※この作品はR-18です。

泣き虫のデビルマンはありふれた異世界で再起する   作:Hetzer愛好家

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やっぱり自分にはシリアスしか書けない…()
はい、今回は前半が戦闘で後半は会話多めになってます。戦闘シーンはデビルマンOVAの誕生編から、初戦闘時に使用された「デビルマンのテーマ」をバックにどうぞ。


第二話 あれは、デビル

 獣のような咆哮を上げ、闘争本能を剥き出しにして一気に突進する明。対するミカエルは優雅に銀翼をはためかせ、絶大なる殺意を乗せた銀羽の魔弾を射出する。

 

 変身してそこまで時間が経ってないこともあり、完全には回避できずに何発か明の身体を抉っていく。それでも止まらず、ただ獲物を仕留めるために前へ進む姿に心底で慄き、ミカエルは少しずつ後ろへと下がっていく。

 

「逃がすかぁ!」

 

 腹が抉れ、翼が破れ、それでも歯を剥き出しにして戦いを心から楽しむのは悪魔の性格が明にも反映されているからなのか。それを知るのは、この戦いを彼方から見守る大魔神サタンのみ。サタンはただ静かにこの戦いを眺めていた。

 

 傷つくことを厭わずに突撃した甲斐あり、凄まじい弾幕を真正面から突破した明はミカエルの顔面を掴んで握り拳を作る。

 

「次は貴様の番だ。じっくりと味わえ!」

「く……離れなさいっ、虫けら」

 

 そう言って離れる悪魔は存在しないだろう。悪魔は常に欲望に忠実で、正直で。そしてワガママで天邪鬼だ。

 

べキィ!

 

 間一髪、悪魔の拳はミカエルが咄嗟に取り出した大剣によって受け止められる。しかしその衝撃は彼女の想像を遥かに超えており、本来なら拳で壊れるはずのない大剣はたったの一撃受け止めただけで粉々に粉砕されてしまった。

 

 彼女はこの世界を統べる狂神エヒトの忠実な下僕であり、そして人形だ。感情など殆どなく、命じられたことを淡々と確実に熟していく不気味な操り人形。それが神の使徒である。人形であるが故に年齢の概念も存在せず、彼女を含めた数万の神の使徒は、これまでエヒトが排除するように命じた生物を何度も抹殺して来た。

 

 今回も例外ではない。そのはずであった。たかが虫けら1匹だ。簡単に捻り潰せる。エヒトからの命を受けたミカエルは知らずのうちに慢心していた。抹殺という任を担った者が1番持ってはいけない感情を得てしまっていた。

 

 だが、現実はどうだ? この受け入れ難い現実はどうなっている?

 

「どうしたぁ。まだまだ行くぞ!」

 

 虫けらだと侮ったそれは“悪魔”であった。それも、“悪魔の中の悪魔”であった。虫けらなんて言葉で片付けられる雑魚ではなかった。彼女の銀翼にはありとあらゆる物体を跡形もなく消し去る〝分解〞という能力が備わっており、触れるだけでも大ダメージを負う代物のはずなのだが……。

 

「なぜ、貴方はそう平然としているのですかっ」

 

 確かに命中したはずなのに、明は平然として逃げに徹するミカエルを追い続ける。1回ロックオンした獲物は絶対に逃さぬと言わんばかりに獣のような咆哮を上げながら。

 

「くっ、〝劫火浪〞!」

 

 銀羽を集めて魔法陣を形成し、彼女がそう叫べば途端に生まれるのは炎の津波。全てを焼き尽くさんと唸りを上げて明の全身を包んだ。掠りでもしたらたちまち火傷を負い、飲み込まれたらまず間違いなく助からない炎の濁流。今度こそ倒したと思い込みたい気持ちを必死に抑えてミカエルは炎を見つめる。

 

 今度は油断をしなかったことが幸いして、勝利の余韻に浸った隙を突かれるという失態は犯さなかったミカエル。しかし、神の使徒とはとても思えない間抜け面を晒してしまった。

 

「フッハハハ……! どうした、この程度なのか!」

 

