほしいんだ』

「なら何故、自分なんだ? 運動神経も頭も良くない。それに泣き虫な僕なんかより、もっと適任者が居たと思う。わざわざ僕を呼んだ理由を聞かせてくれ」

 

 男は何もかもが弱かったと自嘲する。実際、所属していた陸上部ではビリの足の遅さであったし、学校の成績も中の下ぐらいでお世辞にも良いとは言えない。

 

 しかし、自分に長所は1つもないと言ってのける男であるが、本当のところは違う。彼には誰かのために涙を流せる強い心があった。もっとも、この心が仇となって彼は苦しんだのだが……。

 

 サタンは静かに男の問いを聞いた。彼の言葉が途切れると、ほんの少しだけ考える素振りを見せてからその口を開いた。

 

『申し訳ないが、その質問の答えはまだ君に伝えるべきではない。しかし十分に時が満ちたら。来るべき日が来たら、その時は必ず話そう』

「そうか。死ぬつもりだったが、この命を何かの役に立てられるなら、それはそれで良いかもしれないな」

 

 初めて微笑んだ男を見て、サタンもまた優雅に笑みを浮かべた。

 

 満足したように頷いたサタンは、徐々に透け始めた男に伝えるべき事柄を口にする。

 

『神と戦うための力を君に授けよう。鍛練はそれなりに必要だが、必ずや君を神にも勝てるまで強くしてくれる』

 

 サタンの手から放たれた光球が男の胸に当たり、溶けて消えていく。光球が何なのか分からなかった男だったが、それが自身に溶けていくにつれて新たな知識が脳に直接刷り込まれていった。

 

 頼りない目尻を持っていた男の目つきは鋭くなり、口内の犬歯は発達して刃のように尖る。背中からはコウモリのような翼が生え、口元は裂けるように上がって悍ましい物へと変わった。

 

『デーモン族1番の勇者の力を君に授ける。君の精神力ならその力を完全に制御し、さらに引き出せるだろう。さあ行け! お前の名は悪魔人間(デビルマン)だ!』

 

 激励を送ると同時に男の姿が完全に消えたのを確認すると、サタンは誰ともなくポツリと言葉を零した。

 

 サタンはかつて、別の世界の地球でデーモン族と共に神々と戦って1度は勝った堕天使だった。

 

 疲弊したために長年の休眠を得て目を覚ましたサタンたちは、自分たちが守った地球を人間が穢し、そして破壊し尽くしたことが許せずにある計画を立てた。

 

人類の抹殺である。

 

 その計画はほぼ完璧に成功した。人類は、お互いに疑心暗鬼となって自滅する形で滅びた。ただの1人を除いて。

 

 完璧だった計画に狂いが生じていたのだ。サタンが1人の男を愛してしまうという誤算が。それ故、強い力を持つ悪魔の身体を乗っ取られて悪魔人間と化した男と、デーモン族とでの鮮烈な戦いが発生した。

 

 人類と時を同じくしてデーモン族も滅んだ。たった1人の男の手によって。魂はサタンが回収したが、身体まで残ったデーモン族は全滅した。

 

 サタンは戦った。自らが愛した男と。壮絶な戦いを繰り広げ、地球の大地が変動するほどの激しい戦いの末に漸く決着がつく。そんな凄まじい、しかし短い戦いを。

 

 そしてサタンは勝った。あまりにも大きな代償を伴って。ただ1人残されたサタンは、自身が初めて愛した男の亡骸を抱き抱えながら、再び降臨した神々の手によって地球もろとも消し去られた……。

 

 はずであった。サタンは何故か再び目を覚ましたのである。サタンは偶発的ながら、異世界転生を成し遂げていたのだ。

 

 新天地でサタンは見た。狂った神々によって穢された地球を。見るにも耐えない姿となった人間を。漸くサタンは理解した。あれだけ忌み嫌った人間は、神々の手によって哀れな姿になってしまった被害者のうちに過ぎないのだと。

 

 今度は人類のために。自分が愛した男の意思を継いで戦うことをサタンは決意した。しかし、独りではとても神には勝てないことも同時に理解していた。

 

 サタンというのは元々天使である。神に使える立場だ。多数の悪魔に協力してもらったことでやっと神と対等か、少し劣るぐらいだ。それほどにまで神というものは強い。

 

 だからサタンは協力者を探した。神ほどではないが人智を超えているには違いなく、様々な並行世界を覗くことで助っ人になれる人間を数百年もの間、サタンは探し続けた。

 

 そして、漸くサタンは見つけたのである。

 

 その男は確かに弱かった。しかし、そんなことはサタンからしたらどうでも良かった。彼が喜んだのは、その男の存在が自身にとって特別な物だったからである。

 

 何百年も前に自身が唯一愛した人間。並行世界の存在とは言え、その男はサタンがかつて愛した人間その人に違いなかった。

 

 サタンが愛した男は“不動明”という何の変哲もない男だった。

 

 そして、サタンが新たに見つけた並行世界の男も“不動明”だった。

 

『明。俺はもう1度……』

 

 何も知らない彼を戦乱に巻き込むことに対する罪悪感はあった。しかし、もう孤独には耐えられなかった。

 

 賽はもう投げられたのだ。もう後戻りは出来ない。サタンも、巻き込まれた不動明も。目の前の道をただ進む以外は何も出来ないのである。

 

 2人の結末がどうなるのか。過去と同じ凄惨な終わりを迎えるのか。それとも……。




デビルマン要素が入るのでしっかりとR18です。濡れ場もしっかり入れていく予定になってます。ちなみにタグを見れば分かるかと思いますが、現状のメインヒロインは優花さんです。
設定は原作とcrybabyを主に使ってますが、独自解釈が現れるところもあります。ご理解いただけると幸いです。
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