 勢いがあったはずの炎が一瞬で鎮火し、代わりに現れた明は大笑いしながら口をガパリと開く。その奥底に得体の知れぬ殺意を感じたミカエルだが、それに気がついてから行動するのでは遅かった。

 

「今度はテメエが焼かれろ! 地獄の業火をとくと味わえ!」

 

 先ほどの炎が子供の遊びに見えるぐらいだ。明が口内から発射した火炎は。勢いも、規模も、熱さも。何もかもがミカエルの放ったそれより上だ。感受性の強い人ならきっと、この炎と共に地獄を幻視することだろう。

 

 死の予感から少し前に取り出していた大剣を翳し、さらに自身を銀翼で覆ったミカエルは、そこまで徹底した防御姿勢を取っても大ダメージを負った。美しい顔は焼き爛れ、防具は所々が融解して使い物にならなくなっている。

 

 生まれて初めての経験が重ねて襲いかかり、戦闘中にも関わらず思考停止したミカエル。悪魔はそれを見逃さなかった。猛然と接近し、ガードを固めようとするミカエルに対して挑発的に笑いながらその剛腕を激烈な速度で叩き込む。

 

 大剣で1発は防いだミカエルだが、結局先と同じように粉砕されてノーガードになる。銀翼で攻撃する間も、素手で反撃する隙も与えない。回避だけ辛うじて間に合う明の猛攻は確実にミカエルの精神と肉体を削っていた。

 

 唯一残された行動である回避すらもそのうち許されなくなり、回避する方向の癖を読み取った明がミカエルの胸元へ突き出した鉄拳が全ての流れを変える。

 

「あっぐああ!?」

 

 たった一撃受けただけ。しかしその一撃は、神の使徒の頑丈な肉体をも無視して圧倒的な衝撃をミカエルに伝えた。肉が裂け、骨が断たれ、臓器を粉砕されたミカエルは血を吐いて堕ち始めた。

 

 その一撃で満足せず、明は堕ち始めたミカエルの体に容赦なく鉄の拳と刃の脚を打ち込んで何もかもをグチャグチャにしていく。腕が飛び、足が捥げ、内臓が飛び出し。血飛沫が明の口に入り、それを舐め取って恍惚の表情を浮かべるその姿。正に悪魔だ。吹き飛ぶ内臓を見せつけるようにしながら手に握り、そしてそれを口に運ぶ。

 

 途切れ始めた意識の中で、ミカエルは自身の内臓を美味そうに口にする悪魔を確かに見た。

 

『あれは、誰だ?』

 

 ミカエルは自問する。あれは誰だ。誰だ。誰だ……。

 

『あれは、デビル。デビルマン。悪魔』

 

 そして自答した。あれは悪魔だ。あれは人の姿をした悪魔。デビルマンだ。

 

『ああ、エヒト様……』

 

 初めて彼女は呪った。自身をこんな化け物の抹殺に向かわせたエヒトを。とんでもない悪魔と出会ってしまった自分自身の運命を。呪いに呪った。

 

ゴシャア!!

 

 喉元に悪魔の貫手が突き刺さった。ミカエルの瞳の色が失われていく。喉を潰されたことで絶命の声すら上げられず、ただ惨めな姿で神の使徒は悪魔に討たれた。

 

 何の戸惑いもなく腕を横に払い、首を飛ばした明は堕ちていくミカエルの胴体と生首を見やる。落ちた先は明日足を運ぶ予定であったハイリヒ王国方面。朝になったら大騒ぎになるだろう。グチャグチャになった変死体が地面にへばり付くのだから。騒ぎにならない方がおかしい。

 

 明は死体が見えなくなったのを確認して、また居心地の良いベッドに戻ろうと飛翔しようとした。しかし彼の体は1ミリも浮かび上がらず、彼の意思とは真逆に下へと落ちていく。

 

 抜かった。彼は自身の犯した罪に頭を抱えた。後先考えずに突撃を繰り返した影響で、彼の身体はボロボロという言葉では片付けられないぐらいに傷だらけだったのだ。

 

 傷のことを意識し始めたら今度は痛みが襲ってくる。神経を火で炙られるかのような耐え難い激痛は、明の変身を解くダメージには十分すぎた。彼は悪魔から人間の体に戻り、抵抗も許されずに地面へ落ちる。

 

 やがて彼は意識を失った。走馬灯すら見ずに、彼は深い眠りへと落ちるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 悪魔は眠る。先ほどの激しい戦いなどまるでなかったかのように。

 

 著しく消耗した自身の肉体を休め、回復に努めるため悪魔は目を覚まさない。その身に受けた無数の傷のうち、どれか1つ浅めに見える物をピックアップしたとしても、結局のところは致命傷だ。悪魔の肉体という強力な資本があるから明は死なずに済んでいる。

 

『明。目を覚ますんだ、明』

 

 そんな彼に声をかけ、少々無理やりに覚醒を促す大魔神が現れる。

 

 夢すら見ないほど深い眠りから強引に覚醒させられた明は呻きながら目を開き、そして見覚えのある空間に自身が居ることを確認すると一気に飛び起きた。

 

「サタン、お前が俺を呼んだのか」

『ああ。少し話したかったんだよ』

 

 豊かな乳房に目が行く明を気にすることもなく、サタンは彼とまた話せたのが嬉しいといった様子で口を開く。

 

『君の戦いぶり、見させてもらったよ。初陣だというのに凄まじい戦いだった。相手も全く弱くなかったが、それ以上に君は強い』

 

 彼を褒めると同時に、サタンは遙か昔の出来事を思い出していた。かつて自分が愛し、そして対立した男の戦い方をふと思い出したのである。闘争本能に身を任せ、破壊衝動の赴くままに拳を振るうその姿。彼の知る不動明と全く同じであった。

 

 もちろん戦い慣れていないが故の失態もある。自らへのダメージを顧みずに突っ込むのは愚かと言っても差し支えないだろう。しかしそれを差し置いても、彼の初陣は見事であった。

 

『明はこれからさらに強くなれる。神すらも超える力を得られるだろう』

「そうなのか。戦い方も何も分からなくて無我夢中だったが、そうか。褒めてもらえたのは何年ぶりだろうか……」

 

 言葉の端々から滲み出る明の送った人生の惨さ。褒められた記憶が定かではないほど、彼は苦しく辛い人生を送っていたのである。誰にも明かさず、告げることもなく苦しみ抜いた。そんな人生を滲ませる明に、サタンはほんの少しだけ悲しげな表情を浮かべる。

 

 そんな明を優しく包みたい衝動に駆られるサタンだが、かつての不動明を思い返してそれを抑える。真に彼を支えてくれる人間が現れるはずだと思い直した。あの不動明にも、唯一にして絶対の心の支えが存在したのだから。

 

 グッと堪え、サタンはまた口を開く。

 

『お前に伝えることがある。戦った時に勘づいたかもしれないが、討伐するべき存在の神々にお前の存在が認知された』

「やはりか。今回は1人だったから勝てたが、今後激化したとなれば話は別。いつまで戦えるか分からんぞ」

『いや、大丈夫だ。流石の神々も、お前の力には舌を巻いているだろう。しばらくは襲撃もないはずだ。お前がするべきことは、次の襲撃までに己の力を磨くことだ』

 

 明の姿が消え始める。彼が現実世界で意識を取り戻しつつある証拠だ。

 

 サタンは最後に彼を激励する。

 

『お前は強い。だが、さらに強くなれる。慢心するな。己を磨け。良いな?』

「ああ、分かった。努力しよう」

 

 姿が完全に消えた明。現実世界でもぼちぼち目を覚ましただろう。

 

 サタンはまた独りになる。しかし辛くはなかった。ほんの短い時間だが、明と会話をすることが出来て満たされていた。

 

 大魔神らしくもない、無邪気な少年にも似た笑顔をサタンは浮かべるのだった。




デビルマンの初陣は辛勝。今回デビルマンが使用したのは原作やcrybabyで印象深い火炎放射です。ちなみに神の使徒は今後もたくさん出てきます。ある意味、原作のデーモン的立ち位置かもしれません。
次回、明のステータス確認回です。
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